| 米原潜「サンフランシスコ」の事故が示すもの |
| 新原昭治(非核の政府を求める会核問題調査専門委員) |
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グアム南方を高速で潜航航行中に海底の「山」に激突し、1人が死亡、多数が負傷した米攻撃型原子力潜水艦「サンフランシスコ」の事件は、あいつぐ原潜事故の危険を示す一方で、事故の真相を極力おおい隠そうとする米海軍の秘密主義の体質を見せつけました。
ニューヨーク・タイムズは、太平洋潜水艦隊司令官らが内部向けに送った複数のEメールを入手。負傷者数が軍の発表にいう「23人」ではなく、60人にも達し、乗組員137人のほぼ半数がケガをするほどの深刻な事故であったとあばきました。
米海軍最大の潜水艦基地グロトン(コネチカット州)の新聞ザ・デイは、5年前のロシアの原潜「クルスク」沈没の惨事が再現されかけていたという米海軍関係者の指摘を報じました。
一方、ロシアのプラウダは同国海軍専門家の分析として、米国の潜水艦の方がロシアより外洋作戦が多く、米原潜の事故が起こりやすい傾向にあると警告。
内外の鋭い指摘にさらされた米海軍は、事故から20日も経った1月末になって、船体前部のひどい損傷の写真を公表しました。ソナー室とバラスト(浮力調節用おもり)タンクがつぶれていたのです。
しかし、これでも被害の全容とみることはできないでしょう。米海軍は原子炉は無事だとしていますが、事故発生直後にジーゼル機関を始動させています。
また破損したソナー室と艦中央の原子炉のあいだには、巡航ミサイル等の兵器貯蔵室と魚雷発射管がありますが、そこの被害の有無には口をつぐんでいます。
死亡したアシュレー兵曹は機関室で作業中に頭部を打撲したのが死因ですが、機関室は原子炉よりも後方です。損傷がひどい最前部にすぐ隣接する兵器部門の被害の有無は、積んでいた兵器の種類を含めて、明らかにされていません。
この点でプラウダがこの種の潜水艦事故は、ミサイルの燃料の火災を誘発し、惨事に至る危険が高いとして、「クルスク」事故がまさにそれだったと指摘しているのは無視できません。
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| ▼「核認証艦」の事故 |
「サンフランシスコ」は、太平洋配備の約25隻の攻撃型原潜中、米海軍が特別に核攻撃資格を与えた10隻の「核認証艦」の1隻です。一昨年末、米国防総省は随時、原潜に核巡航ミサイルを積み込み、隠密裏に長期に前進配備するという新方針を決定しました。「有事配備」のため「核の所在を否定も肯定もしない」政策も継続されています。
米海軍解禁文書によると「サンフランシスコ」は1999年5月、カリフォルニア沖で核巡航ミサイル発射試験もおこなっています。同艦に核弾頭付き巡航ミサイルが積まれていた疑惑も否定できないのです。
さらに事故を起こした同艦には、横須賀に司令部をおく米海軍第7潜水艦群司令官が同乗していたという指摘もあります(元米海軍勤務のレイモンド・ペリー氏。米「ディフェンスウォッチ」)。同司令官は少将で「サンフランシスコ」事故の真相解明ではこの高官の存在に煙幕が張られているといいます。これが事実なら、原潜基地としてグアムが強化される中で、中東を含む太平洋・インド洋全域の米潜水艦作戦への、横須賀の第7潜水艦群の指揮機能がさらに拡大している証拠となるでしょう。
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| ▼続発傾向の米原潜事故 |
米潜水艦の事故件数は、このところ「ピラミッドの稜線を駆け上っている」といいます。その背景には、ハイテク過剰依存や、欠陥の指摘を異端視し、上部に隷従する米軍内部の空気の強まりが指摘されています。
一昨年10月、地中海のサルジニア島ラマダレーナ出港直後、米原潜「ハートフォード」は座礁。米海軍は事故を隠して同艦を母港グロトンに帰しました。しかしグロトンでばれ、真相究明の世論が起きました。英紙インディペンデントは、同艦が「核弾頭を積んでいたらしい」と報じました。
昨年7月28日、佐世保港内の赤崎岸壁に接岸中の原潜「ラホヤ」は深夜、3回の爆発音とともに火災を発生。驚いた住民の問い合わせで、米軍は「電気関係のトラブル」「大事に至っていない」と回答しましたが、それさえ同艦が佐世保を出港したあと初めて公表されました。「ラホヤ」も、「サンフランシスコ」と同様、核認証艦でした。
事故の続発と米軍の無責任な対応は、わが国への米原潜寄港の危険性の強まりを鋭く示すものといわなければならないでしょう。
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