なぜ私たちはアメリカの未曾有の核戦力を廃棄せねばならないか
エレイン・スカーリー (米タイム誌)
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| (2014.8.5) |
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このように巨大な殺戮能力はいまだかつて存在したことがなかった。
8月6日は原子爆弾をアメリカが広島に投下した69周年の日にあたる。そして長崎への原爆投下は3日後の8月9日に発生した。この出来事を反省する適切な方法の一つはアメリカの現在の核戦力に思いをいたし、なぜそれがいまなお維持されているのかと尋ねることではなかろうか。
アメリカはこの地球上で最も強力な抜群の核軍備を保有している。アメリカのオハイオ級潜水艦14隻が搭載している核兵器は全体で広島原爆の少なくとも5万6000発に相当する爆発力をもっている。これらの軍艦は冷戦の遺物などではない。そのうちの8隻はベルリンの壁の撤去のあと、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領とビル・クリントン大統領の任期中に造られた。
新しいオハイオ級潜水艦12隻が現在、設計・建造段階にある。その第1号は2021年、最終号は2035年に完成の予定である。そのほかにも、ジョージ・W・ブッシュ大統領が開始し、バラク・オバマ大統領が引き継いだ、次世代の大陸間弾道ミサイルおよび次世代の重爆撃機と地上配備・空中配備運搬システムの製造が進行中である。
アメリカの核兵器計画者たちは危機の発生を待つことなく標的を選定している。いま現在、数千の指定された標的が存在しており、その多くはアメリカとなんら喧嘩をしていない住民の生活している都市である。個々の標的都市には特定のミサイルがすでに宛てがわれている。
アメリカ市民は、ひとたび核ミサイルが発射されたならば、それを停止させることができない。我々は、それら核ミサイルによって人間と動物、植物そして地球、さらに天空そのものに障害・損害が加えられた場合、それらの損傷を元に戻すことができない。いま直ちに行動を起すことによってのみ、それらの核兵器が発射される前に、危険がまだ彼方にあると思われるうちに行動することによってのみ、ミサイルを停止させ、かつ被害をキャンセルすることができる。
メリーランド大学国際・安全保障研究センターの行った世論調査によると、アメリカ市民の73%が核兵器の完全廃棄を望んでいる。無署名の世論調査は勇気を必要とせず、何らの直接的な力も及ぼさない。市民の声を届かせるには、彼らが自らの声で語り、自らの氏名を書き込み、それによって自らの反対を記録に止めることが求められる。
我々には核兵器への反対を表明するための方法を選択する自由がある。我々には危険の度合いを決める自由がなく、反対が失敗したら何が起きるかを決める自由もない。
以下に示す4つの要素はこの夏から秋にかけて我々の核兵器反対を公に記録することを緊急な要件としている。
1.現在のところ、我々はけっして2度と持たないであろうものを持っている。それは、プラハ演説のなかで、核兵器が廃棄されねばならないと公式な記録に残る形で語ったアメリカ大統領である。さらに、彼は、アメリカがこれまで核兵器を使用したことのある唯一の国であるがゆえに、我々としては核兵器を廃棄する運動の先頭に立つことを道徳的に義務づけられている、と認めていた。これまでのところ、オバマ大統領はまだ行動していない。しかし、もしアメリカの市民がみずからの意思を明瞭に示すならば、彼は行動するかもしれない。
2.核不拡散条約は明年春、国連で開かれる5年ごとの次回再検討会議にかけられる。この条約の第6条は核兵器国がそれぞれの持つ核兵器を放棄することを定めている。この条約に署名した国の多くは第6条の進捗の欠如について失望と嫌悪を表明してきた。もし2015年4月までに、核兵器国が条約成立後45年を経てもなお、ほとんどまったく前進していないならば、これまで核兵器の獲得を控えてきた国々は、核兵器なき世界は不可能であると確信するに至るかもしれない。核不拡散の夢は消えるであろう。
3.我々は現在、サマンサ・パワーという名の国連大使を持っている。パワー大使は、アルメニア、ルワンダ、その他の国の人民の大虐殺に対する道徳的な嫌悪について、広く論評を書いてきた。大使は、そうした大虐殺を阻止する行動をしなかったとして、アメリカを批判してきた。アメリカ市民は、疑いなく、自国の核軍備がもっとも廃棄の必要な大虐殺むけ用具であることを大使に納得させることができるはずである。
4.アメリカ合衆国憲法は連邦議会に対して(必要条件としての宣戦布告を通じて)、および市民に対して(修正第2条を通じて)アメリカの戦争行為を監督する責任を付与している。この責任に背を向ける市民は子ども扱いされ、置き去りにされて、すべての統治行為から分離される。いかなる人も憲法が我々に与えるわが国の防衛に関する権限を我々から奪い去ることはできない。しかし、我々がその権限にもとづいて行動しなければ、それは過去のものとなる。
この責任を果たす方法については、我々の大多数があまりに高価に過ぎると考えそうなものが様々にある。現在、84歳の看護師ミーガン・ライスはテネシー州オークリッジにおいて核施設の防護柵の金網を切って侵入した罪で3年の刑に服している。彼女と二人の同志は、真夜中に出発し、数時間かけて荒野を横断して防護柵にたどりつき、その金網を切断して施設に入り込んだのであった。彼らは投獄判決のリスクをおかしたばかりでない。彼らは自らの生命の危険のリスクをもおかしていた。
アメリカ核戦力はどこにでもあるすべての創造物から自衛の権利を奪い去っている。このような広範な大量虐殺の仕組みはこれまで地球上に存在したことがなかった。こうした仕組みはすべて元に戻されねばならない。これらの仕組みは我々一人一人が前に進み出て、強調しない限り、元に戻されることはないであろう。
訳注:この論評の筆者、原題、掲載誌は次の通りである。Elaine Scarry, “Why We Must Disarm the U.S.’s Unprecedented Nuclear Arsenal,” TIME, August 5, 2014
原注:筆者エレイン・スカーリーは現在、ハーバード大学で教鞭をとっている。著作として『熱核君主制:民主主義と破滅のいずれを選択するか』(原題:Thermonuclear Monarchy: Choosing Between Democracy and Doom)がある。 |
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