| われわれは核兵器廃止の義務を共有する |
| マルコム・フレーザー元オーストラリア首相 |
| (シドニー・モーニング・ヘラルド紙 2011年7月8日付) |
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核筆者のマルコム・フレーザーはオーストラリアの第22代首相(自由党所属)で、核兵器廃止国際キャンペーン(ICAN)の著名人支持者の1人である。
なお、この論考は国際司法裁判所による核兵器使用に関する勧告的意見の公表の15周年にあたって発表されている。
出所:Malcolm Fraser, “We all share the duty to eliminate nuclear weapons,”The
Sydney Morning Herald, July 8, 2011.
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もし国際法が公の定めとして妥当性をもつならば、それは決定的に重要な意味をもつ諸問題に適用されねばならない。核兵器はその適用範囲を超えないし、それどころかその最も重要な試金石となる。
この恐怖の兵器は、通常の使用方法により、想像を超える規模の無差別的な人間の苦しみを引き起こす。この兵器は、人権や環境を擁護する条約のほか、国際人道法の基本的な諸原則を破る。
何千発、何万発もの核兵器の存続は法の支配の概念そのものを弱化させ、力による支配の体制を強化する。そうした体制下、少数の国が政治目的を達成するため他国にたいし大規模な破壊を加える――そして自らをブートする――と脅している。
15年前の今日、国際司法裁判所は世界における最高の法的権威として核兵器を使用することおよび使用すると威嚇することを違法であると宣言するとともに、すべての国が核不拡散条約の加盟国であるか否かに関わらず核兵器を廃棄する義務を負うと裁定した。
現在、地球全体で2万発超の核兵器があり、その爆発威力は平均して広島原爆の20〜30倍に達する。これらの核兵器のうち約2000発がつねに厳戒態勢にあり、事故によるにせよ指示によるにせよ、いつ何時でも破滅的被害を加える用意ができている。
唯1発の核爆弾でも、仮にある大都会の上空で爆発させた場合、数百万の人びとを殺害することができる。そのさい、いかなる有効な人道的対応もなしえない。なぜなら、その都会の医療インフラはほとんど破壊し尽くされているからであり、さらに、いかなる外部からの救援努力も高度の放射能――無音・無臭・不可視の永続的キラー――によって妨害されるからである。
唯一の良識ある対処法はこの怪物兵器をすべての国の兵器庫から除去することにある。核軍備撤廃は、単なる一つの選択肢ではなく、国際法により義務化されている。しかし、核兵器国およびその同盟国――オーストラリアを含む――は核兵器廃止に向けての進展に抵抗しつつある。
包括的核兵器禁止条約は長い間、延びのびになっている。オーストラリアは、労働党が2007年の政権獲得以前、公約していたように、そうした条約交渉のための国際的努力に拍車をかけるべきである。
受け入れることができない人道的被害を引き起こすと国際社会により認定されたその他の兵器については、生物・化学兵器から対人地雷・クラスター爆弾にいたるまで、核兵器条約と同様な条約がすでに締結されている。これらの先行諸条約はすべて国家の慣行を変更させ、結果として有意義な軍備撤廃をもたらしている。
アメリカとロシアの間で最近、締結された新START条約は正しい方向における1歩であるが、しかし両国の巨大な核軍備にささやかな削減をもたらす結果に終わっただけである。その他のNPTに加盟している核兵器保有3ヵ国、すなわちイギリス、フランス、中国は核軍備縮小撤廃についてほとんど見るべき成果をあげていない。さらに、イスラエル、インド、パキスタンを多国間の核軍備縮小撤廃過程に引き入れる努力にいたっては、ほとんどまったく何もなされていない。
核兵器国の中には「核兵器のない世界」への支持を表明している国もあるものの、すべての核兵器国は国際法の要件と相いれない核戦力近代化に多額の資金を投入しつつある。
2011年には、これらの核兵器国は、それぞれの核軍備の強化にむけて、推定で合計1000億ドルを支出する。この金額は国際連合の年間通常予算の50年分に等しい。世界銀行によると、世界の極貧状況を一掃するミレニアム開発目標を達成するには、毎年、この金額のちょうど半分、400〜600億ドルを投資すれば十分である。
[編注]国連広報センターは、国連予算について次のように報じている。「2010年の国連の通常予算額は、約25億ドルです。この額は東京都世田谷区の2010年度一般会計予算である約2500億 円とほぼ同じです」
核兵器廃止国際キャンペーン(ICAN)が情報公開諸法により今年5月に明らかにしたところでは、オーストラリア納税者の税金を投資に振り向ける「未来基金」はアメリカ、イギリス、フランス、インドむけに核兵器を製造している15企業の持ち株など1億3500万ドル相当を保有している。
これらの投資は、核軍備縮小撤廃の努力を妨げるばかりでなく、オーストラリア国内で違法であるかまたはオーストラリアが締約国である条約に違反する経済活動に関与する企業への投資を控えるとした、「未来基金」の明記された政策に反している。「基金」はこうした企業から資金を引き上げるべきである。「基金」は、称賛すべきことに、地雷やクラスター兵器を生産する企業からすでに資金を引き上げた実績を有している。
オーストラリアは、アメリカの核兵器による保護を主張し続けるかぎり、その核軍備撤廃提唱国としての信頼性は大いに減殺されるであろう。核軍備撤廃の大義に共感をよせるアメリカ大統領が在任しているいまこそ、オーストラリアが核兵器なき国防態勢を採用し、かつ、核兵器廃止にむけて有意義な貢献を開始する理想的な好機である。
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