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 ●国連・世界の動き
 
第64回国連総会─核兵器のない世界の早期実現を訴える
      ─2010年NPT再検討会議に向けて

藤田 俊彦(前長崎総合科学大学教授、常任世話人)



 国際連合は昨年9月なかばニューヨーク本部において第64回総会の幕をあけた。本会議における加盟192ヵ国の首脳レベルの演説から始まり、それを受けて第1〜第6委員会の実質的な討議が進められた。
 
核兵器問題など軍縮・国際安全保障を担当する第1委員会は1ヵ月余にわたるテーマ別討論や決議案審議を行ない、10月末、決議案54件を承認して本会議に送付。総会本会議は12月2日、すべての決議案を可決・採択した。その半数近くが核兵器関連であった。
 
第1表は主な核兵器関連決議22件の投票結果である。第1グループ:核兵器完全廃棄の5決議、第2グループ:核兵器の使用禁止、実験禁止、分裂性物質生産禁止など、第3グループ:非核兵器地帯、第4グループ:宇宙空間透明性、多国間主義促進など、である。
 
第2表は、第1表のうち投票にかけられた16決議について、各国の賛成・反対・棄権を得点として計算し、合計点の順位を付けた。得点は国際サッカー連盟(FIFA)の勝ち点算定方式を借用した。賛成=3、反対=0、棄権=1である。

 1.核兵器なき世界の早期実現は国連の総意

 
第1表の第1グループ、核兵器廃絶の5決議を検討してみよう。現在、推定2万3000基超の核兵器が世界に存在するなかで、国連はいかなる対応措置を決議したのか。
 
・新アジェンダ連合7ヵ国を代表してブラジルが提案した決議の正式名称は「核兵器のない世界にむけて、核軍備撤廃公約の実行を加速する」。核不拡散条約(NPT)第6条と1995年・2000年NPT再検討会議の結論にもとづき、核兵器が早急に廃棄されるべきであると主張した。賛成169票、投票総数の94・4%で採択された。
 
・「核軍備縮小撤廃」は一連の非同盟諸国を代表してミャンマーが提案した。原則的な核軍備撤廃論を展開し、「核戦争を防止する唯一の絶対的な保証は核兵器完全廃棄である」と主張、一定の時間枠の中で、段階的な計画の下、核兵器が早期に廃棄されるべきであると強調した。賛成111票、支持率63・4%で採択された。
 
・日本決議の名称は前回と同様「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」。米国が新たに共同提案国に加わった。NPTの3本柱である核不拡散と原子力平和利用、核軍縮をバランスよく追求し、究極的に核兵器廃絶へと導くとする最も穏健な決議である。賛成171票は5決議のうち最多で、支持率も最高の94・5%。反対はインドと北朝鮮のみ。
 
・マレーシアが多数の非同盟諸国とともに提案した決議で、正式名称は「核兵器による威嚇と核兵器の使用の合法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見の追求」。1996年7月、国連総会の要請により発表された国際司法裁の勧告的意見に従って、核兵器条約の締結交渉を直ちに開始するよう促した。賛成124票、支持率70・5%。
 
・イラン決議の名称は「1995年と2000年のNPT再検討会議において合意された核軍備撤廃義務の追求」。イランの単独提案である。2つのNPT会議で合意された核軍備撤廃義務の履行を核兵器国に迫る決議で、イランの核開発計画が論議の的となっているなか、賛成109票は5決議のうち最低であったが、しかし62・3%の支持率である。
 
第2表は、第1表に記載されている決議のうち、投票により採択された16件について、主要18ヵ国がどのように投票したか、そのランク付けをした。米国は包括的核実験禁止条約(CTBT)賛成を主な要因として、新たに2決議に賛成するなどして前回より得点を増やしたが、なおイスラエルと同点の最下位に止まった。
 
米国の同盟国であり核兵器を保有する仏、英が下から3位、4位と続き、そのあと核兵器を保有しない同盟国のカナダ、独、オーストラリアが続いた。
 
日本は上から数えて18ヵ国中7位、ほぼこの位置に定着している。新アジェンダ決議に賛成したが非同盟国提案の核兵器廃絶決議のうち2つに棄権、1つに反対。順位は北朝鮮、パキスタン、中国、イランより低く、トップのマレーシア、メキシコに遠く及ばない。

 2.新アジェンダ決議と日本決議

 
核兵器廃絶決議のうち、ともに94%超の賛成を得て採択された新アジェンダ決議と日本決議の内容を検討してみたい。双方は、国連内の意向を反映して、5月開催の2010年NPT再検討会議をきわめて重視し、支持集めを競った。
 
(1)新アジェンダ決議は、前文のなかで、新アジェンダ連合の努力で勝ち取られた、2000年再検討会議の最終文書にある「核兵器国による自国核軍備の完全廃棄を達成するとの明確な約束」という文言を引用し、その約束をあらためて「想起」した。
 
本文の第1パラグラフは核軍備の縮小撤廃・不拡散におけるNPTの中心的役割を強調。第2パラグラフは両再検討会議の成果をさらに発展させる必要を訴え、第3パラグラフは核兵器国に対して2000年会議で決めた核軍備撤廃の実際的諸措置の実行を加速させるよう要求した。
 
決議は、さらに、NPT非加入のインドなど3ヵ国に対し遅滞なく、無条件でNPTに加入するよう求め、北朝鮮にはNPT脱退声明を撤回するよう呼びかけた。そして、決議はNPT締約国に対して2010年再検討会議の成功のため努力するよう要請した。
 
(2)日本決議は、冒頭、前文第1パラグラフで、核兵器のない世界の実現のため、すべての国が核兵器完全廃絶に向けてさらなる実際的措置を講じる必要を想起し、その決意を新たにすると宣言した。
 
また、決議前文は、2010年再検討会議の第3回準備委員会の成果を歓迎したが、1995年と2000年のNPT会議に言及しながらも、新アジェンダ決議とは異なって、たんに「想起する」に止め、「明確な約束」への言及を避けた。
 
そのかわり、前文は国連安全保障理事会サミットが決議1887を採択し、核兵器なき世界のビジョンを確認したとして、米オバマ大統領のイニシアティブに賛辞を呈した。
 
日本決議は、本文第1パラグラフで、年来の決議とまったく同じ文言を用いて、NPT締約国が条約上のすべての義務を遵守するよう訴えた。第2パラグラフではNPT3本柱すべてについて2010年会議が成功するよう訴え、第3パラグラフでNPT外の諸国に対し非核兵器国として条約に加入するよう求めた。
 
このあと、決議は、第4パラグラフにいたって初めてNPT第6条に言及し、核兵器のより大幅な削減など核軍備撤廃に道を開く更なる措置の実行を訴えた。
 
総会本会議における採決では、新アジェンダ決議は賛成169票、日本決議は賛成171票を獲得した。新アジェンダ決議と日本決議の票差は前々回が14票、前回が7票、そして今回が2票となり、新アジェンダ決議が日本決議を追い上げ、ほぼ同列に並んだ。
 
なお、第1委員会の表決では、新アジェンダ決議賛成165票に対して日本決議は161票と、4票差で新アジェンダ決議が初めて日本決議を上回った。日本代表団の懸命な集票努力により、本会議で日本決議は辛うじて最多得票を得た。

 3.オバマ核政策への対案示す非同盟諸決議

 
オバマ米大統領は、国連安保理サミットで議長をつとめ、その核軍縮・核不拡散決議1887の採択を演出した。とくにCTBT発効促進、カットオフ条約支持は前ブッシュ政権の政策の重要な転換であった。
 
しかし、オバマ核政策は、核兵器完全廃棄までの間、核抑止力を維持するとし、核抑止をなんら制約していない。日本決議への支持も、その核軍縮・核不拡散が究極的核廃絶論にもとづき、事実上、核軍備撤廃を無期限に先送りしたことと不可分である。
 
第1表の非同盟諸国提案の諸決議は、こうした「日米決議」ともいうべき日本決議の内容に対して、一連の具体的な対案を提起している。
 
(1)第1グループの・「核軍備縮小撤廃」決議は、一定の時間枠のなかで、可及的速やかな核兵器廃絶を求めているほか、個別的な諸措置を段階的計画のもとに実施するとし、最終段階での核兵器の禁止・廃棄とセットにしている。
 
(2)第1グループの・核兵器条約の締結交渉決議は、核兵器なき世界の法制化のため、核兵器の禁止・廃棄を規定する条約の締結の必要性を主張し、とくに、核兵器条約の多国間交渉を「直ちに」開始するとした。
 
(3)核兵器の使用について、第2グループのインド提案決議は核兵器使用禁止の条約の締結を求め、パキスタン提案決議は非核兵器国に対する不使用の確約を要求した。
 
(4)第3グループ諸決議に明らかなように、非核兵器地帯は、いまや南半球全体をカバーし、東南アジア全域から南太平洋、中央アジアにまで広がり、モンゴル1国も非核国として確認された。核兵器国による関連議定書の早期批准が求められている。
 
(5)第4グループ「多国間主義の促進」決議は、核兵器なき世界の追求にあたり、1国の単独行動や2国間、数ヵ国間の話し合いでなく、国際的な交渉を求めている、などなど。

 4.日本の草の根運動の期待される役割

 
米国のオバマ大統領は、プラハ演説などで、核兵器なき世界実現の目標を提示してきたが、そのプラハ演説のなかですら、国内外の困難な諸条件を示唆しつつ、この目標が早急には達成出来ないであろう、自分の存命中はムリかも知れないと語った。
 
クリントン国務長官も、最近、講演の際、核兵器なき世界の実現が「われわれの存命中あるいは今後何世代もの人びとの存命中はムリかも」と語った。
 
米国は、1930年代以降最悪の不況にあり、10%超の高失業率が続くなか、財政の悪化が進み、医療保険改革を当初目的から大幅に縮小させた。与党民主党は、野党共和党の攻勢を前にして、CTBT批准に必要な上院3分の2の多数=67票はおろか、議事妨害停止に不可欠な60票すら確保できない。2010年中間選挙が迫ってくる。
 
国際的には、米ロ間START後継条約の交渉が核兵器運搬手段の削減幅やミサイル防衛、検証措置などがネックとなり、先行き不透明のまま、すでにSTARTは12月5日に失効した。両国がさらに大幅な核兵器削減へと進むシナリオは後景に退いた。中国、インドなど他の核兵器国も参加する地球規模の核軍縮構想は遠のいた。
 
日本政府は、こうした状況下、国連総会において米国その他の核兵器国への働きかけを強めて核兵器廃絶への弾みをつける力を欠いた。鳩山首相は総会演説のなかで広島・長崎の被爆体験に言及し、核兵器廃絶を唱えたが、反応はクールであった。
 
日本は、少なからぬ国連加盟国から、米国との軍事同盟とその下での「核の傘」への依存を見透かされている。鳩山首相のアジア外交重視の表明にもかかわらず、日本決議は今回もアジアの核兵器国から冷たくあしらわれた。日本決議の表決に際して、中国とパキスタンは相変わらず棄権し、インドと北朝鮮 はまたも反対した。たしかに、日本決議は米国の共同提案もあって、核兵器廃絶決議中、最多の賛成票を集めたものの、アジアの核保有国を非核の方向へ進ませるには非力であった。
 
唯一の被爆国日本が核兵器のないアジアと世界の実現をリードするには、日米軍事同盟下における核抑止依存の払拭が不可欠である。日本の草の根の運動が多面的に非核の政治の強化を追求し、そして本物の非核の政府を早急に樹立することが求められている。