「中国の核戦力・2019年」
「ブレティン・オブ・ゼ・アトミック・サイエンティスツ」 |
| (2019.9.15) |
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| 核問題専門家ハンス・クリステンセン、マット・コルダ両氏がまとめた中国の最新の核兵器状況によると、中国はミサイルの多弾頭化をはじめとする核兵器近代化と核兵器の増強に引き続き取り組んでおり、同氏らは、「中国が、世界第3位の核大国であるフランスを間もなく抜く」と推定している。 |
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中国は1980年代に開始した核兵器近代化プログラムを継続しており、配備する核兵器のタイプや数量がかつてないほど多くなっている。前回2018年6月の「核ノートブック」以来、中国は、既存の中距離移動式弾道ミサイルの新バージョン、新しい核・非核両用中距離移動式弾道ミサイル、既存の大陸間弾道ミサイルのための改良された道路移動式発射台を引き続き配備し続けてきた。中国はまた、道路移動式のMIRV(個別誘導複数目標弾頭)搭載可能ICBMおよび空中発射核・非核両用弾道ミサイルの開発を継続してきた。
我々の推定では、中国は、180〜190基の地上発射弾道ミサイル、48基の海洋発射弾道ミサイルおよび爆撃機での投射のためにおよそ290発の核弾頭を持っている。この推定は米国防情報局(DIA)局長によって2019年5月に次のように多かれ少なかれ確認された。「我々の推定では、中国がもつ弾道数は数百である」(ハドソン研究所、2019年)。
この戦力は、今後の10年間に、追加的な核搭載可能ミサイルが運用可能になり、さらに増えそうだ。一つの改良型ICBM がMIRV能力を持つと思われる。多くの非公式ソースは、MIRV化されたミサイルがきわめて多くの弾頭数を持つとしている(例えばDF-41に10弾頭など)が、我々は、MIRV化プログラムの目的は、中国のミサイル戦力の弾頭能力の最大化ではなくて、米ミサイル防衛に対する貫通力の確保だと考える。したがって我々は、多弾頭化ミサイルには少数の弾頭(おそらく各3発)が搭載され、ミサイルの積載荷重能力の一部はおとり用および貫通力の補強のためだと推定している。米国がミサイル防衛および攻撃能力を強化している中で、中国は、その打撃力の信頼性を確保するために核態勢をさらに更新するだろう。この動きは、中国の核弾頭保有数を潜在的にさらに増大させるかもしれない。こうしたもろもろの動きをふまえて我々は、中国が、世界第3位の核大国であるフランスを間もなく抜くと推定している。中国の核戦力は米ロに比べれば引き続きはるかに低いものにとどまるが。
DIAは2019年5月、新しい情報評価で、「中国は次の10年間でその核保有量を少なくとも倍加しそうだ」との予測を明らかにした。中国が2020年代後半には600発以上の核弾頭を持ちそうだというこの劇的な予測の根拠は不詳である。DIAの予測は最悪のケースを考える傾向があり、過去のいくつかの予測は過大なものだった(クリステンセン、2019年)。
中国は、即応性を高めるためにミサイルの一部に弾頭を装着しているようだといううわさがあるが、我々は、そのことを確認する公的情報源は目にしていない。若干の中国軍高官は、中国の核ミサイルの即応性の増大を主張しており(クラツキ、2016年)、現米太平洋軍司令官のフィリップ・デビッドソン海軍大将は2018年4月の議会証言で、「(中国人民解放軍の)ミサイル部隊は高度の戦闘即応性を維持している」と述べた。高度の即応性は、かならずしも核弾頭をミサイルに装着していなくとも達成することが可能であり、デビッドソンは、通常ミサイルを運用するミサイル部隊について言及したのであろう。中国は、弾頭のほとんどを秦嶺山脈地域にある中央貯蔵施設に、そしてより小さな規模で地方の諸貯蔵施設に貯蔵していると考えられている。
中国の地上発射弾道ミサイル戦力は中国人民解放軍ロケット軍(PLARF)の下に組織されており、この部隊は通常および核兵器の維持ならびに「すべての防衛分野にわたる抑止・打撃能力」に責任を持っている。この部隊は2016年に、中距離および長距離の精密打撃能力による「核抑止および反撃能力の強化」のために設立された(新華社、2016年)。
重要なことは、ロケット軍が海軍潜水艦の戦略ミサイルを含め、すべての戦略ミサイルに責任を持つことになっていることである。中国国防省は、再編は核政策の大きな変更を意味せず、引き続き先制不使用の誓約と防衛的核戦略にもとづく、と述べた(環球時報、2016年)。
核ドクトリン・政策
中国は1964年の最初の核実験以来、最小限抑止ドクトリンを維持してきた。歴史的に中国の指導者たちは、中国に対する攻撃を抑止するには信頼できる第二撃能力で十分であると強調して、その核戦力の生存可能性を確保するために多大の努力を払ってきた。そういうものとして人民解放軍は、核戦力について「低アラートレベル」を維持してきたのであり、通常の状況下ではミサイルに弾頭を装着していない。
さらに、中国政府は,核兵器を最初に使用せず、非核国または非核兵器地帯加盟国に対して核兵器を使用せず、生存能力のある第二撃の確保のために最小限抑止力を維持するという長期的な核政策をとっている。
中国には、核戦力の規模や即応性の増大について、また先制不使用政策がいつ適用されるかについて多くの議論があるが、中国政府がこうした長期的な政策から逸脱していることを示す証拠はない。しかし、中国の核近代化計画の一つの要素――つまり戦略的早期警戒システムの開発を強調していること――は、米国防総省を刺激して、中国が「警報即発射」態勢(“launch-on-warning”posture)を将来採用するかどうか、疑問視させることになった(米国防総省、2019年)。そうした変動は、もし中国が、例えば、結果的には誤った警報だったことが明らかになるような警報下で核戦力を投射するような場合、その先制不使用に対する将来の誓約をあやうくしかねないだろう。
同様に、中国の当局者たちは私的立場では、中国は、もしその核戦力が通常戦力によって攻撃を受けたなら、核兵器で応酬するだろう、と述べている。もしこうした見解が国家戦略に反映されることになれば、先制不使用誓約とは矛盾することになるだろう。
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