| 第58回国連総会の核兵器関連決議を考える |
| 藤田俊彦(前長崎総合科学大学教授、常任世話人) |
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第58回国連総会は、さる12月8日、軍縮・安全保障を担当する第一委員会の五週間にわたる審議をへて、決議45件と決定7件を採択した。核軍備の削減・撤廃や不拡散など核兵器関連の決議がその半数近くをしめた。およそ3万基におよぶ核兵器が存在する状況下、総会決議の多くが、核兵器のない、平和で安全な世界の実現を訴えている。とりわけ、核兵器国にたいし2000年総会諸決議がもとめた核兵器全面廃棄の「明確な約束」の履行を迫っている。
また、今回の総会は、アメリカが国連安全保障理事会の承認をえられないまま強行したイラク侵略・占領のつづくなかで開かれた。一連の決議は核兵器使用を選択肢にふくむアメリカの先制戦略や核軍備政策をきびしく批判する内容をふくんでいた。
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| 核軍備の全面撤廃を求めて |
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ブラジルなど7か国からなる新アジェンダ連合は「核兵器のない世界にむけて、新アジェンダ」決議および「非戦略核兵器の削減」決議の2つを提出し、いずれも4分の3近くの賛成で採択された。(第1表、第2表を参照)。
「核兵器のない世界にむけて」決議は、主文の冒頭で、核戦争の脅威を指摘した。そのうえで、新たな核軍備競争につながる行動をつつしむよう訴え、さらに核軍備縮小・撤廃と核不拡散にかかわる国際法や条約上の義務を履行するよう呼びかけた。とりわけ、2000年核不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書の重要性を強調、核兵器廃棄の「明確な約束」をはじめとする13措置の全面的かつ効果的な実施を促した。また、2005年NPT再検討会議の重要性を指摘し、イスラエルとインド、パキスタンの条約加入を促したほか、北朝鮮の脱退声明についてその再考を求めた。「非戦略核兵器の削減」決議は、米先制戦略のもとでの核兵器使用の危機感に裏打ちされており、「使える兵器」としてこの種の核兵器の開発を批判している。
新アジェンダ連合の決議は、双方とも核兵器国による軍縮措置の透明性、検証可能性、不可逆性の必要を指摘したほか、説明責任の履行とその向上を求めている。核軍備縮小・撤廃決議は、前回と同様、東南アジア諸国連合はじめ多数の非同盟諸国を代表して、ミャンマーが提案した。1994年以来、補正を積み重ねながら毎年総会で採択されてきたが、今回も6割超の賛成をえた。前文では、第一回国連軍縮特別総会の最終文書などで言及されてきた、一定の時間的な枠組みをもつ段階的な計画にもとづく核兵器の廃絶を訴えている。主文は、まず核兵器国にたいし核兵器を廃絶するため有効な軍縮措置をとるよう求めたほか、核軍備の縮小・撤廃と不拡散が相互に補完する関係にあることを指摘した。さらに、基本戦略や安全保障政策における核兵器の役割の低減や発進態勢解除など作戦上の地位の引き下げを求めた。先制不使用や非核兵器国への不使用も呼びかけている。核軍備縮小・撤廃の段階的計画を協議するため、ジュネーブ軍縮会議(CD)が早急に特別委員会を設置するよう訴えたほか、世界的規模の国際会議の早期開催を求めている。国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見のフォローアップ決議は、これまでと同じく、マレーシアが上程し、70%の賛成をえて採択された。ICJが1996年7月に発表した勧告的意見のうち、核兵器の全面的な廃棄を実現する交渉を誠実に行い、妥結する責務が存在するとした全員一致の見解の履行を促している。また、核兵器について開発、実験、製造、配備、貯蔵、移転、威嚇、使用を禁止するとともに核兵器を廃棄することを規定する核兵器条約の早急な締結を訴えた。
核兵器の全面的廃絶への道程決議は日本が提案した。日本は非同盟諸国提案の核廃絶決議と対抗し「究極的核兵器廃絶決議」を提案してきたが、2000年NPT再検討会議の最終文書採択のあと,第55回総会からそれを手直しし、この道程決議を上程している。この決議は9割以上の賛成を集めて採択された。NPT体制の枠組みのなか、核兵器国の同意と参加をえながら、一歩一歩、核不拡散と核軍縮を遂行することを訴えている。決議主文は冒頭、NPT非加入諸国──イスラエル、インド、パキスタンなどにたいし、遅滞なく無条件に、非核兵器国として加入することを求めた。そのうえで、核兵器国・非核兵器国双方の締約国に条約義務の遵守を訴えた。核兵器国については、条約第6条のもと、各国がそれぞれ核軍縮をすすめるよう求めたほか、米露モスクワ条約など2国間努力を評価、さらにすべての核兵器国が早期かつ適切に「核兵器の全面的な廃絶にいたる過程に関与する」ことを促した。今後の進め方として、2005年NPT再検討会議とその準備委員会の活動を重視している。また具体的には包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効と兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の締結が重要だとしている。アメリカは、前回同様、CTBT批准の意志なしとして、この日本決議に反対した。新型核兵器の実験の準備の一環とみられる。インドはNPT加入せずとして反対した。核兵器使用禁止、消極的安全保障、CTBT、カットオフ条約核兵器使用禁止条約決議は、今回もインドが提案し、採択された。核兵器の全面禁止への一歩として核兵器使用の禁止を求めている。先制不使用も盛り込んでいる。消極的安全保障確約決議がこれも例年のように、パキスタンから上程され、採択された。核兵器の威嚇や使用を非核兵器国にたいし行なわないことを協定しようと訴えている。
CTBT発効促進決議は、オーストラリアが上程し、173対1で採択された。アメリカがただ1国、反対した。日本決議と同様、同盟国からの提案であった。
カットオフ条約決議はカナダが上程し、無投票で採択された。アメリカは、採択後、兵器用核分裂物質の生産に関する政策を再検討中であり、その結論を「損なわない」かぎりにおいてこの決議を支持すると発言している。
非核地帯、宇宙軍備競争防止、多国間主義、国際会議中東核拡散の危険決議は、イラク侵略・占領とパレスチナ問題の混迷のもと、イスラエル核武装に注意を喚起し、同国がNPTに非核兵器国として加入するよう強く要求した。圧倒的多数の賛成で採択されるなか、アメリカとイスラエルの反対がひときわ目立った。
中央アジア非核兵器地帯条約はもっぱら北半球の諸国のはじめての構想として注目されてきたが、まだ最終的にまとまらず、次回総会の議題とする決定のみが採択された。
宇宙空間軍備競争防止決議は、中国とロシアが数年来、つよく推進してきた。アメリカによる攻撃・防御両面にわたる核軍備の精緻化と宇宙インフラの強化に警鐘をならし、宇宙「兵器化」を防止するねらいがある。アメリカは反対できず、棄権した。
多国間主義の促進決議は、マレーシアが非同盟諸国を代表して提案した。一国行動主義を批判し、2国間や数カ国間の合意は否定しないものの国際安全保障には多国間交渉による合意が核心的な重要性をもつとした。
第4回国連軍縮特別総会は、同じくマレーシアが提案し、メキシコは核の危険防止の国際会議を提案した。2件とも決議でなく次回総会で議題とする決定にとどまった。このため、NPT再検討会議とその準備委員会が2004-05年における核軍備関連のグローバルな多国間会議として唯一のものとなっている。米の単独行動と核兵器国合作、そして日本・アメリカはまことに露骨な単独行動志向をみせた。(第1表、第3表)
アメリカは同時に他の核兵器国との合作も追求した。2国間(米英、米・イスラエル),とくに目立った3国間(米英仏)のほか、4国間(米英仏露)の合作もみられた。
日本は、他の諸国が提案した核軍備の禁止・使用禁止を求める決議にいずれも棄権した。これらの決議にはアメリカが反対しており、それに配慮した日本の棄権とみられている。
第3表は、採決された15案件について、各国が投じた賛成、反対、棄権の票数を示すほか、サッカーJリーグの勝ち点算定方式にならって賛成=3、反対=0、棄権=1として加点し、その合計得点と得点順位を示している。得点ランキング首位は15案件すべてに賛成したマレーシア(45点)、2位が中国(39点)。最下位はアメリカ(2点)、ついでイスラエル(9点)である。日本はインドと5位タイ(29点)、ほぼ中くらいの平凡な成績である。
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アメリカのランキング最下位、それに次ぐイスラエルの10位は、かれらの核兵器固執の意思の頑強さを示す。同時に、それは、かれらが追いつめられていることの証でもある。アメリカなどの政治的意思を変えさせる必要があることは明白である。唯一の被爆国日本が5位タイに止まっていてはならない。
核兵器廃絶の実現をせまる世界的運動に強力な指導力を発揮できる日本の非核政府の樹立が求められている。
この目標の実現には、日本国民の草の根の運動を広げ強めることが前提となる。新たな核兵器廃絶署名運動はその大切な課題の一つである。
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