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ワシントンの核問題シンポに出席して
新原昭治(非核の会核問題調査専門委員)

 1月末、ワシントンで3日間ひらかれた「核破局3分前」と題するシンポジウムに参加しました。核兵器のない世界をよびかけている小児科医のヘレン・コルディコット女史が所長の核政策調査研究所の主催で、アメリカを中心に30人ほどの専門家が報告しました。ロシアやパキスタンからの発言もありました。

 ブッシュ核戦略が最大の焦点に

 世界的な核兵器をめぐる危険への危機感が背景にあって開催されたことをうかがわせる内容でしたが、ブッシュ政権の核戦略が最大の焦点になりました。日本から参加した私にとって、文献で知っているアメリカの核問題の専門家たちから話を直接聞くことができるのは、得がたい機会でした。セッション毎に会場内のマイクを使って質疑応答がおこなわれ、私も2度質問に立ちました。雪が降り続く厳寒の日々でしたが、マクナマラ元国防長官も一聴衆として連日参加していました。
 ブッシュ政権批判は、核兵器使用政策への傾斜に対するものが中心でした。湾岸戦争でイラク空爆を指揮したチャールズ・ホーナー元米空軍司令官は、あの戦争で核使用の「効果」見積もりをした経験にふれつつ、「いまほんとうに十分注意しなければならない真の危険は、アメリカの若い軍人たちが核兵器は使えると考えてしまうかもしれないことだ。これを非常に、非常に心配している」と発言しました。軍の内実を知り尽くした人物の発言としての重みを感じさせられました。
 広島、長崎原爆をひそかに開発したニューメキシコ州ロスアラモスの地元からは、反核団体のグレッグ・メロ氏が報告し、核兵器開発研究所で人々の目をあざむいて続けられてきている最近の核兵器開発の真相を、パワーポイントによる資料説明で詳細にあばきました。彼とは3年ぶりの再会で、人類史上初めて核兵器がつくられた場所で、“それはここで始まった。それをここでやめさせよう”のステッカーをひろげるなど、核兵器廃絶のため精力的に奮闘している人物です。メロ氏は昨年、米「戦略軍」司令部内部で予定されていた新型核兵器開発の秘密会議の関係資料を事前に暴露し内外の大きな反響を呼びましたが、今回の報告も精密で深い分析でした。

 ますます重要となる世論と運動

 軍事専門家のウィリアム・アーキン氏のブッシュ核戦略への批判は、本質をついたもので、注目に値するものでした。米ソ核対決時代より大幅に核兵器数が減った分を、ハイテク技術や敵陣防空体制突破力の向上が埋め合わせて、いまも過去最高時と同じ実質の危険きわまる核戦力が保持されていると指摘。アメリカの核戦略は、いまも「終末論的、覇権主義的、絶対優位追求の冷戦思考」によって支配されていると糾弾しました。
 シンポジウムでは、核兵器開発研究所長による核兵器礼賛発言もあり、会場から反論がありました。この会議の外では、年末にブッシュ政権が新型核兵器開発の方針を承認して以来、政府内外の核使用論者や核開発推進論者たちが勇み立って「使える核兵器」の強化をすすめよなどと発言していることを伝える軍事専門紙の記事がしきりに流れていました。核使用に反対し核兵器廃絶のすみやかな実現を迫る世論と運動をこれまで以上に大きくひろげなければならないことを痛感させられた訪米でした。