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 ●国連・世界の動き
 
第65回国連総会
  一連の核軍備撤廃・不拡散の決議を採択
       ――核兵器禁止条約に70%超の賛成集まる
藤田 俊彦・前長崎総合科学大学教授・非核政府の会常任世話人



 第65回国連総会はさる12月8日、国際安全保障に関する決議・決定58件を採択した。うち20件超が核軍備撤廃・不拡散、核兵器禁止条約など核兵器関連の決議であった。
 今回の総会は、同じくニューヨーク国連ビルで5月に開催された2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議の成果をうけて、第1委員会などにおいて例年以上に踏み込んだ審議が行なわれた。
 総会決議は、法的拘束力こそ欠くものの、国連加盟国が核兵器なき世界の達成についていかなる見解や決意をもつかを端的に表明する。本稿はそうした核兵器関連決議の目標や討議内容、表決結果を国連当局の新聞発表などにもとづいて検討する。
 まず、主な決議の内容や賛否の分布を考えてみよう。第1表をご参照いただきたい。


 核軍備の撤廃・不拡散に関する決議

 
第1グループ=核兵器廃絶決議4件
 (1)アイルランドが提案した新アジェンダ連合決議の正式タイトルは「核兵器のない世界に向けて:核軍備撤廃公約の実行を加速する」である。
 決議は、NPT再検討会議の最終文書を評価し、それに呼応する構成である。米ロ新START条約など核軍縮の一定の進行を肯定しながらも、世界核兵器状況がなお緊急な改善を要するとして、核軍備撤廃に向けた諸措置の加速を核兵器国にきびしく要求した。
 決議は、第1委員会段階では、前回に続いて日本決議を上回る票数を集めて承認され、本会議に送付された。本会議での投票では賛成が初めて日本決議と同数となり、しかも賛成率では上回って投票総数の94・5%に達した。
 (2)ミャンマーが多数の非同盟諸国を代表して提案した例年の「核軍備縮小撤廃」決議はその一貫した高い原則性があらためて注目された。
 決議の前文は核軍備撤廃を一定の時間枠のなかで早急に達成する方針を明記している。非同盟運動はそうした方針のもと、核兵器条約の締結を追求する立場を堅持してきた。
 本文第1パラグラフは、核軍備撤廃の交渉を開始する機が熟したと指摘、半年前のNPT再検討会議のあとだけに、その主張がさらに現実性を増したことを印象づけた。
 総会本会議における賛成は投票総数の65・6%と、3分の2にまであとわずかである。
 (3)日本が主な提案国となった決議は「核兵器完全廃棄に向けた共同行動」と題している。
 本文冒頭の第1パラグラフは、これまでと同様、NPTのすべての条文の義務――核不拡散、核軍備縮小撤廃、原子力平和利用の義務――のバランスのとれた履行を求めた。
 それは唯一の被爆国に期待された可及的速やかな核兵器廃絶の訴えではなかった。それどころか、決議の表題こそ改められたものの、この第1パラグラフの文言は驚くべきことに従来とまったく同一であり、なんら変更されていなかった。
 NPT第6条の核軍備撤廃義務の遵守は第3パラグラフでようやく書き込まれている。
 日本決議は、前回から米国、ドイツなどを共同提案国に加えて、最終期限のない「ステップ・バイ・ステップ」の核軍縮を特徴とする点がますます際立ってきた。
 本会議の賛成票は新アジェンダ決議と同数ながら、率では1ポイント下回って93・5%。
 (4)マレーシア決議は、非同盟諸国の賛同のもと、「国際司法裁判所(ICJ)の勧告的意見のフォローアップ」を促すとし、核兵器の禁止および廃棄を定める条約の締結のためただちに交渉を開始することを要求した。
 第1委員会では、多くの国々が潘基文国連事務総長による核兵器条約をはじめとする5項目提案に言及するなどして、核兵器条約の早急な締結に賛成した。
 しかし米国は、現段階における核兵器条約の交渉はその内容が多岐にわたるためデッドロック必至であり、核軍縮の推進にとっては「反生産的」であると主張し、反対した。
 NATO諸国は英、仏を含めおおむねこれに同調したが、カナダ、ノルウェーなど5ヵ国が反対せずに棄権して注目された。核軍縮の進行につれてこうした条約の必要性が増すとの見解と言われる。
 決議は賛成133票、72・3%の支持で採択された。ICJ勧告的意見の直後の第51回総会から第65回総会までの間、賛成票は110票台から130票台へと伸びてきた。
 とくに、前回総会の賛成124票から今回の133票への急増は、NPT会議における討議の深まり、国際世論のさらなる成熟を反映したと考えられる。
 なお、新アジェンダ連合、日本、マレーシアの3決議はそろって国際人道法の順守の責務に言及し、大量無差別な死と破壊をもたらす核兵器使用に対する国際的批判が厳しさを増していることを示した。

 
第2〜第4グループの諸決議
 
第2グループ:インド提案の核兵器使用禁止決議およびパキスタン提案による非核兵器国に対する核兵器使用禁止の決議があらためて総会の注目を集めた。決議は、それぞれ、非同盟運動の伝統的な立場の表明であり、両国の長年の主張にもとづく。
 双方の決議とも、米国とその同盟国の反対や抵抗に直面してきた。第1表に見られるインド決議へのまとまった反対票、パキスタン決議への同様な棄権はその反映である。核兵器使用の禁止は核兵器廃絶に到達する道程における大きな課題として残されている。

 
第3グループ:アフリカ、中央アジアの非核兵器地帯条約の正式な発効に関する決議は、とくにラテンアメリカ・カリブ海、南太平洋、東南アジア、南極大陸を含む南半球全体の非核化の完成とその北方への拡大の進行を印象づけた。
 中東の非核化・非大量破壊兵器化の課題をめぐって今回も2つの決議が採択された。しかし、NPT再検討会議の合意で弾みがついたかにみえた中東和平交渉の前途は険しく、米国の肝いりで動き出した当面の交渉ラウンドはすでに頓挫している。

 
第4グループ:宇宙空間関連の2決議は今回も圧倒的な多数の賛成で採択された。
 ただし、米国は双方に棄権した。ロシア・中国対米国のポスト冷戦期における核戦略に関わる対抗が底流にある。核兵器なき宇宙の実現の課題は残されている。
 ジュネーブ軍縮会議(CD)の十数年にわたる停滞を打破する決議は最終的には無投票で採択された。核兵器禁止条約の交渉を行なうとすれば、通常、CDをおいて他にない。
 しかし、討議では核分裂性物質生産禁止条約の関連で、パキスタンが一部文言に異を唱えた。米国の対インド核協力への反発が根底にある。CD再活性化は未解決のままである。

 
核兵器関連決議への主要国の投票態度

 では、国連総会の総意として採択されたこれらの核兵器関連決議について、主要各国はどのような投票行動をとったのか。第2表はその状況をまとめている。


 無投票採択の5決議を除き、16決議についてそれぞれの国が何件に賛成し、反対し、棄権したか。また、賛成=3点、反対=0点、棄権=1点として採点し、その合計点について、18ヵ国の順位をつけてある。
 
米国は決議反対の旗振り役:最大の核戦力を保有する国アメリカは、反対した決議が10件と最高であった。
 オバマ政権の就任第1年、前回総会では若干の改善がみられ、アメリカは相変わらず最下位ながらもイスラエルと同率であった。しかし今回またも単独最下位に転落し、以前のブッシュ政権、クリントン政権の実績に逆戻りした。
 オバマ政権は、11月中間選挙の民主党大敗のあと、内外政策の右寄り再検討を進めていると評されるが、この成績はその一端を示しているのかもしれない。
 
米・イスラエル、米・英・仏の合作:アメリカの賛成の少なさの上を行ったのが中東唯一の核兵器国イスラエルで、米・英・仏とイスラエルの投票行動は共通性がある。
 第1表では、投票で採択された決議に対し米英仏3核兵器国の共同の反対を示す3連続の×××が16件中7件、イスラエルを含む4ヵ国の共同の反対が5件もある。
 核兵器なき世界への具体策に対する反対と抵抗の原動力の所在が見える。
 
ロシアと中国の位置は?:ロシアはこの順位表のなかで年来徐々に下降してきたが、いまや真ん中あたりに定着した。
 中国はこれと対照的に一貫して上位5カ国集団に入っており、核兵器国の中で唯1国、核兵器廃絶の立場を鮮明にしている。今回は3位につけ、反対案件はゼロ。棄権2つのうち1つは日本決議への棄権であった。
 
マレーシア、メキシコの最上位つづく:非同盟運動のリーダーである両国は、例年のように、採択された決議のすべてに賛成し、反対・棄権は皆無。
 とりわけ、マレーシアは核兵器条約締結決議の主要提案国であり、その核兵器なき世界の実現をめざす原則的な努力は国連内で高く評価されている。
 第2表におけるマレーシアのトップ、アメリカのボトムはまことに象徴的である。
 
日本の順位:唯一の被爆国であるものの、日本は国連社会の核兵器廃絶運動のリーダーたりえず、例年、5位〜7位、上位3分の1あたりにとどまっている。
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 見てきたように、国連総会は、今回、国際司法裁判所の勧告的意見にもとづき核兵器条約締結の交渉をただちに開始するとの決議を賛成70%超で採択した。
 日本は、本来、こうした決議の採択のため、先頭に立って尽力すべきであるのに、それを怠り、この決議に棄権すらした。
 アメリカとの軍事同盟のもと、その核の傘の下に入り込んでいる日本政府は、国民の核兵器廃絶世論にあえて目をつぶり、アメリカの反対に追従して棄権したのである。
 2010年NPT再検討会議を議長として成功に導いたフィリピンのカバクチュラン国連大使は、総会討議のさなかのある会合の席上、核兵器廃絶の目標の達成には国際世論のさらなる大きな高まりが不可欠であると強調した。
 マレーシア、フィリピンなどアジアの隣国をはじめとして、すべての地域の多くの国々が、いま、核兵器のない世界の実現にむけて手を携えて前進することを求めている。
 われわれは、日本において非核の政治を強め、非核の政府を作る運動をさらに大きく発展させる責務を負っている。
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注:第1表第1グループの核兵器廃絶に関する4決議全文は、こちら