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米国の脅迫書簡が証明する核兵器禁止条約の有効性について論議
非核の政府を求める会核問題調査専門委員会
(2020.12.17)

   非核の政府を求める会核問題調査専門委員会の例会が2020年12月17日、オンラインで開かれ、「米国の脅迫書簡が証明する核兵器禁止条約の有効性」について、「しんぶん赤旗」日曜版記者の坂口明さんが報告。活発な論議が交わされました。報告のうち、禁止条約の意義、「米書簡」の問題点を中心に次に紹介します。(文責・編集部)
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 コペルニクス的転換

 今回の禁止条約つくりで、ノルウェーのストーレ外相の発言はなるほどと思うところがあります。
 ノルウェーは、労働党連合政権時代に、NATO加盟の小さい国だけれども、外交的なイニシアチブを発揮していました。当時、ノルウェーが核兵器禁止条約に向け転換の担い手になるという動きが出てきます。
 ストーレ外相は、アメリカとのつながりも深いし、アメリカの4賢人への期待もあったのですが、そこからは何の成果も上がらないというところで、大きな転換をするわけです。2010年10月のストーレ外相の演説を読むと、発想のコペルニクス的転換が行われたことを感じます。
 この転換の一つは、これまで核軍縮の合意は核保有国も含むコンセンサス方式でやってきtが、このコンセンサス方式をクリアする必要があるということです。最後までウンと言わない人に拒否権を与えていれば、これは永遠に達成しない。
 もう一つは、いままであった核兵器条約(NWC)構想から一歩踏み出て、温暖化対策で言えば、1995年にできた枠組み条約のような形で突破口を開くという発想の転換です。気候変動の枠組み条約はとにかく温室効果ガスを減らすということしか書いてない。数値目標などは書いてないわけです。まず、そういうもので合意する。
 その際には、核の使用目的だけでなしに、それを使えばどんな影響が及ぶかについてよく考える。そこを包括的に論議する必要があるし、だから被爆者の声を聞くことが大事だ、市民の参加が大事だという発想になってくる。
 その後、ノルウェーは労働党が選挙で負けために、いまは、「禁止条約に参加しないというのはNATOの立場だから、それに従って参加しないというのが国の方針」という立場ですが、2021年に総選挙があります。ストーレさんはいま、労働党の党首ですから、どういう動きがあるか見ものです。

 支離滅裂な「米書簡」

 核兵器禁止条約を攻撃する今回のアメリカの書簡の論点を考えてみます。
 一つは、「禁止条約は国際情勢の現実を無視している」という主張です。日本政府もそういう主張です。
 ただ、この悪化する安全保障環境をめぐる論議というのは支離滅裂です。一方では、「禁止条約だと国際情勢が悪くなるから反対する」という点で核保有国5カ国は一丸となって反対していると言いながら、「アメリカはロシアや中国と全然違う」などと言い出す。その主張を合体させると、「禁止条約を認めれば、中国、ロシアによる核による世界支配を許してしまうけども、アメリカ、中国、ロシアは禁止条約粉砕で一丸となっている」という、わけのわからない主張です。


 抑止論は集団的誤謬

 問題は、そういう安全保障環境の悪化に対して、核抑止力論で対応できれば解決する、というところが要だと思いますが、「ワルトハイム報告」は抑止力について、「抑止の過程をつうじた世界の平和と安定、均衡の維持という概念はおそらく、存在する最も危険な集団的誤謬だ」という断定を下しています。
 私が核抑止論で常々思うのは、いわば信心の問題だということです。抑止力論を信じる人たちにとっては、信仰ですから、信仰自体をダメだと言ったところで仕方がない。理屈で説得できる話ではない。
 たとえば、ドイツが原発ゼロに踏み切るときの2011年の倫理委員会の報告の論理を思い出すのですが、倫理委員会の論理というのは要するに、正面から原発がいいか悪いかを論じるのではなくて、原発に代わる自然エネルギーは十分発達している、そういう原発に代わる安全な道があるのであれば、そちらをとればよいではないかという論理でした。これは核抑止の問題についても、北朝鮮の問題でも平和的に解決することが可能ならそちらに進めばよいではないかという論議の仕方もあるのではないかということです。
 また、「禁止条約は核不拡散体制を崩すものだ」という論点もあります。しかしNPT体制というのは、非核国の自主的・理性的な選択の結果であって、それによって不拡散体制は支えられているというのが実態ではないか。


 禁止条約は核軍縮を支える新しい柱

 では、オバマ氏や4賢人が掲げた「核なき世界」という目標はどうなったのか。オバマ政権の時期には、国際会議に行くと、国務省の代表が「核兵器のない世界をめざすというのはアメリカの目標です」と堂々と言っていました。でもいまはそういう言い方はしないのではないか。バイデンさんは、選挙期間中に、核なき世界ということを言いましたが、民主党の選挙綱領にそういうことは出てきていません。
 国連の中満泉さんは最近の会合で、「禁止条約をめぐっていろんな意見はあるけれども、禁止条約の発効が目の前に迫っていることは現実である」「軍縮はいろんな柱から成り立っていて、その新たな柱の1つが禁止条約だ、核保有国もそれを認めよ」という内容の発言をしています。
 都合の悪い条約は認めないとP5の国が主張し、それを認めてしまえば、国連の平和秩序は崩壊してしまいます。それは通らないだろうと思います。
 2021年はNPT再検討会議が開かれ、核兵器禁止条約の締約国会議も開かれます。そういうふうにして、禁止条約が「見える化」すれば新たな景色が見えてくると思います。
 いま、核兵器廃絶を国際政治の中心にすえる時代が到来したと言っていいと思います。さればこそアメリカはこういう書簡を出して最後の抵抗をしてくるのだと思います。