朝鮮半島の非核化と平和体制構築の現状、展望、課題をめぐって論議
非核の政府を求める会核問題調査専門委員会
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| (2021.9.15) |
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| 非核の政府を求める会核問題調査専門委員会の例会が9月15日、韓国・韓神大学統一平和政策研究院上級研究員のイ・ジュンキュさんを講師に迎えてオンラインで開かれ、「朝鮮半島の非核化と平和体制構築の現状、展望、課題――韓国からの視点」をテーマに活発に論議しました。イ・ジュンキュさんの報告(要旨)を次に紹介します。 |
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▼北朝鮮の核武装、核活動の現状
北朝鮮の核兵器、核弾頭数については、米スタンフォード大学のシーグフリード・ヘッカー教授は、約45発と推定しています。「SIPRI」(ストックホルム国際平和研究所)は2021年1月現在、40〜50発持っていると推定しています。前年より10発程度増やしたとみています。
北朝鮮の核活動については、「IAEA」(国際原子力機関)が最近、今年7月から寧辺核施設を再稼働するのではないかというレポートを出して話題になりました。米国民間シンクタンクの「38North」は、寧辺で冷却水や煙が出ている衛星写真を載せて、「再稼働しているのではないか」と分析しています。
北朝鮮は、2006年10月9日以降、6回の核実験をしています。16年の第4回目の核実験を、アナリストたちは水爆実験ではないかとみています。2017年11月29日、北朝鮮はICBM実験で発射成功を確認して、ここで「国家核武力完成」を宣言します。
この「国家核武力完成」宣言後に進んだのが、2018年―2019年の「朝鮮平和局面」でした。17年12月に、文在寅大統領が米ABCテレビのインタビューで、北朝鮮との交渉のためなら韓米合同軍事演習の延期も考えている≠ニいうメッセージを発信しました。そして、北朝鮮が平昌オリンピックに選手団を派遣し、これをきっかけにして、2018年-19年の「平和局面」が開かれたのです。しかしその後、ハノイでの米朝首脳会談が決裂し、「平和局面」は膠着状態に陥っています。
▼「非核・平和プロセス」の膠着
2019年は「平和局面」が膠着局面に変わってしまう時期でした。金正恩は朝鮮労働党全体会議での報告で「正面突破」を掲げ、「自力更生」と「新しい戦略兵器の開発」を強調します。「新しい戦略兵器の開発」とは、潜水艦発射ミサイルのSLBM、戦術核兵器などをさします。北朝鮮の言い分は米国が対北朝鮮敵視政策をし続ければ、半島非核化は永遠にない≠ニいうことです。
2021年の朝鮮労働党大会で金正恩は、まず「自力更生」を、二番目に「核武力の強化」「核技術の高度化」を、三番目に韓国政府の最先端兵器導入と韓米合同軍事演習に対する非難を、四番目に「米国は最大の主敵」とする方針を出しています。
▼バイデン政権の対北朝鮮政策
バイデン政権は今年、対北朝鮮政策を出しました。オバマ政権の「戦略的忍耐」でなく、トランプ政権のトップダウン方式でもない、というものですが、このコンセプトは、私は基本的に段階的アプローチだと思います。
バイデンの政策に対する北朝鮮の反応は、あまりにも冷たいものです。北朝鮮に対する制裁を維持し、圧迫しながら北朝鮮が交渉の場に出ざるをえなくするという姿勢が全然変わっていないからです。もう一つは、抑止にもとづいて強い軍事力を基盤にして北朝鮮を抑止しながら北朝鮮の核問題にアプローチしようとしているからです。北朝鮮に対する敵対視政策を撤回しろと繰り返し主張している北朝鮮からすれば、むしろ攻撃的な政策だと見えても仕方ないものです。
▼「非核・平和プロセス」を再稼働させる制約要因
私は、韓国政府が朝鮮半島の「非核・平和プロセス」を復活させるうえで、いくつか制約があると思っています。一つは、米国との同盟関係で韓国政府が身動きできないことです。北朝鮮への制裁局面が持続していると、韓国政府からすれば南北間の合意事項を実行できない。例えば、北朝鮮と韓国の鉄道を連結する事業も、韓国の技術者たちが事前調査のために列車で北朝鮮に行こうとすると、列車に燃料の油を入れて北朝鮮に入ることが制裁違反になる。もう一つ、米国にとっては韓米同盟、日米同盟を使って中国をどう牽制するかが最優先事項で、北朝鮮の核問題はそんなに優先順位が高くないということです。
制約要因の二番目は、北朝鮮の韓国に対する態度の問題です。北朝鮮は今「アメリカとの直談判」にこだわっています。三番目は、韓国の国内政治です。韓国の文在寅政権の任期はあまり残っていません。こういう時期は、文在寅政権の政策への政治的な発信力が弱まっていきます。2018年当時は、キャンドル市民革命≠ナ誕生した文在寅政権の人気はすごく高かった。文在寅政権はそれを背景に北朝鮮との「平和局面」をプッシュしていくことができたわけですが今の文在寅政権にそういう力があるわけではありません。
こういう中で、状況をどう突破していかについては、正直、答えがわからないのですが、私が考えていることの一つは、朝鮮半島の「戦争構造」を解体する「平和の軸」を稼働することです。「平和の軸」というのは平和協定のための平和会談、それから南北間、米朝間の信頼醸成措置、米朝関係正常化という一連の平和プロセスを稼働することです。もちろん、これを稼働しながら、非核化という交渉を並行してやっていく。これが私たちが取り組まなければならない方向性だと思っています。
▼「戦争構造」解体こそ 私は、「戦争構造」にもとづいた対決が極限的に現れたのが「核対決構図」だと思っているので、やはり「戦争構造」を解体することが大事だと思います。「平和プロセス」を進展させるというのは、この「戦争構造」を解体することを意味すると思っています。
朝鮮半島の核対決の構図というのは、北朝鮮が核開発・核武装をすれば、それに対抗して韓国は軍備増強し、米国は同盟強化という名目で韓国・日本と「核の傘」を含めた拡大抑止強化を進めて対中国・対ロシア牽制政策を進めていく。つまり、朝鮮半島の核対決構図というのは、米国、日本、中国、ロシアが絡まる、国際的な課題だということです。
「平和の軸」を稼働させて朝鮮半島の「非核・平和プロセス」を再稼働させるために、韓国の市民団体が最近、「韓国平和アピール」キャンペーンをやっています。このポイントは、「終戦(宣言)」ではなくて「平和体制への転換」が重要だということです。私は「終戦」宣言という政治的イベントより、「平和体制への転換」、平和協定を結んで停戦状態、休戦状態を平和体制へ転換していくことに集中していかなければならないと思います。
もう一つ、北朝鮮に対する「制裁」は効果があるのか。米国は2018年に開かれた「平和局面」も、北朝鮮を制裁で圧迫することによって、北朝鮮が仕方なく交渉に出たと解釈している。でも本当にそうなのか。南北合意や、北朝鮮との人道的協力事業さえも妨げている「制裁」が本当に妥当かということを考える必要があると思います。
三番目に、この平和プロセスを進展させることが自動的に朝鮮半島の非核化につながるわけではなく、私たちには、北朝鮮が非核化措置に対する決断ができる環境を作ることが求められています。その意味でも核兵器禁止条約の意義は大きいと確信しています。
最後に、「核兵器も核の脅威もない平和の地として朝鮮半島」(2018年9月、平壌での南北首脳会談合意文書)を達成するためには、韓国や日本に対する米国の「核の傘」を扱うための多国間の枠組みも求められていると思います。
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