2020年アメリカ核戦力(抜粋訳、2020年1月)
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| (2020.01.01) |
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《概要》
昨年、米国の核兵器備蓄にはほとんど変化がなく、国防総省は推定約3800発の弾頭を維持した。そのうち、配備されている弾頭は1750発で、約2050発が予備とされている。さらに、約2000発の退役弾頭が解体を待っており、合計で約5800発の核弾頭が存在する。配備されている約1750発の弾頭のうち、400発は陸上配備大陸間弾道ミサイルに、約900発は潜水艦発射弾道ミサイルに搭載され、300発は米国内の爆撃機基地に、150発の戦術爆弾は欧州の基地に配備されている。
2019年初め、米国防総省は、800の弾道ミサイルおよび航空機による運搬用に、推定3800発の核弾頭備蓄を維持している。備蓄中の弾頭のほとんどは配備されておらず、必要な際にミサイルや航空機に搭載できるように保管されている。多くの核弾頭は退役する運命にある。現在、約1750発の弾頭が配備されており、そのうち約1300発の戦略弾頭が弾道ミサイルに搭載され、さらに300発が米国内の戦略爆撃機基地に配備されていると推定される。さらに150の戦術爆弾が欧州の空軍基地に配備されている。残りの弾頭(約2050)は、技術的または地政学的な緊急事態に対するヘッジ〔保険〕として保管されている。そのうち数百の弾頭は、2030年までに廃棄される予定である。
国防総省が備蓄中の弾頭に加えて、約2000発の退役弾頭(いまだ完全機能)はエネルギー省の管理下で保管され、解体を待っており、合計推定5800発の弾頭が貯蔵されている。2010年から2018年の間に、米国政府は核兵器備蓄の規模を公表してきた。しかし、2019年、トランプ政権は、米国科学者連盟からの最新の備蓄数の機密解除要請を拒否した。
核兵器は、米国内11州と欧州5ヵ国の推定24ヵ所に保管されていると考えられる。最も多くの核弾頭がある場所は、ニューメキシコ州アルバカーキ南のカートランド基地の巨大な地下弾薬貯蔵保全施設だ。ここにあるほとんどの核弾頭は、テキサス州のパンテックス工場での解体のための搬出を待っている退役核弾頭だ。第2の最多貯蔵州は、太平洋戦略兵器施設とキトサップ海軍潜水艦基地の弾道ミサイル潜水艦の本拠地があるワシントン州だ(〔退役弾頭を除く〕備蓄弾頭数ではワシントン州が最多だ)。欧州の5つの核兵器貯蔵場所のうち、トルコのインジルリク空軍基地が最多数(欧州配備弾頭の約3分の1)を貯蔵している。しかし、最近のトルコとの緊張の高まりを考慮して、米国当局は、インジルリクから核弾頭を密かに撤退する可能性のある計画を検討したと伝えられている。米国が決定した場合、ワシントン州のルイス・マコード合同基地に拠点を置く第4空輸飛行隊のC-17輸送機(米空軍で核弾頭の空輸の資格を与えられている唯一の部隊)の使用が必要になる。
《新STARTの履行》
米国は、新START条約の制限に準拠していると思われ、2019年9月1日時点で1376発の弾頭を搭載する668基の戦略発射装置という数量は、1550発の弾頭と700基の戦略的発射装置という条約制限を下回っている。他に未配備の132基の発射装置があり、配備および未配備合計で800発射装置を保有している。
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条約が2011年2月に発効して以来の、年2回の集計データによれば、米国は配備発射装置214基と配備戦略核弾頭424発を削減したことになる。
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2018年核態勢見直し(NPR)では、米国は「新START条約の履行を継続する」と述べ、引き続き効力を持っている。条約は2021年2月まで有効であり、その時点で相互の合意により最大5年間延長することができる。トランプ政権はいまだ条約延長を求めるかどうか表明していないが、トランプ政権が示している軍備管理協定軽視の姿勢を考えると、延長の見通しはやや厳しいように思われる。
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《核態勢見直しと核戦略》
トランプ政権の2018年核態勢見直し(NPR)は、核兵器庫全体の近代化についてオバマ政権の2010年NPRの大きな枠組みに従っているが、いくつかの重要な変更が含まれている。
最も重要な変更は、米国の核兵器の種類と役割が増大することだ。トランプNPRは対決的な言い方で、「大国の競争」を用いた断定的な姿勢を示し、新しい核兵器の開発および核兵器の近代化計画を含んでいる。報告書は、核攻撃の抑止という唯一の目的に核兵器の役割を制限しようとする目標から後退し、そうではなく、抑止のため、また抑止が失敗した場合の核および「非核の戦略的攻撃」に対して勝利するための米国の核の選択肢を「拡大」することを強調している。明らかに、非核戦略攻撃に対する核兵器の使用は、先制核攻撃となる。
NPRは、「非核戦略攻撃には、米国、同盟国、またはパートナー国の民間人またはインフラに対する攻撃、および米国または同盟国の核戦力、その指揮統制、あるいは警戒能力に対する攻撃、さらに評価能力への攻撃が含まれるが、それに限定されない」と説明している。
報告書は次のように主張している。米国の核能力は「化学兵器、生物学兵器、サイバー攻撃および大規模通常戦力による攻撃を含む、核および非核の戦略的脅威の潜在的な急速な成長あるいは出現に対して防衛する」ための態勢をとる。これらの目標を達成するために、「米国は、最適化された抑止選択肢の柔軟性と範囲を強化する…米国の柔軟な核の選択肢を拡大することは、低出力の選択肢を含め、地域的侵略に対する信頼できる抑止力を維持するために重要である」。
新しい最適化された機能には、「少数の」既存の〔出力が〕90キロトンの2段階熱核弾頭〔水爆〕W76-1を、第1段階が生み出す出力(推定5〜7キロトン)に制限するために、第2段階を「オフ」にして単段階弾頭に変更することが含まれる。
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米国の戦略軍司令部はすでに、ロシアのより挑発的で攻撃的な行動に対応するため、戦略爆撃機によるNATOへの支援を強化している。現在、46機のB-52爆撃機が空中発射核巡航ミサイル(ALCM)を装備しており、B-52と新型B-21爆撃機の両方が、NPRが提案しているSLCMと同じ能力を持つ新型長距離スタンドオフ(LRSO)核ミサイルを受け取る予定だ。
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冷戦時代、核能力を持つ艦船が自国領土内での核兵器の存在を許していない外国の港を訪れた際に、しばしば深刻な政治的紛争を引き起こした。ニュージーランドの場合、外交関係がこれらの紛争から回復したのはごく最近(30年経過した後)だ。核SLCMの再導入は、こうした外交問題を再び引き起こし、欧州と北東アジアの主要な同盟国との関係を不必要に複雑にするだろう。
米国議会予算局(CBO)の2019年1月発表の推定によると、米国の核兵器および支援施設の近代化と運用には、2019年から2028年の期間に約4940億ドルの費用がかかる。これは、CBOが2017年に行った2017年から2026年の期間の見積もりを940億ドル上回っている。近代化プログラムの増加、コスト見積もりの増大、NPRの新型核兵器要求による。核近代化(と維持管理)プログラムは2028年をはるかに超えて継続する。CBOの推定では、今後30年間で1・2兆ドルの費用がかかる。別の専門的推定値は総コストが1・7兆ドルに近づくと予測している。
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《核計画、核演習》
トランプ政権の核態勢見直しの変更はこれまでのところ、核戦略に関するホワイトハウスの新たな指針を必要としていないように思われる。
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ヨーロッパ配備の爆撃機に加えて、グローバル・サンダー演習には、ロシアに対する長距離攻撃の模擬訓練のために、米国内の基地から出撃する爆撃機も含まれていた。さらに、STRATCOMは、グローバル・サンダー演習ではICBM(大陸間弾道ミサイル)とSSBN(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)戦力も「新たな挑戦的な方法で」演習したと述べた。全体として、グローバル・サンダー演習は、「冷戦終結以来実施されたことのない」作戦を含み、米空軍の地球規模攻撃軍団(グローバルストライク・コマンド)によると、一部については、軍が冷戦時に有していた能力以上のものを提供した。この演習では、宇宙、サイバー、電子戦などの新しい側面も取り入れられた。
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《陸上配備弾道ミサイル(ICBM)》
米空軍は、地下格納庫(サイロ)配備の400基のミニットマンV大陸間弾道ミサイル(ICBM)を3つの航空団(wing)に分割して運用している。(…)各航空団には、それぞれ50のミニットマンVサイロを持つ3つの飛行隊があり、5つの発射制御センターで集団的に制御されている。
格納された400基のICBMには、それぞれ1つの弾頭、出力300キロトンのW/Mk21または335キロトンのW/Mk12Aが搭載されている。しかし、W78/Mk12Aを装備したICBMは、それぞれ2つまたは3つのそれぞれが異なる目標を攻撃できる複数弾頭を搭載でき、理論的には、合計800の弾頭をICBM戦力に使用できる。ICBMは、2015年に数十億ドルの10年にわたる近代化プログラムを完了し、ミニットマンVの耐用年数を2030年まで延長した。(…)
進行中の空軍近代化プログラムには、Mk21再突入体の武装、信管、発射構成要素改良が含まれ、合計で10億ドル強のコストがかかる。この改良の目的は、公式には再突入体の耐用年数の延長だが、核弾頭の対標的効果を高める「爆発高度補正(burst height
compensation)」も含まれているように見られる。(…)
2017年8月、空軍はボーイングおよびノースロップ・グラマンと、「陸上配備戦略的抑止力(GBSD)」として知られる次世代ICBMについてのトレード・スタディ〔多様な解決策から最適のものを選ぶ多面的研究〕を開始する6億7800万ドル相当の契約を結んだ。(…)
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新型ミサイルとミニットマンVとの交代開始は2029年または2030年の予定だ。計画では666基のミサイルを購入し、そのうち400基を配備、残りを試験発射および予備として使用する。空軍によると、GBSDは現在の使用者要件を満たしているが、2075年までに改良できる適応性と柔軟性を備えている。新型ミサイルは、ミニットマンVより長射程と予想され、アメリカ本土からロシアだけでなく、中国、北朝鮮、イランも標的にする可能性を持つ。
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空軍は2019年にミニットマンVの飛行実験を4回実施した。(…)
《弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)》
アメリカ海軍は14隻のオハイオ級弾道ミサイル潜水艦隊を運用しており、そのうち8隻はワシントン州バンゴール近くの基地から太平洋で、6隻はジョージア州キングスベイ基地から大西洋で行動している。通常、14隻の潜水艦のうち12隻が運用可能とみなされ、残りの2隻はどの時点においても燃料補給・修理中である。しかし、運用中の潜水艦は時おり軽微な修理を受けるため、実際に海洋にある数は常に8または10に近くなる。そのうちの4ないし5隻の潜水艦がその指定された哨戒海域で「厳戒態勢」に入り、残る4ないし5隻は数時間または数日で、警戒態勢に置かれることになる。
各戦略潜水艦は、最大20基のトライデントUD5弾道ミサイルを搭載でき、この数は新START条約〔新戦略兵器削減条約〕の制限に適合するよう24基から削減された。海軍は2017年以降、当初のトライデントUD5をトライデントUD5LE(LEは「寿命延長」の略)と呼ばれる寿命延長改良型に置き換えている。(…)
トライデントSLBMはそれぞれ核弾頭を最大8発の搭載ができるが、通常平均4〜5発の弾頭を搭載しており、1潜水艦あたり平均約90発の弾頭を搭載する。潜水艦に搭載された個々のミサイルの搭載量は、標的設定に最大限の柔軟性をもたらすために大きく異なると考えられているが、配備されているすべての潜水艦は同じ組み合わせを搭載していると考えられる。通常、900発から950発の弾頭が運用中の弾道ミサイル潜水艦に配備されているが、個々の潜水艦の維持管理によってその数は少なくなる。2019年3月の新STARTデータは、918発のSLBM弾頭が配備されていることを示している。
SLBMには2つの種類の核弾頭、出力90キロトンの強化W76-1と455キロトンのW88が搭載される。W76-1はW76-0の再生バージョンだが、明らかにやや低出力で強化された安全機能を付加された弾頭に交代し、退役が進行している。国家核安全保障局は2019年1月、W76-1の生産を完了したと発表したが、この弾頭の生産は10年間続いた推計1600発という大規模なものとなった。(…)
W76-2として知られるW76-1の低爆発型の生産が始まった。W76-2は5〜7キロトンの出力を得るために核弾頭の一次核分裂のみを使用する。(…)
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(…)圧倒的多数の抑止哨戒が大西洋で行われた冷戦時代とは対照的に、現在、中国と北朝鮮に対する核戦争計画の増加を反映して抑止哨戒の60%以上が、通常、太平洋で行われている。
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コロンビア級として知られている次世代の弾道ミサイル潜水艦の設計が進展している。(…)
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2019年に5基のトライデントUD5LEの発射実験があった。最新の試験は2019年9月に行われ、USSネブラスカ(SSBN-739)が南カリフォルニアの海岸から4基のミサイルを発射した。これらの打ち上げは、トライデントUD5LEの性能期待値を評価するための司令官評価テストの一部で、1989年の米軍導入以来、173回目から176回目のミサイルの飛行実験が成功した。(…)
《戦略爆撃機》
米国空軍は現在、20機のB-2A爆撃機(すべて核兵器搭載可能)と87機のB-52H爆撃機(46機が核兵器搭載可能)を運用している。3番目の戦略爆撃機B-1は核兵器搭載能力はない。これらの爆撃機のうち、約60機(B-2Aが18機とB-52Hが42機)が米国の核戦争計画の下で核任務に指定されていると推定されるが、作戦配備爆撃機の数はそれよりも少ない。2019年3月以降の新STARTデータでは、作戦配備核爆撃機49機(12機のB-2Aと37機のB-52H)とされている。爆撃機は、ノースダコタ州のマイノット空軍基地、ルイジアナ州のバークスデール空軍基地、ミズーリ州のホワイトマン空軍基地の3つの基地で5爆撃航空団に9飛行隊に編成されている。
B-2はそれぞれ最大16個の核爆弾(B61-7、B61-11、およびB83-1重力落下型爆弾)を搭載でき、各B-52Hは最大20個の空中発射核巡航ミサイル(AGM-86B)を搭載できる。B-52H爆撃機はもはや重力落下型爆弾の任務が与えられていない。528基の空中発射巡航ミサイルを含む推定850の核兵器が爆撃機に割り当てられているが、爆撃機基地に配備されているのは約300に過ぎない。残りの550の核兵器は、ニューメキシコ州アルバカーキ郊外のカートランド基地の地下弾薬保管施設の中央貯蔵所に置かれていると考えられている。
米国は、既存の爆撃機の核兵器指揮・統制能力の向上、改良された核兵器の開発(B61-12および長距離遠隔攻撃ミサイル)、さらに新型重爆撃機B-21レイダーの開発によって、核爆撃機戦力の近代化を進めている。
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空軍はまた、長距離スタンドオフ(LRSO)ミサイルとして知られる新型空中発射核巡航ミサイルを開発している。2030年にAGM-86B空中発射巡航ミサイルと置き換え、現在の空中発射巡航ミサイルに使用されているW80-1の改良型弾頭W80-4を搭載する。2019年2月、核兵器評議会はW80-4(エネルギー部門2019b)の開発技術(フェーズ6・3)を承認した(…)。
ミサイル自体は完全に新しいものと予想され、より長射程で、高精度、ステルス能力強化など、空中発射巡航ミサイルと比較して軍事能力が格段に向上している。これは米政府の「米国は核兵器の新たな能力を追求しない」という2010年の誓約に違反しているが、2018年のトランプNPRはそのような制約を破棄している。
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《非戦略的核兵器》
米国は核兵器庫に、1種類の非戦略核兵器、B61重力落下爆弾を保有している。この爆弾には、B61-3とB61-4という2つの型式がある。第3の型式のB61-10は2016年9月に廃止された。すべての型式のB61合計で約230発の戦術爆弾が備蓄されている。これらのうち約150(B61-3および-4)はヨーロッパ5ヵ国6基地、すなわちイタリアのアビアノとゲディ、ドイツのビュヘル、トルコのインジルリク、ベルギーのクライネブローゲル、オランダのフォルケルに配備されていると考えられている。この数は、一部にはアビアノとインジルリク作戦貯蔵容量の減少により、2009年以降、減少した。
ベルギーとオランダの空軍(F-16を使用)、およびドイツとイタリアの空軍(PA-200トルネードを使用)には、米国の核兵器による核攻撃任務が割り当てられている。(…)通常の状況下では、核兵器は米空軍要員の管理下に置かれ、戦時における使用は、米国大統領によって承認されなければならない。
(…)米国内に保管されている残りの80個のB61は、北東アジアを含むヨーロッパ以外の同盟国を支援するために米国の戦闘爆撃機による潜在的使用のためのものとされている。
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〔参考〕
米統合軍(2019年)
★管轄地域別
・北方軍
(USNORTHCOM)
・中央軍
(USCENTCOM)
・アフリカ軍
(USAFRICOM)
・欧州軍
(USEUCOM)
・インド太平洋軍
(USPACOM)
・南方軍
(USSOUTHCOM)
★機能別
・特殊作戦軍
(USSOCOM)
・戦略軍
(USSTRATCOM)
・輸送軍
(USTRANSCOM)
・サイバー軍
(USCYBERCOM)
・宇宙軍
(USSPACECOM)
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