| 第59回国連総会の核兵器関連決議を分析する |
| 藤田俊彦(前長崎総合科学大学教授、常任世話人) |
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第59回国連総会は、さる12月3日、第一委員会の審議をへた52決議と3決定を可決・承認した。ほぼ半数が核軍備廃棄をはじめとする核兵器に関する決議・決定であった。
今回の国連総会は、アメリカが核その他の大量破壊兵器の存在を言い立てて始めたイラク戦争の泥沼化のなかで、また北朝鮮やイランの核開発計画が国際的争点となるなかで進められた総会であった。
このような状況のもと、核兵器関連決議の多くは、5月に開催予定の2005年核不拡散条約(NPT)再検討会議を視野に入れて、核兵器の縮小撤廃と不拡散双方の早急かつ確実な前進を求めることを特徴としていた。
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| 1.核軍備撤廃約束の実行を加速せよ! |
核兵器全面廃棄を求める決議3件はすべて圧倒的な多数の賛成で採択された。最大の核兵器国アメリカはこれらの核兵器廃絶決議にすべて反対した。(第1表1〜3参照)
(1)新アジェンダ連合は「核兵器のない世界にむけて、核軍備縮小撤廃約束の履行を加速する」決議を提出した。前文冒頭に記されているように、半年後の「2005年NPT再検討会議を念頭において」の決議である。
前文は、核軍備の縮小撤廃にむけて拘束力のある責務(注:NPT第6条核軍縮義務などをさす)および合意された諸措置(注:2000年NPT再検討会議最終文書の核兵器廃棄の明確な約束など)がまったく履行されていないと指摘した。
これをうけて本文第1パラグラフはすべての国にたいし、核軍備の縮小撤廃と不拡散双方の誓約を遵守するよう訴え、アメリカなど核兵器国には「新たな核軍備競争を刺激する行為をひかえる」ことを求めた。第2パラは、NPTへの普遍的加入(注:インド、パキスタン、イスラエルの加入と北朝鮮の脱退宣言の撤回を含意)および包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を呼びかけた。
第3、4パラでは、NPT締約国にたいして、2000年再検討会議で合意された核軍備縮小撤廃の実際的な諸措置の履行を加速するよう呼びかけている。
第5、6パラでは、ジュネーブ軍縮会議(CD)における兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約交渉の再開と核軍備縮小撤廃を扱う下部機関の設置を求めている。
このように、新アジェンダ決議は、2005年NPT再検討会議の準備委員会がさる5月、不調に終わったあとをうけて、いわば、新アジェンダ連合による再検討会議のアジェンダ(議題)の提言となった。この新アジェンダ決議はアメリカの世界的軍事同盟網に組み込まれた国々の一部から新たに支持を集めた。新アジェンダ連合加入のニュージーランドなどのほかカナダに限られてきた同盟国の賛成は、これまで棄権のドイツやベネルックス3国、ノルウェー、トルコ、リトアニア(いずれも北大西洋条約機構加盟)、そして日本と韓国をリストに加えた。新アジェンダ決議は核兵器廃絶にむけて「非同盟」の多くの国々と「同盟」の一部の国々をむすぶ掛け橋の役割をとりあえず果たした。前回の賛成率75.1%にたいし今回は賛成率83.4%。反対は米英仏とイスラエルなど核兵器廃絶拒否の頑固派に限定された。
(2)アセアン代表としてミャンマーが提案した「核軍備縮小撤廃」決議は、前文で「核兵器のない世界の確立」という目標を確認し、核兵器条約の締結をかかげたほか、核兵器全面廃棄の時間的枠組みの必要に言及した。
本文では、「すべての核兵器国がこれら兵器の廃棄の達成をめざして効果的な軍縮措置をとるべき時」がきているとし、核軍備の縮小撤廃と不拡散双方が連携しつつ前進すべきであるとのべた。さらに、非核兵器地帯の創出、核兵器の戦略・戦術上の役割の低減、核弾頭と運搬手段の生産の即時停止、核兵器緊急発進態勢の解除を核兵器国に求めた。また、核兵器国間の先制不使用と非核兵器国への不使用を定める法律文書の締結を呼びかけた。
そのほか、2000年NPT再検討会議最終文書について、核兵器全面廃棄を達成するとの核兵器国による明確な約束の重要性を指摘し、核軍備縮小撤廃の13措置(注:CTBT発効促進やカットオフ条約交渉を含む)の履行を求めた。
決議は賛成率64.6%で採択された。米英仏は反対、露は棄権、中国は賛成した。
(3)唯一の被爆国・日本の提案した「核兵器全廃への道程」決議は、核兵器不拡散を基調とし、可及的すみやかな核軍備撤廃を正面から提起したものとはなっていない。
本文第1パラはNPTの普遍性達成の重要性を指摘し、NPT枠外の諸国が非核兵器国として遅滞なく無条件に加入するよう呼びかけた。ついで第2パラはNPT加盟国すべてにとって条約上の義務を履行することの重要性を指摘した。
また、NPT第6条履行の具体策を次のように列挙した。(a)CTBTの発効促進、(b)カットオフ条約交渉のCD内暫定委員会の設置、(c)核軍縮担当補助機関のCD内設置、(d)核軍縮への不可逆性適用、(e)核兵器全面廃棄の「明確な約束」実現の努力。
決議は、2005年再検討会議の成功のため、最大限の努力を払うよう訴えている。 この日本決議の賛成率は89.6%で、3つの核兵器廃絶決議のなかで最高であった。ただし、アメリカはCTBTに異論ありとして、同盟国日本からの決議に反対した。
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| 2.核兵器条約、核兵器使用禁止条約、CTBT、カットオフ条約 |
国連総会は核軍備の縮小撤廃と不拡散のため国際条約の締結を求める諸決議を採択した。
マレーシアは「国際司法裁判所(ICJ)勧告的意見のフォローアップ」決議を提案した。その本文第1パラは「核軍備撤廃をもたらす交渉を誠実におこないかつ妥結させる責務が存在するとの国際司法裁判所の全員一致の結論をふたたび強調する」とした。
そして、第2パラは核兵器禁止・廃棄を規定する「核兵器条約の早期締結をもたらす多国間交渉を開始することにより、その責務をただちに履行するよう呼びかける」と訴えた。
インドは例年のように核兵器使用禁止条約の締結を求める決議を提案した。核兵器禁止までの措置として使用の禁止を求め、また先制不使用も含んだ決議である。
パキスタンは、これと対照的に、非核兵器国に対する核兵器の不使用をもとめる「消極的安全保障確約」決議を提案し、採択されている。例年の決議の1つである。
CTBT早期発効を求める決議が圧倒的多数の賛成で可決された。提案はオーストラリアなどいずれもアメリカの同盟国で、新型核兵器実験の準備への批判と考えられている。
カットオフ条約の締結を求める決議が、これもアメリカの同盟国カナダから提案され、採択されたが、アメリカは反対、これまでのような無投票採択ができなかった。
アメリカは、パキスタン決議に棄権したほかは、これらの条約関連決議にすべて反対した。ブッシュ大統領就任以来、CTBTに反対するようになったアメリカは今回、有効な検証が不可能だという理由でカットオフにまで反対した。(第1表4〜7、15)。
CTBTとカットオフはNPT体制のもと核兵器の縮小撤廃・不拡散の当面の重要目標と位置づけられているだけに、NPT再検討会議の難航が予想される。
このほか、中国が進めてきた宇宙軍備競争防止決議は事実上、アメリカの宇宙空間利用のミサイル防衛を俎上に載せるもので、反対なく採択された。アメリカは棄権した。
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| 3.米の孤立と核兵器固執 |
唯一の超大国アメリカが単独行動主義的核政策を追求し、みずから攻守両面の垂直拡散を追求する一方、水平拡散防止に狂奔する有様はきわめて露骨であった。
第1表に明らかなように、多数決で採択された15案件について、アメリカは賛成ゼロ、反対13、棄権2である。「米」の欄では×印がたてに13並んだあと、△が2つ続く。
第2表にみられるように、新アジェンダ決議には、2000年NPT再検討会議での妥協の後追いで賛成しただけ。第3表、サッカーJリーグの勝ち点方式にならった算定では、アメリカは最低の2点。イスラエルが10点でそれに次ぎ、英仏さらに露と続く。
アメリカと他の核兵器国の合作も目につく。米英仏3国の核兵器廃絶などへの反対がきわだつほか、アメリカ+イスラエルの2国間協力が中東情勢を反映している。また米露共同の工作でモスクワ条約賛美の決議が無投票採択にこぎつけた。
アメリカとは対照的に、マレーシアは前年と同様、多数決で採択された15案件すべてに賛成し、得点45点、ランキング1位。東南アジア非核兵器地帯条約の締約国であり、現在、非同盟諸国会議の議長国である。中国とパキスタンが2位、3位と続いたあと、北朝鮮が4位に入っている。いずれもアジアの国々である。
日本はニュージーランドと並んで5位タイ、前年と同じランキングである。唯一の被爆国・日本がこれでよいのだろうか。日本の「非核の政府」がマレーシアなどとともに国連の場で核兵器廃絶・核戦争防止の運動の先頭にたつことが望まれる。
原爆被災60年、第2次世界大戦終了60年の節目の年をむかえて、5月にはNPT再検討会議が国連本部で開催される。日本をはじめ世界各地から核兵器の廃絶を願う人々がニューヨークに集まって要請行動を繰り広げることになる。「いま、核兵器廃絶を!」署名運動の成果をたずさえた日本の草の根の大使たちの活躍が期待される。
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