| 2005年核不拡散条約(NPT)再検討会議・第3回準備委員会(4月26日〜5月7日、ニューヨーク国連本部)における中国、ニュージーランド、日本、アメリカの代表演説 |
| (国連新聞発表) |
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| 中国代表の演説 |
4月26日、第3回準備委員会の一般討論のさい、中国代表の胡小笛大使がおこなった演説の内容の翻訳である。同日付国連新聞発表(DC/2920)による。
新たな世紀をむかえて、国際的な安全保障環境には広範な変化が生じ、不安定さが増している。世界は伝統的な挑戦および非伝統的な挑戦の双方に直面し、しかも後者の勢いが募っている。大量破壊兵器(WMD)の拡散およびテロリストがそれら兵器を取得するかもしれないリスクがグローバルな不拡散努力に複雑さをもたらし、また挑戦を突き付けている。このような状況にあるだけに、NPTの権威と普遍性は強化されねばならない。キューバと東ティモールの条約加入を歓迎する。また、いまなお加入していない諸国にたいして早期に条約に加入するよう呼びかける。国際原子力機関(IAEA)は条約の履行を確保するうえでかけがえのない役割を果たしている。IAEAの保障措置の強化を支持するとともに、すべての国にたいし保障措置と追加議定書を調印し、批准するようつよく促す。
核密貿易ネットワークが明るみにでたが。これは国際的な不拡散体制に抜け穴があることを示している。テロリストがWMDを取得するリスクが強まっており、国際的不拡散体制改善の重要性と緊急性の証左となっている。中国は、核兵器と関連物質の物理的防護を強化するとともに非国家による放射性物質の取得を防止する国家能力を強化するため、核物質防護に関する条約を修正する交渉の加速を支持する。中国は、不拡散にかんし役割を果たすにあたって国連を支持するとともに、非国家によるWMD密輸の防止のため、十分な協議のもと、安全保障理事会による諸決議の採択に賛同する。
核兵器の拡散は複雑な争点であって、表面的な諸問題と実質的な諸問題を同時に解決することにより、包括的な方法で処理されるべきである。グローバルな安全保障環境と地域的な安全保障環境とを不断に改善することが根本的な重要性をもつ。その目標を達成するため、すべての国々は、相互信頼と相互利益、平等と協力に焦点をあてた新安全保障概念にコミットすべきである。すべての国々に安全が保障される協力と信頼の国際環境が創造されるべきである。この関連で、「われわれは国際的な核軍備縮小・撤廃の努力を推進する必要がある」。核軍備の縮小・撤廃と不拡散は相互に補強しあう。今日の世界において、諸国とりわけ大国の間の対決は後退しており、協力が強められた。しかし、その一方、国際的なテロとWMD拡散が国際的安全保障にとっての重大な脅威となっている。
このような情勢において、先制攻撃戦略を採用するとか、あからさまにほかの国を核攻撃の標的としてリストアップするとか、核兵器使用の敷居を下げるとか、使いやすい新型核兵器の研究・開発とか、核兵器実験の準備の期間を短縮するとか、などなどの「動き」がある。これは、ただたんに国際的な趨勢に逆行するばかりか、国際的な不拡散努力を損なうものであって、いかなる国の為にもならない。中国としては、すべての核兵器国が完全かつ徹底的な核兵器廃棄の公約を明示的に再確認し、新型核兵器の研究・開発の中止を約束し、包括的核実験禁止条約(CTBT)を可及的すみやかに批准するとともに核実験一時停止を遵守し、国家安全保障政策における核兵器の役割を軽減し、いかなる国についても核攻撃対象にリストアップすることをひかえるべきである──と信じている。
さらに、最大の核軍備を保有する2つの国家が核兵器削減の諸条約を履行し、また、検証可能かつ不可逆的な方途によってさらに自国核軍備を削減し、それによって他の核兵器国が核軍備縮小・撤廃過程に参入する条件を作り出すべきである。ジュネーブ軍縮会議はできるだけ早期に作業計画に合意し、それにもとづき核兵器用分裂性物質の生産を禁止する条約にかんする交渉を開始すべきである。軍縮会議は、このほか、核軍備縮小・撤廃、安全保障確約、宇宙空間軍備競争防止のそれぞれにかんするアドホック委員会を設置すべきである。
安全保障確約については、非核兵器国が核兵器国から核による威嚇を行なわないとの確約を取り付けることはきわめて正当であり、また道理にかなっている。かかる確約は、非核兵器国がすでに核のオプションを放棄している以上、法的な拘束力をもつべきである。安全保障確約が安全意識の強化に役立つことは歴史が証明している。それは、さらに、国際的な不拡散努力にも役立つ。こうした理由から、中国としては、安全保障確約にかんする国際的な法律文書の可及的すみやかな締結をかたく支持する。同時に、不拡散努力は平和的利用の正当な活動を妨げてはならず、また他の諸目的のために利用されてはならない。
中国は、核兵器国として、核軍備の縮小・撤廃にかんする責任を「まったく回避しなかった」。中国は、つねに、核兵器の完全禁止と徹底廃棄を支持し、核兵器開発に当たって最大限の自制を働かせ、そして自衛のためにのみ必要最小限の核軍備を維持してきた。中国はいかなる軍備競争にも「これまで決して参加しなかったし、こんごも決して参加しないであろう」。中国は、核兵器を手に入れたまさにその最初の日に、いつ、いかなる状況においても、核兵器を使用する最初の国とはならないであろう、と厳粛に宣言した。中国は、そののち、非核兵器国や非核兵器地帯にたいし核兵器を使用し、あるいは、使用すると威嚇したりしないことを無条件に約束した。1995年、中国は非核兵器国にたいし積極的安全保障確約を与えた。
中国はすべての核兵器国にたいしコミットメントを法律の形で銘記するよう一貫してつよく促してきた。くわえて、中国は非核兵器地帯条約にかかわるすべての議定書に調印し、それに関連する責務を引き受けてきた。中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国とは、東南アジア非核兵器地帯条約とその議定書にかんし合意に達している。中国は、また、中央アジア非核兵器地帯条約の議定書の文言についていかなる困難も感じていない。中国は、さらに、IAEAとの追加議定書を発効させた最初の核兵器国である。中国は、そのほか、原子力の平和的利用に積極的であり、IAEA保障措置のもと他の締約国と協力関係にある。
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| ニュージーランド代表の発言 |
4月26日、第3回準備委員会の一般討論のさい、ニュージーランドのマライアン・ホッブズ軍縮・軍備管理大臣がおこなった演説の内容の翻訳である。同日付国連新聞発表(DC/2920)による。
次回の再検討会議の際には、この条約がすでに35年のあいだ有効であったことになると考えるとき、襟を正さねばならない思いがする。前回の再検討会議いらいさまざまな出来事があったが、それらは、核軍備の不拡散と縮小・撤廃のいずれについても、条約の前文と条文の諸目的が実現されていないことを明らかにしている。再検討プロセスにかんする条約第8条3項が求める諸目的の実現の確保が欠落している。1995年再検討会議における条約再検討プロセスの強化にかんする決定は、こんごの再検討会議が「うしろを振り返るだけでなく前を見通す」べきであるとの合意を記録している。
うしろを振り返ると、また、NPTに拘束されていないインド、イスラエル、パキスタンの諸国にかかわる不安をいま一応措くとすると、不拡散をめぐる不安が多かれ少なかれ朝鮮民主主義人民共和国、イラン、リビアとのかかわりで、この2年来「重大になっている」。核軍備の縮小・撤廃のための有効な措置について交渉するという責務の履行にかんする不安は、それよりも若干、長期にわたっている。第6条(核軍備の縮小・撤廃にかんする規定)の履行に緊急性を注入する努力については、1995年と2000年の再検討会議で明確に定められている。くわえて、1995年に合意された「核軍備の不拡散と縮小・撤廃の原則と目標」は第6条の履行にむけての行動計画を含んでいた。これらの要素はいずれも実現されていない。
この1995年に合意された計画および国際司法裁判所の勧告的意見(厳重かつ効果的な国際管理のもとでの全面的な核軍備撤廃をみちびく交渉を誠実におこない、かつ、妥結に至らしめる責務を指摘する)、そして2000年の成果などにもかかわらず、核軍備撤廃にむけてのこうした措置はほとんどなにも講じられてこなかった。中国、フランス、ロシア連邦、イギリス、アメリカの各核兵器国は、この責務がこれら加盟国それぞれの双肩にかかっていることを条約第6条が明記している事実を想起させられている。遵守が選択的であったり、先延ばしされたりする余地はない。実際、これら諸国がみずからの国際的責務を果たす特別の責任を負っていることは、安全保障理事会の常任理事国としてのかれらの資格に本来的に内在している。
いくつかの国々が不拡散目標を遵守していないことは、核兵器国が自らの「核軍備の全面的な廃棄を達成するとの明確な約束」(2000年再検討会議)および「世界的に核兵器を削減する系統的かつ漸進的努力」の「断固たる追求」(1995年再検討会議)のさらなる先延ばしをするための言い訳にはならない。このような法的、道徳的、政治的背景に留意するとして、2005年再検討会議がそれに先立つ1995年会議および2000年会議とまったく同様に、言葉のうえでは厳粛に合意された成果をあげながら、しかし実際には休眠状態を結果するならば、それはNPTの「健全性のために支持できない」。さらに、この間、条約の不拡散義務の不遵守の事例が少なからず見られたほか、垂直拡散の可能性についての多くの不安も生じている。
前を見据えるならば、NPTの支持について可能な限り積極的に強調されるべきである。締約国の数は事実上、国際社会のほとんど全部である。核兵器国5カ国は、少なくとも言葉のうえでは、条約支持をひきつづき表明している。そして、ひろく遵守されている法について、たとえいくつかの対象国がその埒外で行動しているとしても、疑問をさしはさむべきではない。逆に、それは強められ、固められるべきである。他方、完全には守られず、また完全には遵守されない法は、時の試練に耐えるであろうか?
NPTの場合、それこそが核軍備の縮小・撤廃と不拡散の責務が相交わるところである。核その他の大量破壊兵器の拡散が大いに憂慮される。いかなる国といえども、国際の平和と安全への現在の脅威、とりわけテロリストからの脅威について、超然としていることはできない。
現在、核拡散対抗措置があまりに強調されすぎて、核軍備の縮小・撤廃への具体的施策を講じる必要を圧倒していることに大きな不安をおぼえる。これらは同じコインの表と裏である。最終的には、唯一の安全保障は核兵器の完全な廃棄および核兵器が2度とふたたび使用されず生産もされないとの保障であろう。同時に、核拡散があらゆる正当な「道具箱の道具」を使って対処することを保証するにたるだけの重大な問題であることは疑問の余地がない。それには、具体例の積極的な力をつうじる努力、たとえば、条約上の核兵器国がより強力に核軍備の縮小・撤廃の努力を払い、NPT外の核兵器国にたいし同じ努力をするよう説得することも含まれる。再検討プロセスはこの核兵器の脅威に対処するため締約国が協力するチャンスである。
核兵器国としては、国際的信頼感を醸成するために、また、敵からのWMD開発ないし使用の恐怖を理由に核兵器の必要なるものを正当化しようとする拡散国の口実を否定するためにも、いくつもの実際的な具体策を講じることができよう。新アジェンダ連合が提出して総会により採択された決議を例に取るならば、そこであげられた施策はいずれも実行不可能でないどころか、それぞれすぐにも実行できるものである。たとえば、非配備核弾頭の不可逆的な破壊(貯蔵ではなく)、米露間のモスクワ条約(公式には、戦略攻撃兵器削減条約)のもとでの潜在的には重要な2国間の誓約を検証可能で不可逆的かつ透明なものとすること、そして、非戦略──言い換えれば、戦術──核兵器の削減を優先課題とすること、などがそれである。
核兵器計画の長期にわたる存続をゆるすことは「拡散者にとっての格好の環境」作りとなっている。核軍備を削減し、NPTの核軍備縮小・撤廃の柱について遵守のほどをみせつけることで、核兵器国がさらにリーダーシップを発揮するならば、それは、インドやイスラエル、パキスタンに同様のことをするようにとの圧力をかける道徳的権威を強めることとなり、結果として、紛争地域の緊張を低減し、さらには近隣その他の諸国が核兵器を開発するインセンティブや口実を弱めることになるかもしれない。2005年再検討会議は、条約の前文と諸条文の目標が実際に実現されつつあるとだれもが実感できるような具体的措置を講じる根本的な好機として、追求されねばならない。
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| 日本代表の発言 |
4月26日、第3回準備委員会の一般討論のさい、日本代表の美根慶樹軍縮大使が行なった演説の内容の翻訳である。同日付国連新聞発表(DC/2920)による。
2005年は広島と長崎の悲劇の60周年にあたる。再検討会議の準備過程にあたって、すべてのNPT加盟国にたいし、核の惨害を2度と繰り返してはならないとの断固たる決意をもって、核兵器全面廃棄の堅い誓約を再確認するよう呼びかける。朝鮮民主主義人民共和国の核開発計画やカーン氏の地下ネットワークなど、最近のNPT体制への挑戦は2005年再検討会議を準備するうえで、諸国がNPTの集団的誓約をあらためて明示することの緊急性を指摘している。この準備委員会として再検討会議のための一連の勧告を盛り込んだコンセンサス報告を作成することが重要である。
カーン氏の地下ネットワークは既存の核不拡散体制をさらに強化する必要があることを再確認した。これにかんして、IAEAの強化と普遍化、核物質の防護、輸出規制の強化などの具体的措置が準備委員会の討議の対象となるべきである。アジアにおいては、不拡散メカニズムの強化がきわめて重要であり、この目標にむかって努力を積み重ねている。また、すべての核兵器国にたいし具体的な核軍備縮小・撤廃措置を実行するようつよく促す。核兵器国は、NPT体制のもと、ほぼすべての諸国が核オプションを放棄するとの誓約を行なっていることを真剣に留意すべきである。核兵器国としては、核兵器の縮小・撤廃にむけて目に見える前進をしめすことにより、こうした断固たる決意に応えることが不可欠である。
日本は、朝鮮民主主義人民共和国によるNPTから脱退し、かつ、IAEA保障措置協定の受け入れを拒否するとの宣言に不安をいだいている。国際社会は同国がかかる決定を撤回するようつよく促している。同国が完全な、検証可能な、不可逆的な方途によりその核兵器開発計画を解体するよういつよく促す。同時に、イランが追加議定書の発効までのあいだ、同議定書にそくして行動すると決定したことを歓迎する。また、リビアが大量破壊兵器計画を放棄すると決定したことを歓迎するとともに、同国にたいし追加議定書を早急に批准し、そして全面的に実行するよう呼びかける。現在の不安定な安全保障環境のなか、軍縮・不拡散にかんする教育の重要性および大量破壊兵器の危険性を人々に知らせることの明白な必要性を強調する。
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| アメリカ代表の発言 |
4月27日、第3回準備委員会の一般討論のさい、アメリカのジョン・ボールトン軍備管理(DC/2921)による。
アメリカはNPTを支持し、その目標にコミットしている。しかし、こうしたアメリカのつよい支持と多くのNPT加盟国のつよい支持、そしてこの会議場の大多数の人々の善意にもかかわらず、少なくとも4カ国のNPT加盟非核兵器国が「核兵器開発の煙幕としてNPTをかつて利用したか、あるいは現在利用している」。イランなどの国々は条約上の責務に積極的に違反しているし、自国の核兵器計画のため技術や物質にアクセスしてきた。北朝鮮は、締約国であるあいだにNPTの責務に違反し、そののち条約から脱退することで核兵器追求の戦略的決定を実証した。
また、これまでイラクとリビアの両国もNPTに違反した。リビアはすでに自国のWMD計画を開示し、破棄するとの重要な決定を下したが、この模範例はいま核兵器を追求しつつある他の諸国が見習うべきものである。「NPT不遵守の危機」がある。当面の課題はNPT不拡散目標の全面遵守を確保する方途を案出することにある。すべての加盟国によるこうした遵守なくして、NPTの安全保障上の利益への信頼は腐食するであろう。この深刻な問題に対処するため、ブッシュ大統領は最近、条約署名と同時に引受ける責務の遵守を強化することをめざした一連の提案を発表した。
これらの提案は、イランや北朝鮮などの諸国が自国の核兵器計画を発展させるべくNPT加盟の利益を悪用することを可能にした、基本的な問題に対処するものである。ブッシュ大統領は「ならずもの国家」が「平和的核技術なるものの煙幕のもと」核兵器を取得することを止めさせる決意である。2月11日の演説で大統領はさらに次のようにのべている。「拡散者たちが不法な兵器の製造に必要な物質やインフラを入手するため、冷笑的なやりかたでNPTを操作することを許してはならない。」NPTへの深刻な脅威となる核計画をもつ国々には「断固として、即座に」対処しなければならない。締約国は、潜在的な条約違反国にたいし、かれらの行動が容認されることはないとのシグナルを送らなければならない。
いまこのような行動をとらないならば、勢いをえたますます多くの国々がイランや北朝鮮のひそみにならって、「NPTの正当性の煙幕」のかげにかくれて核兵器技術を追求することになるだろう。アメリカとしては第6条の責務につよくコミットしている。この点での最近の成果のなかにはモスクワ条約のほか、WMD拡散防止のためのグローバル・パートナーシップの樹立がある。この事業についてブッシュ大統領はすでにその拡大を提案しており、世界からWMD物質・技術を一掃することをめざし大きな成果を上げることになるだろう。全体として、アメリカは、世界をより安全な場所にするうえで「非常に印象的な」行動記録を達成している。
NPTの抜け穴や不遵守危機に対処するべく、ブッシュ大統領は条約を強化するため、また、国際原子力機関(IAEA)の統治構造を強めるために、4つの提案を発表している。第1は濃縮と再処理のプラントを現在それらプラントを保有している国々に限定することである。第2は、IAEA理事会の特別委員会設置で、これは保障措置にするどく焦点をあて、各国の国際責務遵守を確保しようとするものである。第3は、真剣に拡散対策に取り組もうとしている諸国にたいし、追加議定書の承認と履行をつよく促すもので、これを2005年末までに核供給国グループ(NSG)管理下の物質や機材、サービスなどの供給の条件とすることになる。第4は、NPTとIAEAに違反したとして調査の対象となっている国々にIAEAの理事会や新たな特別委員会の議席を与えないとするものである。
検証だけでは十分でない。もし確認された違反行為が放置されるならば、世界の最も完璧な検証体制も無価値となる。かくて、執行こそ緊要である。違反のコストは引き上げられ、その便益は減らされねばならない。「われわれは、違反対策執行のコストがそうした違反に反対する諸国の負担になるのではないかなどの恐怖や不安が動機となって、違反から目をそらすようなことがあってはならない。こうした問題がおのずから消えてなくなることは期待できない。完全な遵守を要求する課題全体について、それを他人まかせにしてはならない。われわれは、ありもしない第6条の諸問題に焦点を当てることで、当面する違反行為から注意をそらすようなことがあってはならない」。もしある加盟国がNPTを重要視するのであれば、違反行為や執行を重要視する相応の義務がある。
多くの形態でWMDの開発を進めているテロリスト・スポンサー政権の重大な挑戦の文脈において、イランと北朝鮮、それにリビアは3つの全く異なった事例を提供している。イランは「18年以上にわたる大規模な極秘の核兵器計画を隠ぺいしてきた」。イランがつづけている「ごまかしと遅延の戦術」は国際社会の目を逃れることができなかった。大規模なごまかしと否定のキャンペ−ンにもかかわらず、IAEAはNPT保障措置協定下のイランがおかした数多くの重大な義務違反を示す大量の情報を発見している。
イランがもしNPT遵守の意思なしとの立場に固執するのであれば、安全保障理事会はこの問題を国際の平和と安全への脅威として取り上げることもできる。もしそれが実行不可能であるとなれば、それは、イランに責任ありとする努力にとって打撃になるばかりか、安全保障理事会そのもの有効性とNPT体制の信頼性にとっての打撃となるだろう。イランの「あしぶみ戦術」はイランが昨年9月と今年2月に同意した最低限の措置すら履行していないことをはっきりと指し示している。「イランのごまかしをこれ以上放置するならば、手遅れになるだろう」。「イランは核兵器をもつだろう」。イランは「本当のことを白状」してすべての未解決なIAEAの疑問にたいし満足のいく回答をせねばならない。
さる2003年12月19日、リビアは、WMDの機器と計画を自発的に廃棄するなどの「目を見張らせる」諸措置を発表した。リビアは、既知の核兵器開発計画の解体をはじめ、こうした約束の履行に向けて大きな前進をとげた。先週、ブッシュ大統領は「イラン=リビア制裁法」のリビアへの適用を終了した。大統領はリビアとの通商を可能にするため国際緊急経済権限法のもとでの大統領令制裁措置を変更しつつある。
最後に、核不拡散について「これまでどおり」の看板を下ろすべきときがきている。条約上のコミットメントを遵守しない一握りの諸国はNPTの使命を損なっている。NPT締約国すべの遵守なくして、不拡散の用具としてのNPTへの信頼は腐食する。その結果は、ますます多くの国々が核兵器を保有する世界の出現であって、そこではテロリストやならずもの国家が核の技術や専門知識へのアクセスを拡大していることであろう。こうした世界においては、文明諸国にたいする破滅的な攻撃のリスクがはるかに大きくなっていることであろう。
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