| 「核のない世界」へ布石―─米ロ核削減合意 |
| 坂口 明(「しんぶん赤旗」政治部) |
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オバマ米大統領とメドベージェフ・ロシア大統領は7月6日、モスクワで会談し、12月5日に期限が切れるSTART1(第1次戦略兵器削減条約)の後継条約をつくる作業を開始することで合意した。4月6日のプラハ演説で「核兵器のない世界」を米国の国家目標にすると宣言したオバマ大統領は、その具体化の第一歩を踏み出したといえる。
オバマ氏はさらに、来年3月には核安全保障についてのサミットを開催すると発表した。同氏が初参加して7月8〜10日にイタリア・ラクイラで開かれた主要8ヵ国首脳会議(G8サミット)は、「核兵器のない世界のための状況をつくることをコミットする」との声明を採択し、同サミットとして初めて「核のない世界」をめざす決意を表明した。いずれも、来年5月に開かれる核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けて次々と布石を打つ、オバマ氏の並々ならぬ決意を感じさせる。
新条約は、両国の戦略核弾頭数を1500〜1675発に、運搬手段を500〜1000に削減しようというものだ。発効から7年で達成するとしている。米ロ両国は現在それぞれ(いずれも概数)、核弾頭を推定で2200発と2000〜3000発、運搬手段を1200、800保有している。
1994年発効のSTART1では、核弾頭の上限は各6000発、運搬手段は1600とされた。2002年調印のモスクワ条約(米ロ戦略的攻撃能力削減条約)では、2012年までに核弾頭で1700〜2200発を上限としていた。
今回の合意での注目点の一つは、交渉スピードの速さだ。米国の核固執派からは、年内にまとめる予定の核戦略「核態勢見直し」(NPR)報告の新版が提出される前に戦略核削減合意を決めてしまうのは問題だ、との批判が出ているほどだ。
NPRを受けてから対ロ交渉を始めていたのでは、来年のNPT会議で成果を出すのには間に合わないだろう。今回の合意には、「核のない世界」に向けて、世界の核兵器の95%を保有する米ロ両国が率先して削減実績を示したいとの強い意思がうかがえる。
新条約は、法的拘束力をもったものにすることがめざされている。モスクワ条約は、削減された核弾頭の廃棄や運搬手段の削減は義務づけられず、核弾頭をふたたび増加させることもできるものだった。
米ロ間の核削減としては今後、▽新条約にとどまらず、さらに大幅な削減をめざす、▽戦術核兵器の削減でも合意をめざす、▽そのような実例を示すことにより、他の核保有諸国の核削減をも促す、などが求められる。それらにもとづいて、核廃絶条約の締結を含め、「核のない世界」への実際的なロードマップが示されるべきだ。最近の米ロ関係悪化の大きな要因の1つとなってきた東欧への米ミサイル防衛配備計画も、根本的な見直しが求められよう。
オバマ氏がコロンビア大学の学生時代の1983年に書いた論文が最近「再発見」され、話題となっている。当時、米国で盛り上がっていた核凍結運動の主張を紹介しつつ、同運動や軍備管理交渉の限界を批判し、「核のない世界」を模索した内容だ。オバマ氏の核廃絶論はけっして、ブッシュ前政権によってどん底までに落ち込んだ米国の国際的信用を取り戻すための、思いつきの付け焼刃ではない。そのような人物が今、世界最大の核保有国の指導者になっている。一方で、北朝鮮やイランなどへの核拡散の危険を含め、核の脅威が募る今、この好機を活かさない手はない。
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