HOME >> 核兵器をめぐる情報━国連・世界の動き
 
 ●国連・世界の動き
 
[資料]アメリカの核戦力―2004年 (全訳)
 『ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスツ』誌
  2004年5・6月号掲載「ニュクリア・ノートブック」。
  作成=ロバート・S・ノリス, ハンス・M・クリステンセン(天然資源保護協会)


 2004年春現在、米国は約7000個の現役核弾頭を保持しており、これには5886個の戦略核弾頭と1120個の非戦略核弾頭〔=戦術核弾頭〕が含まれる。ほかに、およそ3000個の予備核弾頭が保管されており、現行計画では数百個が解体の予定である。  ブッシュ政権は、2001年の核態勢見直し(NPR)を実行し続けている。これには、以前に廃棄指定された核兵器の除去、新弾道ミサイルの開発、新核弾頭の設計、これらを製造するための新生産施設の建設、核指揮統制機構の新鋭化が含まれている。これらのどの作業も、2002年にモスクワで調印された「戦略攻撃兵器削減条約」による禁止もしくは制限の対象にはならない。


 ▼大陸間弾道ミサイル(ICBM)
 ICBMは2003年、進行中のMX/ピースキーパー退役の一部として17基が削減された。2004年はじめ現在、同ミサイル29基が警戒態勢についている。本年は17基が退役し、2005年には16基が退役する予定。〔弾頭をつけていない〕8個の再突入ロケットを積載したMX1基が2003年に試験発射をおこなった。
 MXのサイロについては、START2が破棄を決めていたが、同条約がすでに失効したため核態勢見直しは保持を命じた。米国は標的ロケットとしての宇宙発射用、または再配備用としての再利用にそなえ、保有し続ける予定。退役した50基のMXミサイルのW87弾頭は、2006年まで当面貯蔵される。その時点でこのうちの若干が、ミニットマンICBMのW62弾頭と取り替えられ始める。(W62は2009年に退役予定。)予備弾頭の「対応戦力」(レスポンシブ・フォース)とのバランスをとって、200個のW87弾頭がミニットマン3用に用いられるものと推定される。
 500基のミニットマン3は、昨年来基本的に変化していない。START2の個別誘導複数目標弾頭(MIRV)廃絶は空文化したため、すべてのミニットマン・ミサイルを単弾頭装備に変える以前の計画は修正された。米国は現在、ミニットマンの800個ほどの弾頭の保持を考えている。ミニットマン新鋭化作業は継続中で、6つの部分からなる大がかりな60億ドルの計画のもとに、ミサイルの精密度と信頼性の向上、2020年以降の耐用年数延長がめざされている。空軍は2003年に(弾頭をつけていない再突入ロケット3個をそれぞれ積載した)3基のミニットマン3の飛翔実験をおこなった。
 空軍は2002年に新しい「任務要請一覧表」をまとめ、ミニットマン3の交代を2020年から開始することを求めた。「一覧表」は、核兵器が「米国の安全保障政策においてユニークで不可欠の役割を果たし続ける」であろうとあらためて述べた。空軍は新ミサイルの初期配備に関し、請負業者の入札を求め始めた。

 ▼〔戦略〕潜水艦
 米国は、15隻の原子力推進弾道ミサイル潜水艦(SSBN)上に360基の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を保持している。それは、およそ2740個の弾頭を備えており、全戦略核兵器の約46%に当たる。同型潜水艦の耐用年数は、30年から44年に延長された。最も年を経た同型潜水艦は2029年に退役が計画されており、この年に新型SSBNが導入される予定。クリントン政権は1994年のNPRで14隻からなるSSBN戦力を最終目標と決めた。
 3隻の古いSSBNの非核作戦行動への改造(4隻目は来年改造開始が予定されている)は、「報告責任のある」432個のW76弾頭が作戦状態から外された。それは、ブッシュ政権が「戦略攻撃兵器削減条約」による削減の第1局面で「作戦配備中」の弾頭の「カット」を約束したものの半数近くに相当する。
 2003年10月、海軍は10年以上をかけて開発中であった新しいSLBM目標追跡システム(SRS)の配備を開始した。海軍の予算文書によれば、SRSは、「核態勢見直しが求めた、[米]攻撃戦力発射装置の柔軟性と能力の増強を実行に移す」ために設計された。新システムにより、SSBNは、ミサイルの新目標追跡を、迅速で正確に、しかも信頼性をもっておこなうこと、またより多くの目標についての情報処理をよりよくおこなうこと、さらに単一統合作戦計画(SIOP〔核戦争計画〕)全般の情報処理時間を短縮すること、適応性の高い計画化作業の支援をおこなうこと等ができる。こうした改良はあるが、MK4A再突入ロケットを開発したり、現存するMk6誘導システムを新しい航法や放射性耐用力強化技術によって改良する作業もすでに進行中である。(以前の1億9000万ドルの契約につづき)2003年12月の1億400万ドルの契約により、作業は2006年9月までに完成の予定である。
 ペンタゴンによると、海軍はまた、「効率強化再突入体」を開発中で、これは「SLBM弾頭をGPS並みの正確さで突入させるための当面の能力」をつくりだすためのものである。これにより、トライデント・ミサイルが脅す潜在標的が拡大されるだろう。核弾頭と通常弾頭の両方が検討されている。核弾頭の選択肢は、Mk5/W88とMk4/W76の双方の核弾頭にとって代わる核弾頭開発の能力を維持している海軍の「SLBM弾頭防護計画」の中で検討中である。
 海軍は、トライデント2用のD5の調達を継続している(5基は2005年度予算で請求されている)。これまでに408基を調達した。D5の生産は、2013年まで延長された。製造予定の合計数は390基から540基にふえ、そのための費用の増額分は122億ドルに達する。この計画の総費用はいまや375億ドルで、1基当たり6900万ドルである。D5を2042年(オハイオ級SSBNの耐用年数の終わりの年)まで現役にしておくため、現存するミサイルは新しいバージョンのD5LEに格上げされる。2003年にD5新鋭化のため、4億1600万ドルが予算化された。540基のD5のうち、336基が飛翔実験に利用できるバランスを保って、14隻のSSBNに積載される。(これには、いつでもオーバーホールに回せる2隻のSSBNからなる2セットを含む。)
 海軍は、「太平洋ミサイル発射演習場」が活動再開を予定されている2005年に、太平洋地域でSLBMの飛翔実験の再開を計画している。太平洋地域での最後のSLBM実験発射は、1993年7月におこなわれた。


 ▼〔戦略〕爆撃機
 米国は、核任務のための長距離爆撃機を2種類持っている。B2AスピリットとB52Hストラトフォートレスである。どちらも毎日の警戒態勢はとっていない。どちらも通常任務も持っている。B52は巡航ミサイルと爆弾を積載できるし、双方の組み合わせも可能である。B2は、爆弾しか積載できない。
 2003年にB2の「Block 30」改良計画が完了した。同機が、B61核爆弾、B83核爆弾ならびに諸種の通常兵器を混載できるようにするためのもの。2003年12月、ミズーリ州ホワイトマン空軍基地で「核保証査察」(Nuclear Surety Inspection)* がおこなわれた。B2は、目標に向かって飛行中に乗員が任務と攻撃標的の変更をおこなえるようにする改良作業が予定されている。
  *〔訳注〕「核保証査察」とは人員、資材、手続きが関連する核兵器の安全性や信頼性について、 また核兵器事故や権限から逸脱した爆発の危険を防止する措置は万全かなどについて、軍上層部が査察をおこなうもの。
 新型〔空中発射〕巡航ミサイル(ACM)と空中発射巡航ミサイル(ALCM)は、目下、耐用年数を2030年まで延長する計画を実施中。空軍は、新型〔空中発射〕巡航ミサイルを、「空軍戦闘司令部」と「戦略軍」の単一統合作戦計画(SIOP〔核戦争計画〕)上の責任にとって「きわめて重要な兵器」と呼んでいる。新型〔空中発射〕巡航ミサイルの維持のため、2003年中に1000万ドルに近い5つの契約が、ボーイング社とレイセオン社に対してなされた。空軍は次期巡航ミサイルの選択肢を検討中である。

 ▼非戦略核兵器〔=戦術核兵器〕
 米国はほぼ1120発の非戦略核兵器を保持している。3つのバージョンからなるB61爆弾が800発と、トマホーク〔海洋発射〕陸上攻撃用巡航ミサイルが320発で、この一部は予備貯蔵または非現役貯蔵状態にある。2001年の核態勢見直しは、非戦略核兵器について書かなかった。
 800発の現役のB61非戦略核爆弾は、米国ならびにNATOのさまざまの航空機からの投下用である。同爆弾の大部分は、ニューメキシコ州のカートランド空軍基地とネバダ州のネリス空軍基地に貯蔵されている。少数がノースカロライナ州シーモア・ジョンソン空軍基地の第4戦闘飛行団、ニューメキシコ州キャノン空軍基地の第27戦闘飛行団に配備されている。
 米軍の同爆弾投下用航空機には、F16C/Dファイティング・ファルコン、F15Eストライク・イーグルが含まれる。現在の空軍の計画では、F35三軍合同攻撃戦闘機(JSF)の一部は2012年から核能力を持つことになる。JSFは今年、最初の核任務必要条件計画を完成させる予定。
 (SSBN以外で)前進配備中の唯一の米核兵器は、NATOのヨーロッパ6カ国の9飛行場に配備された約150発のB61核爆弾である。NATOの航空機で核任務を持たされているものの中には、米国が供与したF16機やドイツ、イタリアのトーネードー爆撃機が含まれている。航空機の格納庫内部の「兵器貯蔵安全システム」地下貯蔵庫に1発またはそれ以上の核爆弾が保持されている。核爆弾は、およそ長さ14フィート(4.3メートル)、幅6フィート(1.8メートル)、高さ8フィート(2.4メートル)の鉄の枠組みに固定されており、床の下の地下貯蔵庫にレールにそって降りる。初めは、1980年代と1990年代に7カ国の13航空基地で208の地下貯蔵庫が建設された(1990年代に核爆弾の多くが米国に戻り、若干のNATO基地での核任務は終了した)。地下貯蔵庫は2003年に格上げ工事がおこなわれた。数年にわたる計画ですべての核爆弾には、改良型の安全装置がつけられた。
 〔核兵器の〕前進配備は、ひきつづき米ロ関係を悪化させている。ロシアのユーリ・バルエフスキ少将は2003年暮れ、「これらの核兵器は、理論的にはわが軍の指揮センターや戦略核センターに対して使えるものであるから、ヨーロッパに配備されたアメリカの戦術核兵器はロシアにとっては戦略的性質を帯びた核兵器にほかならない」と述べた。NATOは、これらの兵器は、戦争防止と緊密な米欧関係維持のために絶対必要だと主張している。
 「インサイド・ザ・ネイビー」紙によれば、ペンタゴンは、2003年暮れ、世界中どこにでも秘密裏に配備できる能力のため、トマホーク〔海洋発射核巡航ミサイル〕を保持しつづけると決定した〔訳注。「しんぶん赤旗」2003年12月30日付で報道〕。核弾頭つき陸上攻撃用巡航ミサイル TLAM/N は、選抜されたロスアンゼルス級、改良ロスアンゼルス級、バージニア級攻撃型潜水艦への配備が指定されている。同巡航ミサイルとそのためのW80−0核弾頭は、2040年ごろまで耐用年数を延長するための改良作業が予想される。推定320発のTMAM/N は、ワシントン州バンゴールとジョージア州キングズ・ベイの「戦略兵器施設」に、SSBN用の戦略兵器とともに現在貯蔵されている。
 冷戦中はほとんどの米国の攻撃型潜水艦(SSN)は、若干の核任務を与えられていたが、今日は大部分の攻撃型潜水艦は核任務を持っていない。たとえば、太平洋艦隊においては、攻撃型潜水艦の半数以下が、定期的に核の認証 (nuclear certification) を受けている。しかし、もし命令が下されれば、トマホークは30日以内に再配備が可能である。われわれの推定によれば、12隻以内の攻撃型潜水艦が核能力を持っている。
 海軍は時折、弾頭をつけないトマホークの発射実験をおこなっており、1978年以降、82回おこなった。知られている範囲で攻撃型潜水艦による最新のトマホーク発射実験は、2002年3月12日のブレマートンによるものであった。


 ▼核弾頭
 当初の設計時の寿命を越えて核兵器の信頼性を確保するために、「永続的」貯蔵のもとにおかれている核弾頭のほとんどが、今後10年間に耐用年数延長計画の対象になる予定である。この計画の最初のものは、W87のために1999年に開始され、2001年に完了した。
 B61−7/11、W76、W78、W80、B83、W88の弾頭も耐用年数延長計画を受けることになっている。若干の耐用年数延長計画は、実質を伴うもので、弾頭の修正名称も変わる。これにより、W76はW76−1になり、W80−0とW80−1はW80−2とW80−3にそれぞれ変わる。W80−2とB61−7/11の最初に生産される構成部分は、2006年に引き渡しが予定されており、W76−1は2007〜2008年に、W80−3は2008年ごろに予定されている。B61−7/11計画には、セカンダリーの改良も含まれる。
 エネルギー省の兵器研究所は、議会が低威力核兵器の調査・開発を禁止した1994年の決議を破棄したあと、2003年に強力核地下貫通弾の研究を開始した。この研究は、2006年までに完成を予定されている。
 海軍は、W88の戦備用弾頭のほとんどすべてをSSBNに配備しているので、2003年には「貯蔵評価計画」での評価には、1基のW88サーベイランス・ピットだけが利用できた。小規模生産はロスアラモスで復旧され、2003年に最初の認証可能なピットが生産された。2004年には少なくとも5基のピットの生産が予定されている。2007年には、1基(またはそれ以上)が戦備用貯蔵に参加する予定である。ロスアラモスの目標は、2007年までに10基のW88ピットの生産を、2010年までにW87ピットの生産を可能にすることにある。
 年間250〜900ピットを生産する能力を持つ予定の新しい新型ピット施設(場所は未決定)の生産は、2018年に開始される予定である。B61−7とW87ピットが最初につくられる予定。
 核態勢見直しの中心的勧告は、核兵器の作動状況をシミュレートする最新の能力の開発にあった。ローレンス・リバモア国立研究所で何億ドルものドルを投じて建設中の国立点火施設 National Ignition Facility は今年、核貯蔵管理実験を始める予定である。「新型シミュレーション・コンピューティング・プロジェクト」は、2008年には貯蔵中の核兵器に関する初めての高度の信頼性を持つ、フル・システムの物理学的特性記述ができるようになろう。


 ▼核指揮統制機構
 戦略軍は、「戦略戦争計画化システム」の新鋭化をおこなっている。これは、単一統合作戦計画(SIOP〔核戦争計画〕)やその他の核攻撃計画を準備し改定するために使われる単一のコンピューター・システムである。2003年に終了した10年がかりの同システムの改良で、計画化作業に要する時間は18ヵ月から6ヵ月に短縮さっれ、〔核〕戦争計画担当者が選択肢を用意するのに、たった24時間あればできるようになった。しかし、核態勢見直しは、新しい目標を設定しており、契約請負業者であるロッキード・マーティン社によると、SWAPS−Mと名づけられた新しいプロジェクトは、「政府の戦争計画担当者が、戦略戦争計画を開発し執行するための処理時間を劇的に短縮できるようにする」ことが意図されており、「同システムは与えられた条件を評価して、[ペンタゴンの]決定権者に行動方針案を提起することになる」。