| 核兵器の脅威の一掃に関するオバマ大統領ベルリン演説についての見解 (13.6.19) |
ダリル・キンボール
米軍備管理協会理事長 |
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さる6月19日、ベルリンのブランデンブルク門前に立ったオバマ米大統領は、4500人ほどの聴衆を前にして演説を行なった。1960年代のケネディ、80年代のレーガン両大統領にならってのベルリン演説であったが、アメリカ国内の評判はけっして芳しくなかったようである。
オバマ政権の核兵器政策を大筋で支持し、その推進に一役買ってきた『軍備管理協会』(ACA)のダリル・キンボール理事長は、即日、「核兵器の脅威の一掃に関するオバマ大統領ベルリン演説についての見解」という長い標題の論評を同協会のホームページに発表した。
キンボール氏は、以下の抄訳で見られるように、オバマ演説の核兵器政策部分を取り上げて、一部を肯定的に高く評価したものの、他の多くの点で国内政治動向とかかわらせながら注文をつけ、その「再活性化」を促した。ロシアとの関係を除くと、欧州以外の国際的地域情勢とのかかわりにおける言及は多くない。
ただし、結論部分の最後の2つのパラグラフは論評の長い標題と同様、注目に値しよう。
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オバマ大統領が本日、ベルリンで行なった演説のなかに含まれている、米国の肥大化した核軍備を削減し、あわせて地球上の核兵器の危険を減殺する諸提案は歓迎されるべきであり、いずれもその機はすでに熟し切っている。
ケネディ政権期いらい、核の脅威を削減し一掃する米国のリーダーシップは決定的に重要である。しかし、それに成功するにあたっては、オバマと彼の政権が緊急にして厳しい核安全保障上のそれら課題に高度の優先性をあたえ、自らのエネルギーを集中し続ける必要がある。
より大幅な
核軍備削減を
アメリカは、核兵器を保有する現実の敵対国もしくは潜在的敵対国を抑止するのに十分過ぎる核軍備を保有しており、その中の配備済み戦略核弾頭だけについてみても1000発をはるかに下回る水準にまで削減できるし、削減すべきである。大統領がベルリン演説で触れた「3分の1」削減は結構な第一歩であるが、しかし、それは4年前の新START条約交渉の際にアメリカが合意する用意のあった水準をわずか200?300発下回るだけである。
米ロのさらなる核軍備削減は正式な後継条約の締結を待つ必要がない。両国大統領は並行的かつ相互的な戦略核弾頭の削減を通じて、同様な結果をより早急に達成することができるし、例えば、今後5年以内にそれぞれ1000発を十分下回る水準にまで引き下げることが可能であって、その削減実績も2010年新START条約のもとで検証できる。
国家安全保障にかかわる超党派の指導者たちは、これまで以上に大幅なさらなる核軍備削減がアメリカの安全保障を強め、予算節約をもたらし、さらに他の核兵器国が核軍備縮小撤廃の事業に参加するよう圧力をかけるのに役立つとする点で一致している。
さらに、アメリカ政府としては、核軍備のさらなる削減によって、新世代の戦略核兵器運搬システムを建造するとか、5つの型式の核弾頭を改造するとかの余りにもカネのかかる野心的なペンタゴン計画を縮小させることもできるであろう。2013年の軍備管理協会評価によると、もしアメリカが戦略核弾頭配備数を1000発以下に合理化するならば、今後10年間で390億ドルの税金を節約できることになる。
大統領は、さらに、戦術核兵器に関する北大西洋条約機構(NATO)とロシアの惰性を克服するために、より強いリーダーシップを発揮するべきである。冷戦終了後、20年超を経た現在、ロシアがおよそ2000発もの戦術核兵器を保有し、しかもその半数が陳腐化した海軍・空軍の防衛システムに配備されている状況があるが、それを正当化する軍事的根拠は皆無である。また、アメリカも、空軍機による運搬可能な180発の核爆弾を欧州で保有し、その補修・調整に80億ドル以上を要する事態があって、これも何ら軍事的必要性はない。大統領は、こうした米戦術核爆弾の撤去過程を開始するとともに、ロシアに対し同様措置をとるよう呼びかけるべきである。
核拡散防止と
CTBT批准
核兵器拡散防止のためにも、より強力なアメリカの指導性が必要とされる。
大統領は、イランの核潜在力を制限するとともにより効果的な査察制度を実現するために、繰り返し中断されてきた従来の交渉過程を立て直すよう新たな努力を傾注せねばならない。そのための外交的な時間は残されているが、時間は浪費されるべきでない。大統領は、さらに、北朝鮮の核・ミサイル態勢に関して、それがアジアに及ぼす脅威を低減させ、同国を核不拡散条約に復帰させることをめざして、真剣な交渉を再開せねばならない。
大統領は、いかなる場所においても核実験爆発を禁止する包括的核実験禁止条約(CTBT)のアメリカによる批准をあらためて公約した。これは重要であり、歓迎されるべきである。しかし、この公約の実現には、上院の支持を勝ちとるため、今後真剣に努力することが必要である。
アイゼンハワー、ケネディ両大統領の政権期いらい、核実験禁止はアメリカの国家安全保障目的の一つでありつづけてきた。今日、すべての核実験に対する法的拘束力のある、検証可能な禁止は各国の既存の兵器の改良を防止するために決定的に重要である。それは、また、例えばイランのような潜在的核保有国が将来、運搬可能な核弾頭を完成させることをこれまでよりもむずかしくするであろう。
2009年、オバマ大統領は自らの政権がCTBT批准を確保するため「即時的かつ積極的」な措置を追求すると述べた。アメリカ国内では超党派の国家安全保障の指導者から、また国際的にはアメリカの同盟国から、批准活動への強力な支持がある。もしも政府が2010年新START条約の承認を成功裏に勝ちとるために払った努力と同様な努力を払うならば、批准は可能である。
そうした過程を動き出させるため、オバマ大統領は大統領府のなかにおけるCTBT批准担当の上級補佐官もしくはタスクフォースの任命を今後数週間以内に発表すべきである。これは、連邦議会上院の議員たちにCTBT関連の諸問題に具体的に取り組ませるとともに、こうした重要問題に関して当然な事実にもとづく対話を開始させる一助となるであろう。
「核保全サミット」第4回会合を2016年にアメリカで開催するとの大統領の決定はきわめて重要であり、地球的核保全体制のなかに残る間隙を埋めるのに役立つであろう。
オバマ政権は、核テロの脅威に対して高い政治レベルでの注目の焦点を当てることを促すとともに、脆弱な核保有管理の大幅強化を地球規模で加速させた。しかし、現行体制は普遍的な基準や報告要件をいまだに欠如している。オバマ大統領は、この機会を利用して、核保全事業を増強し、これからの歳月におけるアメリカの重要な核脅威削減計画のための資金を補強すべきである。
核兵器の廃絶こそ
ケネディ大統領が50年前に明言したように、こうした「戦争の兵器が我々を抹殺してしまう前に、我々がそれらの兵器を廃絶しなければならない」。今日においても、すべての男性、女性そして子どもたちが事故や誤算、あるいはテロの狂気の引き起こす核戦争の脅威の下で生きている。
オバマ大統領は、今後、核リスク削減の事業を再活性化して持続させねばならない。そしてアメリカの為政者たちは今日の重大な核の挑戦に対処するために、党利党略を事とする政治を克服しなければならない。
(小見出しは編集部)
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