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 ●国連・世界の動き
 
2005年NPT再検討会議の重要な意味
黒澤 満(大阪大学教授)

 NPTの無期限延長が決定されて2回目の、全体では7回目の再検討会議が、2005年4月から5月にかけて開催される。そのための準備委員会がすでに2002年、2003年に開催されており、2004年春にも予定されている。しかしNPTを中心とする核不拡散体制は、きわめて危機的な状況に直面しており、体制の崩壊すら危惧されている。

NPT体制の危機的状況
 1995年には無期限延長とセットで「核不拡散と核軍縮の原則と目標」が合意され、また2000年にはそれを基礎として、13項目の具体的な軍縮措置に合意が見られた。しかし、2001年に米国にブッシュ政権が成立し、9・11の同時多発テロが発生したことにより、米国は軍事力を中心とする単独主義的な政策を追求し始め、国連を中心とする国際協調主義から離れていった。核兵器をめぐる政策においても自国の短期的でかつ狭い国益を追求するために、条約や国際規範を無視する方向に進んでいった。
 他方で、イラクの核問題では、米英を中心とする武力行使が国連安保理決議を経ることなく開始され、攻撃開始の最大の理由となっていた「イラクの大量破壊兵器」がいまだに発見されておらず、イラクの治安も回復されていない。また北朝鮮の核問題は、ブッシュ政権が積極的に関与することを嫌い、敵対的無視という態度を2年以上にわたってとってきたため、北朝鮮の核開発は一層進展し、事態は一層悪化している。さらにイランの核問題もさまざまな疑惑が発生し、事態は予断を許さない状況である。
 これらの問題は、NPTの当事国となっている国が、その約束に反して核兵器を保有しようとしている状況であり、核不拡散体制の内部からの崩壊を導くものとなっている。北朝鮮はすでに条約からの脱退を表明しているが、米国を中心に積極的な関与を通じて、核兵器開発計画を放棄させるよう平和的手段で解決することが必要である。

核兵器削減に逆行する米核政策
 13項目については、米国はすでにすべてを履行する意思はないと述べ、2000年の約束を守らないことを公言している。特に、包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准する意思はまったくないことを明言し、ABM条約から脱退し、STARTプロセスは放棄すると述べている。
 2002年の米国の「核態勢見直し」報告書に従って、米国の核政策が実施されつつあるが、それは、13項目の中に含まれている「安全保障政策における核兵器の役割の低下」という目的にまったく逆行する政策を追求している。対ロシアとの関係で増強されていた戦略核兵器は、戦略攻撃力削減条約により、不十分な形ではあるが、削減されることになっているが、ならず者国家などを対象とした小型核兵器は増強される方向にある。
 広島型原爆の約3分の1にあたる5キロトン以下の小型核兵器の研究・開発を禁止していた1993年の「ファース・プラット法」は廃棄され、2004年の国防予算は小型核兵器の研究を認めている。これは新たな核兵器の開発・配備への道を開くものであり、さらに「使える核兵器」を製造し、実際に使用する可能性を目論んでいるものである。このことは、これまでの核兵器が相手の核兵器の使用を抑止することを目的とし、「使えない核兵器」あるいは「使わせない核兵器」として位置づけられていたことから、大きな変換を遂げており、国際社会にとってもきわめて危険な進展である。さらに、このことは、核兵器は実際の使用のために必要であるということになり、核兵器を削減し、全廃する方向に逆行している。

「明確な約束」実行へ
 またこれとの関係で、新たな核兵器の開発が進むと、ある段階で実験することが必要になる。米国がCTBTに批准しない最大の理由はこの必要性であり、そのため、すぐに核実験をする計画は無いと言いながらも、核実験の準備期間の短縮に向けては、予算措置を伴って着々と進めている。
 このように、2000年再検討会議で合意された「核兵器廃絶という核兵器国による明確な約束」は、米国を中心とする核兵器国の実際の行動ではまったく実施されておらず、かえって逆方向に進んでおり、国際社会の安全は低下している。この流れを変えるために、NPTの締約国がすべて集まり議論する2005年の再検討会議は重要な意味を有している。