HOME >> 核兵器をめぐる情報━国連・世界の動き
 
 ●国連・世界の動き
 
攻撃型原潜への核トマホーク積載方針を米国防総省再確認
新原昭治(国際問題研究者・核問題調査専門委員)

 年末の米週刊軍事専門誌「インサイド・ザ・ネイビー」は、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦に対し、大統領か国防長官の指示があれば核弾頭付き巡航ミサイル「トマホーク」を実戦使用状態にして積載する方針を、米国防総省が昨年改めて決定したと報じた。
 ロサンゼルス級攻撃型原潜といえば、近年わが国の横須賀、佐世保、ホワイトビーチ(沖縄)に頻繁に寄港している潜水艦が、いずれもこのクラスで、昨年の寄港回数は累計49回に達した。核巡航ミサイル「トマホーク」は、91年の海外からの戦術核大幅引き揚げのさい水上艦艇や原潜から撤去されて、いまは米本国の東西両岸の核弾薬庫(太平洋用関係はワシントン州米海軍バンゴール核弾薬庫)に備蓄中だが、94年の核態勢見直しは「有事」には攻撃型原潜に再積載されると決定した。
 核巡航ミサイルを必要に応じて原潜に積み込むという決定をあらためておこなったのは、クリントン政権末期に海軍部内から出されていた「積載中止」提案を正式に否決し、ブッシュ政権の新核戦略において同核ミサイルに新たな位置づけを与えるためであった。
 「インサイド・ザ・ネイビー」誌の報道は12月8日付だが、同じころ国防総省は、攻撃型原潜の水平式魚雷発射管を使って核巡航ミサイルを撃ち出せるようにする「ポータブル発射管制装置」AN/BSG―1を、レイセオン社に発注したことを公表した。核巡航ミサイル用のポータブル発射管制装置とは、『ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスツ』誌97年11・12月号上のウィリアム・アーキンの指摘によれば、核兵器が撤去されていた潜水艦に、核巡航ミサイルを再積載し次第、ただちにそれを発射できるようにするブラックボックスのことである。
 一昨年はじめの米議会あて核態勢見直し秘密報告はそのすぐ後あらましが暴露されたが、明るみに出された限りでは、同報告は海外への核配備方針にほとんど沈黙している。しかし、核態勢見直しの青写真とされたというシンクタンク全米公共政策研究所の報告書は、「有事」配備態勢下の核巡航ミサイルを、限りなく「常時配備態勢」に近い配備方式に切り替えるよう提起し、その詳細な提言をおこなっていた(新原『「核兵器使用計画」を読み解く』86以下参照)。今回の「インサイド・ザ・ネイビー」誌報道は、核態勢見直し作業の結論の中で謎とされてきた攻撃型原潜の核配備政策が、まぎれもなく従来型政策より強化された態勢を追求しようとしていることを明るみに出していて注目される。
 国防総省はこの新決定について沈黙している。しかし、昨年10月まで国防次官補だったクラウチとのインタビューにもとづいて同誌の記事は書かれている上、海軍省スポークスマンも公式にこの決定を認めた。
 クラウチ前次官の説明は、注目される内容を含んでいる。すなわち、1、核巡航ミサイルは「諸能力のたぐいまれな組み合わせ」であり、2、戦域内で反撃能力を長期にわたり維持しつづけられる、3、非常に秘匿した態様(モード)でそれをおこなえる、などと述べている。とくに2、について、陸上基地への核爆弾配備と比較し、原潜用の核巡航ミサイルには核爆弾の場合のような制約がないと言い切っている。近年、ユーゴ戦争反対の国民世論が沸騰するなかでギリシャからB61核爆弾が撤去されたことや、核爆弾配備中の西ヨーロッパ各国で批判が強まりつつあることを念頭においているのだろう。
 実際、米原潜は、とくに9・11事件以降、寄港の事前発表さえ一方的に省略してわが国港湾に入港している。そのさい核巡航ミサイルを積んでいても、誰にも感づかれない隠密行動である。これに加えて、最近では、与党自民党の首脳、さらに野党の菅直人氏までが「核持ち込ませず」の非核3原則にこだわるなと公然と主張している。国民の総意である非核3原則の「核持ち込ませず」原則を、日米核密約がじゅうりんしていることが大問題なのに、あべこべに密約に沿うう方向で非核3原則を「改めよ」とする主張くらい、被爆国国民の非核の願いを冒涜するものはない。
 日本に頻繁に寄港している攻撃型原潜への核巡航ミサイル積載強化の新方針は、わが国を核出撃基地にする現実的危険を増大させずにはおかない。日本国民にとっては、非核3原則とまったくあいいれないこうした危険がまかり通ることを許すのか、それとも同原則の厳格な順守によりわが国が核使用の拠点とされる動きそのものを阻止するのかが、いま鋭く問われていると思う。