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 ●国連・世界の動き
 
第67回国連総会
  核兵器条約決議、2/3超の賛成集める
        ――核軍備撤廃交渉案作成の作業部会も発足へ
藤田 俊彦・前長崎総合科学大学教授・非核の政府を求める会常任世話人



 第67回国連総会は去る12月3日、軍縮・国際安全保障担当の第1委員会が承認した58件の決議・決定を正式に採択した。そのおよそ半数が核兵器関連の決議であり、そしてその多くは人道主義の立場から核兵器なき世界の速やかな実現を求めていた。
 核兵器国による軍縮措置について、米ロ間の新START条約締結などをある程度評価しながらも、一連の決議は2011/12年の核軍備縮小過程の緩慢さを指摘し、怒りを込めて批判した。
 そうした批判は、今回、核軍備縮小撤廃の多国間交渉について具体案をまとめるため「作業部会」を設置する決議に結実した。ただし、米英仏ロの4核兵器国はこの決議に揃って反対票を投じており、作業部会が順調に滑り出せるかどうかに関心が集まっている。

 
1.核軍備撤廃の主要4決議

 国連総会の恒例となった核軍備撤廃に関する主要4決議はいずれも賛成3分の2以上で採択され、国連が全体として核兵器廃絶を希求していることがあらためて確認された。しかし、核兵器ゼロ達成の時間的枠組みについては重要な相違が残されている。(第1表第1グループ参照)。
 二つの非同盟決議:第1委員会の一般討論では非同盟諸国を代表してインドネシアが核軍備撤廃に関する総論的見解を述べ、原則的な「核軍備縮小撤廃」決議および具体的な「核兵器条約締結」決議を提案することに言及した。
 「核軍備縮小撤廃」決議はミャンマーにより提案され、核兵器国の核軍備削減の遅れを厳しく非難し、核弾頭・運搬システムの近代化を批判するとともに、一定の時間枠の中での核軍備撤廃の必要を強調した。決議は賛成124、反対44、棄権18で採択された。4決議の中では最少の賛成であるものの投票総数の3分の2を超えていた。
 マレーシア提案による核兵器条約締結の決議は「国際司法裁判所の勧告的意見(1996年7月)のフォローアップ」を求めて、核兵器の開発、実験、製造、使用、威嚇などを禁止し、核兵器の廃棄を規定する条約の締結を訴えた。この決議も前文で一定の時間枠内での核兵器廃絶を求めた。投票結果は135・22・26。
 新アジェンダ決議:新アジェンダ連合7ヵ国を代表してスウェーデンが提案した決議は前年同様「核軍備撤廃公約の実行を加速する」と題され、核兵器国の核軍備削減を撤廃に向けて大幅に加速させるよう促した。主要4決議の中で新アジェンダ決議は最多の賛成票を集めた。投票結果:175・6・5。
 スウェーデン代表は、一般討論の演説の際、核兵器国に対し核軍備縮小の促進を迫るとともに、削減・廃棄のスケジュール表の確定の必要に言及し、非同盟諸国提案の決議の時間枠設定と同様の意向を示唆した。
 日本決議:「核兵器完全廃棄に向けた共同行動」と題した決議は核軍備の漸次的削減を通じて究極的に核兵器廃絶を達成する内容である。時間枠設定の表明はない。外務省によれば、今回の決議は米国のほか英国も提案国に加わり、両核兵器国を含めこれまで最多の99ヵ国が共同提案国となり、またこれまで最多の賛成174票を獲得した(174・1・13)。
 第65・67回総会における新アジェンダ連合決議と日本決議の集めた賛成票数を比較すると、第65回は同数、第66回は日本が1上回り、第67回は日本が1下回った。両決議の票集め競争が国連内で激烈に続けられている。

 
2.核兵器使用禁止、消極的安全保障、CTBT、カットオフ

 第1表第2グループのインド提案「核兵器使用禁止条約」決議は3分の2超の賛成を集めて採択された。しかし米、英、仏のほか多くのNATO加盟国が反対し、ロ、日、韓などが棄権した。中国以外の核兵器国と米主導軍事同盟諸国の多くが核兵器使用禁止条約に抵抗している。
 パキスタン提案の「消極的安全保障確約」決議は非核兵器国に対する核兵器不使用を求めた。米をはじめ米主導同盟網の諸国は反対こそ控えたものの多くが棄権し、核兵器国の間では英、中が投票に欠席するなど、核抑止の現状を踏まえての不使用確約への抵抗が読み取れる。
 アルゼンチンなどの提案した「包括的核実験禁止条約」決議は条約早期発効を促した。賛成はほぼ満票で、反対1(北朝鮮)、棄権3(インドほか)が目立つ。米国は連邦議会で根深い反対があり、1996年に調印を済ませながらも批准手続きの目処が依然としてたたない。中国は米の批准がすみ次第、批准する構えと見られる。
 包括的核実験禁止条約(CTBT)は締結以来16年余を経て、なお発効に至らない。付言すれば、部分的核実験禁止条約(PTBT)の発効は50年前、1963年であった。半世紀を経て、核兵器実験の禁止はなお未完成である。
 カナダが提案して採択された「核分裂性物質生産禁止条約」決議も圧倒的な投票結果(166?1?21)である。しかし、米国では、このカットオフ条約に一定の支持があるものの、CTBTのつまずきも絡んで国内の協議が緒につかず、国際交渉の開始も予定されていない。

 
3.非核兵器地帯と同関連の諸決議

 第3グループのエジプト提案の決議「中東核拡散のリスク」は非核地帯関連の決議の中でもとくに注目を集めた(投票結果:174・6・6)。1995年核不拡散条約延長・再検討会議における中東決議、とりわけ2010年再検討会議において採択された大量破壊兵器なき中東の実現をめざす2012年中東会議開催の決定の影響もあってのことである。
 しかし、パレスチナの武力衝突があらたに表面化するなかで、中東諸国すべての出席を得てフィンランドの首都ヘルシンキで開催される予定であった中東会議は、11月下旬、無期延期された。米英ロ3共同主催国のうち、イスラエルの同盟国である米の発案による決定であった。
 このため、「中東核拡散のリスク」決議をはじめとする非同盟諸国の提案した諸決議などが2012年中東「非大量破壊兵器化」会議への賛同を表明したものの、当該部分は結局、事実上無意味となった。イスラエル核兵器保有のからむ中東の緊張は予見できる将来、継続する。
 アルゼンチンなどの提案した「核兵器なき南半球と同隣接地域」決議も圧倒的な賛成を集めて採択された(投票結果:179・4・4)。総会本会議で採択に反対したのは米、英、仏、ロの4核兵器国のみで、イスラエルは棄権した。
 決議は、前文の最終段落で「国連海洋法条約の原則および規則を含め、公海の自由および海洋空間の通行権に関する国際法の適用可能な原則および規則を再確認し」て、本文に進んでいる。
 米英仏ロの反対はそれでもなお核兵器国の行動の自由を頑迷に主張するものであった。

 
4.核軍備縮小撤廃の多国間交渉にむけて作業部会を設置

 第1表第4グループに見られるように、国連総会は「多国間核軍備縮小撤廃交渉を推進する」と題したユニークな決議を採択した。ノルウェー、オーストリア、メキシコが中心となって共同提案した決議で、3分の2超の賛成を集めた(147?4?31)。
 たしかに、国連では、核軍備の削減や廃棄などを求める少なからぬ決議が毎年、採択されてきた。しかし、それらの決議を実施するための詳細な具体的方途については、「軍縮会議」や「軍縮委員会」におけるコンセンサス決定方式なども障害となって、多国間の合意に至っていない。
 本稿冒頭のミャンマー決議の前文も「軍縮会議」に対し「核軍備撤廃に関するアドホック委員会を設置する」こと、それにより「特定された時間的枠組みの中での核兵器完全廃棄のための段階的計画に関する交渉を開始すること」を要請したが、またも実行されなかったと指摘している。
 今回の新たな決議はこうした長期デッドロックの打開を意図している。特徴は、2国間・数ヵ国間の機関でなく国連の機関として、「会議」や「委員会」より下のランクの「作業部会」を設置する、その目的は「多国間の核軍備縮小撤廃交渉を推進する提案を開発する」にある。
 また、この作業部会は臨時的なアドホック機関ではなく、あくまでも実質的な成果をあげるための提案を作り出す「無期限の作業部会」とされている。さらに、実際に準備活動を開始するため、2013年中に最長3週間、ジュネーブで会合することも決定された。
 ただし、第1表に見られるように、この決議の採択にあたって、?米英仏ロ4ヵ国が反対(中国は棄権)し、?インド、パキスタン、イスラエルが棄権(北朝鮮は賛成)したことに留意したい。このような核兵器国の反対・棄権の状況下、はたしてこの作業部会が本格的に始動できるのか。
 また、日本は賛成したが、その賛成理由の説明に立った日本代表は、国際社会がとるべき核関連の次なる措置はカットオフ条約であって、「この決議により設置される無期限の作業部会がかかる条約に関する交渉の開始に資することを期待する」と発言した。
 これは、核軍備撤廃交渉案の作成を目標とする作業部会の役割をあえて矮小化するもので、カットオフ条約が米国の意図する核軍備管理の次なる選択肢であることに配慮した表明であった。

 
5.「米英仏ロ+イスラエル」の核軍備固執際立つ

 最後に、第2表の示唆する主要国の核軍備に関する志向を検討する。まず、核兵器なき世界の達成・維持を求めて止まないトップ2カ国(マレーシア、メキシコ)と、核兵器保有に固執するボトム2ヵ国(米国、イスラエル)の間の落差の大きさ――得点:57対15――が注目される。
 英・仏がそれらボトム2ヵ国につぐ位置にあること、ロシアがそれに続いていることも注目に値する。NATO、ANZUSなどの加盟国がそれに続く。北朝鮮、インド、パキスタン、中国の6〜10位も留意する必要があろう。
 唯一の被爆国日本は5位にとどまった。日本は、相変わらず、トップ集団に仲間入りして世界の核軍備撤廃過程をリードする立場をとれずにいる。反核・平和の国民世論に直面しているだけに、反対がゼロではあるが、ただしそれは棄権5に一部化けているように見受けられる。
 私たちは日本社会の核兵器廃絶志向をさらに大きく発展させることが求められている。日本政府は、国際人道法にかなう非核世界の達成・維持の基本方針を確立し、対米追従・協調の核兵器政策を放棄して、非核化イニシアチブを地球規模で発揮せねばならない。