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 ●国連・世界の動き
 
核兵器廃絶を求める流れ
 国連総会の決議・紹介ー星取り表、決議の特徴

核兵器関連の国連決議を分析する
 第56回総会,アフガン戦争と並行して開催
藤田俊彦(前長崎総合科学大学教授・常任世話人)

 第56回国連総会は昨年9月11日、ニューヨークなどでの同時多発テロ発生の日に開幕、アメリカの報復戦争と同時並行的に審議をおこなった。会期中、12月10日には、ノーベル平和賞がアナン国連事務総長と国連そのものに贈られて、国連が平和の大義に果たしている役割があらためて評価された。

 国連総会第一委員会は10月はじめから決議案などの審議にはいり、11月5日、議事を終了した。総会本会議は11月29日、それら案件の採決を行った。
 第一委員会担当の案件は51件、その過半が核兵器関連であった。うち26件が無投票で採択され、1件が不採択に決まり、他の1件が予算がらみで延期された。
 しかしこの間、アメリカは、アフガニスタン軍事報復をすすめる一方、核爆薬の未臨界実験やミサイル防衛むけ迎撃実験を強行、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の破棄を宣言したほか、包括的核実験禁止条約(CTBT)批准拒否をさらに明確にした。
 アメリカの単独行動主義の動きが核の分野をふくめ強まるなかで、また2000年総会で確認された核兵器国による自国核軍備の全面廃棄の「明確な約束」になんら進展がみられない状況のもと、核兵器関連の諸決議が討議され、採択されていることに留意したい。(投票結果は第1表,第2表を参照).

(1)核兵器廃絶を求める決議と決定
 核兵器廃絶への新たな接近方法を一九九八年いらい提起してきた新アジェンダ連合は、四月に予定されている核不拡散条約(NPT)再検討会議準備会合に議論をゆずる形で、「核兵器のない世界にむけて、新アジェンダの必要性」を次回総会の議題とするとの決定案を上程、無投票で採択された。

 1)核兵器廃絶の決議  非同盟諸国の代表としてミャンマーが核軍備の撤廃を求める決議案を上程した。1990年代後半いらい毎年提案されてきた原則的な核兵器廃絶の決議で、非同盟運動の圧倒的多数の諸国の支持を受けている。
 今回の総会でも三分の二の多数の諸国が賛成し、採択された。アメリカなど核兵器国と正面から対決する姿勢で、多国間協議により早急な核兵器全面廃棄をもとめている。とりわけ、期限を切った、段階的な核兵器廃棄の計画に言及していることが特徴の一つである。
 これに対抗する役割をになったのが、日本提案の決議「核兵器の全面的廃棄への道程」であった。2000年以前には、日本は究極的核廃絶決議として知られる決議を例年、上程した。道程決議はNPT再検討会議で核兵器国が核軍備全面廃棄の明確な約束を示したあとの手直しである。
 アメリカなど核保有国との対決の道をえらぶのでなく、その受け入れ可能な範囲で、一歩一歩、着実に核兵器廃絶の道を進むとする内容、今回も85%以上の諸国の支持をえて、採択された。ただし、アメリカはインドとともにこの日本決議に反対した。
 アメリカは反対投票の釈明のなかで、日本決議の主旨には賛成としながら、日本決議の道程の一つ、CTBT早期発効に反対であると強調した。アメリカの反対は核兵器をめぐる日本外交の重大な蹉跌であった。

 2)核軍備撤廃の交渉と条約
 マレーシアは、国際司法裁判所の1996年勧告的意見の実行と題した、核軍備撤廃の交渉・妥結を促し、核兵器条約の締結を求める決議をふたたび上程し、圧倒的多数の支持で採択された。96年に初めて上程されたこのマレーシア決議が九八年、インド・パキスタンの核実験のあと新アジェンダ決議を導きだしている。
 そのプロセスがさらに、新アジェンダ連合や非同盟諸国の努力によって、2000年NPT再検討会議での核兵器国による核軍備全面廃棄の明確な約束へと導いたことを指摘したい。
 インドは、ふたたび、核兵器使用禁止条約の交渉を呼びかける決議を提案した。これは、核兵器の全面禁止こそ望ましいとする立場にたち、当面、核兵器使用の禁止に焦点を絞った国際的な法律文書を作ることを提起、それを核兵器条約につなげるとするもの。
 また、パキスタンは、これも従来からの方針にそって、非核兵器国にたいし核兵器の不使用を明確に約束するとの決議を提案した。いずれも賛成多数で採択された。

(2)非核地帯の設置・拡大
 1)既存の非核地帯条約について、ラテンアメリカ非核地帯条約(1967年締結,68年発効)、アフリカ非核地帯条約(1996年締結、未発効)の加入拡大と強化を求める決議、また南半球非核地帯条約の締結を求める決議が採択された。
 1960年代以降、核兵器を締め出す非核地帯が国際条約により着実に広がってきた。とくに南半球は南極大陸をふくめて非核化が完成に近づいている。

 2)新規の非核地帯の設置をもとめる決議も採択された
 一つは、当面の世界情勢の焦点である中東地域における非核地帯の設置をもとめる決議で、無投票で採択された。もう一つ、中東核拡散のリスクについても決議が採択されており、これにはアメリカとイスラエルが反対した。いずれもエジプトが提案した。
 中央アジア非核地帯については、次回総会で議題としてとりあげることが無投票で決定された。

(3)米ミサイル防衛計画とCTBT
 アメリカは攻撃と防御の両面で、核軍備のいっそうの近代化・精緻化をはかっている。しかし、その動きは二つの総会決議により批判され、あらためてその矛盾を露呈した。

 1)一つはロシア、中国から3年連続して上程された弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の順守・維持を求める決議である。
 ABM制限条約を破棄した場合、新たな核軍拡競争の恐れがあり、戦略的安定が脅かされるとする主張である。背景には、ロシアが経済・財政の困難から核軍備を縮小せざるをえない状況にあり、中国も保有する長距離核兵器が少ないという事情がある。
 アメリカはロシアなどでなくならず者国家やテロ集団の大量破壊兵器無害化を狙いとすると釈明してきた。
 決議は過半数の賛成で採択された。しかし、相互確証破壊(MAD)にもとづく核抑止を基調とするその内容には少なからぬ批判があり、それは棄権の多さにあらわれていた。

 2)もう一つ、中国がこの3年来進めてきた宇宙軍事化防止の決議がある。
 1999年コソボ紛争で中国大使館が米爆撃機によって誤爆されたさい、人工衛星を利用する汎地球測位システム(GPS)で誘導されたミサイルの精確さが注目された。今回のアフガン戦争も同様にアメリカの技術水準の高さをみせつけた。
 ことしスリランカが提案したこの決議は、宇宙軍事インフラが通信手段から兵器の配備へと進行するプロセスに注目し、宇宙「兵器化」の動向を停止しようと訴えた。
 決議は今回の核軍備関連の決議のなかで最大の賛成票一五六票を集め、国際社会の関心と不安の広がりを示した。アメリカはこの決議にあえて反対できずに棄権、イスラエルほか二国だけがこれに同調した。アメリカはほぼ完全に孤立した。

 3)アメリカ、CTBT離脱の動き
 国連総会と並行して11月11〜13日、CTBT批准促進会合が開催されたさい、アメリカはこれにあえて欠席して、CTBTへの反対を誇示した。すでにみたように、従来、支持してきた日本決議についても、CTBT批准促進を含んでいることを理由に反対した。 また、ニュージーランドが次回総会議題にCTBT発効促進を入れることを提案し決定されたが、この決定についても、アメリカは採決の直前、わざわざ発言をして表決を求め、しかもただ一国、反対票を投じるという挑発的な態度をとった。
 このように、アメリカは核軍備をめぐって、自らの単独行動主義を国連総会の場でデモンストレートした。国連外でも、総会期間中、アメリカは未臨界核実験をあえて強行(9月26日、12月13日)、ミサイル防衛の実験をする(12月3日)など、これみよがしの行為を重ねた。ABM制限条約破棄の発表(12月13日)はその仕上げであった。

(4)生物兵器条約・化学兵器条約  生物兵器条約については、1990年代後半から、検証にかんする議定書の制定のため協議がおこなわれてきた。とくに同時多発テロと炭疸菌騒動のなかでの協議が注目された。
 国連では、11月下旬、総会と並行して生物兵器条約特別会合が開催され、アメリカは、この会合でも検証メカニズム強化の議定書案を批判し反対した。そのうえで、アメリカ代表はイラクや北朝鮮を名指しして生物兵器開発の疑惑があると非難した。
 総会案件としては、生物兵器条約の早期発効のため、ジュネーブで開催されていた議定書作成の会合に事務総長以下の支援を要請し、次期総会に報告を求める決定が無投票で採択された。しかし、ジュネーブ会合はアメリカの強硬な反対のため合意にいたらず、一年間の中断をきめることで、かろうじて失敗を回避した。
 化学兵器条約については、例年のように加入の促進と体制強化を求める決議が無投票で採択された。

(5)軍縮と反テロの多国間協力
 軍縮・不拡散およびテロ防止にかんする多国間協力、マルティラテラルな協力を訴える決議が第一委員会のエルデシュ委員長から提案された。それはアメリカの単独行動主義・ユニラテラリズムの批判を含意する表題であった。エルデシュ氏はNATO新規加盟のハンガリーの大使・委員長の資格で、決議案をまとめ、途中、一部修正するなどして、無投票での採択にこぎつけた。
 国連総会などでの多国間合意、またNPTなど多国間協定の尊重と実行を求めているほか、大量破壊兵器の不法な移転の動きを指摘。こうした事態のなかでテロ事件が頻発していることに懸念を表明している。 とりわけ、決議の背景として、アメリカはじめ核兵器国が核軍備の全面的廃棄の明確な約束をなんら実行に移していない事実がある。さらに、核その他の大量破壊兵器をめぐるアメリカの一方的な動きがある。
 こうした一連の動向のなかで、国連がともかく軍縮・反テロ多国間協力の必要について決議をまとめることに成功したといえるだろう。

第56回国連総会投票分析
−核兵器関連の案件−