| オバマ政権の新防衛政策指針の核戦略について |
| ハンス・M・クリステンセン論評(米科学者連盟HPより)(12.1.5) |
オバマ大統領は1月5日、国防総省に出向いて演説を行ない、自らの指示と関与で作成された新しい国防戦略の指針を発表した。パネッタ国防長官も同席し、指針公刊の声明を発表したほか、デンプシー統合参謀本部議長(陸軍大将)も出席・発言した。
この賑々しい会見で公表された文書は「米国の地球規模の指導力を維持するために:21世紀国防政策の優先課題」と題した「防衛戦略指針」(A4版16ページ)。その原題は次の通り。
“Sustaining U.S. Global Leadership; Priorities for 21st Century Defense.
Defense Strategic Guidance.”
米国の大手新聞各紙はニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストをはじめとして、新しい防衛戦略指針の主な内容を伝え、社説等でも論評を加えた。11月の大統領選挙をひかえて、今後、予算措置をはじめ具体的な防衛政策が提示されるとともに、民主・共和両党間の政争がさらに激しくなると予想される。
新国防政策指針のうち、核戦略に言及した部分は多くはなかったが、米国科学者連盟(FAS)のハンス・M・クリステンセン氏は即日、FASホームページに短い論評を寄稿した。以下は『オバマ大統領の新国防戦略:それは新核戦略になるのか』と題したクリステン論評の抄訳である。小見出しは編集部。
* * *
オバマ政権は今日、新国防戦略を発表した。この新戦略は、イラクとアフガニスタンにおける作戦の縮小および財政危機によりつくり出された新たな予算上の制約にともなって、米国の軍事力と軍事ドクトリンを再編成するため必要となった、とされている。
ただし、新しい戦略がこれからいかに実行されるかについて、その詳細はほとんど明らかにされていない。今後、2月早々に予定されている2013会計年度の予算要求のなかで、より多くの詳しい内容が示されることになるであろう。
オバマ新核戦略の柱
核戦力について、この新戦略は核兵器が存在するかぎり「安全、確実、有効」な核戦力を維持するとの公約を再確認している。「われわれは、潜在的敵対勢力を抑止すること、および、米国の同盟諸国とその他の安全保障パートナー諸国にたいし米国の安全保障公約に依存できると保証することの双方の目的のため、いかなる状況においても敵対勢力にたいし受容不可能な損害を与える展望をもって対処することのできる核戦力を配置するであろう」。この戦略は太平洋地域と中東に重要な焦点をあてていると思われる。北朝鮮ではなく中国とイランが主な潜在的敵対勢力と位置づけられているように見える。ただし、ロシアこそが飛び抜けて最大規模の核兵器保有潜在的敵対勢力である。
2009年4月、オバマ大統領はプラハにおいて米国が「核兵器のない世界の平和と安全を追求すること」、「世界が変わりえないとわれわれに告げる声を無視する」必要があること、「米国が核兵器のない世界にむけて具体的な措置を講じること」、そして「冷戦思考に終止符を打つため、われわれが国家安全保障戦略における核兵器の役割を縮小すること」などを力強く誓約した。さらに、新START条約が配備済み戦略核戦力の若干の削減を規定しているほか、2010年核態勢見直し報告(NPR)が核軍備縮小撤廃と核兵器の役割のさらなる縮小への公約を再確認した。
新国防戦略の言葉づかいはいささか臆病なきらいがあって、「われわれの核抑止の諸目標はより小さな核戦力をもって達成することができる可能性がある。それは、現在保有されている核兵器の数量を削減し、かつ、国家安全保障戦略におけるそれら兵器の役割を低減するのに役立つであろう」と述べるにとどめている。この言葉づかいは、おそらく、政権の「ポストNPR分析」なるもの――これは「標的設定要件と緊急発進態勢の潜在的変更」を通じてロシアとの間で「核軍縮交渉の次のラウンドの準備」をする政権内部で進行中の努力である――の予備的な所見を反映しているのであろう。
核政策についてのFASの立場
FASは、これまで長きにわたって、米国核戦力がさらに削減できるしまた削減されるべきであると主張してきたほか、現在よりはるかに少数の核兵器とより低水準の作戦準備態勢、および軍部が核兵器の潜在的使用計画を立案するさいの要件に関する大統領指針の変更によって、十分な核抑止力が維持されうると主張してきた。
冷戦期における米国戦略の焦点であった欧州については、FASは、ソ連の脅威の消滅という状況のもと、およびNATOが当面する基本的に異なった安全保障上の諸課題のもとで、残された米国核兵器の欧州撤退が可能になったと主張してきた。新しい米国国防戦略は、安全保障状況の全般的な変化のもと、米国の対欧姿勢の変更が可能になっていると結論付けており、米国の対NATO安全保障公約を維持しつつ、同時に、今日の世界の諸課題によりよく対応するのに適した、より賢明な姿勢の開発が必要とされているとしている。この言葉遣いが欧州からの非戦略核兵器の撤収を想定しているかどうかは今後の成り行きを見なければならないが、しかし配備継続を正当化することはこれまで以上にむずかしくなったように見受けられる。
核軍備縮小撤廃の軌道が強調点
新国防戦略における核抑止を維持するとの公約がそれと同様に重要な核戦力の規模と役割を削減するとの公約を曇らせていないことは重要である。他の核兵器諸国にたいする明確なメッセージは、プラハにおいて表明された核軍備縮小撤廃の軌道こそ米国の政策の「強調点」であり、こうしたリーダーシップにならうことがかれらの利益になるということである。
核戦力を削減することによって、および、かつての冷戦を特徴づけまた今日の計画立案においても未だに普及している交戦思考から核ドクトリンをさらに引き離すことによって、今後10年間、膨大な額の資金が節約できるであろう。これこそが21世紀の優先課題でなければならない。核戦力の無限の近代化を続けてはならない。
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