HOME >> 核兵器をめぐる情報
 
 
米国次期大統領が核兵器全面禁止に向けて最初に取るべき10の措置
  ──米民間3団体が提案

 アメリカ支配層のあいだからキッシンジャー氏ほかの共同論評など核兵器廃棄の提言が相次ぐなか、アメリカの民間団体からも2月中旬、次期大統領にたいし核兵器禁止に関する提案が行なわれた。
 「真の安全保障に向けて」(Toward True Security)と題する共同論文を発表したのは米国科学者連合(FAS)、天然資源防衛協議会(NRDC)、憂慮する科学者連盟(UCS)の3団体。
 この論文は、明年1月に就任する新大統領が最終目標として核兵器全面禁止を再確認し、この目標の実現に向けてアメリカ1国で取りうる一連の具体的措置を直ちに実行するよう提言した。
 以下は、全文A4版35ページのうち、「最初の措置10項目」と「将来展望」の部分の抄訳。全文はUCSのサイトに掲載されている(www.ucsusa.org)。
* * *
 最も好ましい環境のもとにおいても、核兵器の地球的規模の禁止のための国際的コンセンサスと機構的枠組みの構築には数十年を要するであろう。また、検証技術の制約とそれに相応する政治的信頼の欠如のもとでは、少なくとも当初の間、核軍備の規模をきわめて低い水準に設定することに比べて、すべての核兵器を禁止することは困難であろう。にもかかわらず、核兵器禁止を目標として確定し、この目標を追求することこそ、より多くの国ぐにさらにはテロリストによる核兵器取得の防止に不可欠である。アメリカは、この目標に向けて前進する必要条件を作り出すため努力することによって、国家と国際の安全保障にたいし決定的に重要な貢献をすることができる。
 最初の必須の措置は、アメリカの核兵器の唯一の目的が他の国による核兵器の使用を抑止すること、および、やむをえない場合、最後の手段として他の国による核兵器の使用にたいし対応することにあると宣言することである。こうした新しい核政策は、核兵器禁止が実現されるか否か、実現されるとすれば何時かなどにかかわりなく、アメリカの国家安全保障を直接的に増進し、また核不拡散を促進するであろう。
 アメリカは、また、1国的措置により自国の核軍備を全体で核弾頭1000基以下にまで削減すべきであろう。今後10年ないしそれ以上の期間にわたり、数百基を超える残存可能な核弾頭の維持を正当化するようなもっともらしい脅威は存在しないし、アメリカの核戦力規模を他の諸国のそれとリンクさせる軍事的な理由も存在しない。
 さらに、アメリカが数時間以内に、まして数分以内に核兵器を発射する能力を保持する必要があるほどのもっともらしい脅威もない。アメリカは、核兵器発射に要する時間を延長することにより、ロシア側における自国核抑止力の潜在的脆弱性についての不安を和らげるであろう。そうなれば、ロシアとしては、自国の核軍備についてより安全な基本姿勢を採るインセンティブをもつことになり、それにともなって事故による、許可を受けない、あるいは誤謬によるロシアの攻撃の可能性を多いに減殺することになるであろう。
 具体的にいえば、次期大統領は、アメリカの核兵器政策を今日の政治的および戦略的な現実と整合させるため、10項目の1国的措置を取るべきである。

1.

アメリカの核兵器の唯一の目的が他の国による核兵器使用を抑止することにあり、また、必要が生じた場合、そのような他の国による核兵器使用に対応することにある、と宣言する。

2.

核兵器発射を数分でなく数日以内に実行できるように配備の実態を変更することにより、急速発射オプションを排除する。

3.

あらかじめ事前に設定された標的攻撃計画を廃止する。もしアメリカとその軍隊、あるいはアメリカの同盟国にたいし核兵器が使用された場合、その状況に適合した反応をただちに発現できる軍事能力によりそれらの計画を代置する。

4.

配備中の弾頭と予備の弾頭を含めて核弾頭を合計1000基以下にまで直ちに、1国的に削減する。アメリカは、この水準を上回るすべての弾頭を軍事的必要からみて余剰であると宣言し、それらの弾頭を貯蔵施設に移動させ、国際社会にとって透明な方途によりそれら弾頭の解体を開始し、および国際的保障措置の下でそれら1000基の弾頭の維持に要する量を超えるすべてのプルトニウムと高濃縮ウランの処理を開始する。この解体過程の終点をロシアの反応次第であると設定することにより、アメリカはロシアのしかるべき対応を促すであろう。

5.

すでに提案されている高信頼性代替弾頭(RRW)をはじめ新型核兵器の開発および配備のすべての計画を停止する。

6.

アメリカの非戦略核兵器すべてを早急かつ1国的に退役させて、透明な方途により解体する。ロシアにたいし同一の行動をとるよう促す措置を講じる。

7.

2国間または多国間の交渉の妥結および検証を基礎とする核兵器のさらなる数量的削減へのアメリカのコミットメントを公表する。

8.

核兵器実験を再開しないと約束する。上院との協力により包括的核実験禁止条約を批准する。

9.

地上配備ミサイル防衛システムのさらなる配備を停止し、宇宙空間配備ミサイル防衛計画を止める。ロシアまたは中国が自国の残存可能な長距離ミサイル戦力の一定部分を迎撃できると信じる米ミサイル防衛システムの配備は核兵器大幅削減の障害となるであろう。米ミサイル防衛システムは、また、これらの諸国の対応の引き金となりうるのであって、その結果、アメリカ安全保障の純減につながるであろう。

10.

核兵器の普遍的かつ検証可能な禁止が国家と国際双方の安全保障を増進するとの事実を認めて、核軍備撤廃を追求するアメリカのコミットメントを再確認するとともに、この目標に向けて前進するための具体的な計画を提示する。


 将来展望:もしも次期大統領がこれらの措置を実行すれば、アメリカは、国家および国際の安全保障を大幅に増進することになり、あわせて他の諸国の核軍備削減を交渉する場を設定することにもなるであろう。このようにして、アメリカは、これらの諸国とともに、核弾頭1000基をはるかに下回る水準への検証可能な多国間の核兵器削減を取りまとめかつ実行するにあたっての困難な諸課題に取り組むことができるようになり、それによって最終的な世界的規模の核兵器禁止の基礎を固めることができるであろう。