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「核の先制不使用」への転換を阻止するため、同盟諸国がバイデン氏に働きかけている 英紙「フィナンシャル・タイムズ」

(2021.10.29)

  米国が核ドクトリンを変更するのではないかとの懸念から、欧州とアジアの各国政府は水面下での圧力を強めている。

 米国の同盟諸国はジョー・バイデンに対し、核兵器の使用に関する米国の方針を変更しないよう働きかけている。大統領が「先制不使用」宣言を検討していることで、ロシアや中国に対する長年の抑止戦略が損なわれる恐れがあるからだ。
 欧州ではイギリス、フランス、ドイツ、インド太平洋では日本とオーストラリアといった条約上の同盟国によるロビー活動は、バイデン政権が、米国の核政策を決める省庁間の定期的プロセスである「核態勢の見直し」作業をしている最中に行われたものだ。
 同盟諸国の中には、バイデンが見直し作業の中で「先制不使用」の方針を打ち出すことはないだろうと考えている諸国もあるが、ほとんどは、バイデンが「唯一の目的」と呼ばれる方針を検討しているのではないかと懸念している。それは、米国への直接攻撃を抑止するため、あるいは攻撃を受けた後に報復するためなど、米国が核兵器を使用するのは限定的な状況のみに限られることを明確にするものである。
 「これは中国とロシアへの巨大な贈り物になるだろう」と、ある欧州の政府関係者は語っている。
 核兵器の使用に関する米国の政策は、冷戦時代以来、意図的に曖昧なままで、米国が先制的に核兵器を使用できることを示唆し、欧州とアジアの両方の同盟国に、米国の「核の傘」の下で守られているという明確な感覚を与えてきた。
 核不拡散論者の中には、「唯一の目的」や「先制不使用」を宣言することで、核兵器が使用される状況が明確になり、安定性が増すと主張する論者がいる一方で、ロシアや中国をつけあがらせることになると批判する論者もいる。
 また、日本や韓国などの同盟国が独自に核を開発することを促すことにつながり、地域的な軍拡競争の引き金になるとの懸念も出ている。バイデンは、副大統領時代や2020年の選挙戦で、「唯一の目的」への転換を支持していた。
 アジアの安全保障専門家であるマイケル・グリーン氏は、「『唯一の目的』や『先制不使用』の問題点は、同盟国はそれを信じるが、敵国は信じないことだ」と指摘する。
 今年初め、米国は同盟国に質問項目を送ったが、その結果、核政策の変更には圧倒的に否定的な回答が多かったと、このやり取りに詳しい2人が語っている。
 しかし、一部の同盟国は、米側が大統領自身に直接反対の意向を伝えていないのではないかと懸念している。アフガニスタンからの撤退やオーストラリアとの原子力潜水艦協定に関する同盟国の懸念を、米政府が聞き入れなかったためだ。
 金曜日〔10月29日〕にエマニュエル・マクロン大統領と同席したバイデンは、フランスが潜水艦の契約について事前に知らされていなかったことを知らなかったと述べた。仏政府はこの合意により、豪政府との既存の潜水艦契約を失った。
 欧州やアジアの政府関係者、議会評論家など十数人がフィナンシャル・タイムズ紙に語ったところによると、年内に予定されている「核態勢見直し」の結論が近づくにつれ、同盟国の不安が高まっているという。週末にローマで開催されるG20サミットでバイデンが各国首脳と会談した際に、彼の見解が示されることを期待する声もある。
 金曜日のバイデン・マクロン会談後の共同声明には、「信頼できる結束した核同盟」へのコミットメントと、核問題に関する「緊密な協議」の約束が盛り込まれ、同盟国の関心の高まりを示した。
 とくに、今月初めにロイド・オースティン米国防長官がブリュッセルのNATO(北大西洋条約機構)本部を訪問した際には、ロビー活動が激しく行われた。「同盟国は非常に懸念しており、はっきりとした言葉で自分たちの考えを明らかにした」と、あるNATO外交官は語っている。
 米国防総省のジョン・カービー報道官は、政権が「核態勢の見直し」を終了するにあたり、同盟国との協議は「不可欠であり、継続している」と述べ、「米国の拡大抑止力の約束が強固で信頼できるものであり続けること」がプロセスの中心であるとも付言した。
 米国が核兵器の使用に関する方針の変更を検討するのは、今回が初めてではない。バラク・オバマ大統領も同様の方針転換を検討したが、同盟国や米軍からの反対を受けて断念した。しかし、専門家の中には、アフガニスタンをはじめ、バイデンには最近の安全保障政策の決定において、同盟国や軍事顧問を無視する傾向があると懸念する声が出ている。
 上院外交委員会の共和党トップであるジェームズ・リッシュ氏は、フィナンシャル・タイムズ紙に対し、「『唯一の目的』の核政策は、『先制不使用』の別名であり、どちらかを採用することを検討することは、同盟国に対する完全な裏切りである」と述べている。
 ワシントンにあるCenter for a New American Securityの最高責任者であるリチャード・フォンテーヌ氏は、オバマ政権以降、ロシア、中国、北朝鮮からの脅威は高まる一方であり、「米国が『先制不使用』を誓う時期ではない」と主張した。


「米部隊が台湾軍を訓練、最低1年前から極秘で活動」
【米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」電子版2021年10月8日付】

 米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、米当局者の話として、米軍の特殊作戦部隊と海兵隊の小部隊が極秘に台湾に派遣され、台湾軍の訓練に当たっていると報じた。その背景として「中国による台湾侵攻への懸念が高まる中で、台湾の防衛能力を増強する狙いがある」ことをあげ、この訓練はこれまで1年に及んでいるとしている。

 米軍の特殊作戦部隊と海兵隊の小部隊が極秘に台湾に派遣され、台湾軍の訓練に当たっていることが、米当局者の話でわかった。中国による台湾侵攻への懸念が高まる中で、台湾の防衛能力を増強する狙いがある。
 米当局者らによると、二十数人の特殊作戦部隊と支援部隊が台湾陸軍の小部隊の訓練に当たっている。米海兵隊は台湾の海軍と共同で小型艇を使った訓練を実施している。米軍は少なくとも1年にわたり台湾で作戦を実行しているという。
 米特殊作戦部隊の配備は、米国防総省内で台湾の戦闘能力に対する懸念が高まっていることの表れだ。中国はここ何年も軍拡を進めているほか、足元で台湾への軍事圧力を強めている。
 米台の当局者は、150機近い中国の軍用機がここ1週間に台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入したことに警戒感を強めている。これには戦闘機「殲16(J16)」や戦略爆撃機「轟炸6(H6)」、対潜水艦哨戒機「Y8(運8)」が 含まれており、台湾当局によると、その数は過去最多に上る。
 中国軍用機は台湾が定める領空には侵入していないものの、連日の防空識別圏侵入は、台湾を自国の一部とみなす中国共産党の立場を改めて印象づける。中国は必要であれば、武力で台湾を支配することも辞さない構えを見せている。米軍幹部は今年、今後6年以内に中国が武力で台湾統一をめざすとの見方を示した。中国がそれより早い段階で台湾侵攻に乗り出す可能性があるとの指摘もある。
 台湾の邱国正・国防部長(国防相)は6日、中国が2025年までに最小限の代償で、全面的に台湾を侵攻できる能力を持つとの見解を示した。
 ホワイトハウスと米国防総省の当局者は、台湾への米軍配備についてコメントを控えた。現時点で台湾側からのコメントは得られていない。米当局者によると、台湾への米軍配備はローテーション制で行われており、それぞれの米軍部隊が異なる日程で配備されている。
 中国外務省は声明で、米国に対して従来の合意を順守し、台湾への軍事支援を停止するよう要求。「中国は国家主権と領土保全を担保するため、必要なあらゆる措置を講じる」と表明した。
 アジアでは昨年、米海兵隊が台湾に派遣される可能性があるとの一部報道があったが、米当局者が報道内容を確認したことはなかった。米特殊作戦部隊の派遣はこれまでまったく報じられていなかった。
 米特殊作戦部隊と海兵隊小隊の派遣は、中国の侵攻に備え、台湾に防衛能力強化に対する自信を深めさせるという、米国による小規模ながらも象徴的な取り組みだ。現・元米政府関係者や軍事専門家らは、米国が単に台湾に武器を売却するよりも、米台の軍隊同士の関係を強化するほうが望ましいと指摘している。
 米国は近年、巨額の軍装備品を台湾に売却しているが、現・元当局者らは、台湾は防衛能力の強化に向けて大型かつ賢明な投資を始めるべきだと考えている。
 トランプ政権時代に大統領副補佐官(国家安全保障担当)を務めたマット・ポッティンガー氏は「台湾は今世紀に入って15年程度、防衛への適切な対応を怠ってきた。衝突が発生して数時間で破壊されるであろう高額な軍装備品を過剰に購入する一方で、対艦ミサイル、スマート機雷、十分に訓練された予備軍や援軍といった、よりコストが低いながらも相手に深刻な打撃を与え、中国の戦争計画を著しく困難にするようなシステムの構築はあまりにも不十分だった」と指摘する。
 ポッティンガー氏によると、台湾の軍事支出総額はシンガポールと同程度だ。シンガポールは人口数で台湾の4分の1にすぎず、かつ「中国から厳しく監視される立場にもない」。同氏は米軍によるいかなる台湾派遣も把握していなかったと話している。