| 第61回国連総会の核兵器関連決議を分析する |
| 藤田 俊彦(前長崎総合科学大学教授、常任世話人) |
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第61回国連総会は2006年12月6日、圧倒的な多数の加盟国の賛成で核兵器廃絶など核兵器に関する一連の決議を採択した。
国連総会の下部機関、第1委員会(軍縮担当)がこれらの決議を討議しているさなか、北朝鮮は10月9日、地下核実験を強行し、核兵器保有と核抑止を誇示して、核不拡散条約(NPT)体制に重大な挑戦をつきつけた。
他方、核兵器開発の疑いなどを根拠に始められたイラク戦争への反対が高まるなかで、11月7日、アメリカの中間選挙では与党共和党が敗北し、その直後、国防長官が詰め腹を切らされる形で辞任した。
国連総会は、こうした緊迫した国際状況の下、核軍備の縮小撤廃と不拡散、そして非核世界の実現を求める意思をあらためて表明した。
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| 1.核軍備の縮小撤廃・不拡散を求める決議 |
第61回国連総会
核兵器関連決議

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核兵器の全面廃棄:前回の第60回総会が2005年NPT再検討会議などにおけるアメリカの妨害を克服して成果をあげたあとをうけて、今回も国連加盟国の核兵器廃絶の決意は全体として固く、そして揺るがなかった。
第1表の決議1〜4にみられるように、1995・2000年NPT再検討会議の成果をふまえた新アジェンダ連合提案の「核兵器なき世界にむけて」決議は賛成157票(前年比4票増)、そして非同盟運動提案の「核軍備縮小撤廃」を前面に押し出した決議は賛成115票(同2票増)で採択された。
NPTを土台に不拡散を強調し、縮小撤廃の一歩一歩前進を求める日本提案の「新たな決意」決議は4決議中、今回も最多の賛成167票(同1票減)を集め、また核兵器条約締結交渉を開始して1996年「国際司法裁判所勧告的意見」の履行を求めるマレーシア決議は賛成125票(同1票減)であった。
これらの核軍備廃棄を訴える4決議は前年に比べて合計の賛成票が560票から564票へ、小幅ながらも増加した。
核実験禁止、核兵器使用禁止、非核地帯創設、宇宙空間非兵器化:核兵器に関する個別課題を追求する決議(決議5〜8)も同様な傾向を示した。まず「包括的核実験禁止条約」(CTBT)発効を求める決議は、前回とほぼ同じ内容に北朝鮮核実験を非難する文言を盛り込んで、採択された。
賛成は前年と同じ172票、反対はアメリカと北朝鮮のわずか2票であった。国際社会はほぼ一致して北朝鮮の核実験をきびしく糾弾し、また核実験のフリーハンドに固執するアメリカの孤立をあからさまに暴露した。
インド提案の2つの決議のうち「核兵器使用禁止」決議は8票増、先制不使用をふくむ「核の危険の減殺」は3票増。パキスタン提案の非核兵器国への核兵器不使用を求める「消極的安全保障確約」は1票減であった。
兵器用核分裂性物質の生産を禁止する「カットオフ条約」の締結を求めるカナダ決議案は、第1委員会での審議の途中、撤回された。昨年5月の軍縮会議(CD)でアメリカが条約案を提起したものの、検証条項を欠いていたため反対が強く、これが第1委員会にも持ち込まれて議論は紛糾した。カナダは、今後のCD審議への影響を考慮し、決議案を取り下げた。
非核兵器地帯設置の新たな動きとして、総会直前の9月8日、「中央アジア非核兵器地帯条約」が地域5カ国によって調印され、総会はこの条約を歓迎する決議を採択した。モンゴル1国非核化につぐ専ら北半球の非核兵器地帯である。
米、英、仏3カ国は、この条約が従来の経緯でロシアを優遇しているとして、反対した。「モンゴル1国非核国」を歓迎し確認する決議および「中東非核兵器地帯」決議は無投票で採択された。「中東核拡散リスク」の減殺を求める決議は、名指しのイスラエル非難があることから、全会一致にいたらなかった。
核兵器をはじめとする「宇宙空間軍備競争の防止」決議および「宇宙空間透明性」を求める決議はともに178対1対1で採択された。唯一の核兵器超大国アメリカだけがこの2つの決議にいずれも反対した。中東唯一の核兵器国イスラエルがこれに棄権をもって追随した。
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| 2.米国の傲慢な抵抗そして孤立 |
アメリカは、第1表の中の投票により採択された決議について、1つを除き他のすべてに反対した。とくに前回まで棄権した「消極的安全保障確約」決議に初めて反対し、非核兵器国への核兵器使用がありうるとの立場を鮮明にした。
アメリカは、すでに千回を超える核実験を行ってきたにもかかわらず、核実験全面禁止を求める日本やオーストラリア──いずれも同盟国──が提案した決議(「新たな決意」と「CTBT」)に反対した。
アメリカは新型兵器開発のための実験がありうるとの「垂直拡散」の立場からCTBTに反対し、北朝鮮は、核実験によって核兵器保有を見せつけ、最新の核兵器国の「水平拡散」を誇示して、CTBTに反対したといえる。
アメリカは、同時に、北朝鮮核実験を逆用して、不拡散オンリー、より正確には「水平」不拡散オンリーの対処方針を採用し、その立場から「2010年NPT会議」の準備を訴える決議だけに賛成した。
ブッシュ政権は、9・11テロ事件をいわば引き金に、一連の決議について態度を変えてきた。2001年第56回総会でCTBT決議・決定に賛成から反対へ、第59回ではカットオフ条約に〈無投票〉から反対へ、第61回には消極的安全保障確約に棄権から反対へ、ネガティブな方針転換を敢えてした。
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| 3.核兵器廃絶志向ランキング |
核兵器決議支持ランキング

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第1表の多数決で採択された案件の投票結果について、各国の核兵器廃絶志向を“数値化”したのが第2表である。国際サッカー連盟(FIFA)の勝ち点方式により、賛成=3、反対=0、棄権=1として得点を計算した。
マレーシアとメキシコがトップタイ…トップは、非同盟運動の前年までの議長国マレーシアおよび新アジェンダ連合所属のメキシコで、16案件にすべて賛成し、満点の48点である。
1件にのみ棄権して他はすべて賛成したイランが46点で3位に入り、2件に棄権して他はすべて賛成した中国が44点、4位であった。以上4ヵ国が40点台の第1集団といえる。
日本は5位タイ…第2集団の30点台の国として、ニュージーランド(新アジェンダ連合)が賛成12、反対と棄権各2、合計38点、また日本が賛成11、反対ゼロ、棄権5、合計38点で、前年同様、5位タイに並んでいた。
パキスタンとインド、韓国がこれに続く。北朝鮮は、名指しで核実験を非難された3決議に反対し、また3決議に欠席したことから33点に止まり、前年に比べて大きく順位を下げて10位となった。ロシアがそれに続いている。
NATO諸国とイスラエル…第3集団は、20点台で、いずれもアメリカの同盟国である。12位のカナダ、13位のドイツは北大西洋条約機構(NATO)に属し、14位のオーストラアリアはアンザスに所属する、いずれも非核兵器国。
ついで、NATO所属の核兵器国、英と仏がともに23点、15位タイで並ぶ。決議7件について、両国はアメリカに同調して反対した。そのあと、イスラエルが6決議にアメリカとともに反対し、そのほか8決議に棄権して、ただ1国10点台、14点であった。
米は万年最下位…ボトムはアメリカである。1決議に賛成したほか、他のすべての決議に反対して、3点であった。
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| 4.おわりに──日本に非核の政府を |
日本は、核兵器廃絶志向ランキング5位タイに止まってはならない。日本提案の「新たな決意」決議は、真正面から核兵器全面廃棄の早期達成を基本目標として掲げて、被爆者をはじめとする日本国民の要求を表明すべきであった。
NPTを土台とした決議の構成についても、1995年・2000年再検討会議における第6条に関する協議の成果を正しく受け継いで、核軍備の縮小撤廃と不拡散の原則、また核兵器廃絶の「明確な約束」を確認しなければならない。
さらに、2005年のNPT再検討会議とその直後の国連世界サミットにおける核兵器をめぐる2つの失敗は、アメリカの極端な核軍備固執と強圧的外交によるものであった。そのような経緯へのいっそう明確な批判が望まれる。
広島・長崎原爆投下によって核時代の原罪を犯したアメリカにたいし、日本は、唯一の被爆国として、そのアメリカの核兵器保有と核抑止、核先制使用の政策を批判し、核軍備の撤廃にむけて政策を転換するよう迫るべきである。
日本は、核兵器なき世界の実現のため、真のリーダーシップを発揮せねばならない。日本に非核の政府の樹立が求められる所以の1つがここにある。
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