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 ●日本政府の動向
 
戦争する国への設計図
防衛計画大綱・中期防批判
平山 武久
(非核平和問題研究者・非核政府の会常任世話人)
(2019.02.15)


 政府は昨年12月18日の閣議で来年度以降の2019年度以降にかかる「防衛計画の大綱」(30防衛大綱)及び2019〜23年度「中期防衛力整備計画(31中期防)を決定しました。その実施にかかる費用は5年間で約27兆4700億円、新事業に約17兆1700億円とされています。安倍首相のもとで防衛予算は一本調子に増額されてきました。大軍拡計画と言うべき30防衛大綱・31中期防をレポートします。

■計画に「多次元統合防衛力」を導入

 30防衛大綱は前防衛大綱の統合機動防衛力を深化させるとしながら、従来から自衛隊を分けてきた陸・海・空に新しく宇宙、サイバー、電磁波の3領域を加えた多次元統合防衛力の構築を打ち出しました。これにより「全ての領域で能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施を可能にする」(防衛大綱・計画の方針)としています。「2019年度防衛省予算の概要」(防衛省発行の一般向け広報資料)は「領域横断作戦に必要な能力の強化における優先事項」を多くのページを割いて説明しています。

■なぜ、クロス・ドメインなのか

 30防衛大綱は、現在の安全保障環境の特徴を述べるなかで「軍や法執行機関を用いて他国の主権を脅かすことや、ソーシャル・ネットワーク等を用いて他国の世論を操作することなど、多様な手段により、平素から恒常的に行われている」「グレー・ゾーン事態は国家間の競争の一環として長期にわたり継続する傾向にあるが国家間の競争の一環として長期にわたり継続する傾向が(ある)」と指摘しています。3領域の能力を備えて常時継続的な活動を行う自衛隊がこのような脅威に対抗する力となるとし、クロス・ドメイン体制の意味を説いています。

■領域横断の危険な側面

 サイバー技術や人工衛星を運用する能力は、これまでも部隊に置かれていました。今回、新たに構想している宇宙・サイバー・電磁波領域への対応能力の確立は、個々の技術分野の能力を置くこととは量的にも質的にも技術次元の異なるものです。それぞれの領域に30の専門部隊を置き作戦行動を行うとなれば、その任務は領域ごとの優勢≠フ確保・獲得となります。もともと国境を設けないで、各国が平和的に利用してきた場所に国家間の対立を持ち込む危険を見過ごすことはできません。

■日米同盟を基軸として

 30防衛大綱は、「日米安全保障体制は我が国自身の防衛体制と相まって、我が国の安全保障の基軸である」と明記し、「日米安全保障体制の中核とする日米同盟は、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と繁栄に大きな役割を果たしている」と世界の規模に広がる日米同盟路線を明確にしています。
 そして、「冷戦期に懸念されていたような主要国間の大規模武力紛争の蓋然性は引き続き低い」としながら、急速に厳しさを増している「我が国に対する脅威」への備えを強調しています。
 このようななかで、領域横断作戦によって全領域に強化される多次元統合戦略が、日米同盟のなかでの危険な役割を増大させることは明らかです。

■新防衛大綱は憲法をさらに大きく踏み外す

 30防衛大綱・中期防は、安保法制(戦争法)施行後初の防衛計画です。その意識が強く出ています。
 スタンド・オフ・ミサイルや陸上配備型イージス・システム、短距離離陸・垂直着陸可能なF35B戦闘機、その離着艦を可能にする護衛艦「いずも」改造、さらに宇宙領域・サイバー領域・電磁波領域用の兵器・装備など、敵基地攻撃能力の新兵器・装備が目白押しです。
 また、30防衛大綱は、核兵器の脅威に対しては「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠」だとして、米国の「核の傘」の下にとどまる計画です。

 30防衛大綱では、航空自衛隊に宇宙領域専門部隊、共同部隊としてサイバー防衛部隊を置くことが記されています。加えて2019年度予算案には組織整備の予算案が提出されています。
 宇宙関係では防衛局に「宇宙・海洋政策室(仮称)」を設置するととともに、米コロラド州の米空軍基地で行われる「宇宙基礎課程」に要員を派遣する計画です。

 サイバー関連では国際訓練等に要員を派遣する計画です。電磁波領域では整備計画室に「電磁波政策室(仮称)」を、また統合幕僚監部に「電磁波領域企画室」設置の予算が組み込まれています。
 30防衛大綱は、自衛隊を支える態勢を広く民間各分野に求めようとしています。大学の研究に対する助成基金提供の安全保障技術研究推進制度、民間研究機関やJAXAとの交流、地域コミュニティーとの連携などを広く展開し、知的基盤を広げようとしています。

 米国と一体化した日米同盟のもとで進められる領域横断作戦・多次元統合防衛力の構築は、「戦争する国づくり」に踏み出す戦争計画です。

 30防衛大綱・中期防は憲法を踏み外して進む「戦争する国」への設計図と言うべきものです。