HOME >> 核兵器をめぐる情報━国連・世界の動き
 
 ●国連・世界の動き
 
米大統領選 民主党政策要綱を読む
2008/8/28  非核の政府を求める会核問題調査専門委員会

 非核の政府を求める会核問題調査専門委員会の例会が8月28日、開かれ、国際問題研究者・新原昭治氏の報告「米国の“核の傘”と日本の軍事的関係」(報告要旨別掲)に続いて、前長崎総合科学大学教授の藤田俊彦氏が、「2008年版アメリカ民主党政策要綱と核兵器のない世界」について報告しました。
 藤田氏は冒頭、アメリカ2大政党の政策要綱は、4年ごとの大統領選挙に先立って、それぞれの党大会において採択される文書で、一般的な「綱領」(プログラム)とは性格を異にすると説明。
 「アメリカ社会の展望を一新する」と題する今年の民主党政策要綱は、前文と4章からなり、第1章から第4章まですべて「一新する」章立て。第2章「アメリカのリーダーシップを一新する」の第3項目の3つめに「核兵器のない世界」があげられています。
 ただし、こうした政綱については、「いかなる意味においても候補者を拘束せず、また通常の場合、大会会場の天井へと上がっていく風船と同様に、だれもそれを気にかけない」(ニューヨーク・タイムズ紙)との論評もあります。
 藤田氏は、民主党政綱のなかの「核兵器のない世界」の内容を翻訳・紹介し、次のように論評しました。
 ▽「核兵器のない世界」をめざす政策案の画期的重要さ。とくに「われわれは世界的規模で核兵器を廃棄するという目標をアメリカの核兵器政策の中心的要素の一つとする」との提言は注目される。
 ▽「アメリカは、核兵器への依存を低減しつつあり、かつ、すべての核兵器を究極的に廃棄する世界においてこそ、より安全になる」との米国民への訴えも注意を要する。
 ▽同時に、「われわれは核兵器が存在するかぎり強固で信頼できる抑止力を維持する」との前提があることも見過ごせない重要なポイント。
 ▽核兵器の廃絶との関連でCTBT、カットオフ、安全管理など諸政策を打ち出した点も、ブッシュ政権との際立つ相違点。
 ▽米露2国間の交渉のほか、安保理常任理事国(=核保有国)およびその他の主要国のサミットの開催など、核兵器廃絶に接近するプロセスについて重要な具体策を提案。
 ▽シュルツなどの4者共同論文に明示的に言及し、論文のインパクトは明らか。4執筆者のうちペリー、ナン両氏はオバマ民主党陣営の顧問、参謀に。
 ▽しかし、核時代の原罪としての米の核兵器開発と対日核兵器使用、および核抑止戦略の継続とその世界的悪影響についてまったく無反省。核兵器廃絶の必要の根拠には、▽新たな核兵器国の出現の動き▽既存の核兵器国からの核兵器・核物質の流出の恐れ▽テロ分子の核兵器取得の危険をあげている。
 藤田氏は、いずれにしても米国2大政党の大統領候補者が公式に究極的な核兵器廃絶の必要性を明言したことは画期的であり、その重要性に留意すべきと指摘しました。
 最後に藤田氏は、2008年選挙と核兵器のない世界の政策的展望の関連について、国内的にも国際的にも課題が山積する中、核兵器廃絶にどれだけ踏み込めるか、選挙戦のなかで「核兵器のない世界」関連の政策がどのように扱われるか、などが注目されると発言。日本の政府や政党、非政府組織は真に核兵器のない世界の早急な実現のため、アメリカの政府、政党、草の根の運動にしかるべく訴えを強めることが求められていると語りました。

米民主党、核兵器のない世界の追求を公約 2008年選挙政策要綱

 アメリカ民主党は8月25〜28日、コロラド州デンバーで開催された党大会でオバマ=バイデン正副大統領候補を指名し、また2008年選挙用の内外政策全般にわたる政策要綱を採択、発表した。
 「アメリカの約束を一新する」と題したこの要綱は4章からなり、その第2章「アメリカのリーダーシップを一新する」の第3項「大量破壊兵器の拡散および使用の防止」には究極的な核兵器廃絶の公約が盛り込まれている。
 「大量破壊兵器の拡散および使用の防止」項目の構成はつぎの通り。
1.核兵器のない世界
2.核兵器および核兵器用物質の確保
3.核分裂性物質の生産の終了
4.冷戦期核戦力態勢の終結
5.イランの核兵器取得の防止
6.北朝鮮の非核化
7.生物兵器と化学兵器
8.サイバー安全保障の強化
 このうち核兵器関連部分1〜6を全訳で紹介する。

大量破壊兵器の拡散および使用の防止
 われわれは核兵器、生物兵器による攻撃、およびサイバー戦争の脅威という潜在的に破滅的な3つの脅威から生じるリスクの大幅な削減を早急に追求するであろう。テロリズムの時代において、これらの兵器の危険は新たな特徴を帯びている。核兵器攻撃、生物兵器攻撃およびサイバー攻撃はいずれもわが国の国民、経済および暮らしに対して大規模な損害と破壊をもたらす恐れがある。こうした被害を加える能力はいまや諸外国のみならず潜在的にテロリスト諸集団へと広がりつつある。
核兵器のない世界
 アメリカは、核兵器のない世界を追求し、その方向に進むため具体的に行動するであろう。われわれは、これまで以上に多くの国ぐにが核兵器を追求するなかで、また核兵器用物質があまりに多くの箇所でしっかり保管されていない状況のもとで、テロリストらが核兵器または核兵器用物質を取得する脅威の強まりに直面している。シュルツ、ぺリー、キッシンジャー、およびナンの4氏が警告したように、現行の措置はこれらの危険に対処するには十分ではない。われわれは核兵器が存在するかぎり強固で信頼できる抑止力を維持するであろう。しかし、アメリカは、核兵器への依存を低減させ、かつ、核兵器を究極的にすべて廃棄する世界においてこそ、より安全になるであろう。われわれは世界的規模で核兵器を廃棄するという目標をアメリカの核兵器政策の中心的要素の1つとするであろう。
核兵器および核兵器用物質の確保
 われわれは、アメリカと世界にたいする危険を大幅に軽減するため、核兵器を確保し、廃棄し、またその拡散を防止するべく、諸外国と協力するであろう。現在、40ヵ国に核兵器用物質があるが、われわれは、脆弱な箇所にあるすべての核兵器用物質を4年以内に確実に保全するため、諸外国との協力のもと地球規模の努力を主導するであろう。われわれは核兵器の安全を強化するため諸外国と協力するであろう。われわれは、これらの措置の多くを地球規模で実施に移すことに関して合意するため、国連安全保障理事会の常任理事国およびその他の主要国の指導者のサミットを2009年中に(およびその後も定期的に)開催するであろう。
核分裂性物質の生産の終了
 われわれは、核兵器用核分裂性物質の生産について、地球規模の検証可能な禁止を取り決めるであろう。われわれは、原子力平和利用の開発の装いのもとで諸外国が核兵器計画を作成するまたは作成する寸前に至ることのないようにするため、核兵器技術の拡散防止にむけて努力するであろう。われわれは、国際原子力機関(IAEA)の予算の倍増を求め、ウラン濃縮施設を建設しない国ぐにに核燃料供給を保証するためのIAEA管理下の核燃料銀行の創設を支持し、および核不拡散条約を強化するため努力するであろう。
冷戦期核戦力態勢の終結
 われわれは、わが国の安全保障の強化をめざし、また核不拡散条約下におけるわが国の公約の実行の一助として、アメリカおよびロシアの核兵器の大幅かつ検証可能な削減を追求し、および地球規模における核兵器保有の大幅な削減のためその他の核兵器国と協力するであろう。われわれは、可能な限り多くの核兵器を冷戦期の緊急発進態勢から解除するため、および戦略兵器削減条約(START)の基本的な監視・検証の要件など主要条項を延長するため、ロシアと協力するであろう。われわれは新たな核兵器の開発を行なわないであろうし、またNPTを強化するとともに国際的な核活動監視に資する包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を支持する超党派コンセンサスの造出のため努力するであろう。
イランの核兵器取得の防止
 世界はイランによる核兵器の取得を防止しなければならない。これは、なんらの条件を付すことなく、より厳しい制裁措置および積極的、原則的、かつ直接的な高レベルの外交をもって開始される。われわれは、欧州の同盟諸国の同様な努力と並行して、またイラン政権に関していかなる幻想もいだくことなく、この強化された外交を遂行するであろう。われわれは、イランにたいして次の選択をせまるであろう。すなわち、核兵器計画、テロへの支援、そしてイスラエルに対する威嚇を放棄すれば、有意義なインセンティブを受け取るであろう。しかし、もしこれを拒むならば、アメリカと国際社会は、より強力な一国的制裁、国連安保理の内外におけるより強力な多国的制裁、およびイラン政権を孤立させる持続的行動を通じて、徐々に圧力を強めるであろう。イラン国民と国際社会は、協力でなく孤立を選択しているのはアメリカでなくイランであることを知らねばならない。あらゆる選択肢を排除しない一方、特別な追加的外交努力を払うことによって、われわれは、もし外交が失敗した場合、世界の他の諸国がわれわれの側に立ってイランに対する圧力を強める可能性を高めるであろう。
北朝鮮の非核化
 われわれは、北朝鮮の核兵器計画の検証可能な終結を確保するとともに、北朝鮮がこれまでに生産した核分裂性物質または核兵器を十分に説明しかつ確保するために行なわれている遅ればせな外交努力を支持する。われわれは、検証可能な核兵器なき朝鮮半島の実現の努力におけるこれまでの合意が十分に履行されることを保証するため、今後ひきつづき直接的な外交を行なうであろうし、また6者協議を通じてパートナー諸国と協力する方針を堅持する。