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ノルウェー外相、核軍備撤廃の「原則と勧告」を発表
(2008年2月27日)

 「核軍備撤廃国際会議──核兵器なき世界のビジョンの実現をめざして」が2月26、27日の両日、オスロで開かれた。主催はノルウェー外務省で、ストゥーレ外相が終始、指導的な役割を果たした。
 アメリカのスタンフォード大学フーバー研究所を代表してシュルツ元国務長官が、また「核兵器脅威削減イニシアティブ」を代表してジョージア州のナン元上院議員がこれに出席し、協力した。注1)
 アメリカやロシアなどすべての核兵器国──ただし北朝鮮を除く――のほか、軍事同盟加入の諸国および非同盟の諸国の双方からおよそ100人の政治家,外交官、専門家などが参加した。注2)、 注3)
 国際連合関係では、国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長とブリクス元事務局長、ダナパラ元国連事務次長、ドゥアルテ軍縮担当上級代表の4氏が出席している。
 ストゥーレ外相は、会議の終了にあたり、主宰者として個人の資格で「討論のまとめおよび予備的な勧告」を発表した。以下は、そのうちの「5つの原則」および「勧告」10項目の抄訳である。

* * *
 私は、ウォールストリート・ジャーナル紙の2つの論評[2007年1月4日付、2008年1月15日付]で提示された見解を全面的に支持するとともに、地球規模の核軍備撤廃努力の進展にかんし以下の5つの原則を提起したい。

5つの原則

第1の原則:

核兵器なき世界のビジョンを実現するためには、最高レベルにおけるリーダーシップおよび一般国民をはじめ主たる利害関係者への誠意ある働きかけが求められる。

第2の原則:

核軍備撤廃を真面目に追求するには、われわれは、いま、このビジョンを高く掲げ、その実現に向けて動きを加速するため、具体的措置にとりかかることが求められている。

第3の原則:

基本的に、核兵器なき世界の達成は、核兵器国と非核兵器国双方からなるすべての国ぐにの共同事業でなければならない。

第4の原則:

直面する広範な課題に対処するにあたり、われわれは効果的な多国間主義の無差別原理にたいし忠実であるべきである。

第5の原則:

核兵器国と非核兵器国双方の透明性がわれわれの地球規模の努力の核心にあらねばならない。

 この5つの原則から次のような結論が導かれる。なお、以下の結論10項目は、まる2日間にわたる議論と協議から得た私個人の見解である。今後、こうした見解をさらに磨き上げていくにあたり、出席者のみなさんからご意見を寄せていただければ幸いである。付言すれば、ここでの結論はコンセンサスにもとづく勧告ではない。

10項目の結論

1.

すべての国ぐにの国家レベルの指導者は、核兵器なき世界というビジョンの実現について、それを自分自身の事業として取り組むと同時に、自国の優先課題と位置づけるべきである。各国の指導者は、それぞれの国の利害関係者とりわけ一般国民を早い段階でこの事業に参加させるよう努めるべきである。さらに、核軍備撤廃は、学際的な事業となるのであって、各国の指導者としては科学、外交、政治、法律、軍事などを含むすべての関連分野の専門家の参加を得るよう努めるべきである。

2.

アメリカ合衆国とロシア連邦は、核兵器の数量が何万、何千ではなく何百の水準になるよう、自国の核軍備の規模を実質的に削減することが要請される。この核兵器削減措置は、検証を組み込んだ、法的な拘束力をもつ条約にもとづいて実行されるべきである。また、中国、ついでその他の核兵器保有国についても、核安全保障への協調的な接近方法の開発のための戦略対話にそれら諸国を参加させることが重要である。

3.

核軍備をさらに低い水準にまで削減する道を切り開くために、核軍備の縮小・撤廃の検証に必要な技術の開発にかんし、非核兵器国は核兵器国と協力すべきである。核兵器国は、核兵器の数量の削減によって与えられる機会を利用して、この技術の実態を明示すべきである。

4.

すべての核兵器国は、核兵器廃棄にむけての貢献の1つとして、核兵器への依存を逆進させることが要請される。核兵器国は、このほか、核兵器使用を考慮する状況に立ち至った場合の決定に要する時間枠を拡大するため核兵器の作戦上の地位を変更すること、および、戦略的安定を増進させるその他の手段を講じること、が要請される。

5.

包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効は新たな核軍備競争を防止するため決定的に重要である。同条約発効までの間、現行の核実験一時停止は強化されるべきである。これまで核実験を行ったことのある各国は、核実験を再開する最初の国とはならないことを誓約すべきである。加えて、CTBTの国際監視体制への資金供与は継続されねばならない。

6.

核分裂性物質カットオフ条約(FMCT)は、核軍備の縮小撤廃を進め、核兵器の拡散を防止するため、不可欠である。FMCT交渉を開始することに加えて、国際社会は、FMCTの対象とならないかもしれない物質をふくめて、すべての核物質の保全と透明性を増進するため、自発的な「核分裂性物質規制イニシアティブ」の創設を検討すべきである。このイニシアティブは、各国の民生用核施設について、現行よりもさらに包括的な保障措置の受け入れを含意すべきである。

7.

核兵器全面廃棄は強力で信頼性のある不拡散体制を要する。国際原子力機関(IAEA)との包括的保障措置協定および追加議定書を締結していないすべての国は、それらの約定を締結すべきである。これらの諸国は、加えて、核物質の安全および保全を増進するために、関連するすべての多国間法律文書を調印・批准・履行すべきである。

8.

おそるべき核テロリズムの予防の一環として、すべての核兵器国は、認可されていない者への核兵器の漏出を確実に防止するため、必要なすべての措置を講じることを強く要請される。

9.

われわれは、IAEAとの緊密な協力の下、核燃料供給の無差別的な体制の創造をめざすべきである。この点について、消費者側が自らの需要を説明する機会をもち、また供給者側もしかるべき制度やインセンティブを整備する機会をもつために、生産者と消費者の間の真剣かつ持続的な対話が必要となる。

10.

われわれは、核兵器禁止のための核心的な必要条件に関して政府に勧告するため、気候変動に関する政府間パネルに類する、広い基盤の上に立ったハイ・レベルの「核軍備撤廃に関する政府間パネル」の開設を検討すべきである。 


注1)

ストゥーレ外相は、会議の終了に先立って行った締めくくりのスピーチのなかで、ノルウェー外務省のほか、ノルウェー放射線防護庁、スタンフォード大学フーバー研究所と核兵器脅威削減イニシアティブを共催団体と呼んでいる。

注2)

ノルウェーは2005年に「7カ国イニシアティブ」と称する核軍備の縮小撤廃と不拡散をめざす新連合体を結成した。今回の会議にあたり、以下の同連合6カ国と協議している。インドネシア、英国、オーストラリア、チリ、南アフリカ、ルーマニア。

注3)

日本からは外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部の中根猛部長(大使)ほか1人が出席した。