| 2012年核保全サミット:論評とコミュニケ |
| (12.4.15) |
|
2012年ソウル核保全サミットは3月27日、コミュニケを採択して2日間の日程を終了した。
オバマ米大統領の主導で開かれた2010年ワシントン・サミットのあとを受けて、ソウル・サミットは、北朝鮮の衛星打ち上げ計画発表という背景のもと、53カ国・4国際機関の首脳が参加した。
ソウル・サミットは核テロの防止を主要目標としてあらためて確認し、高濃縮ウランの保全措置強化などに合意した。福島原発事故をめぐっては、核保全と原子力安全の関連性が取り上げられている。
また、国際機関として、国際刑事警察機構が新たに参加し、分裂性物質とその他の放射性物質の不正取引を抑制するさらなる制度的措置として注目された。
今号は、米国シンクタンク「外交問題評議会」のホームページに掲載された、ソウル・サミットに関するミカ・ゼンコー氏の論評「2012年核保全サミット:オバマの仕事は進行中」を抄訳で紹介する。原題:The
2012 Nuclear Security Summit: Obama's Work in Progress。
オバマ大統領がめざす「核兵器なき世界の平和と安定」のうち、とくに核テロ防止と不拡散の目標を集中的に追求しているとする評者のサミット・シリーズの位置づけが注目される。
そのほか、ソウル・コミュニケの前文の一部と13項目を抄訳で紹介する。ただし、キーワード"nuclear security" の訳語として「核安保」や「核セキュリティ」でなく「核保全」を選んでいる。
国際原子力機関がこの用語を次のように定義しているので、参考にした。「核物質またはその他の放射性物質もしくはそれらの物質に関連する施設にかかわる盗取、妨害破壊行為、不法移転もしくはその他の悪意ある行為にたいする予防、検知および対応」。
◇
ゼンコー論評 「オバマの仕事は進行中」
2005年、当時上院議員であったバラク・オバマは最初の外国旅行として、旧ソ連の大量破壊兵器施設の視察のため、1週間、リチャード・ルーガー上院議員に同行した。その後、オバマはしばしば、この旅行に言及し、とりわけ自らが視察した施設で目撃した劣悪な管理のもとに置かれた極めて大量の致死性物質について語っている。オバマ大統領候補は「米国の安全保障にとっての最も深刻な脅威を一つあげるとすれば、それは核テロである」と語った。核保全はオバマにとって最大級の優先課題となった。すでに2008年7月の時点で、オバマは「大統領任期1期目の間に世界中のすべての管理不十分な核物質を確保するため地球的規模の努力を主導する」と誓っていた。
2010年4月に米国で開催された第1回核保全サミットのもと、核テロの潜在的脅威は最も厳しい指摘を受けて著しく減殺されることになり、さらに今回の韓国ソウルにおけるサミットでもその努力がさらに加重された。双方のサミットの実際的な成果は戦略的諸目標に優先順位を付した明確な作業プランの策定であって、第1回サミット参加47カ国の国別公約を具体的に提示している。こうした公約は自発的で拘束力のないものであり、遵守を強制する執行取り決めをもたない。
しかし、第1回核保全サミットで提出された国別公約のおよそ80%が完遂されている。これは外交圧力や経済制裁によるものでなく、公約不履行のさいの当惑をめぐる各国指導者の恐怖感、それに加えてアメリカからの技術的・資金的援助によるものであった。具体例として、旧ソ連の共和国の一つウクライナはかつて5000発の核兵器を保有していたが、先週、最後まで残っていた兵器級ウランをすべてロシアに回送した。このウランは民間研究炉での使用のため低濃縮ウランに希釈される。
こうした核保全サミットの持続的進展にもかかわらず、オバマ大統領は自ら設定した4年で完遂するとの期限を守れないであろう。オバマ政権の担当官(編注:複数)はこの当初目標を撤回して、そもそもこの最終期限がアメリカの核不拡散計画を加速させ、核物質保全への国際的支持を動員する「強制機能」を持つものであったと主張していた。そのうえ、すべての核物質を確保する米国政府の包括的かつ調整済みの計画はいまも存在しない。国家安全保障会議の担当官(複数)は、最近、会計検査院の調査員に対して「すべての関連要素を組み込んだ単一の総合的な省庁横断計画を策定するのは数年がかりの仕事になりえよう」と認めた。
大多数の人々にとって、「核」という言葉はすぐイランあるいは北朝鮮を想い起こさせる。だが、いずれの国も核兵器の爆薬とするのに十分な分裂性物質を保有しているわけではない。双方合わせて世界全体の核物質の1%の何分の一かをもっているだけである。今日、32カ国が兵器利用可能な核物質を1キロ以上保有している。核テロ防止のためには、おおむね、それらの物質のすべてにカギをかけて保管する――少なくとも最新のIAEA指針に則ってそうしなければならない。核保全サミット参加国首脳の意識を高めることは核物質保全という最終目標達成の可能性を強める。しかし、永続的かつ効果的な核保全は一時の誓約でなく、すべての兵器利用可能な物質の普遍的廃棄をもってのみ終了する現在進行中の過程である。それが近々成就するものではないだけに、世界の首脳はこの2年間の成果を継続させ、その結果を2014年核保全サミットに報告せねばならない。(ミカ・ゼンコー氏は外交問題評議会・紛争防止担当フェロー)
ソウル・コミュニケ前文・13項目抜粋
2012年3月26、27日、ソウルにおいて会合した我々首脳は、2010年ワシントン核保全サミットで生み出された政治的公約、すなわち核保全の強化、核テロの脅威の減殺およびテロ分子、犯罪者または他の権限なき行為者による核物質の取得の防止にむけて努力するとの公約を確認する。
核テロは引き続き国際の安全保障に対する最も厳しい脅威の一つである。政治、経済、社会および心理に及ぼす核テロの地球規模の潜在的諸結果を与件として、その脅威の打破にあたっては、強固な各国別措置と国際的協力が必要である。(前文第1段落)
核保全の地球的構成
(1)核物質防護に関する条約および核テロ行為防止国際条約を含む多数国間の法的文書の重要性を認識し、それらの条約を普遍的に遵守する。
(2)2010年サミット以降、核テロと戦う地球的イニシアチブ、大量破壊兵器・物質拡散防止の地球的パートナーシップなどの国際イニシアティブが果たした貢献を認識する。
国際原子力機関の役割
(3)国際核保全枠組みを強化するにあたり国際原子力機関(IAEA)が果たす基本的責任と中心的役割を再確認し、IAEAの2010〜2013年核保全計画の価値を認識する。
核物質
(4)高濃縮ウランと分離プルトニウムが特別の注意を要することを認識し、これらの物質を適切に管理し、計量し、安全を確保することの重要性をかさねて強調する。
(5)技術的および経済的に可能なかぎり、高濃縮ウランから低濃縮ウランへの原子炉の転換を含め、高濃縮ウランの使用を最小限にする措置を講じるよう各国に対し奨励する。
放射線源
(6)放射線源が産業、医療、農業および研究分野において広く利用されており、かつ悪意のある行為に対して脆弱であることに留意して、各国に対し放射線源の管理を確保することを促す。
核保全と原子力安全
(7)原子力安全対策と核保全対策が人間の生命と健康および環境を守る目標を共通に持つことを認める。これらの対策は系統的方途により原子力施設において策定され、実施され、管理されるべきである。
核保全と原子力安全がいずれも阻害されることのないよう、双方の橋渡し的領域に関して適切な勧告を提示するべく、IAEAが会合を組織する努力を払っていることを歓迎する。
輸送保全
(8)国内と国際の輸送において、核およびその他の放射性物質の保全を強化する努力を継続する。各国に対してこの目的のため必要な技術を入手するさい協力することを奨励する。
不正取引とのたたかい
(9)核の不正取引の防止、検知、対応および訴追のため各国の能力を構築する必要性を強調する。これに関連して、国内の法令に則して不正取引とたたかうために、各国の能力の間の行動志向的な協調を奨励する。国境における核物質とその他の放射性物質の査察と検知の分野における各国の技術的能力の向上に取り組む。
核鑑識
(10)核鑑識は、検出された核物質とその他の放射性物質の出所を特定し、不正取引および悪意をもっての使用などの行為を訴追するための証拠を提供するうえで効果的な手段となりうる。各国が、相互にまたIAEAと協力して、核鑑識能力を開発し、強化するために取り組むことを奨励する。
核保全文化
(11)人的能力構築に対する投資は強固な核保全文化を促進し、維持するための基本である。各国に対して2国間および多国間の協力を含め、それぞれの最良の成果を共有しあい、それぞれの能力を発展させることを奨励する。各国のすべての利害関係者が核保全文化強化にコミットすることを奨励する。
情報保全
(12)非国家主体が、悪意のある目的のために核物質を取得しまたは使用したり、原子力施設における管理システムを妨害したりするために必要な情報、技術を得ることを防ぐ重要性を認識する。
各国に対して、核物質と核施設を防護するための手続きやプロトコルに関するものを含む情報の効果的管理のための国レベルと施設レベルの措置の開発と強化を継続することを奨励する。
国際協力
(13)すべての国が、核物質の物理的防護と計量システム、緊急事態への備えと対処能力、および関連する法令・規制の枠組みを強化することを奨励する。
国際社会に対し、2国間、地域および多数国間のレベルで、支援を必要とする国に対し必要な支援を行うよう奨励する。各国を支援する努力を引き続き主導するとのIAEAの意向を歓迎する。
|
| |
|