| 第57回国連総会ー核兵器関連決議を分析する |
| 藤田俊彦(常任世話人、前長崎総合科学大学教授) |
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第五七回国連総会は2002年9〜12月、ニューヨーク国連本部でひらかれた。核軍備撤廃など国際安全保障関連の決議五一件と決定二件が第一委員会審議のあと、11月22日、総会本会議で採択された。 ほぼ半数が核兵器にかかわる決議であった。
前回総会開始日に発生した9・11事件の後の反テロ作戦が続行されていたほか、先制行動戦略にもとづく対イラク戦争にむけてアメリカの大軍事動員が強行され、しかも、会期中、朝鮮民主主義人民共和国が核拡散防止条約(NPT)などに違反して核開発計画を進めていることが明るみに出たなかでの総会であった。
また、第55回総会の一連の決議で核兵器国による核兵器全面廃棄の明確な約束が確認されたにもかかわらず、二年あまりの間、その約束の実行はまったく進展しなかった。今回の総会は、そのような文脈において、アメリカはじめ核兵器国にたいし、核兵器全面廃棄の約束の履行をあらためてきびしく迫る場となった。
以下、今回の総会のおもな核兵器関連決議などの内容を紹介し、その特徴点を指摘したい。第1表、第2表は総会と特定国の投票パターンを概括している。東ティモールとスイスの新規加盟により、国連は現在191カ国で構成されている。
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| 1.核兵器廃絶の諸決議 |
(1)新アジェンダ連合ーアイルランド、ニュージーランド、スウェーデン、南アフリカ、エジプト、メキシコ、ブラジルーは前回、決議案の提出を見送ったが、あらためて従来と同一のタイトルをもつ「核兵器のない世界にむけて、新アジェンダの必要性」決議、および「非戦略核兵器の削減」決議の二件を提案、四分の三近くの賛成をえて採択された。
このうち「新アジェンダの必要性」決議は、2000年総会の諸決議にもかかわらず核兵器国が核兵器廃絶の明確な約束を実行していないことをきびしく批判。核兵器国間の交渉やジュネーブ軍縮会議をつうじて、核兵器の削減・撤廃を確実に実現するよう訴えた。
表決では、米英が前回の賛成から反対に、仏が棄権から反対に回った。前回賛成の日本は棄権した。しかし、カナダはひきつづき賛成した。そのほかのアメリカの同盟国の多くも反対せずに棄権している。新アジェンダ決議への支持は底堅い。(第3表)。
「非戦略核兵器の削減」決議は戦略核以外の核兵器に焦点を絞り、これら戦術核兵器などの削減・撤廃をもとめている。新アジェンダ連合が非戦略核決議を別個の決議として提案したのはこれが初めてであった。
新アジェンダ連合は、この決議を従来の「新アジェンダの必要性」決議に追加することで、アメリカが最近、声高に主張している核兵器先制使用にたいし国際世論を喚起し、核兵器全面廃棄と核戦争阻止をいっそうつよく呼びかけていた。
(2)東南アジア諸国連合と多くの非同盟諸国を代表して、今回もミャンマーが提案した「核軍備の縮小・撤廃」決議はその前文で核戦争の脅威を強調し、一定の時間的枠組みのなかで核兵器廃絶を実現する必要を訴えた。
この決議は、また、第四回国連軍縮特別総会など多国間交渉の優先を主張し、あわせて核兵器国の二国間、数カ国間の交渉も歓迎するとした。しかし、核兵器廃絶のグローバルな性格上、これらの限定的交渉は多国間交渉に代替されないとして、注目された。
この核廃絶をめぐる原則的な主張は投票した諸国の六割強の賛成をあつめた。
(3)日本は前回、前々回につづき「核兵器全面廃絶への道程」決議を提案。内容的には90年代の究極的核廃絶決議の手直しにすぎないものの九〇%超の賛成をあつめた。核廃絶の目標が圧倒的な多数の諸国の共有するものとなっていることが確認できよう。
核兵器国の同意をえつつ一歩一歩前進するという日本案であったが、それが掲げる包括的核実験禁止条約(CTBT)の推進をめぐりアメリカが反対、核不拡散条約(NPT)会議合意の実行にかんしてインドが反対した。日本決議に反対したのは両国だけであった。
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| 2.核兵器条約、非核地帯、CTBT、軍縮特別総会 |
(1)マレーシアは国際司法裁判所が1996年発表した勧告的意見のうち、核軍備撤廃の実現をもとめる判事全員一致の見解を実行することを訴え、核兵器廃止条約の締結を呼びかける決議をあらためて提案し、採択された。
インドは核兵器使用禁止条約の締結を求める決議をふたたび提案し、採択された。これは、核兵器禁止にむけて、まず使用禁止の実現をめざそうとするもの。
アメリカによる核先制使用を批判する含意で、核兵器国による核兵器の先制不使用も訴えている。
パキスタン決議は、これも同国の伝統的な立場から、非核兵器国への核兵器不使用の確約の取り決めを締結するよう求めている。
非核兵器国への核の脅威が実質的に減殺され、核の拡散防止に役立つという狙いがある。核兵器国も反対できず、反対ゼロ。
(2)モンゴルが提案した同国の非核国としての地位の確認の決議があらためて採択された。また、はじめて赤道以北の地域のみの非核地帯の形成、条約化にむけて中央アジア非核地帯決議が採択されたことも注目をあつめた。
CTBT推進決議は、核軍備の不拡散と軍縮双方の実現をめざすとして、今回は北大西洋条約加盟デンマークが提案し、圧倒的な多数で採択された。アメリカただ一国がこの決議にあえて反対、先制使用むけ核兵器の開発への意向をむき出しにした。
インドは「テロリストによる大量破壊兵器の入手を防止する諸措置」決議を提案し、採択された。新アジェンダ、ミャンマー、日本などの各決議も同様の主旨を入れている。
(3)南アフリカは、非同盟運動の代表として、「多国間主義の促進」決議を提案、採択されたほか、第四回国連軍縮特別総会の開催を求める決議も提出して採択されている。
ミレニアム・サミット宣言にうたわれた「核の危険除去の方策を確認する国連 会議」開催について、次回総会で報告をもとめる決定がメキシコの提案で採択された。
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| 3.核超大国アメリカの驕りと孤立 |
(1)アメリカは今回の総会で二決議を提案し、無投票で採択された。一つはモスクワ条約締結と米露二国間関係の進展を評価する決議で、とくに既配備の核兵器の削減についてNPT第6条にそくした核軍縮の実行であると強弁したことが注目された。
この自己評価にかんし、弾頭・ミサイルの廃棄のない、検証規定のない取り決めであるなどの批判がいくつもの決議に盛り込まれた。実際上、経済困難に直面するロシアから核兵器関連物質の流出を防止することに最大の目標がある二国間合意だとの評価すらある。
もう一つは軍備管理、軍縮、不拡散の条約の遵守をもとめる決議で、とりわけイラクや北朝鮮への批判の動員、集約を狙いとしたほか、テロ分子への大量破壊兵器流出を阻止する目的をもっていた。国連の場を借りて対イラク戦争への結集をはかるものでもあった。
(2)アメリカの投票行動には顕著な特徴がいくつかある。第1表、第2表に見られる、採決された15決議についてアメリカは賛成ゼロ、そして反対は12と最多である。賛成ゼロは表中の主要国のなかでは米のみ。賛成1でイスラエルがこれに続いていた。
米単独の反対のほか、米英二国と米英仏三国の共同反対、それに露が合流する場合もあったことが指摘できるだろう。米・イスラエル二国反対も中東・イラク情勢の関連で注目される。中国は反対ゼロ、ただし欠席1であった。
(3)アメリカは核軍備関連の国際交渉において、不拡散を最優先課題とし、当面、カットオフ条約の締結に焦点を絞る意向とみられる。核軍縮、宇宙軍備競争防止についてはジュネーブ軍縮会議で協議はするものの、条約交渉を避ける方針である。
唯一の核超大国アメリカはその抜群に巨大な核軍備を攻撃・防御の両面でさらに強化するため、国際的制約を最小限にとどめ、事実上フリーハンドを保持し続けようとしている。
(4)それをあらためて暴露したのが米国連代表部ネグロポンテ大使の同僚外国代表宛書簡であった。「第57回国連総会におけるアメリカの主要目標」と題した書簡は反テロ、中東、アフリカ開発、国連改革、人権・民主主義、その他の六項目からなっていた。
しかし、この書簡は総会直前に流されたにもかかわらず核も軍縮も不拡散もいっさいふれていない。それは核をめぐる多国間協議の場としての国連をまったく無視していた。
付言すれば、日本の核廃絶道程の決議は、アメリカなど核兵器国の同意と参加を得つつ、一歩一歩着実に前進する方針であるが、それは、このようなアメリカの方針のもとでは、無限の彼方へ核廃絶を押しやることへの協力となっている。
唯一の多国間軍縮交渉の機関、ジュネーブ軍縮会議は1月20日、2003年会期の幕開けをむかえた。
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| 第57回国連総会投票分析 |
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