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アメリカ大統領候補の「核」発言を読み解く

 「2008年アメリカ大統領候補の発言」と題する資料がこのほどアメリカの反核平和団体「核時代平和財団」のホームページに掲載された。米大統領選は来年7、8月に民主、共和両党が党大会を開いて最終的に候補を決め、11月に投票となる。同資料は有力候補と目される民主党4人(ヒラリー・クリントン、ジョン・エドワーズ、バラク・オバマ、ビル・リチャードソン)、共和党4人(ルドルフ・ジュリアーニ、ジョン・マケイン、ミット・ロムニー、フレッド・トンプソン)の候補の核兵器問題についての発言を紹介している。
 まず、核超大国アメリカの大統領候補志願者が「核兵器のない世界」について言及したことが注目される。いずれも民主党候補で、たとえばクリントンは「核兵器の使用」について、「あらゆるオプションを排除すべきでないというのが私の意見」としつつ、「しかし、必ずや核兵器だけはオプションから排除するであろう」とものべた。エドワーズは「核軍備撤廃」の項目で、「世界から核兵器をなくす国際的努力の先頭に立つ」大統領になると語った。
 オバマも「核軍備撤廃」の項目のなかで「大統領として、アメリカは核兵器が存在しない世界を探究していく、と発言する」とのべたし、リチャードソンも同様の見解を表明している。
 この資料でみるかぎり、共和党の候補からは、核兵器に関連した具体的政策の提言はない。共和党の場合、基本的にブッシュ政権の方針を継承することになると考えられる。
 アメリカの大統領候補志願者が2大政党の一方のみとはいえ、そろって核兵器問題でこれほどはっきり発言したのは、おそらく今回が初めてであろう。いま大統領候補志願者がこういう発言をすること自体、時代状況のうねるような発展を抜きにしては考えられない。
 この背景には、2001年9月11日の同時多発テロ発生を機に、ならずもの国家やテロ集団への大量破壊兵器の拡散防止を口実にしたブッシュ政権の乱暴な核兵器政策の表明およびそれをふまえて強行されたイラク戦争とその泥沼化=失敗のなかで、こんどの大統領選挙がたたかわれているという事実がある。
 それと同時に、イランや北朝鮮などの核兵器拡散の動きを前にして、核兵器国による核軍備の縮小撤廃なくして核兵器拡散は避けられないのではないかとする危機感が、米支配層のなかに生まれている。ことし1月のキッシンジャー元国務長官らの「4者共同論文」はその典型例である。民主党候補者の2人は「4者共同論文」を引用し、「(4氏の)賢明な中短期的措置を実行する」(クリントン)、「(共同論文は)非常に思慮深い。私はそれに同意する」(エドワーズ)などと述べている。
 しかし、これら大統領候補になろうとする人々の核兵器政策の限界を見落としてはならない。まず何よりも、核兵器の保有を根本的に否定する論者は一人もいない。いずれも世界政策としての核抑止論にもとづく核兵器保有を事実上、肯定している。
 見落とせない2つ目。クリントンに典型的にみられるように、核抑止論の立場から、「オプションとしての核使用はありうる」との立場に立ち、核兵器使用の選択肢を明確に排除できないでいる。他の人々も同様である。
 こんごの選挙戦の展開のなかで、核兵器政策がはたして2008年米大統領選挙の主たる争点の一つになりうるのかどうか。現在のアメリカ社会において、核軍備の縮小撤廃の是非を正面から取り上げて、なおかつ少数集団の候補者でない、メイン・ストリーム(本流)の候補者として、かれら民主・共和2大政党の候補者が全国的な選挙戦をたたかう条件があるのかどうか。この点は決して楽観できない。
 ただし、この資料が集めた大統領候補志願者の発言の多くが、いずれも、ニューヨーク・タイムズ紙やABC-TV局などのマスメディア、また大きな影響力のある外交問題評議会やその機関誌『フォーリン・アフェアズ』などでなされていることは重要である。これらの有力なメディアを通じて、核兵器をめぐる諸問題が広く、深く報道され議論されて、アメリカの国民・有権者の理解と関心を深めることを期待したい。
 その意味でも、日本原水協の代表が先ごろ国連本部を訪れて、非同盟運動や新アジェンダ連合の各国政府代表のほか、国連事務局の主立った人々にすみやかな核兵器廃絶のための努力を要請したことは重要である。広島・長崎を体験した被爆国日本からの訴えは、適切に報道され続けるならば、アメリカの社会に必ずやこれまで以上に大きなインパクトを与えるに違いない。アメリカのメディアがこうした活動にさらに理解ある関心をむけることを望みたい。
(F)