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 ●国連・世界の動き
 
  2015年NPT再検討会議第2回準備委員会について
(13.5.15)
常任世話人・藤田俊彦

 核兵器の不拡散に関する条約(NPT)の締約国は2015年再検討会議にむけての第2回準備委員会を4月22日から5月3日までスイスのジュネーブで開催した。189ヵ国の締約国のうち、106ヵ国が出席したと伝えられている。
 そのうちアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5ヵ国が核兵器国、他の101ヵ国がすべて非核兵器国であった。2015年会議の準備委員会は第1回が昨年開かれ、第2回が今年、そして第3回が明年開催される。
 準備委員会は、NPTの3本柱すなわち核軍備縮小撤廃、核兵器不拡散、原子力平和利用を中心に、一般討論や項目別討論を行なった。またインド、パキスタン、イスラエルの新規加入や北朝鮮脱退問題などについて審議した。
 日本被団協をはじめとして各国非政府組織の代表が意見を述べる公式会合が開かれたほか、日本原水協などの非政府組織代表も各国政府代表や国連役員などと懇談し、意見を交換した。

80ヵ国が核兵器使用の非人道性訴える
 非同盟諸国をはじめ、多くの締約国があらためて2010年会議の確認した行動計画、とりわけ核戦争防止の唯一の絶対的保証は核軍備撤廃であるとの指摘を確認し、核兵器国による一定の時間枠なかでの核兵器廃絶の実現を求めた。
 新アジェンダ連合は核兵器国が核軍備撤廃に向けて削減を大幅に加速するよう要求し、具体的な段階的目標(ベンチマーク)のほか、それぞれの段階の時間割や時間枠(タイムライン)の設定を求めるなど、従来に増して厳しい課題を核兵器国に突き付けた。
 新アジェンダ連合の一国でもある南アフリカは「核兵器の人道的影響に関する共同声明」を一般討論で提案し、最終的に80ヵ国の賛同を集めて注目された。この数年来、核兵器の使用が人道に反する破滅的行為であって、二度と繰り返されてはならないとする国際世論が国連総会などの場で高まりを見せてきた流れを受けての声明であった。
 米主導軍事同盟の参加国からもNATO加盟のノルウェーやアイスランドなど多数がこれに賛同した。しかし、日本は、結局、この共同声明に署名しなかった。伝えられるところでは、「いかなる状況の下においても、核兵器が決して2度と使われないことは、人類存続の利益になる」とする文言に日本は最後まで抵抗した。
 日本は、これまで戦争における唯一の被爆国ではあるものの、アメリカとの軍事同盟のもとにあって、その核の傘の下に置かれた国として、アメリカの核兵器使用の手を縛ることは避けねばならないとする思惑があったと言われる。

アメリカ、従来の核兵器政策に固執
 アメリカは、一般討論でも個別課題の協議においても、核抑止政策にもとづいた核戦略に一貫して固執した。配備済み戦略核兵器の限定的な削減を盛り込んだロシアとの新START条約の締結と実行を自画自賛して、国際的な支持を促したほか、さらに戦略核・戦術核双方にわたるロシアとの新たな核軍縮合意を追求し続ける姿勢を示唆した。
 核不拡散の分野について、アメリカ代表は北朝鮮のミサイル・核爆発実験とNPT脱退宣言を激しく非難して、不拡散体制維持の必要を強調した。同様に、アメリカはイランの核活動についても、国連安保理やIAEAの決議・決定の違反を厳しく非難し、核兵器なき世界の実現には非核兵器国もその責めを負うなどと述べていた。
 また、アメリカ代表は、核兵器不拡散の基礎固めを意図する核物質保全サミットの開催のほか、第3回準備委員会にむけての核兵器国間の情報交換など、最大核兵器国としての指導的立場から果たすべき責任を果たしているとの含意の発言を繰り返した。
 これとの関連で、日本とオーストラリアが共同で主導する「軍縮不拡散イニシアチブ」(外務省訳による、略号NPDI。「不拡散・軍縮イニシアチブ」が適訳ではあるまいか)の役割に注目したい。
 この地域横断的な10ヵ国グループは包括的核実験禁止条約の発効促進、非戦略核兵器の削減、核兵器の役割り低減、軍縮不拡散教育などを今回の準備委員会で提起した。これらの目標は、オバマ民主党政権が本来公に支持したい政策ながら、野党共和党の反対・抵抗などの国内政治的理由から控えてきた課題である。
 この10ヵ国イニシアチブは、こうした諸課題を側面から一歩一歩促進するジュニア・パートナーの役割を忠実に果たしているようにみえる。

中東非大量破壊兵器地帯の設置進まず
 1995年NPT再検討・延長会議のさいに採択された中東決議はNPTそのものの無投票延長の決定的要素の一つと考えられている。しかし、実際には、決議は実行に移されることなく推移し、2010年再検討会議に至ってようやく主要な行動計画の一つとして「中東非大量破壊兵器地域の設立」が採択された。
 国連事務局の懸命の努力の結果、フィンランドの協力を得て、2012年中にこの計画の実行をめざした中東地域のすべての国々??アラブ諸国及びイスラエル??を結集したヘルシンキ会議の開催が決められた。しかし、ロケット攻撃など武装抗争の再発によってパレスチナ情勢が緊迫するなか、イスラエルの立場に配慮したアメリカのイニシアチブで会議は無期延期された。
 今回のNPT準備委員会では、あらためて2013年中の会議開催がいくつかの国から提言されたが、新計画の合意は得られなかった。アラブ諸国のリーダー格のエジプトは会議第2週の冒頭、このような事態に業を煮やして、会議ボイコットを宣言し、退席する挙に出た。
 このエジプトのボイコットに同調したアラブの国は一つもなかった。しかし、この動きが今後のヘルシンキ会議の行方にどのような影響を与えるか、予断を許さない状況がある。

原子力平和利用をめぐる動向
 日本の福島原発事故は、今回の準備委員会にもインパクトを与え続けた。各国の代表は事故の重大性に注目し、原子力平和利用における安全性確保の必要に言及した。しかし、同時に、非同盟諸国をふくむ少なからぬ開発途上国の代表は、エネルギー・インフラ事情の必要を理由に、原子力平和利用の推進の意向を重ねて強調していた。
 アメリカ代表は、この点に関して、イランの安保理決議・IAEA決定への違反などに言及しつつ、原子炉燃料を供給する民間事業体の設置をあらためて提案し、またIAEAを軸とする国際燃料銀行の設立構想にも言及した。
 アメリカは、原子力平和利用をめぐっても、核の安全・保全の政策を前面に押し立てながら、自らのイニシアチブの下、原子力平和利用の地球規模の新たな多数派の形成を目論んでいるように見える。

準備委員会の「報告」と「総括」
 第2回準備委員会会合全体のおおまかな概要を記した正式な「報告」が承認され、発表された。そのほか、議長の「議事総括」も作業文書の一つとして採択された。双方ともインターネットで流されている。ただし、正式な議事録らしい議事録は今回もまとめられずに終った。
 委員会議事の実質的な評価を盛り込むはずの「議事総括」は様々な意見の隔たりの大きさのため、またしても作業文書の一つとして採択されるハメとなった。核兵器国・非核兵器国の間および非核兵器国の間の見解の相違の多さ、大きさがあらためて注目されている。
 こうした状況を積み込んだまま、事態は2014年4〜5月、ニューヨークで開かれる第3回準備委員会へ、そして同じくニューヨークで開催予定の2015年NPT再検討会議へと進んでいくことになった。