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どう見る米大統領選挙結果
(2020.12.20)

 11月3日投票の米大統領選挙は12月14日、選挙人投票で民主党のバイデン前副大統領が当選に必要な270人を超える306人を獲得した。トランプ大統領は敗北を認めていないが、大勢は確定した。投票率が推定65%と1908年以降で最高となるもと、バイデンは史上最高の約8100万票を獲得。トランプに700万票以上の差をつけた。
 私は、やはり開票結果をめぐって大混乱した2000年の大統領選を現地で取材した。当時の得票は民主党ゴア氏の5100万票に対し、共和党ブッシュ氏は5046万票の僅差だった。フロリダ州の開票をめぐる法廷闘争となり、同州で537票上回ったブッシュが当選したことになった。当時は旧式の投票機械の不備など技術的問題が混乱の要因となった。今回は票差が開いたのに、現職大統領が政権の平和的移行に抵抗、妨害しており、混乱の中身は大きく異なる。

●最大の争点は「トランプ」

 米国の人口は20年前の16%増だが、2大政党候補の得票は約5割増となった。コロナ禍にもかかわらず多数の有権者が投票した。人々を選挙に駆り立てた最大の争点は「トランプ」だった。
 バイデン支持派から見れば、「トランプ政治」打破が動因だった。トランプ政治とは、@国内では白人優位主義的・人種差別的政策を強行して国民の分断と対立をあおり、A対外的には、依然として世界最大の経済・軍事力を有する国でありながら、国際協調主義から離脱し、戦後国際秩序を撹乱する政治だった。政権末期を襲ったコロナ危機は、専門家の意見に耳を貸さず自己の本能で行き当たりばったりの政治行動を重ねるトランプの大統領としての不適格性を暴露し、多くの国民が「とにかくトランプだけはダメ」と考える最後の一撃となった。
 トランプ陣営から見れば「トランプ政治」とは、白人、キリスト教福音派、富裕層といった支持層の利益と固有の米国観の擁護者=トランプの大統領の座を死守する選挙だった。
 選挙中から負けを見込んで「選挙は不正がある」と言い続けたトランプの陣営は、開票が始まると30件以上の訴訟を起こしたが、ほとんど却下された。トランプ政治への厳しい審判となった今回の選挙は、米国民主主義の底力を感じさせる。
 英紙ガーディアン11月30日電子版は、開票をめぐるトランプの妨害を打ち破った要因を5点挙げる。@分権化。連邦制の米国では選挙は各州・自治体が管理しており「大統領の陰謀」が通用しにくい。A高投票率。B選挙の清廉性・透明性。C訴訟への裁判所のまっとうな対応。D報道機関の健全さ。
 選挙結果を見れば、「国の両岸(大西洋岸は北東部)と五大湖沿岸は民主党多数、内陸部は共和党多数」という分布も含め、両党がほぼ拮抗して対立する米国の最近の構図は基本的に変わらなかった。このような構図は、両党を結束させてきたソ連の崩壊後、1990年代半ばから続いている。今回は人口構成が変化する南部の州で民主党がやや盛り返すなどの動きはあるが、巨大な変化が起きたわけではない。同時に実施された上下両院議員選挙では、共和党は予想外に善戦した。

●新政権は進歩派のうねりを反映できるか

 ではバイデン政権は、どうなるか。今の米民主党には「ミレニアル世代」や「Z世代」と呼ばれる若者を含む進歩派のうねりがあり、それが予備選でのサンダース上院議員支持の広がりとなって表れた。ところが、そのうねりをそらすような形で予備選の途中で急に躍り出たのがバイデンだった。サンダースは4月に撤退表明し、バイデン指名が固まった。そこには民主党指導部の意向が大きく反映した。
 バイデンは政策綱領で、富裕層・大企業への公正な課税や最低賃金引き上げなど、行き過ぎた新自由主義への一定の是正を図る方向性をもった政策綱領を掲げた。トランプ政権が離脱した気候変動対策のパリ協定には復帰を表明している。公約実現の取り組みが注目される。
 政策綱領では核政策について▽核兵器の役割の低下▽抑止が核戦力の唯一の目的▽必要な場合は核攻撃に核で報復――と述べている。バイデンは選挙戦で「核兵器のない世界」に言及したが、政策綱領には、その規定はない。
 選挙で進歩派の支持を取り付ける必要もあり、政策綱領には進歩派の主張が一定、反映された。一方で新政権の閣僚人事は、クリントン・オバマ系の党主流派、バイデン側近集団を主軸とし、女性や少数派に配慮した人選となっている。タカ派的なフロノイ元国防次官は国防長官からはずれたが、選挙戦で貢献した進歩派系の閣僚入りは、なさそうだ。
 ただ特に対外政策は、台頭する中国を含め、各国との相互関係で動く。これまでの人選から、あまり予断をもって、あれこれ言っても生産的ではない。とはいえトランプ政権の「思い付き・攪乱・個人プレイ外交」が是正されれば、それだけでも「よりまし」だろう。
 日米関係では新政権の対中国・対北朝鮮政策が、どう波及するかがポイントだ。対日政策そのものの変化を想定させる材料はない。米国が政権交代した際、経済関係で波風が立つことはあっても、日米軍事同盟関係には強固な一貫性がある。異常な対米従属から抜け出し、対等・平等の日米関係に転換するのは、日本の政治を変える日本国民の課題だ。