| 米戦術核兵器が英国から全部撤去された |
| ──英国の反核運動が歓迎を表明── |
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英「核軍縮運動」(CND)はロンドンの北東約110キロにあるレイクンヒース空軍基地に冷戦後も配備されていたアメリカの核爆弾がすべて撤去されたとの報告を大いに歓迎している。
この報告はアメリカの核問題専門家ハンス・クリステンセン氏が6月末、米国科学者連盟ホームページに発表した。1954年以来、英国内に貯蔵されてきた米戦術核兵器はこれで一掃されたことになる。
CNDは地元の「レイクンヒース行動集団」とともに長年、米空軍の核兵器に反対し、その撤去を求めてきた。最後まで残されていた核兵器は推定110個のB61自由落下型爆弾で、1個当たり最大爆発威力は340キロトン。
欧州の北大西洋条約機構諸国のなかで、ギリシャが2001年、米核兵器を撤去させ、2005年にはドイツが同様にラムシュタイン空軍基地から米核兵器を引き上げさせた。
そのほか、ドイツでは残りの米戦術兵器を一掃しようとする動きが与党連合を形成する社民党の一部をふくめ左派の間で強まっている。ベルギー上院は在欧米核兵器の全面撤去を要求している。
アメリカは冷戦期の欧州諸国に最高時、推定7000基の核兵器を配備していたといわれる。その大部分が1990年代末までに撤去された。
2001年初めの時点では480基の米戦術核兵器が欧州に配備されていたが、現在までに150?240基??すべてB61爆弾??に削減されたとクリステンセン氏は書いている。
なお、第1表「在欧米核兵器、2008年」は同氏の報告による。
CNDは、新たな国際状況のもと、米ミサイル防衛システムの一環として迎撃ミサイルを英国基地に配備するとの計画があるほか、英トライデント・ミサイル代替計画もあるだけに、警戒を緩めていない。
──CNDホームページ、クリステンセン報告より
ハドソンCND議長の喜びの声
ケート・ハドソンCND議長は「レイクンヒースから核爆弾が撤去されたというニュースを心から歓迎したい。英国政府の公式な確認があれば、今後の核軍備の縮小・撤廃をおおいに励ますことになる」と語った。
ハドソン議長は、米戦術核兵器の撤去はそれとして歓迎するものの、英国に米ミサイル防衛システムを配備する計画にたいする反対を緩めることはないとのべ、あわせて英国自身の核兵器保有の継続を指摘した。
──この項、6月26日付ロイター電より。
クリステンセン報告のその他のポイント
1.米戦術核兵器撤去の文脈
アメリカがイギリスに核兵器を導入したのは1954年9月であった。以来、半世紀以上にわたり、米軍核兵器が在英基地に配備、貯蔵されていた。
今回の核兵器撤去は公式にはまったく発表されていない。しかし、いくつかのニュースソースから確認された。 今度の措置の結果、欧州NATO諸国に米核兵器を配備しつづける根拠はますます乏しくなり、撤去の要求がさらに強まるのではないか。
核ミサイル搭載B52爆撃機の許可なき米大陸縦断など、米空軍の不祥事が明るみにでたこともこの過程に拍車をかけるものと考えられる。
2.米軍の在外核兵器配備の現状
現在、欧州における米軍核兵器配備は米空軍基地としては2カ所(イタリー・アヴィアノおよびトルコ・インシルリク)。
その他の欧州4カ国のそれぞれの国の空軍基地にも米軍核兵器が配備されている。(ベルギー、ドイツ、オランダ、イタリー)。
これらの基地にある兵器は150?240個のB61核爆弾で、その3分の2がNATO南部方面に配備されている。
3.「核」はすべて?なのか?
なぜアメリカもNATOもこれまでの米軍核兵器撤去を秘匿してきたのか、大きな謎である。「核」はすべて?なのであろうか。
ブッシュ政権は「軍備管理」(arms control)を好まず、核兵器の今後をめぐる国民的な論議を防止したかったのかもしれない。
それにしてもロシアは在欧米戦術核兵器を指摘して、自国の戦術兵器削減に難色を示して来た経緯がある。 独、英両国の基地から核兵器撤去が進む中、米露当局がこの戦術兵器問題で協議し、紛糾したのは不可解である。
この戦術核兵器の削減・撤廃協議が進展していれば、世界における米露両国の核軍備にかかわる評価は大きく改善したのではあるまいか。
4.どちらが戦術核全面廃棄の先手をとるか
問題の核心はNATOが核兵器により保護されるべきか否かでなく、なぜ「戦術」核兵器が欧州にいまなお配備される必要があるのか、である。
日本と韓国も米国の核の傘の下にあるが、アジアには戦術核兵器の配備はないのである。
残りの非戦略(戦術)核兵器を欧州から撤去する利点はそれらを欧州に止めておくコスト、リスク、政治目的よりはるかに重要である。
唯一の問題はどちらが先に動くかである。
──原題:U.S. Nuclear Weapons Withdrawn From the United Kingdom (藤田俊彦)
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