第62回国連総会:核兵器廃絶は圧倒的な世界の願い
――米、核兵器決議の投票ですべて“ノー” |
| 藤田俊彦(前長崎総合科学大学教授・常任世話人) |
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国連総会はさる12月5日、第1委員会(軍縮・国際安全保障担当)の2ヵ月余の審議をうけて、核兵器廃絶をはじめ核兵器関連の決議をいずれも圧倒的多数の賛成で可決した。
これらの決議は核兵器の全面廃棄、使用禁止や実験禁止、非核兵器地帯、軍縮会議など多岐にわたり、法的拘束力こそ欠くものの、多くの加盟国が核兵器のない世界の実現を願い、国連に強い期待を寄せていることを示した。
こうした多数の加盟国とは対照的に、アメリカは投票に付された核兵器関連の決議にすべて反対し、傲慢な孤立ぶりをあらわにした。(第1、2表参照)
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| 核兵器廃絶5決議に賛成増える |
第1表の第1グループ、決議1・5は、核兵器の廃絶を求める決議で、いずれも90%超から60%の賛成をえて採択された。
メキシコが提案した新アジェンダ連合「核兵器のない世界にむけて」決議は核不拡散条約(NPT)再検討会議の合意である「核軍備の全面廃棄を達成するとの明確な約束」の履行を加速するよう促した。賛成は89%に達した。
ミャンマーはじめ非同盟運動参加33ヵ国の提案した「核軍備縮小撤廃」決議は、核兵器廃絶の達成をめざして核兵器国が有効な措置を講じるべき機が熟しているとし、真正面から核軍備撤廃を訴えた。3分の2近くの賛成を集めた。
日本など16ヵ国が提案した「核兵器の全面的な廃絶に向けた新たな決意」はNPTに依拠して、核兵器国の賛同をえつつ核兵器廃絶に接近することを訴えた。5決議の中で最も穏健なこの決議は最高の支持率93%で採択された。
イラン提案の決議の名称は「1995年・2000年NPT再検討会議で合意された核軍備縮小撤廃義務のフォローアップ」。第60回総会の同様なイラン決議は賛成87票であったが、今回は22票増の109票(60%超)を集めた。
マレーシアなど非同盟28ヵ国が提案した「核兵器による威嚇または核兵器の使用の適法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見のフォローアップ」決議は核兵器条約の締結交渉を直ちに開始するよう促した。賛成70%であった。
イラン決議以外の核兵器廃絶4決議の賛成票は、個々に増減はあるものの、合計では第60回=560票、第61回=564票、第62回=570票と、総会ごとに増加している。
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| 核兵器関連個別課題、非核兵器地帯、国際会議 |
第2グループ、個別課題決議のうち、インド提案の決議は「いかなる状況の下においても核兵器による威嚇および核兵器の使用を禁じる」条約の締結を求めた。パキスタン決議は非核兵器国にたいし同様の措置を保証する国際取り決めの締結を促した。
ニュージーランドが新しく提案した「核戦力作戦準備態勢の低減」決議は、事故または無許可の核ミサイル発射を防止するため発進態勢を低めるなど、意図せざる核戦争の予防を求めた。北大西洋条約機構所属の6カ国──そのうち独、伊は米の核基地をもつ──が米の反対にもかかわらず賛成した。
宇宙空間軍事化防止に関する2つの決議はほぼ満票で採択された。この双方ともアメリカが唯1国反対し、イスラエルが唯1国棄権した。
カナダは分裂性物質生産カットオフ条約の締結をジュネーブ軍縮会議にかける決定案を準備したが、検証や在庫をめぐり異論が多く提出できなかった。パキスタンは、米印間原子力協力条約がまとまれば、インドが核物質を供与されるとして反発した。米の対印核政策が新たな障害を作り出している。
第3、第4グループのうち「中東地域における核拡散のリスク」決議は、NPT未加入のイスラエルを名指しして、非核兵器国として加入せよと訴えた。
第4回国連軍縮特別総会の開催を求める決議についても、アメリカが唯1国反対し、イスラエルが唯1国棄権した。
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| 第2表、アメリカの拒絶反応明らかに |
唯一の核超大国アメリカは第1表の投票にかけられた20案件すべてに反対して、得点はゼロ。前々回の賛成1+棄権1(得点4)、前回の賛成1(得点3)からさらに後退した賛成0(得点0)は究極的なワースト記録である。
アメリカにつぐ悪い成績は今回も中東唯一の核兵器国イスラエルで、賛成1、反対10、棄権9で得点12。
ついで、アメリカの同盟国であり核兵器国である仏、英がそれぞれ得点20、得点21。成績の悪さで3位、4位である。
このあと、アメリカの同盟国で非核兵器国のオーストラリア、カナダ、韓国、(ロシアが間に入って)、ドイツと続く。NATO、ANZUS、米韓の軍事同盟と拡大核抑止の呪縛が見てとれる。
日本とニュージーランドは今回も同点で、順位は上から数えて前回の5位から7位に下がった。
北朝鮮は中国、パキスタンと同点で、3国揃っての4位へ順位を上げた。イランは3位で変わらず。
マレーシアとメキシコは今回もすべての案件に賛成して、反対・棄権ゼロ。得点は満点の60点で、首位の座を分かちあった。
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| 米の核兵器保有の論理と日本決議 |
核兵器関連決議にたいするアメリカの反対はいかなる論拠によるのか。クリスティナ・ロッカ米国連大使は第1委員会で「今日の世界において、核兵器は引き続きその妥当性を有している」と強弁した。
さらに大使は「世界の国々が核兵器全面廃棄に必要な環境を創造できる時まで」核軍備はその妥当性を持ち続けるとし、「アメリカは核兵器による保護を同盟国にまで広げており、それが実際に核兵器拡散を減速させている」とのべた。
これでは、アメリカ政府が「必要な環境が創造できた」と認めるまで、拡大核抑止体制は事実上、無限に先延ばしされる。
アメリカ代表の発言によると、日本決議は、アメリカとして包括的核実験禁止をめぐる見解の相違から反対したものの、おおむね評価できる内容であった。
日本決議本文の第1パラグラフはNPTのすべての義務──核軍備の縮小撤廃と不拡散、原子力平和利用にかかわる義務──を等しく履行する必要を強調した。しかし、2000年NPT再検討会議などの成果について、決議は前文で「想起」するに止め、核兵器全面廃棄の「明確な約束」の履行を促す文言をさけた。
新アジェンダ決議、ミャンマー決議との決定的な相違である。
唯一の被爆国日本から提案する決議は、早急かつ全面的な核兵器廃棄の要求を本文冒頭で強調すべきであった。それは広島、長崎の原爆被災に言及した前文の文脈からしても当然であった。
日本決議は、数年前「新たな決意」と名称を変えたものの、アメリカの核の傘の下にある国として、米核戦略に可能なかぎりそう形で漸進する決意の表明となっている。事実上、古い究極的核兵器廃絶論の焼き直しである。
日本は、第59回総会で新アジェンダ決議への棄権を賛成に変えたが、非同盟諸国提案の核軍備撤廃、核兵器条約締結、核兵器使用禁止の決議について一貫して棄権し、イラン提案の核兵器廃棄決議に反対している。明らかに米政府の方針を忖度した棄権であり、反対である。
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| キッシンジャーら4氏論評などの活用を |
アメリカでは、キッシンジャー元国務長官ら4人が1月15日付ウォールストリート・ジャーナル紙に共同論評を寄稿して、核兵器廃絶の目標の確認とそれへ向けての具体的行動を提起した。昨年1月4日に続く2度目の寄稿である。
また、ブルッキングズ研究所のタルボット所長(元国務副長官)は、英フィナンシャル・タイムズ紙1月5日号に論文を寄稿して、核兵器全面廃棄をめざす実際的施策を提起した。
日本政府は、米支配層の中で広がりつつあるこうした動向を敏感に捉えて、アメリカの政府や議会にたいし核兵器全面廃棄の働きかけを強めるべきである。2008年米大統領・連邦議会選挙はその絶好の機会を提供している。
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