バチカン市国代表、核兵器国含む国際会議の早急な開催を求める
NPT再検討会議準備委員会
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| (2014.4.30) |
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2015年NPT再検討会議の第3回準備委員会の席上、バチカン市国代表は核軍備撤廃の過程が遅々として進んでいない状況を厳しく批判するとともに、核兵器国を含むすべての国の参加する国際会議による核兵器の完全な禁止・廃棄の決定を重ねてつよく要請した。
以下は、フランシス・チュリカット・アポストリック・ヌンキ大司教(国連常駐オブザーバー)が4月30日、ニューヨーク国連本部で開催された同委員会会合において行ったスピーチの全訳である。
資料出所:Vatican Radio, “Intervention of H.E. Archbishop Francis Chullikatt? Apostolic Nuncio, Permanent Observer of the Holy See to the UN”; April 30, 2014, UN Headquarters, New York.
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議長、わが代表団は今回、2015年核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終準備委員会の議長としてあなたが選出されたことに祝意を表明する。私は議長に対しわが代表団の全面的な協力を確約する。
NPTのそれぞれの再検討会期はますます重要になっている。なぜなら、この条約の目標の達成が遅れれば遅れるほど、核兵器使用にともなう悲劇的な激変によって脆弱な国際安全保障状況が破られてしまうリスクがいっそう大きくなるからである。
NPTの発効以来44年、また冷戦終了以降4半世紀の歳月が流れた。今もなお約1万7000発の核兵器が存在し続けているうえに、今後、21世紀後半に至ってもなお核兵器が軍備の一部を構成し続けると仮定するかにみえる、それら兵器の近代化計画がある。この事実はNPTの土台を掘り崩している。核兵器の廃棄に向けて確固とした進展のないかぎり、この条約が過去の一時代の遺産と見なされる日も、そう遠くないかもしれない。
生き生きとしたNPTは核兵器なき世界という目標を達成するために不可欠である。もしも同条約の中心的義務である核兵器廃棄に向けての交渉が相変わらずおっかなびっくり、受け入れがたい緩慢さでしか実行されないならば、不拡散体制の生存能力への信頼が次第に弱まり、さらなる拡散のリスクが増大することもありえよう。
主導的核兵器国はNPTに対してバランスを失したように見える接近方法をとっている。すなわち、彼らは、核兵器の拡散について強烈な関心を明からさまに示す一方で、自らの覇権力の用具としての核兵器の廃棄の公約については同じ切迫感を欠いている。これらの核兵器国は、自国の安全のために核兵器を必要とすると主張する一方で、核兵器が国際の不安全状態の典型であるとする科学、軍事、法律、および道徳など様々な分野の人間活動の専門家たちの見解を軽くあしらっている。
議長、軍事ドクトリンとしての核抑止は、大多数の諸国の所見によると、核軍備縮小撤廃の有意な進展に対する第一級の障害となっている。それは我々の地球規模化された相互依存的な世界の発展を阻害する安全保障戦力構造の基本的な一部である。さらに、それは現存する保有核兵器のさらなる近代化を正当化するために利用され、真正の核軍備撤廃を妨げている。
核兵器使用のもつ「破滅的な人道上の影響」を議論する一連の外交会議に現在取り組んでいる多くの国々は、核兵器なき世界に向けての緩慢きわまりない進歩の危険性を認識している。昨年オスロで始まり、今年ナヤリットで続けられ、そして第3回会合がウィーンで予定されているそうした外交会議は、核兵器の偶発的もしくは意識的な使用の際に人類に降りかかる恐怖の実態を耐えがたいまでの詳細さで説明している。今後の行動の論理的な道筋は明らかである。それは、化学兵器と生物兵器など他の大量破壊兵器にかかわる現在の地球的禁止と肩を並べる、核兵器の地球規模での禁止へと導く緊急にして闊達な前進である。
しかし、外交会議そのものだけでは禁止をもたらす過程を開始することができない。我々はこの目標の達成を支援することのできる真正の政治過程を必要としている。2013年9月、国際連合において開催された核軍備撤廃に関する未曾有のハイレベル会合は、そうした政治的弾みを創り出そうと試みた。したがって、わが代表団は、戦時においてまた平和時においても、非戦闘員と戦闘員を無差別的に全滅させることの出来る道徳的に受け入れられないこれら核兵器の惨害を廃絶するために、主要国がより実質的なかつ断固たる行動をとることを要望する。
これまで述べてきたことに照らして、核兵器の保有を禁止する法的拘束力のある文書を開発する共同の道を準備するために、核兵器国が非核兵器国とともに努力することがより望ましいことは明らかである。オスロ=ナヤリット=ウィーン過程は核兵器禁止のための準備作業に取り組む圧力が高まりつつあることを示している。かかる行動の緊急な必要性を認識する諸国の政府は、主な核兵器国の参加のないままに、したがって今日までの核兵器国の努力がきわめて控え目でしかなかった2国間戦略兵器交渉やジュネーブ軍縮会議など現存するメカニズムや制度の枠組みの外で、それを実現しようとする誘惑にかられるかもしれない。
わが代表団の見解では、諸国の政府はかかる選択肢を採用せねばならない状況にない。諸国の政府は、NPTに対する誠意あるコミットメントにもとづき、すべての締約国の協力を確保しかつ強化すべきであって、それにより統一的な方途のもとで世界を核兵器の廃棄へと接近させるべきである。NPTを真に貴重とする主要国はそうした交渉過程が大幅に加速されたペースで包括的核軍備撤廃を実際に作り出すことを確保するべきである。
多年にわたり、バチカン市国は、世界が大量破壊の妖怪から解き放たれるために、核兵器の廃止を呼びかけてきた。
今日、我々は、われらの惑星地球と人類全体を保存する建設的作業を動機付けし、また活発化するために、そうした道徳的な呼びかけを新ためて発出するものである。一方で核兵器国が彼らの核兵器を維持するために毎年、千億ドル超の資金を支出し続けているなかで、他方、世界の極貧層の人々の必要を満たすために、ミレニアム開発目標の達成を含む経済的・社会的開発に向けて、そうした貴重な資金が切実に必要とされているのであって、このような実情は放置されていてはならない。実際、持続可能な開発の前提条件としての平和と安全の問題は、現存する核兵器により人類に突きつけられている脅威のもとで、未解決のまま残されることになる。
2010年NPT再検討会議において、わが代表団は世界が核兵器なき世界のための法的、政治的、および技術的な必要条件に系統的な方途で取り組み始める好機に到達していると述べた。したがって、我々は、核兵器の廃絶へと導く包括的な合意に関して、可能なかぎり早急に準備作業を開始することを希望する。この努力は、核兵器のさらなる削減、包括的核実験禁止条約の発効、およびカットオフ条約など、核兵器なき世界の目標を支えるために現在展望されている各種の手段や構成要素の妨げになるものではけっしてない。
この点に関して、2010年再検討会議に出席したすべての締約国が開催に合意した、核兵器その他の大量破壊兵器のない中東地域の確立に関する会議がついに開催されることこそ決定的に重要である。これについては、NPTの信憑性が問われるばかりでなく、この地域の和平過程と安全保障が中東を核軍備競争の場としないとのすべての締約国による保証を必要としている。
様々な後退にもかかわらず、核軍備撤廃はけっして失われた大義ではない。オスロ=ナヤリット=ウィーン過程が示しているように、良心の目覚めが世界で漸進している。科学、技術、通信、運輸と産業、および人類家族の一体性と相互依存の新たな自覚などに促されて、人類の地球的統合の歩みは速度を増しつつある。人類の平和願望の対極にある核兵器は、地球規模の相互安全保障を達成するべく決意している世界共同体の中においては、その存在する場をもたない。ご清聴に感謝する。
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