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核禁条約締約国会議、NPT再検討会議の結果と今後の課題
核問題調査専門委員会での黒澤満・大阪大学名誉教授の報告(要旨)
(2022.10.20)
  非核の政府を求める会核問題調査専門委員会の例会が10月20日、黒澤満・大阪大学名誉教授を講師に招いてオンラインで開かれ、核兵器禁止条約第1回締約国会議(6月、ウィーン)、核不拡散条約第10回再検討会議(8月、ニューヨーク・国連本部)の結果と今後の課題をめぐって活発に論議しました。
 黒澤さんの報告(要旨)を紹介します。(文責・編集部)
 ◇
第1部 核兵器禁止条約の前進と今後の課題――第1回締約国会議の議論を中心に

 私が核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会議の議論で重要だと思う問題は、次の4つです。
 一つは、TPNW第4条の全面的廃絶です。
 二番目が、第6条、7条の人道的アプローチの中心である被害者援助、環境修復、国際協力・援助で、これが一つの目玉です。
 三番目は、条約の普遍性で、第12条です。核禁条約に反対する国も少なからずあるわけで、条約をどう普遍化していくかという問題です。
 四番目に、NPTとの関係がどうなっているのかです。これは第18条です。これらの論点について今回の会議でどういうことが決まったのか、これからどうするのか、今後、どういう問題があるのかを見ていきたいと思います。

 1.核兵器の全面的廃絶に向けて(第4条)
 まず第4条の核兵器の全面的廃絶に向けてです。だから、「廃絶に向けて」だから廃絶を決めていない。廃絶に向かおうということです。
 (1)核保有国で核兵器を廃棄しないで入ってきた国について何年で廃棄させるか、NATOの国が入った場合に配備された核の撤去期限をどうするか。これは、第1回締約国会議で決めるとTPNWに書いてあります。廃棄の期限は10年で5年延長。化学兵器条約も10年で、生物兵器条約は9ヵ月です。それから、核兵器が配備されている国が入った後に配備している核を撤去する期限は90日と決定しています。
 そういう意味では、今回の締約国会議で新しいことが決められていて、TPNWは前進している。条約の中身がかなり明確になったというのが、今回の会議の特徴です。この会議で、撤去の方法や延長の要求については、会期間、つまり来年11月末の第2回締約国会議までの間に非公式のワーキンググループを作って検討することが決定しています。
 (2)二番目の問題は、「権限ある国際的な当局」を作る。それが核兵器の廃絶について交渉し検証する。今回、決まったことは、最初の交渉から最後まで一貫したアプローチを開発すると書いてあって、これも具体的には会期間で検討することになっています。
 (3)「当局」といっても、これは1つなのか複数なのか、新たな機関なのかIAEAなど既存の機関なのか、また、核兵器の廃棄を交渉し、検証するのは同一の機関なのか別機関のかについては何も議論されていません。いつまでに検討を終わるかも決まっていません。今後の一つの大きな課題です。

 2.被害者援助、環境修復、国際協力・援助(第6条、7条)
 (1)二番目は、人道的アプローチということで、ここは積極的義務を規定しています。だから被害者を援助する、環境を修復する、それに対して国際的な協力・援助を行うということです(第6条、7条)。
 (2)今回の会議では、「宣言」と「行動計画」でいろんなことが決めています。「行動計画」では、基本的内容は明確ですが、中身が非常に抽象的です。例えば、義務の効果的な実施、情報交換、義務促進のメカニズムの開発、他の機関との協力などが書いてあって、具体的なことは決まっていない。具体的に決まっているのは、国際信託基金の設置ぐらいです。
 (3)ここは非常に重要な条項です。これまでの軍縮条約には、こういう被害を受けている人を助けようといった規定はなかったわけで、これをどう発展させていくかが大きな課題として残っています。

 3.条約の普遍性(第12条)
 (1)TPNWの普遍性をどう確保するか。ここで決まったことは、条約の普遍化は優先課題としてやります、各国に署名・批准を要請します、国際会議で宣伝します、国連決議も出します、核の人道的リスクも強調しますということが「行動計画」で書かれています。ここでも抽象的なことが決まっています。
 (2)私の意見ですが、1つは、基本的に締約国数の増加が必要だということです。条約が採択されたとき、賛成が122ヵ国ですが、締約国はいま68ヵ国でまだ半分ぐらいです。だからまず122ヵ国を目標にすべきです。
 (3)私の提案として、第一の標的は非核兵器地帯条約の締約国です。いま5つの非核兵器地帯ができているわけですから。非核兵器地帯は、NPTの義務のほかに核兵器を配備させないことも入っている。消極的安全保証も入っている。そういう意味で、ここにある国がTPNWに入ることには障害がない。法的に矛盾することはないわけで、非核兵器地帯の会議でTPNWの署名・批准を要請する。これが一番最初に重要なことだと思います。
 (4)二番目の標的は、核同盟に参加していない国です。非同盟諸国やスイスなどです。
 (5)三番目の標的は、「核の傘」の下にあっても、すぐ署名・批准できなくても、協力関係を築く方向で行くべきだと思います。第1回締約国会議には、NATO加盟国でもオブザーバー参加したし、ドイツ、オランダなども今はNATOに加盟しているから参加できないけれども、核兵器廃絶というのは同じ目標だから協力していこうと言っているわけです。
 だけど日本はオブザーバーとして参加しなかった。やっぱり日本国民として非難すべきだと思います。ドイツ、オランダなど核兵器を配備している国の政府がオブザーバー参加しているのに、なぜ日本は行かないのか。やはり論理的にもおかしいし、日本政府にもっと鋭く言う必要があると思います。もちろん、TPNWに参加しようというのが基本ですが、その前に少なくともオブザーバーで参加しろということです。
 (6)核兵器国は、現状ではTPNW参加は基本的に難しいわけですが、核不拡散条約(NPT)再検討会議などで、NPT第6条の義務の核軍備撤廃のための誠実な交渉を約束しているわけですから、その履行を常に言っていくべきだと思います。

 4.核不拡散 条約との関係(第18条)
 (1)締約国会議で出された議論の中心は、基本的にはNPTとの関係です。この締約国会議では、補完性、両立性が常に主張されてきました。両者は対立するものではなくて、両立するものであるし、補完するものであるということが宣言で決まっています。
 (2)行動計画」がどういうことを言っているかというと、IAEA、CTBTOなどの国際機関との協力を促進する。
 (3)TPNWと非核兵器地帯などとの相互補完性を強調する。TPNWとNWFZとは全然矛盾しないわけで、相互補完性も両立性もあります。
 (4)私の意見ですが、論理的推論、あるいは法的解釈で補完性、両立性を主張することはできます。だけども、核兵器国はそういうところで反対しているわけではない。核兵器国は自国の核保有の特権を手放したくないという政治的判断で反対している。だから核兵器国が近い将来に合意するのは不可能だと思います。
 ではどうするかというと、やはり長期的に締約国を増やす。そして核兵器に悪の烙印を押して非正当化する。だから締約国が120ヵ国に増えたら、非常に大きな力を持つと思います。条約採択の賛成国は122ヵ国ですから可能性はあるわけで、そういう主張、運動をすべきだと思います。

第2部 第10回NPT再検討会議と核軍縮

 1.核軍縮の進展状況
 NPT再検討会議は、1970年から5年ごとに、4週間開かれます。
 (1)核兵器国の見解
 今回、会議が始まって初日にバイデン米大統領とロシアのプーチン大統領が書簡を送りました。バイデンは、ロシアに用意があるなら新START条約(戦略核兵器削減条約)を更新したいと言ったのですが、プーチンはそれには触れず、NPTは支持しているし、約束も遵守している。核戦争に勝者はない≠ニ言っている。中国は、共通の安全保障、戦略的安定性が重要だとし、核兵器の第一不使用を言っています。「第一不使用」というのは一番では使わない、二番では使うということです。
 (2)非核兵器国の見解
 この7年間の総括について、非核兵器国の見解は常識的なことですが、全般的に核軍縮の進展に否定的だと言っています。進展と言えるのは、新START条約の延長ぐらいしかないわけです。
 スイスは、核兵器の役割の低減がまったくない、「第一不使用」も核使用の「唯一の目的」も進展がないと言っています。
 アイルランドも、具体的な進歩はまったくないし、核リスクの低減も、核削減も行われていないと発言している。
 オーストリアは、第6条は履行されていないし、核使用の安全保障ドクトリンが維持されているのはけしからんと批判しています。
 NAC(新アジェンダ連合)は、核軍縮は行われず、核兵器の重要性を増加させていると発言している。こういう見解が非常に多く述べられています。
 (3)再検討会議におけ
る議論
 再検討会議で議論されて、どういうことが最終文書草案に残ったか。
 最終文書草案の採択はコンセンサス(全会一致)ですから、1国が反対したら全部潰れるわけです。今回は、最後の段階で、ロシアがウクライナの原子力発電所に関する記述に反対して採択されませんでした。
 しかし4週間議論してきて、核軍縮の強さは薄められてきたけれども、核兵器国もいいだろうということで、核軍縮の人道的アプローチが最後まで残っていた。ロシアの反対を除くとほぼ合意ができていたわけです。
 それで最終文書草案でどういう結論が出ているか。
 「会議は歓迎する」という言葉で始まっているのが一つあって、米ロ間の新START条約の延長合意を会議は歓迎する。これは最上級の褒め言葉です。
 「注目」というのは、これは重要だと言うことですが、[注目1]はP5による2019年、2020年、2021年の3年間にわたって核リスクに関する会合が開かれたこと。
 [注目2]は、P5が2022年1月3日に「核戦争防止・軍備競争回避に関する共同宣言」を出したこと。当初、4日から始まる予定の再検討会議の前日にこの宣言を出してきた。
 [注目3]は、2国間の核リスク協定または取り決めでかなりあります。
 こうして見ると、[注目]の3つとも核リスクに関するものです。だから、今回の再検討会議のメインのテーマは核リスクだということです。
 [深い懸念]を表しているのは核削減進展が欠如していることで、核軍縮を約束しているのに全然履行していない。もう一つは、核兵器使用の脅威が冷戦ピーク時以来、より高いことです。
 [非核兵器国の懸念]として書かれているのは、核兵器の量的拡大と質的改良、新型核兵器開発、核兵器の役割増大です。
 [失望]として書かれているのは、FMCT(核分裂性物質生産禁止条約)交渉が開始されないこと。これは1995年の再検討会議で即時交渉開始、早期締結を合意したのに27年間ほったらかしなので、失望しているということです。
 [遺憾]が1つあって、これは消極的安全保証(NSA)の進展がまったくないということです。
 これらのが会議全体の意見です。

 2.今後の核軍縮の方向
 次に、今後の核軍縮の方向について見ていきます。
 (1)核兵器国の主張
 核兵器国の主張をずっと見ていくと、P5は、先ほどの1月3日の「共同宣言」があって、核リスク低減を主張しています。会議のワーキングペーパーで[戦略的リスク低減]を出して、そのために対話による信頼醸成とか予見可能性を増やすべきだという主張をしています。
 米国のワーキングペーパー[戦略的リスク低減における米国のリーダーシップ]では、キューバ危機以来米国がいろいろとやってきたことがリストに載っています。
 それから、米英仏でワーキングペーパー[核兵器国のための諸原則と責任ある行動]を出しています。核リスク低減に重心を置いています。
 ロシアは、ワーキングペーパー[核軍縮:共同責任の領域]で、現在の国際環境では核軍縮は不可能だ、安全保障が確立しないと軍縮は無理だという非常に否定的な見解を述べています。
 最後に中国は、[安全保証]というワーキングペーパーを出していて、中国は第一不使用をやっている、消極的安全保証をもっと進めるといった主張をしています。
(2)非核兵器国の主張
 非核兵器国の主張に関しては、たとえば、NPDI(軍縮・不拡散イニシアティブ)は、日本も入っていますが、[勧告]というワーキングペーパーを出して、第6条を履行する、FMCT(核分裂性物質生産禁止条約=カットオフ条約)、CTBT(包括的核実験禁止条約)、透明性、核リスクなどいろいろ書いています。
 「ステッピング・ストーン」アプローチのほうは22項目挙げていて、核兵器の不使用、削減、役割低減、宣言政策、NSA(消極的安全保証)などを主張しています。
 オーストリアは、核禁条約とNPT(核不拡散条約)の両立性と補完性というワーキングペーパーを出しています。それからカザフスタン、メキシコとともに核リスクのワーキングペーパーを出しています。
 NAC(新アジェンダ連合)もワーキングペーパーを出していますが、そこでは警戒解除、核リスク低減、核戦争不戦、両立性などが書かれています。
 NAM(非同盟運動)は伝統的に「消極的安全保証」に関するワーキングペーパーを出しています。
(3)再検討会議における議論
 会議でいろいろ議論されて、最終文書草案には将来に向けての課題が41項目出ています。そのほとんどが今までとあまり変わらないのですが、私が重要と考えるのは6項目です。
 一つは、核兵器がけっして使用されないことを確保する努力です。だから、今まで使用の問題はあまり議論されてこなかったわけですが、ロシアのウクライナ侵攻など、核使用リスクが危険水域に達しているという認識があるわけです。
 二つ目は、新たな核軍備競争の回避という形になっていて、核兵器を減らせということでは合意できていない。悪くなるのを防ごうということです。
 三つ目に、米ロに対しては新START条約の完全な履行と後継条約の誠実な交渉を始めるよう求めていて、米ロも賛成している。
 四つ目は、核兵器の役割、重要性の低減。これは以前からずっと言われていることです。
 五つ目は、現行安全保証の遵守とNSAの約束です。この現行安全保証というのは、今回の再検討会議から入りました。米英仏などは消極的安全保証だけではなくて、積極的安全保証も言っています。つまり助けに行くよというわけです。不作為で使わないということではなくて、作為で助けに行く。核同盟はみな、積極的安全保証がとられる。
 最後が、核兵器使用のリスク低減措置の開発、探求、履行。これがある意味、今回の一つの大きな課題です。

 3.核兵器禁止条約
(1)再検討鍵における議論
 次に、核兵器禁止条約について再検討会議でどういうことが議論されたか。
 核兵器国はほとんど発言しなくて、フランスが時々反対意見を言ったくらいで文書はない。だから意見はみんな非核兵器国です。
 NACの主張は、核禁条約の採択を承認し、完全にNPTと両立することを承認すべきだというものです。
 NAMも条約の採択に注目し、核兵器廃絶の目的を促進する。だから補完性はあるということです。
 キューバはワーキングペーパーを出しています。両者は補完的だ、NPT第6条の履行だ、現在の構造を損なうものではないと言っている。
 オーストリアのワーキングペーパーは、第6条の完全履行は、核兵器禁止条約を必要としており、両立するのだという話です。
 それから、オーストリア、アイルランド、カザフスタン、メキシコがワーキングペーパーを出して、両立するし補完関係にあると主張しています。
 最後に、メキシコが代表して「共同声明」を出しました。核禁条約の締約国66、署名国20の共同声明で、やはり核禁条約とNPTは両立性があり、この条約は道徳的な命令に従っているのだと言っている。核抑止は誤りである、共通の安全保障を求めるべきだ、と。条約の履行は、核兵器に悪の烙印を押し、非正当化するものだという議論が行われたということです。
 (2)最終文書草案の内容
 最終文書草案はどうなっているか。核軍縮の第1委員会に出された最初の草案はこうです。
 「会議は、核兵器禁止条約が2017年7月7日に採択されたことを承認する。それは国連事務総長により2017年9月20日に署名のため開放された。会議はさらに、その条約が2021年1月22日に発効し、宣言と行動計画を採択して閉会した第1回締約国会議を2022年6月21-23日に開催したことを承認する」。
 これが最初の提案で、第1委員会では全然変更なしでした。全体会議でも2回目までは変わらなかった。最後の6回目に何が変わったかというと、この文中の「宣言と原則を採択し、閉会した」が削られた。これは、P5(米英仏ロ中5ヵ国)が反対したのだと思います。結論は、核禁条約の存在は承認されたが、両立性などは承認されていないというのが、最終文書の内容だと思います。
 (3)今後の課題
 次に、今後の課題について言うと、第4条で、核兵器の廃絶に向けて、権限ある国際的当局の具体化が必要だということです。
 援助、修復、協力(第6、7条)についても、義務の具体的行動の明確化が必要だということです。
 普遍化(第12条)に対しては、非核兵器地帯条約の締約国、非同盟諸国の加入を促進すべきだと。
 それでNPTとの関係(第18条)について、両立性、補完性については対立が継続するであろう、だから、これは加入国の増加によって側面からカバーすべきだという意見です。

 4.核リスクの低減
 核リスクの低減は新しい問題で、今まで少しは触れられていたけれども、核軍縮のメインではない。
 (1)再検討会議における議論
 再検討会議における議論で、今までよりずっと多くの国によって議論されました。それは、ロシアの核使用の威嚇があって、核兵器の使用が非常に危ぶまれているからです。だから、核リスクというのは、核が危ないというのではなくて、核兵器が使用されるリスクのことなのです。核リスクというともっと広いわけで、持っているだけでもリスクがある。だからここでの議論は核兵器が使用されるリスクのことです。核リスクというともっと広くて、持っているだけでもリスクがある。
 (a)核兵器国による議論
 米国は、米国のリーダーシップの具体的措置と書いていて、どういうことを言っているかというと、これは伝統的な定義なのですが、ホットラインとかリスク低減センターの設置、照準解除、核戦争防止協定、発射通告、訓練の通告、事故協定、あるいは核兵器国間における誤解、誤算、誤通信、事故による核兵器の使用の防止、これがここでの定義です。
 P5のワーキングペーパーも、潜在的敵国の政策・行動・意図の誤解から生じる紛争を防止するという形で提起されています。
 米英仏もワーキングペーパーを出していて、言っていることは、不使用の継続、対話の促進、政策透明化、決定時間を十分に持つ、照準解除、政策協議を行う、機械でなく人間による管理を行う、通信チャンネルを確立する、検証の対話をしよう。これが、核兵器国の意見で、ある意味では非常に新しい提起がされています。
 (b)非核兵器国による議論
 非核兵器国による議論ですが、NACなどは、警戒体制の解除を入れていて、ステッピング・ストーンの対話、危機予防、決定時間の延長、サイバー対応。
 NPDIも、9つの措置を提案しているけれども、消極的安全保証が入っていたり、いろいろあります。ストックホルム・イニシアチブもワーキングペーパーでリスク対応、透明性、対話の必要を言っている。
 一番興味深いのは、最初にオーストリアが出したもので、オーストリアなど18ヵ国は、一番目に核リスクの透明性の措置を全部組んでいるわけです。核兵器をいくつ持っているかとか、いろんな透明性が全部入っています。
 二つ目に、核兵器使用リスクの低減・排除措置として、配備・非配備核兵器・余剰ストック・貯蔵の削減、それから、役割低減、警戒下発射の中止、警戒レベル低下などを列挙しています。
 三つ目に、その他の措置として、米ロ核軍縮条約の交渉と締結、第一不使用の採択、法的拘束力あるNSAなど、最後にリスクが増加するので回避する措置として、新しい核兵器、核兵器使用の威嚇を行うこと、挑発行為を行うこと、透明性が低減すること、第一使用はダメだと、ものすごく広くとっています。これが再検討会議で、議論されたことです。
 (2)最終文書案の内容
 それで最終文書草案はどう書いているか。
 (a)過去の履行状況
 過去7年間の履行状況について、「会議は今日核兵器使用の脅威は、冷戦の最高時より高くなっていることに深い懸念を表明する」。それでP5の対話、P5の「共同声明」に注目している、核リスク低減の各国のイニシアチブを承認するという形で、過去の履行状況を書いています。
(b)将来の行動計画
 では将来どうするのかということで、核兵器国に対し、いろいろ約束したことを履行していないとして、核リスク低減を含め過去の約束の履行を要請しています。
 そして核リスク低減に関する各国がやっている国家措置の標準報告様式の作成を要請する。
 核リスク低減は、核軍縮の代替でもなく、前提条件でもないことを再確認する。核兵器国は今、これしかやりたくないわけです。伝統的な核軍縮はまったくやっていなくて、「これをやるからいいんじゃないの」という意見があるわけで、これをやっているだけではダメですよと言っているわけです。
 核リスク低減措置の識別、探求、履行を約束する――これは、行動計画に書かれています。
 (c)今後の課題
 それで今後どういう課題が残っているかというと、定義に関して、意図的な使用を含めるかどうかということです。核兵器国の定義を見ていたら、誤解とか誤算とか誤通信、事故というのを絞っているけれども、他のところに行くと、意図的な使用まで全部入れているわけです。それはどうなのか。
 これまでに核軍縮措置として議論されたものを含めるかどうかということで、非核兵器国の提案、とくにオーストリアの最後の提案は多くの多種の伝統的な核軍縮措置が含まれている。何でもかんでも盛り込んでいるわけです。今後の議論の展開は、ロシアの軍事侵攻があってすぐには進まないと思われます。核兵器の威嚇があって、P5の間では不可能だから当分は進まないのではないかというのが私の見解です。

 5.消極的安全保証
 最後に、消極的安全保証についてです。
 (1)再検討会議における議論
 再検討会議での議論はどうであったか。
 ブダペスト覚書というのが1994年、ソ連の崩壊後にウクライナがNPTに入るという時に、米国とロシアと英国――NPTの寄託国政府です――が、ウクライナの独立、主権、国境を尊重する。ウクライナに対する威嚇や武力行使は行わないと、この覚書で約束しています。今回、ロシアはこれに違反しているわけです。
 それで、米英仏のワーキングペーパーでは、「NPT非核兵器国に対して、各国による消極的・積極的安全保証を提供し続け、その保証を尊重する」とある。これらの国が消極的・積極的をいっしょに言う。他の国は消極的安全保証だけを言うのですが。
 中国が消極的安全保証というワーキングペーパーを出して、核兵器国は核兵器の第一使用はしないと約束すべきである、核兵器国およ非核兵器地帯に核兵器の使用・威嚇をしない約束をすべきである、核兵器国は第一不使用の多国間条約の締結を行うべきである、軍縮会議での実際的作業の開始、第一不使用にもとづく抑止政策を放棄するという。読んだかぎりでは非常に良いことを書いている。どこまで本気で言っているのかと私などは思うけれども、そういう提案をします。
 NAMは伝統的にずっと言ってきたわけで、非核兵器国に対する核兵器の使用・威嚇をしないという普遍的、無条件で取り消せない法的拘束力ある保証のための交渉の早期開始をすべきであるというのが議論の中身です。
 (2)最終文書草案の内容
 (a)過去の履行状況
 最終文書草案ではどういうことが書かれたか。
 過去の履行に関して、消極的安全保証の強化が不拡散レジームへの信頼醸成、核軍縮の進展に貢献する。
 条約締約国である非核兵器国への安全保証に関する核兵器国による完全遵守を再確認する。ブダペスト覚書も含まれると書いてあります。
 消極的安全保証の核兵器国による効果的、普遍的、無差別、無条件の法的拘束力ある取り決めに進展がないことを遺憾に思う。
 非核兵器地帯条約の関連議定書への核兵器国による批准の進展を要請する。
 (b)将来の行動計画
 将来の行動計画としては、核兵器国は、現存の安全保証に敬意を表し、尊重すること、国家の声明に一致して消極的安全保証を約束すること。
 消極的安全保証の効果的な国際取り組みの議論を軍縮会議が即時に開始すること、限定なしに実質的議論を行うこと、法的拘束力ある文書を排除することなく勧告を作成する目的をもって即時に開始することを要請する。
 だから、法的拘束力をと言っても核兵器国はすぐ賛成しないので、それも入れますけれどもという書き方になっています。やると書いていない世論を排除しませんと書いている。
 (3)今後の課題
 法的拘束力ある全面的な消極的安全保証の課題は、伝統的にNAMが核兵器の取得を放棄した代償として当然与えられるべきものだと長らく主張してきた。
 今回の会議では、ロシアの軍事侵攻という厳しい現実に直面し、改めて重要な課題として議論されるようになりました。しかし、核兵器国は全面的な法的義務としてのNSAには依然として反対しています。
 現実には、非核兵器地帯条約の議定書への解釈宣言の撤回、これは条約を批准しているけれども、留保は禁止されています。だから留保ではなくて、こう解釈しましょうという一般的な宣言で、たとえば、フランスなどは、自衛権の場合は当てはまらないと言っているけれども、そういうものも撤回すべきだし、軍縮会議でも、積極的な議論の展開が行われるべきだということです。