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米議会予算局「核戦力のコスト予測(2021〜2030年)」
〈2021年5月発表〉

(2021.5.1)

 米議会予算局(CBO)は、2年ごとに核戦力の10年間のコストを予測することを法律で義務づけられている。この「報告書」は、2021年から2030年までのCBOの予測を含む。
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《背景》
 核兵器は、第2次世界大戦中に開発されて以来、米国の安全保障上の重要な構成要素となってきた。冷戦時代には、核戦力は米国の防衛政策の中心であり、大規模保有量が作られていたが、それ以後、核戦力は通常戦力より防衛政策上の重要性が低くなり、米国は長年、新たな核兵器や運搬手段を建設せず、既存の核兵器や運搬手段を維持または耐用年数延長を選択した。
 米国の現行核戦力は耐用年数の終わりに近づいており、運搬手段の一部はこれ以上の耐用年数延長は不可能かもしれない。米国の核戦力は、弾道ミサイル(SSBN)を発射する潜水艦、陸上配備大陸間弾道ミサイル(ICBM)、長距離爆撃機、爆弾を搭載した短距離戦術航空機、およびこれらの運搬システムが搭載する核弾頭で構成されている。今後20年間にわたりこれら能力の配備継続のためには、基本的にすべてのシステムを改修するか、新たなシステムに置き換える必要がある。
 議会は今後数年間にわたり、米国が将来どのような核戦力を展開すべきか、すなわち、米国がどの程度まで核戦力の近代化を継続するかについて、決定する必要がある。バイデン政権が核政策とそれに必要な核戦力を決定するために、「核態勢見直し」を行うと広く予想されている。
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《CBOの2030年までの米核戦力コスト予測》
 本年2月に議会に提出された国防総省(DOD)とエネルギー省(DOE)の2021年予算要求に明記された核戦力計画では、2021〜30年で合計6340億ドル〔現行レートで約68兆円〕の費用がかかると予測される。CBOは、DODとDOEの示す計画を実施するためには、これらの計画に変更がなく、費用増加やスケジュール遅延が生じないとして、合計5510億ドルが必要と予測する。[略]
 5510億ドルは以下のアイテムに投資される。
 ・戦略核運搬システムおよび兵器(2970億ドル)。このカテゴリーは、DODの戦略核運搬システム(SSBN、ICBMおよび長距離爆撃機の3種類の長距離核兵器の運搬システムで、戦略核3本柱と総称される)予算と、これらのシステムで使用される核弾頭に関連する活動、およびSSBNに動力を与える原子炉に関する予算で構成される。このカテゴリーにおけるコストのほぼ半分は弾道ミサイル潜水艦に関するものである。
 ・戦術核運搬システムおよび兵器(170億ドル)。このカテゴリーには、短距離で核兵器を運搬できる戦術航空機に関するDOD予算、DOEによるこれらの航空機が搭載する弾頭に関する活動への資金、新たな海上発射巡航ミサイル(SLCM)、およびそのミサイルが搭載する弾頭に関する予算が含まれる。
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 CBOの見積りでは、2021〜30年の総額5510億ドルのうち約1880億ドルが核兵器および運搬システムの近代化に向けられると予測する。そのうち1750億ドルが戦略核3本柱の近代化に、130億ドルが戦術核および運搬システムの近代化に向けられる。DODの運搬システム近代化プログラムは合計約1540億ドル、DOEの新型SSBN用の弾頭改修および原子炉開発プログラムは合計約350億ドルとなる。
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 CBOの推計では、2021年の予算案に示された10年間の国防計画コストのうち、核戦力が占める割合は約7%である。年間ベースでは、その割合は2021年の約6%から2030年には約8・5%に増加すると予測され、2019〜28年のCBO推計値よりも約1ポイント高い。[略]

《CBO最新推計値の基礎》
 総コストについてのCBOの見積りは、米核戦力の配備、運用、維持、近代化にかかるコストだが、CBOは当初の2013年の報告書とその後の更新版で使用したのと同じアプローチで、核戦力に直接関連すると特定したコストのみを考慮して報告書を作成している。したがって、CBOの見積りには、他の分析が含めているような核戦力に関連する間接的コストは含まれていない。
 コスト予測方式
 今回のアップデートでは、CBOはDODとDOEの2021年の予算要求および今後5年間の予定予算額を含む予算要求正当化文書を分析した。[略]
 CBOは、2021〜30年の期間中には開発中あるいは初期生産中で、各部門の予算に完全に反映されていない代替システムについては、すでに構築されている類似システムの実際のコストと、2021年の予算要求に合致した生産・配備計画の実行に必要なスケジュールを検討することを通じてコストを見積もった。特に、DODは「2018年核態勢見直し」の指示に従って新型SLCMを配備し、その設計は、長距離スタンドオフ兵器(LRSO)と呼ばれる新型空中発射巡航ミサイルおよび搭載弾頭から描かれる、と仮定した。
 すなわちSLCMの開発コストはLRSOの推定される開発総コストの半分、単位生産コストは同じになると仮定した。同様に、SLCMの核弾頭はLRSOのW80-4と同様のものと仮定し、SLCMの弾頭開発コストは半分、単位生産コストは同じ、と予測した。2021〜30年のSLCMとその弾頭のコストを約100億ドルと見積もっているが、非常に不確実なもので、実際、SLCM開発がそもそも追求されるのか、される場合、設計および開発スケジュールはどうなるのか、いずれも不明である。SLCMを潜水艦や水上艦艇に配備するコストも見積もっていない。そのほとんどは2030年以降に発生すると思われる。
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《見積りコストの変化》
 2021〜30年の核戦力の総コスト予測6340億ドルは、CBOが2019年に行った2019〜2028年の総コスト予測4940億ドルを1400億ドル(あるいは28%)上回っている。DOEの増加率は、DODの増加率を大きく上回っている。すなわち、DOEのコストは2290億ドルで2019年見積りを36%上回るが、DODのコストは4060億ドルで、2019年見積りを25%上回っている。
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 弾道ミサイル潜水艦。SSBNの予算総額は今後10年間で1450億ドルと、2019年見積りより約380億ドル増加している。そのほとんどはDODのSSBN関連プログラム予算によるものであり、これは今後10年間で1300億ドル、19年見積りより約340億ドル増と予測される。
 増加のほとんどは、CBO見積もりが2028年ではなく30年まで延長されたことによる。DOD2021年予算要求では、新型SSBN開発プログラムは設計段階を完了し、30年までに調達の中間点を通過することになっている。その年には、7番目の新型潜水艦(最終合計12隻)の建造が承認されることになっており、それ以前に承認された6隻の潜水艦は2030年以降ほぼ10年間にわたって建造されたか、建造中となっている。[略]
 増加の他の要因は以下のとおりである。
 ・D5-SLBMの運用年数を延長し新型コロンビア級潜水艦の運用期間を通じて使用できるようにする取り組みが強化されている。
 ・オハイオ級SSBNの運用コストは、2021年度予算では19年度予算よりも高くなっており、CBOは、オハイオ級の一部をこれまでの計画よりも長期に運用する計画と整合するよう予測傾向を延長した。
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 大陸間弾道ミサイル。ICBMの総額は、10年間で820億ドル、CBO見積りではDODが約700億ドル、DOEが約120億ドルとなる。この総額は、2019年予測を約210億ドル上回っているが、主に予測期間の違いによる。
 DODのコスト分担額が140億ドル増加したのは、そのほとんどが、陸上配備戦略抑止計画のミサイル部分となる新型ICBMの開発と初期生産費用が増加したことによる。[略]
 DOEのICBMコストは、今後10年間で19年予測よりも約70億ドル増加すると予測される。[略]

 爆撃機。両省の2021年度予算要求では、核戦力の爆撃機部分の予算総額は2021〜30年で530億ドルとなり、2019〜28年についての19年見積りを約40億ドル上回っている。
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 DOD関連のコスト増は、ほぼすべて、B21新型爆撃機の製造期間が2019年推定より2年長くなったことによる(空軍引き渡しは2020年代半ばに開始予定)。DOEでは、コスト増加のほとんどはW80-4の弾頭運用年数延長にかかわっており、その取り組みが現在2年先行して行われていることと、プログラム全体のコストの推定値を増加させたことによる。
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 戦術核運搬システムと核弾頭。戦術核戦力の今後10年間のコストは、2019年見積りよりも約20億ドル高い170億ドルになると予測する。増加分はほぼすべてDOD予算で、「2018年核態勢見直し」で要求された新型海洋発射巡航ミサイルのコストに関連する。
 DOEがSLCM用核弾頭を製造する推定コストも、予測期間の2年延長によって増加しているが、この増加分は、2026年頃に完成が予定されているB61-12運用期間延長計画(F35航空機の戦術核兵器任務のために実施)の10年間コストの減少によってほぼ相殺されている。
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《指揮・管制・通信・早期警戒システム》
 核戦力の指揮・管制・通信、早期警戒システムにDODが費やす予算は、10年間で合計940億ドルとなる。2019年予測より約170億ドル増加する。この増加の主因は、DODの早期警戒衛星(敵ミサイル発射の検知)が、これまでのシステムに置き換え、この衛星と通信する新地上システムを導入する計画が変更されたことにある。
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