NPT再検討会議の第2回準備委員会が終了
──米の不拡散オンリーで準備進まず── |
| 藤田 俊彦(前長崎総合科学大学教授・常任世話人) |
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2010年開催予定の第8回核不拡散条約(NPT)再検討会議にむけて、第2回準備委員会が4月28日から5月9日までスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれ、100をこえる締約国の代表が参加した。
1.NPT再検討会議の 流れと準備委員会
1995年と2000年の再検討会議の成果、とりわけ核兵器全面廃棄の「明確な約束」など全会一致の合意をうけて、前回の2005年再検討会議はそれらの合意を実行に移す措置を決めることを期待された会合であった。
しかし、アメリカなど一部の諸国は、2001年に発生した同時多発テロ事件を口実に情勢の一変を強調し、イランや北朝鮮などによる核兵器拡散を防止することこそNPTの主目的であるべきだと主張した。
核軍備撤廃と核兵器不拡散は、原子力平和利用とともに、本来、NPTの「3本柱」として総合的にバランスよく追求されるべきであると1995年再検討会議以降、確認されていたが、アメリカはこれにたいし強引に横車を押した。
その結果、2005年再検討会議はなんら成果をあげることなく終った。2010年会議は、この失敗を克服してNPTの正常な運用を回復し、発展させる任務を負っている。昨年、そのための第1回準備委員会が開かれた。
しかし、この準備委員会も2005年会議の対立が持ち込まれ、とりわけイランの核開発計画が軍事利用をめざすとのアメリカの主張にたいし、イランが拒絶反応を示したほか、他の中東諸国もNPT不加入のイスラエルと協力する米の2重基準を非難した。
このため、2週間の会期の3分の2近くが議題の設定をめぐる論争で空費され、辛うじて次回準備委員会の日程などを決定して、閉幕した。
2.第2回準備委員会の 討議内容
第2回準備委員会は、こうした経緯をうけて、初日から各国代表の一般討論を開始した。2日目午後には、非政府組織が参加する特別会合が開かれ、日本から被団協の田中熙巳事務局長、平和市長会議の秋葉忠利広島市長が参加し、見解表明を行なった。
一般討論が3日間続いたあと、実質討議が3つの主要議題群別に行なわれた。第1群:核軍備撤廃および消極的安全保障ふくむ具体的核軍縮措置、第2群:平和利用保障措置、非核兵器地帯および中東決議、第3群:核エネルギー、核施設・核燃料の安全と保全、および脱退その他。
この主要議題別の実質討議を通じて、合計175の見解表明が行なわれ、また合計37の作業文書が提出されるなど、今回の準備委員会は前回とくらべて様変わりの活発な会合となった。
しかし、NPT主要3目標の均衡のとれた追求を主張する大多数の諸国と、核兵器不拡散をほとんどもっぱら要求するアメリカなど少数諸国との間の基本的対立の構図はほぼそのまま残される結果となった。
主要3目標の総合的 追求の主張 核軍備縮小撤廃、核兵器不拡散、原子力平和利用を総合的に追求する立場は大多数の諸国に共通していた。ただし、そうした立場にも国によって様々な差異が内包されていた。インドネシア、オーストラリア、日本の代表演説から主な論点を見ておこう。
?@インドネシアは非同盟運動を代表して発言し、1995・2000年会議の成果に立ち返って3つの主要目標を追求する原則的立場を主張した。とりわけ、核軍備縮小撤廃こそ核兵器不拡散を確保し、核戦争防止を保証すると強調、一定の時間枠の中での核兵器廃棄と核兵器条約の締結を求めた。とくに中東での非核兵器地帯の設置を訴えたほか、発展途上国の原子力平和利用の権利、また脱退の権利も原則的に擁護した。
?Aオーストラリアは、ノルウェー提唱の「7カ国イニシアチブ」の1国として、核兵器国とりわけ米露両国の大幅な核軍縮の加速的・不可逆的実行、核兵器近代化やミサイル防衛計画の放棄を呼びかけた。こうした核兵器国の努力と共鳴しあう非核兵器国による核不拡散とルールを遵守する原子力平和利用の必要を訴え、不拡散条項に違反するとしてイランと北朝鮮を批判した。
?B日本は、米露の核軍備削減推進を求め、その不可逆性、透明性、検証可能性の必要を強調したほか、CTBT早期発効とカットオフ条約交渉開始を訴えた。イラン、北朝鮮に対する不拡散要求を表明し、テロ分子への拡散の危険も指摘。IAEAとの包括的保障措置協定と追加議定書の締結を訴え、平和利用に違反した国の脱退について制裁を主張した。また国民むけの核軍縮と核不拡散に関する教育活動の強化を訴えた。
アメリカ、核不拡散 オンリーを力説
アメリカは前回の準備委員会と同様、1995年・2000年会議の成果を無視して、核兵器不拡散の必要をほとんどもっぱら強調、とくにイランの核開発計画を軍事目的であると決めつけて糾弾する演説を行なった。その主張の要点は次の通りである。
?@NPTは核兵器の不拡散を基盤とする法律文書であって、核不拡散こそその中核的価値である。原子力平和利用と核軍縮はその上にたって、追求されるべきである。
?Aイランの核開発計画は軍事目的であり、平和利用の権利の悪用である。国連安保理がすでに3回、非難決議を採択した。国際原子力機関もなお調査中である。
?Bアメリカの核兵器削減を細かな数字をあげて説明したほか、核軍備撤廃は条件作りが不可欠であるとし、その持続や検証の困難さを列挙した。
?C北朝鮮に関する6者協議を評価しつつ、脱退をきびしく非難し、NPT加入期間中に入手した機器、資材、技術の引き上げ、国連安保理への付託に言及した。NPT不加入のインドとの原子力協定に関する非同盟諸国の批判を根拠なしとして斥けた。
?D米露英仏中の核兵器国5ヵ国は閉会直前、共同声明を作り上げて、イギリス代表が発表した。その内容は、不拡散を中心として主要な問題について米の立場を踏襲したが、5核兵器国の見解の調整を図る新たな努力の表れとして一部に注目された。
?Eブッシュ共和党政権によるNPT再検討プロセスへの公式参加は今回で終った。準備委員会会場のロビーでは、ありうべき民主党政権の登場とそれにともなう核兵器政策の手直しについて活発な意見交換が行なわれた。
3.第3回準備委員会と 再検討会議
こうして、第2回準備委員会はNPT主要3目標と同関連の諸問題、脱退、常設書記局設置ふくむ機構改革など、主要議題群の論点を総ざらいし、精力的な意見の擦り合わせを進めた。しかし、それらの論点はいずれもコンセンサスを得るに至らなかった。
議長(ウクライナ代表)は、議事の詳細について、両論・多論併記の方式で63パラグラフにおよぶ要約を作成して会議に諮った。しかし、この要約も異論百出して公式文書としては採択できず、議長個人の作業文書にとどめられた。
第2回準備委員会としては、結局、第1回と同様に、主な討議経過を記すだけの報告書を採択して、5月9日正午過ぎに閉会した。
第3回準備委員会は、公的には、この報告書と議長要約その他の一群の作業文書をもとに、再検討会議の議題項目を整理し、決定する最終作業を行なうことになる。
第3回準備委員会の日程と場所は2009年5月4〜15日、ニューヨーク、また第8回再検討会議は2010年4月26日〜5月21日、ニューヨークと決定された。
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