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核兵器の使用条件を規定したロシア大統領令
(2020.06.02)

 ロシアのプーチン大統領は 2020年6月2日、核兵器の使用条件などを規定した大統領令「核抑止分野の国家政策原則」を発し、その内容を公表した。
 「原則」は、「核兵器をもっぱら抑止手段として見ており、その行使はやむをえない非常手段」(第4条)としながら、「核兵器使用の可能性を決する条件」(第19条)として、ロシアや同盟国に対する@弾道ミサイル発射の確実な情報、A核兵器や大量破壊兵器の使用、B核兵器での応戦を阻害する国家・軍事施設への攻撃、C国家存亡時の通常兵器による侵略の4点を掲げている。
 なお、@の「確実な情報」やCの「国家存亡時」が何を意味するのかなど、上記4点についてのそれ以上の具体的な言及はない。以下は、ロシア連邦大統領府ウェブサイト掲載の全文。
       ◇

 核抑止分野でのロシア連邦国家政策原則に関するロシア連邦大統領令

 核抑止分野でロシア連邦国家政策原則の実施を保証する目的で以下、決定する。
 1、添付〔以下〕の核抑止分野でのロシア連邦国家政策原則を承認する。
 2、本令は署名日より発効する。

 ロシア連邦大統領 B・プーチン

 モスクワ、クレムリン
 2020年6月2日 bR55

 ロシア連邦大統領令により2020年6月2日施行

 核抑止分野でのロシア連邦国家政策原則

I.一般規定

 1.当原則は、国防安全保障分野における戦略的計画設計文書であり、核抑止の本質に対する公的見解を反映し、核抑止が無効化させる軍事的危険性と脅威、核抑止の原則およびロシア連邦の核兵器使用への移行条件を規定する。

 2.ロシア連邦および(ないし)その同盟国に対する仮想敵による侵略からの確証抑止は、国家の最優先事項の1つである。侵略抑止は、核兵器を含むロシア連邦戦力全体により確保される。

 3.核抑止分野でのロシア連邦国家政策(以下「核抑止分野での国家政策」とする)は、政治、戦力、軍事技術、外交、経済、情報その他の全般的計画を統合し連携させた総体であり、戦力および核抑止手段に支えられて実現され、ロシア連邦および(ないし)その同盟国に対する侵略を防止する。

 4.核抑止分野での国家政策は、防衛的性格を帯びており、核抑止の確保に十分な水準での核戦力の保持を目指し、主権の保護と国家領土の保全、および仮想敵によるロシア連邦および(あるいは)その同盟国による侵略の抑止を確保するとともに、武力紛争が発生した場合は、軍事行動のエスカレーションを許さず、ロシア連邦および(ないし)その同盟国が受け入れ可能な条件でそれを中止させる。

 5.ロシア連邦は、核兵器をもっぱら抑止手段として見ており、その行使はやむを得ない非常手段であり、また、核の脅威を減少させ、核を含む武力紛争の挑発が可能な国家間関係の悪化を防止するために必要なすべての努力を行う。

 6.当原則の法規範的な基礎は、ロシア連邦憲法、国際法で一般に認められた諸原則および規範、ロシア連邦の国防および軍備管理の分野の国際協定、連邦基本法、連邦法、国防安全保障を規定するその他の法規範的な法令及び文書にある。

 7.当原則の規定は、すべての連邦政府機関、核抑止の安全保障に関わるその他の国家機関および組織に、法的拘束力を持つ。

 8.当原則は、国防安全保障に影響を及ぼす国内外の要因に応じて、より明確化することができる。

II.核抑止の本質

 9.核抑止は、ロシア連邦および(ないし)その同盟国を侵略した場合の報復の不可避性を仮想敵に理解させることを目指している。

 10.核抑止は、ロシア連邦軍内に存在する即応部隊と装備、仮想敵に、いかなる状況でも確実に受け入れがたい損害を与える核兵器使用の可能性、また、このような兵器使用のロシア連邦の準備態勢と覚悟によって確保される。

 11.核抑止は、平時も、侵略の直接的脅威期も、戦時も、核兵器使用の開始に至るまで不断に実行されている。

 12.軍事・政治的および戦略的情勢の変化に左右される主要な軍事的危険性は、ロシア連邦の軍事的脅威(侵略の脅威)に転化しうるが、この無力化は、以下の軍事的危険性に対する核抑止の実行によって行われる。
 а) 仮想敵によるロシア連邦とその同盟国に隣接する領域および接続水域における核兵器運搬手段を保有する通常戦力集団の増強
 b) ロシア連邦を仮想敵とみなす国家によるミサイル防衛システムとその設備、中距離・短距離の巡航・弾道ミサイル、高精度・超音速の通常兵器、無人航空攻撃機、指向性エネルギー兵器の展開
 c) 宇宙空間におけるミサイル防衛設備と攻撃システムの構築と展開
 d) ロシア連邦および(ないし)その同盟国に使用する可能性のある核兵器および(ないし)その他の大量破壊兵器、ならびにそのような兵器の運搬手段の保有
 е) 核兵器とその運搬手段、その製造技術および生産施設の無制御の拡散
 f) 非核兵器国の領域における核兵器およびその運搬手段の配置

 13.ロシア連邦は、ロシア連邦を仮想敵とみなし、核兵器および(ないし)その他の大量破壊兵器を保有する、ないしは通常戦力で強い軍事力を持つ個々の国家および軍事連合(軍事ブロックや軍事同盟)に対する核抑止を実行する。

 14.核抑止の実現にあたって、ロシア連邦は、ロシア連邦および(ないし)その同盟国に対して使用される可能性のある仮想敵による他国領域への攻撃手段(巡行・弾道ミサイル、超音速航空機、無人航空攻撃機)、指向性エネルギー兵器、ミサイル防衛装備、核攻撃早期警戒システム、核兵器および(ないし)その他の大量破壊兵器の配備を考慮する。

 15.核抑止力の諸原則は以下の通り。
 а)軍備管理分野の国際義務の順守
 b)核抑止力の保証措置の持続
 c)軍事的脅威に対する核抑止の適応
 d) 可能性のある武力行使および核抑止手段行使の規模、時間、場所について、仮想敵にとっての不確実性
 е) 核抑止確保に関わる連邦行政機関および組織の活動に対する政府コントロールの中央集中化
 f)核抑止の戦力および装備の構造と構成の合理化、ならびに担当任務を履行するのに十分かつ最低レベルの保持
 g)核抑止の専門部隊および装備の軍事使用に向けた恒常的な即応態勢の保持

 16.ロシア連邦の核抑止戦力は、陸・海・空軍基地の核戦力を含む。

III.ロシア連邦の核兵器使用への移行条件

 17.ロシア連邦は、ロシア連邦および(ないし)その同盟国に対する核兵器その他の大量破壊兵器の使用、ならびに国家存亡の危機のもとでの通常兵器によるロシア連邦への侵略時の対応として核兵器を使用する権利を確保する。

 18.核兵器使用に関する決定は、ロシア連邦大統領が行う。

 19.ロシア連邦による核兵器使用の可能性を決する条件は以下の通り。
 а) ロシア連邦および(ないし)その同盟国の領域を攻撃する弾道ミサイル発射についての確実な情報の到達
 b) 敵によるロシア連邦および(ないし)その同盟国に対する核兵器その他の大量破壊兵器の使用
 c) その故障が核戦力による応戦行動の阻害に繋がるようなロシア連邦の死活的に重要な国家施設ないし軍事施設に対する敵の作用
 d) 国家存亡時の通常兵器によるロシア連邦への侵略

 20.ロシア連邦大統領は、その必要があれば、ロシア連邦の核兵器使用の準備態勢ないし核兵器使用の決定ならびに核兵器を使用した事実について、他国および(ないし)国際組織の軍事・政治指導者に知らせることができる。

IV. 核抑止の国家政策の遂行のための連邦政府当局、その他の政府機関・組織の任務と機能

 21.核抑止分野における全般的指揮は、ロシア連邦大統領によって行われる。

 22.ロシア連邦政府は、経済政策の遂行を通じて核抑止装備の維持と開発に向けた措置を取るとともに、核抑止分野での対外および情報政策を策定し実施する。

 23.ロシア連邦安全保障会議は、核抑止分野での軍事政策の基本方針を策定し、ロシア大統領が下した核抑止の確保に関係する決定の履行に関わる連邦行政機関および組織の活動を調整する。

 24.ロシア連邦国防相は、ロシア連邦軍参謀本部を通じて、核抑止分野の組織的および軍事的性格を有する実施計画を直接策定し実行する。

 25.その他の連邦行政機関および組織は、その権限に従って、ロシア連邦大統領が下した核抑止の確保に関係する決定の履行に参加する。