HOME >> 核兵器をめぐる情報━国連・世界の動き
 
 ●国連・世界の動き
 
「2010年NPT再検討会議の成果とその意義 
                   
黒澤 満・大阪大学名誉教授・大阪女学院大学教授 


 ことし5月に開催された核不拡散条約(NPT)再検討会議は、核兵器廃絶への重要な一歩となる合意文書を、核保有国を含む全会一致で採択しました。この成果を、核兵器廃絶条約の締結交渉開始をはじめ今後の非核・平和運動の新たな前進の力とすることが求められています。
 非核の政府を求める会は、この見地から、7月30日、黒澤満・大阪大学名誉教授・大阪女学院大学教授を招いて、講演会「2010年NPT再検討会議の成果とその意義」を開きました。黒澤さんはNPT再検討会議の4週間、外務省顧問としてニューヨークに滞在し、会議の経過を終始見届けてきた、軍縮国際法の第一人者です。同講演(要旨)を紹介します。(「非核の政府を求める会ニュース」2010年9〜11月号に連載)

       ◇         ◇         ◇

[1] NPT再検討会議に至る核軍縮に向けての動向

 先ず、NPT再検討会議の前の状況について言うと、2009年4月のオバマ米大統領のプラハ演説がターニングポイントになると思います。「アメリカは核兵器を使用した唯一の国として行動する責任がある」「核兵器の役割を下げる」「冷戦思考を終わらせる」などと述べた重要な演説です。
 同時に、その前に見ておくべきことがあります。
 1つは、2007年1月のシュルツ、キッシンジャー、ペリー、ナムの元米政府高官4氏の「核兵器のない世界」の提言です。“アメリカの安全保障は核兵器がないほうがいい”“核テロの心配もあるし、原子力の平和利用も進めるのだから、アメリカはそれでリーダーシップをとるべきだ”と言ったわけです。
 いま、オバマ大統領が「核兵器のない世界」の元祖のように言われていますが、4氏の提言は1月で、オバマの大統領選のキャンペーンは2007年2月から始まっています。その頃の核問題についての主張は「ニュークリア・セキュリティ」、つまり脆弱な核物質を安全に管理すべきだということが中心でした。核兵器廃絶の話が出てくるのは10月のシカゴ演説が最初です。だからこの4人の提言がなかったら、果たしてオバマは「核兵器のない世界を」と言っていたか。その意味で、07年1月と08年1月の4氏提言は非常に重要だったと思います。
 もう1つは、2008年10月のパン・ギムン国連事務総長の「核軍縮5項目」提案です。そのなかで特に注目されているのが核兵器禁止条約です。“核兵器国はNPT第6条の義務をちゃんと履行しなさい。そのためには核兵器禁止条約のようなこともありえるんじゃないか”と言っている。この提案をNGO(非政府組織)が大きく取り上げ、今回の再検討会議でもこれが最終文書にどこまで入るかが焦点になりました。
 そういう経過があって09年4月にオバマ演説があって、米ロの戦略核兵器削減交渉が始まって、5月にはNPT再検討会議の準備委員会が議題の暫定的採択に合意した。再検討会議の1年前に議題が採択されたわけです。前回の2005年は、議題を採択するのに再検討会議の4週間のうち2週間半もかかったわけですが今回はけんか腰な対立はなかった。そこで議題がパッと決まったのは、やはりオバマ効果と言えます。
 9月には、国連安保理として初の核不拡散・核軍縮サミットが開かれました。国連安保理の9月の議長はアメリカだったので、オバマが司会しました。
 この安保理サミットは、P5(常任理事国)=N5(核兵器大国)が入っていますから、5大国の調整があって、核軍縮に関しては非常に低いレベルの合意となった。フランスは核軍縮を言わないし、中国は核分裂性物質の生産のモラトリアムに反対という事情もあって、最大公約数で合意したということです。
 12月には、日本とオーストラリアがサポートして2年ぐらいやってきた「核不拡散と核軍縮に関する国際委員会」(ICNND)が報告書を出しました。核兵器の「先制不使用」とか、「役割は核抑止という唯一の目的にする」という点は入りませんでしたが、NPTに対する提起をかなり具体的に入れた、いい報告書になっています。
 2010年4月に、アメリカの「核態勢見直し」(NPR)報告が出ました。NPRは5〜10年間、核軍縮あるいは核開発をどうするか、核の使用をどうするかということが全部書いてあるわけで、核兵器に関する一番重要な文書だと思います。1994年にクリントン大統領が出していますが、米ソの冷戦の時とあまり変わらなかったし、2002年のブッシュ政権の報告は、核兵器をどんどん使う、核兵器をもっていない国にも使う、核実験をやる必要があるかもしれないからCTBT(包括的核実験禁止条約)には反対、新しい小型の核兵器を開発するというものでした。
 今回のNPR報告は、新しい核兵器は開発しない、CTBTは批准する、NPTに入っていてNPTを遵守している非核兵器国には核兵器は使わないなど、ブッシュ時代とは180度違う政策が取り入れられています。これも今回のNPT会議の成功に非常にいい影響を与えています。
 NPR報告の発表から3日後に、米国とロシアの新START条約(新戦略兵器削減条約)が署名されました。戦略核をとりあえず30%ぐらい削減するということで、NPT会議への弾みがついた。これは、核兵器削減だけでなく、米ロ関係のリセットという役割が大きいと思います。ブッシュ時代の対立関係から協調関係への大きな転換があったと思います。
 そして4月に開かれた「核セキュリティ世界サミット」。これは核セキュリティですから、オバマが一番最初に言っていたことで、各国は4年以内に脆弱な核物質を安全に管理するようにということが決められています。

[2] NPT再検討会議の進行

 会議の進行は、初日の午前中に開会式があって、議題を採択し、議長を選んで、その後、パン・ギムン国連事務総長、天野IAEA事務局長が演説しました。
 それに続いてすぐ一般演説に入り、1番はNAM(非同盟諸国)の代表、2番目に、大統領で唯一出席したイランのアフマディネジャッドが演説しました。
 午後にアメリカのクリントン国務長官が演説します。クリントンは迫力があって演説もうまいし、そこで新しい政策――南太平洋非核地帯条約とアフリカ非核兵器地帯条約に対してアメリカは議定書に批准すると言いましたし、アメリカに核兵器がいまいくらあるかを発表しました。前向きな演説であったと思います。一般演説は109ヵ国、4国際機関が行いました。
 木曜日の午後にNGOセッションがあり、10人ほど発言しました。ここで被爆者の谷口稜暉さんが発言し、日本原水協の土田弥生さんが通訳したのですが、この話はものすごく感動を与えて、みんな総立ちで拍手をしていました。広島市長も長崎市長もしました。
 金曜日から3つの委員会に分かれて議論が始まります。第1は核軍縮、2番目は核不拡散、3番目は原子力平和利用です。それぞれ「主要委員会」とその下に「補助機関」がつきます。主要委員会?は核不拡散、核軍縮、安全保障(security)、補助機関?は軍縮、安全保証(security assurances)を扱います。主要委員会?が保障措置、非核兵器地帯、補助機関?が中東問題を含む地域問題、主要委員会?が原子力平和利用およびその他の規定、補助機関?は条約の他の規定、となっています。
 どういう形でやるかというと、2週間、主要委員会は一般的な話をし、補助機関はマスメディアもNGOも入れないで議論します。そこでいろんな提案が出てきますし、並行して作業文書(ワーキングペーパー)が出されます。作業文書は全部で70〜80ぐらいになります。
 第2週の議論と作業文書をもとに、主要委員会と補助機関の各議長が最終文書の第1案を作り、第2週の終わりに出します。それを土日にみんな読んできて、第3週の月曜から議論。第1案について2、3日議論したら、週末までにもう1回新しい案が出て、最終案は第4案になります。
 第4週になると、またみんな集まって議論します。議長が6つの委員長の案文を1つに集めて提起して、また1、2日議論して、改訂版を出して最終版をつくる。そういうふうに進んでいって、最終日28日に最終文書を採択するわけです。
 最終文書は約30ページで、前半に「レビュー」があります。これは、基本的には主要委員会の論議で決まります。各補助機関が「行動計画」案をまとめます。前半の「レビュー」の部分は議長の責任によってまとめたものだからコンセンサスはなく、後半の「行動計画」はコンセンサスにより採択します。「行動計画」は全体で64あり、核軍縮に関する「行動計画」が22あります。

[3] 核軍縮のための行動計画

 「行動計画」は、「A.原則と目的」「B.核兵器の軍縮」「C.安全保証」「D.核実験」「E.核分裂性物質」「F.核軍縮を支援する他の措置」の6つに分かれています。これは非同盟諸国の提案にもとづいているようです。それぞれの記述は、例えば「A.原則と目的」を見ると、?〜?という前文のようなものがあり、続いて行動1、2がありますが、B〜Fもそういう構成です。「行動計画」は全部で22あります。

 A.原則と目的
 ?で、核兵器のない世界における平和と安全を達成するということ、?は、核兵器廃絶の核兵器国の明確な約束を再確認する、?は2000年NPT再検討会議の最終文書で確認された実際的措置の妥当性を確認する、?は、核兵器国による核軍縮に導く有意義な措置が国際の安定、平和、安全を促進すべきだし、増加しかつ減損しない安全保障の原則にもとづくべきことを再確認する。これはおかしな原則だけれども、以前から「減損しない安全保障の原則」――安全保障が減損するなら軍縮しないという主張があって、それに対して非同盟が「増加する安全保障」と言い出して、こういう原則になったわけです。?は初めて入ったもので、国際人道法を含む適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する。?は普遍性、条約に加入してくれという話です。
 行動1は、すべての当事国は、条約および核兵器のない世界を達成するという目的に完全に一致した政策を追求することにコミットする。「核兵器のない世界」ということがバーンと行動1に入っています。行動2で、不可逆性、検証可能性、透明性の原則を適用すると言っています。

 B.核兵器の軍縮
 ?で2000年の最終文書で確認された核軍縮に導く措置を履行すること、?ですべてのタイプの核兵器を削減し廃絶する必要性、?で核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを設立する特別の努力をなす必要を言っています。ここでついに核兵器禁止条約が出てきて、「国連事務総長の核軍縮に関する5項目提案に注目する」というのが入ったわけです。?は、核兵器国による核兵器の開発と質的改善を制約する。これは最初、「行動計画」に入っていたんですが、核兵器国が反対して前文に移されたという経緯があります。
 行動3は、すべてのタイプの核兵器を削減し、究極的に廃棄するためのいっそうの努力を行うことにコミットする。修正を見ていくと、最初は「**すべきである」、その次は「**することにコミットする」、そしてだんだん緩くなって、「そうすることが非核兵器国の利益である」とか「**することが奨励される」と、持って回ったような表現で、だんだん弱くなります。
 行動4では、米ロの新戦略兵器削減条約の早期の発効と完全な履行を求めることにコミットし…これに続く措置につき協議を継続する「よう奨励される」とまた長くなっています。
 行動5では、2000年NPT再検討会議の最終文書に含まれる、核軍縮に導く措置に関する具体的進展を加速させるとし、そのためにすべきこととしてa〜gが入っています。
 aは、すべてのタイプの核兵器の世界的ストックパイルの全面的な削減。
 b。その場合、核兵器のタイプや場所に関係なく、すべての核兵器の問題に言及すること。これも最後に変わった部分で、最初、他国に配備されている核兵器をどうするか、NATOの非戦略兵器のことが書いてあったのですが、アメリカがこれに反対して、最後は「場所に関係なく」だけが残った、何かよくわからん文書になっています。
 cは、核兵器の役割および重要性をさらに低減させる。オバマ大統領がずっと言っていることです。
 dは、核兵器の使用を防止することを議論する。
 eは、核兵器の運用状況をさらに低下させる。
 fは、事故による核兵器使用の危険を低下させる。
 gは、透明性を促進する。これについて2014年の準備委員会に報告して、15年の再検討会議で全体を検討して次の措置を考えるということが、一応入りました。最初はもっといいものが入っていたのですが、これはあとで説明します。
 行動6は、軍縮会議が核軍縮を取り扱う補助機関を即時に設置すべきことに合意する。これは2000年最終文書とまったく同じです。

 C.安全保証
 これは要するに、“核兵器を使わないということを、できたら法的拘束力のあるものにしてほしい”というNAM(非同盟諸国)の要求がありまして、?で、95年の国連安保理決議ならびに非核兵器地帯の議定書を想起する、としています。
 行動7で決まっているのは何かというと、▽軍縮会議(CD)が消極的安全保証について議論することに合意する、▽2010年9月にCDの作業を支援するため国連事務総長が高級会合を開くよう求める、ということです。この2010年9月というのはもう1つ、FMCT(核分裂性物質生産禁止条約=カットオフ条約)にも出てきます。9月24日の午後、2、3時間開くと設定されています。
 行動8で安全保証に関する現行の約束を完全に尊重する。
 行動9で非核兵器地帯の設置を奨励する。非核兵器地帯条約の関連議定書を批准し協力する、としています。

 D.核実験
 ?、?はあまり大したことは書いてなくて、?は、核実験の禁止が核軍縮と核不拡散の効果的な措置を構成する、?はCTBT(包括的核実験禁止条約)に関してモラトリアムを遵守するということです。
 行動10で、すべての核兵器国は適切にCTBTを批准することを約束する。
 そして行動11で、モラトリアムは維持されるべきである。これも2000年の文書といっしょで、13項目の1と2が入っているわけです。
 行動12〜14は技術的なことで、CTBT発効促進会議とか、発効および履行を促進するとか、CTBTO準備委員会は検証レジームを完全につくるということです。基本的なことは行動10と11で、2000年から変わっていません。

 E.核分裂性物質
 行動15は、軍縮会議がFMCTの交渉を即時に始めるべきことに合意するということで、これも2000年といっしょです。そして2010年9月に高級会合を開催する。先ほどの安全保証とともにCDでどう進めるかについて会議をするということです。
 行動16〜18は、余剰核分裂性物質をIAEAに申告してその検証の下に置く、検証取り決めの開発を支持する、そういう施設を解体する、などということです。実際にはアメリカ、ロシア、イギリス、フランスはモラトリアムを宣言してつくっていません。中国だけがモラトリアムに反対しているという状況です。

 F.核軍縮を支援する他の措置
 行動19は、信頼を拡大し、透明性を改善するという抽象的なことです。
 行動20は、第6条で何をしたか、この最終文書について何をしたか定期報告を出すべきだということで、これも基本的には2000年と同じ規定になっています。
 行動21は、標準報告フォームに速やかに合意する。報告書はみんな一度出しているわけですが、自分の都合のいいところしか書いてないわけです。標準フォームにするとまずいところも書かないといかんわけで、それをやりなさいという勧告案ですが、どこまですすむか。
 行動22は軍縮・不拡散教育の重要性です。
 以上が今回のNPT再検討会議最終文書の「行動計画」です。

[4] 核軍縮をめぐる重要課題の検討

 核軍縮をめぐる重要課題について検討しましょう。

 1 核軍縮全般
 (1)核兵器禁止条約
 最初に核兵器禁止条約の話をします。
 NAM(非同盟諸国)は、2025年までに3段階で核兵器を廃棄するという、「核兵器廃絶のための行動計画のための要素」という文書を提出しています。NAMのほか、スイス、オーストリア、ノルウェーなども核兵器禁止条約を支持しました。これは2008年10月にパン・ギムン国連事務総長が5項目の提案をし、その中で核兵器禁止条約の交渉を提唱していることが影響を与えています。
 核兵器国は反対だし、アメリカは“これは近い将来達成できないし、段階的行動の代替となりえない”と言っています。
 結局、最終文書の「行動計画」では、[B.核兵器の軍縮-?](「行動計画」A〜Fの各前文および行動1〜22については前号参照)のところに、「会議は、すべての核兵器国が具体的軍縮努力を行うことを要請し、すべての国は核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを設立する特別の努力をなす必要があることを確認する。会議は、特に強力な検証システムで支えられた核兵器禁止条約または個別で相互に補強する文書の枠組みに関する合意に関する交渉の検討を提案している国連事務総長の核軍縮に関する5項目提案に注目する」という形で入ったわけです。
 最終文書にこのことが入るかどうかで大きく違うわけで、核兵器禁止条約を交渉するとは言ってないけれども、これは今後の一つの突破口になると思います。
 (2)核兵器のない世界
 これはオバマのプラハ演説から出てきて、国連安保理決議1887や、NAC(新アジェンダ連合)提案でも出ています。
 「行動計画」A?で、「会議は条約の目的に従って、すべてのためのより平和な世界を求め、核兵器のない世界における平和と安全を達成することを決議する」とし、とくに行動1でこの目的に完全に一致した政策を追求することが謳われていて、F?や行動22でも核兵器のない世界に言及しています。その意味では、これは一般に受け容れられた新しい概念になっているので、今後も1つのキーワードとして動いていくのではないかと思います。
 (3)核廃絶の明確な約束
 これは2000年合意の最大の成果ですが、アメリカとフランスは、2003、2004年あたりから“あれはあのときだけの政治的な約束で、状況が変わったからもう無効だ”と言ったわけです。それが2005年再検討会議が失敗した大きな原因でした。
 これは日豪提案にもNAC提案にも第1の措置として入っています。A?で、核兵器国の明確な約束を再確認するというのが入っていて、行動3で、この明確な約束を履行するに際して何をやるかを挙げています。2000年合意の具体的軍縮措置の有効性も行動5で確認しています。これも重要な記述として残っています。
 (4)時間的枠組み
 NAMが5年ごと・3段階の核軍縮に関する第1提案をしました。これは、2011年に協議を開始して12年に報告する、そして14年に国際会議を開く。その会議では「特定の時間的枠組み内で核兵器全廃のためのロードマップに合意する方法と手段」について議論すると書いていたわけです。しかし核兵器国が時間的枠組みに反対して、この項はほとんど削除されました。
 行動5は、a〜gの約束について核兵器国は2014年の準備委員会に報告し、2015年再検討会議で検討して次の措置を考えなさいとしています。
 それから安全保証、FMCT(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)については、最初の案は、CD(軍縮会議)が2011年末までに議論を開始できないなら、国連総会66会期が議論をどう追求すべきかを決定する、となっていました。CDは十数年動いていないわけです。だから最初の案には打開策があったけれども、これも削除されて、結局、行動7、行動15で、今年9月に事務総長が高級会合を開くということだけになっています。

 2 核兵器の削減
 核兵器の削減に関して、日豪提案は、核兵器国に対し削減を、そして増加させないことを要求していますし、会議は、削減する必要を確認し、米ロがリードすべきだとしています。
 行動3は、「核兵器の全廃を達成するという核兵器国による明確な約束を履行するに際して、核兵器国は配備および非配備のすべてのタイプの核兵器を…削減し究極的に廃棄するためのいっそうの努力を行うことにコミットする」。
 行動4で、米ロ戦略兵器削減条約の早期の発効と完全な履行を求め、協議を継続するよう奨励する。
 行動5は、2000年最終文書に含まれる核軍縮に導く措置を加速させる。行動5aでは、行動3で書いてあるようにすべてのタイプの核兵器の世界的ストックパイルの全面的な削減に向けて迅速に動くこと。行動5bで、一般核軍縮プロセスの不可分のものとして、核兵器のタイプや場所に関係なく、すべての核兵器の問題に言及すること。
 これは第3案までは、「非核兵器国に配備されている核兵器」が主題でした。アメリカはNATO(北大西洋条約機構)の核に言及しているから反対だと言い、ロシアは非戦略核兵器だけに言及するのはダメだと言って反対しました。だけどドイツなどはNATO配備の核兵器の撤去を求めていたし、NAMは核シェアリングの問題でNPT第1条、第2条違反だという議論を展開していました。

 3 核兵器の役割の低減
 オバマ演説は、安全保障戦略における核兵器の役割を低減させると言っていて、NPR(核態勢見直し)で、核兵器の使用は相手の核使用を抑止するという唯一の目的とする目標を持ちつつ、非核攻撃に対する核兵器の役割を低減する、死活的利益を防衛する極端な場合にのみ核兵器の使用を考える、NPT当事国で遵守している非核兵器国には核兵器を使用しないという政策を提案しています。
 これはパン・ギムンの5項目提案の中にも出ているし、安保理決議1887にも入っています。日豪、NAC、NAMはもちろん、アメリカは南太平洋とアフリカの非核兵器地帯条約議定書を批准すると言っているし、中国、オーストラリアも賛成だと言うわけです。それで行動5cで、すべての軍事的および安全保障上の概念、ドクトリンおよび政策において核兵器の役割および重要性をさらに低減させることが合意されています。

 4 核兵器の運用状況の低下
 これはNPRを読んでみると、ほとんど変わっていません。アメリカは警戒態勢の解除とかをする気はないということです。
 これについては、日豪提案、NAC提案、ニュージーランド提案がありますけれども、最終的には、運用状況をさらに低下させることに対する非核兵器国の正当な利益を考慮すること――最初は「運用状況を低下させること」と書いてあったんですが――となりました。

 5 核兵器の使用禁止
 NAMは核兵器使用禁止条約を締結しろと提案しています。
 行動5dは、核兵器の使用を防止し、そのための政策を議論すること、と議論するだけに終わっている。
 A?Dでは、「会議は、核兵器の使用による壊滅的な人道的影響に深い懸念を表明し、すべての国が常に国際人道法を含む適用可能な国際法を遵守する必要性を再確認する」となっています。私はこれは、核軍縮に向けた新しいアプローチだし、今後、この側面は強調すべきではないかと考えています。
 特に、核兵器禁止条約というのはあるけれども、その前に核兵器使用禁止条約をつくるとか、96年のICJ(国際司法裁判所)の勧告的意見もあるわけだから、この辺は追求するべきじゃないかと思います。96年の勧告的意見を分析したとき、マレーシアなどが核兵器禁止条約に関する総会決議を出したわけですが、そうじゃなくて、勧告的意見は核兵器の使用に関して、一般的には国際人道法に違反する、ただしある国の生存が危機に瀕するような極端な自衛の場合には核兵器の使用が違法か合法か判断できないとしたわけだから、そこをもっと議論すべきだし、使用は違法だという方向にもっていくべきだと思います。

 6 不可逆性、検証可能性、透明性の原則
 これはパン・ギムン提案はじめいろんな提案に入っています。これはある意味では進展があって、最初、「核軍縮、核その他の軍備管理・削減措置」について言っていたのを、「条約義務の履行」全体について追求すると、拡大しました。日本は非常に喜んでいますが、中国は一貫してこれに反対しています。

 7 核兵器の開発や質的改善の規制
 これもいろんな提案に入っていて、NACなどはモラトリアムしろと言い、核兵器国は反対します。それで第1案では、行動5で「新たな核兵器の開発や質的改良を停止」すると、行動計画に入っていたのが、核兵器国が反対して前文のB?に移されたわけです。それでB?は、核兵器の開発と質的改善を制約し、先進的新型核兵器の開発を終止させることが「非核兵器国の正当な利益であることを承認する」という変な文書に薄められてしまったわけです。アメリカは何と言ったかというと、“核実験はしない、だけど核兵器の安全性と信頼性を維持するためにはそのための開発が必要になるかもしれないから反対する”。そんな理屈だったら反対しないと言ったほうがいいと思いますね。

 8 定期報告
 行動21で標準報告フォームを早く作ってくれと言っていて、できればいいな、という感じです。

 9 軍縮会議での補助機関の設置
 これは、軍縮会議が核軍縮を取り扱う補助機関を即時に設置するということで、2000年文書とまったく一緒です。

 10 包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効と核実験モラトリアム
 これも2000年文書と一緒です。行動10、11が2000年の行動1、2に入っています。行動12、13、14とテクニカルなものが付け加わっただけです。

 11 兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)
 第1案では、行動18で「核分裂性物質の生産モラトリアム」というのが入っていたんですが、中国が反対して削除されました。
 また、第1案の行動19は、生産モラトリアムだけじゃなく、兵器使用可能なストック、高濃縮ウランとかプルトニウムをどれだけもっているかも全部申告しろということが入っていましたが、核大国がみんな反対して削除されました。
 結局、条約の交渉をCDで始めようという内容になりました。これはすでに去年始まりかけたことの繰り返しです。2000年合意では、FMCTの交渉を5年以内に締結しようと書いてあるわけですが、今回それがなくなったのは後退と言えます。

 12 余剰核分裂性物質の申告と検証
 これは2000年合意にもだいたい同じものがあります。余剰分はIAEAの検証の下に置いてください、検証取り決めを開発してください、生産工場を解体してくださいということで、技術的には詳細になっているけれど内容は2000年合意と同じです。

 13 安全保証
 安全保証に関しては、安保理決議1887で一応、1995年の各国声明を想起しているし、日豪提案ではより強力な安全保証ということを言っています。
 NAC、NAMは、法的拘束力ある安全保証を言っていますが、核兵器国はまだそこまで賛成していません。それで行動7では、法的拘束力ある文書を排除しないけれども、非核兵器国の安全を保証する効果的な国際取り決めの議論をCDが始めることにみんなで合意するとし、国連事務総長が今年9月に高級会合を行うとしました。

 14 非核兵器地帯と安全保証
 NAC提案、NAM提案に入っていて、行動9で非核兵器地帯の設置を奨励します、地帯条約と議定書を批准してください、議定書の発効に協力してください、関連留保も再検討してほしいということです。

 15 軍縮・不拡散教育
 日本提案を中心に、軍縮・不拡散教育に関する国連研究の勧告を履行してくださいということです。
     
 結論的に言うと、今回の再検討会議の合意は、基本的には2000年合意と一緒だと思います。というのは、会議が新しいものを採択しなかったというよりも、2000年から核軍縮が進まなかったからです。CTBTもFMCTも進んでいたら、今回同じことを書かなくてよかったわけです。私は、今回の会議が悪いというよりも、2000年から10年間に諸国家が何もしなかったことが悪かったと見ています。特にブッシュ政権のもとで“失われた8年”があった。だから会議の成果を批判するよりも、10年間軍縮が進まなかったことを批判すべきだと思います。
 私は、会議はよかったと思っています。2000年の合意が履行されなかったからもう1回同じことを言っているという形ですが、そのなかで、今回の新しい核兵器禁止条約と国際人道法というところは、これからの突破口になるんじゃないか。これが私の結論です。

 (文中敬称略、文責・編集部)