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 ●国連・世界の動き
 
米国政府、「核態勢見直し」報告を発表
2010年4月6日  

 オバマ政権は4月6日、核態勢見直し(NPR)報告を発表した。内外記者団への説明にあたったゲーツ国防長官は、1年前のオバマ大統領プラハ演説を引用し、「核兵器のない世界の平和と安全」を追求するとの立場にふれた。また、報告最終章も「展望…核兵器のない世界に向けて」と題されている。
 しかし、核軍備撤廃はこの報告の実質的な柱ではない。添付された「概要」は報告内容を次の5項目としている。(1)核兵器拡散と核テロの防止、(2)安全保障における核兵器の役割の低減、(3)核戦力縮小下の戦略的抑止と安定の維持、(4)地域的抑止の強化と同盟国防衛の再保証、(5)安全・確実・有効を旨とする核戦力の維持。
 
この報告は今後5〜10年の米国核戦力の有り方を連邦議会と国民に説明するものである。見られるように、核兵器廃絶に主たる目標をおかず、核兵器不拡散と核テロ防止をとくに強調し、一定の核軍縮を約束しながらも米国と同盟国の拡大抑止に力点をおき、さらに効率的な核軍備の維持すら強調している。
 
ただし、核兵器使用や核軍縮に関する前ブッシュ政権の方針の手直しも書き込まれた。例えば核兵器使用については、核不拡散条約(NPT)に加入し、その規定を遵守している非核兵器国には核兵器を使用しないとする方針、「消極的安全保障」を再確認した。NPTの規定に違反している国としてイランと北朝鮮が明らさまに言及されている。
 
また、核軍備に関して、前政権が固執した小型で使い易い新型核兵器の開発などは行なわない方針であり、トマホーク巡航ミサイルは旧式となったとして廃棄される。核兵器の一部は新製品の買い替えでなく、使用期限延長のための改良やすでに実験済みの部品との取り替えなどにとどめられる。
 
しかし、政権内部で論議となったいくつかの重要な措置が採用されずに終わった。その最たるものが核兵器国間における核兵器先制不使用であった。また、核軍備の3本柱――?大陸間弾道ミサイル(ICBM)、?潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、?長距離重爆撃機――のうち、1つの柱を廃止する案も斥けられた。
 
この4月には、NPR報告の発表のあと、米ロ2国間の新START条約の調印や40数ヵ国を集める核保全サミット開催が予定されていた。5月にはNPT再検討会議が控えている。日本と世界の草の根の運動の力で核兵器廃絶とそのための交渉の早急な開始を主要な課題として取り上げさせねばならない。
 NPR報告の要点は次の通り。
                      

 (1)核兵器拡散と核テロの防止
 
今回のNPRは、冷戦終了後初めて、米国が核不拡散体制を強化する国際的努力の先頭に立つことを最優先課題とした。
 
?地球規模の核戦争の脅威は遠のいたが、核攻撃のリスクは増加している。核不拡散体制とその大黒柱NPTにテコ入れする。
 
?核テロこそ今日の最も直接的かつ極端な危険である。核兵器に利用可能な、管理の行き届いていない核物質について世界中で4年以内に管理体制を確立する。
 
?新START条約のほか包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准・発効、兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の交渉など、国際的な軍備管理を追求する。
 (2)安全保障における核兵器の役割の低減
 
?核兵器の存在する限り続くことになる米国核兵器の基本的役割は米国と同盟国、友好国に対する核攻撃の抑止にある。
 
?米国は、非核攻撃を抑止するにあたり、引き続き通常戦力を強化するとともに核兵器の役割を低減する。
 
?NPTに加入し、その不拡散義務を遵守する非核兵器国に対する核兵器の使用・威嚇を控える「消極的安全保障」をさらに強化する。
 
?現在、米国は、核攻撃の抑止が核兵器の唯一の目的であるとの普遍的政策を採用する用意をもたない。しかしかかる政策が安全に採用できる条件を確立するため努力する。
 
?米国は、自国と同盟国、友好国の死活的利益を擁護するために、極限的な状況が発生した場合においてのみ核兵器の使用を考慮するであろう。
 
? 米国の通常戦力の圧倒的優位およびミサイル防衛の導入・改良は核兵器の役割の低減に貢献している。
 (3)核戦力縮小下の戦略的抑止と安定の維持
 
? 新START条約:配備された戦略核弾頭の上限を1550基、配備された運搬手段の上限を700基・機(配備されていない運搬手段と合計して800基・機)とする。米国の核戦力の3本柱であるICBM、SLBM、重爆撃機は維持される。米国のICBMはすべて単弾頭とする。重爆撃機搭載の弾頭は1機1基とカウントする。
 
? 大統領の決定の時間枠の極大化:米国の戦略戦力の高度警戒体制は維持される。核危機にさいしての大統領の決定の時間枠を極大化するため、指揮・管理体制を強化する。ICBMの緊急発射要件を低減するため、新たなICBM設置方式を追求する。
 
? 戦略的安定の強化:ロシアと中国が核戦力の近代化を進めつつあるなか、両国との間の戦略的安定の維持は重要な課題の1つである。より安定した、柔軟かつ透明な戦略的関係の育成をめざして、ロシア、中国との間で高レベルの2国間対話を追求する。
 
? 将来の核戦力削減:核兵器の一層の削減のため、新START条約後の戦略兵器、非戦略兵器双方の軍備管理の諸目標の検討が指示された。ロシアとの間では、未配備の戦略核兵器のほか非戦略核兵器にも対処する。
 (4)地域的抑止の強化と同盟国防衛の再保証
 ? 戦術戦闘爆撃機と重爆撃機に核兵器を前進配備する能力を維持する。
 
? B-61爆弾について、その安全性、確実性、使用制御の強化をふくむ全面的な耐用期間延長を進める。
 
?核弾頭搭載海洋発射巡航ミサイル(TLAM?N)トマホークを退役させる。
 
?米国の軍事力の前方プレゼンスを補完するとともに地域的抑止を強化するため、長距離攻撃能力を維持・開発する。
 
? 米国の拡大抑止の信憑性と有効性を保証する方途について、同盟国、友好国と引き続き協議する。拡大抑止能力の変更は同盟国、友好国との協議なしには行なわない。
 (5)安全・確実・有効を旨とする核戦力の維持
 
? CTBTの批准・発効を追求する。
 
? 新型核弾頭は開発せず。耐用期間延長にはすでに実験済みの部品のみを利用する。新たな軍事任務を支援せず、新たな軍事能力を提供しない。
 
? 核戦力は国立安全保障研究所とその支持施設群からなる近代的な物理的インフラおよび特別な技能を持つ有能な労働力により支えられねばならない。
 
? 核兵器複合体の施設および人員については、投資と予算の拡大が必要である。