新春シンポジウム
「人類の未来を守れ! いま、潮目が変わる、時代を変える
――核兵器禁止条約発効から完全廃絶へ、被爆国の真価発揮のとき」
非核の政府を求める会 (2021.1.11)
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非核の政府を求める会は1月11日、シンポジウム「人類の未来を守れ! いま、潮目が変わる、時代を変える――核兵器禁止条約発効から完全廃絶へ、被爆国の真価発揮のとき」を東京都内で開きオンラインで交流しました。次にゲストのスピーチと、パネリスト5氏の報告(要旨)を紹介します。(文責・編集部。パネリストの報告全文は近く発行の『記録集』に収録予定です)
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【開会あいさつ】
人類的課題に科学的な知見で挑む有益なシンポに
小沢 隆一(常任世話人・東京慈恵会医科大学教授)
ただいまから開会のごあいさつを申しあげます。
今回のシンポジウムは、「人類の未来を守れ! いま、潮目が変わる、時代を変える」というテーマで開催いたします。現在の新型コロナ・パンデミックの下、11日後には核兵器禁止条約が発効いたします。
コロナ禍、そして気候変動、また核兵器禁止という長期的・人類的な課題についてしっかりとした知見にもとづいて政治を進めていく必要があります。まさに今日、そうした問題をトータルに考えるべき重大な局面にさしかかっているのではないかと思います。
本日のシンポジウムでは、第一線のパネリストをお招きして、国民の命、安全、個人の尊厳を守る政治をどう実現していくか、そして核兵器禁止条約発効の歴史的な意義、核兵器廃絶に向けての今後の運動の展望などについて理解を深めていきたいと思います。
現在、世論と法はまさに一致をしており、他方、その世論と法にもとづかない政治が国内外で横行しています。このような状況を改めていくために、今日のシンポジウムが役割を発揮することを期待いたします。
そしてまた、世論と法を支えるのは、何よりも人類の科学的な知見にもとづく正義です。私は、日本学術会議会員の任命拒否を受けましたけれども、このような科学・学術に背を向ける政治というのは、国民世論に背を向ける政治、法を無視する政治の根っこにある問題だと思っています。これらの問題を克服していくことが、今日、きわめて重要な政治的な課題になっていると思います。
本日のシンポジウムが、皆さんにとって有益なものになるよう願って、開会のごあいさつといたします。
【連帯スピーチ】
「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」で政府をかえよう
平野 恵美子(新日本婦人の会中央常任委員)
皆さん、こんにちは。きょうは私たちの運動について報告する機会をいただき光栄に思っています。
私たちがつくった条約=\―これが、核兵器禁止条約が採択されたとき、そして条約発効が2021年1月22日と確定したときの、私たちの実感でした。
昨年10月、新しい署名「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」がスタートしました。共同呼びかけ人には、新婦人の会長も加わり、会独自に100万の目標を決めました。
早速、全国各地で「祝・条約発効」などのプラカードやタペストリーを持って街頭に飛び出しました。署名はどこでも大歓迎です。「日本が批准していないことをニュースで知って腹が立っていた」と怒りの声も共通で、タイムリーな署名だと実感しています。
私たち新婦人は「祝・核兵器禁止条約発効!25日まで運動と平和の仲間づくり期間」に取り組んでいます。大雪やコロナウイルス感染拡大で困難な中ですけれども、年明けからスタンディングや、署名用紙を台に置いて署名してもらうなど、感染防止の工夫もしながら行動しています。
「新署名」はすでに4万に達しています。新婦人が署名活動をがんばるのは、署名には世界を動かす力があると確信しているからです。これまで地域で集めた署名は、被爆者の訴えとともに各国政府をつき動かし、禁止条約採択へとつながりました。
コロナ禍の中で、命と暮らしを大事にしない菅政権の政治に厳しい目が向けられています。今こそ、署名で対話を広げ、市民と野党の共闘で核兵器禁止条約に参加する政府をつくろうと行動を強めていきます。
皆さんごいっしょに力を合わせてまいりましょう。
【パネリストの報告】
核のない世界をつくるために――民主主義は人間の存在を確保できるか
山口 二郎(法政大学教授・「市民連合」呼びかけ人)
きょうは、日本と各国で民主政治をいかに回復するか、核廃絶というグローバルな課題に取り組む体制をいかにつくるか、というようなお話をしたいと思います。
民主主義の世界的危機
民主政治というのは今、悲観材料のほうが多いのかなと思います。皆さんも、つい先日のアメリカ・ワシントンにおける連邦議会議事堂での大混乱を見て、「アメリカの民主主義も危機に瀕している」とショックを受けられたことと思います。
トランプという人物が民主政治にとってたいへん有害な政治家であったことは明らかです。何を壊したかというと、一つは、ルールを無視する。民主主義というのは、ある種、権力をめぐる試合という側面があって、ルールにもとづいてたたかい、その結果は両者が受け入れるという了解で成り立っています。それを、自分が負けた試合はインチキだと主張して結果を覆そうとするのは、民主主義を壊す犯罪だと言えます。
そして、トランプ政治の最大の問題は、個人の尊厳を否定することです。昨年はアメリカで「ブラック・ライヴズ・マター」運動がたいへんな広がりを見せましたが、その根底には人間を差別する発想がまだ残っているという問題があります。
もう一つ見逃せないのが「陰謀論」で、選挙がインチキだったというのは典型的な「陰謀論」です。
まとめると、民主主義というのは、人間が理性とか合理的な思考・判断能力を持って話し合い、国家や自治体のルールや仕組みを決めていくことですが、その合理性とか言語能力という面で前提が崩れてきている感じがします。
日本における民主主義の劣化
日本においても、民主主義の劣化が著しいと思います。昨年末、安倍前首相の「桜を見る会」の前夜祭をめぐるウソが露見し、ウソを塗り重ねて言い逃れをする。言葉が崩壊してまともな議論が成り立たない。これは安倍長期政権がもたらした非常に大きな害悪です。
もう一つ、理念や理想に対する冷ややかな姿勢、冷笑主義みたいなものがあります。諦め感≠ニか、理想を説く人間をバカにするような姿勢がまん延している。これはけっこう大きな問題です。
改めて課題を整理すると、まず政策決定において事実と科学を尊重すること、情報の共有と論理的・理性的に討論する能力を取り戻すこと、さらに生命と個人の尊厳をあらゆる政策の土台にすえることが大事です。
核のない世界をめざす政治
核のない世界をめざす政治をどうつくるか。英明な指導者を期待できない時代です。私たち自身の手で、よりよい指導者を選び出し鍛えていく。そして民主主義を回復していく作業に取り組むしかないわけです。ともかく、「平和で豊かな社会で生きていきたい」という人間の願望から出発して政治を考えることです。
先ほど、アメリカではトランプによる民主主義破壊が深刻だという話をしましたが、再生の兆候もあります。大統領選では接戦州で僅差で勝ったことがバイデン勝利をもたらした。その州レベルの選挙の結果をつくったのは、草の根レベルの対話と組織化です。
バイデン政権の主要閣僚が発表されています。顔ぶれを見ると、いい意味でのオバマ政権の理想主義を、バイデン政権は引き継ごうとしていることがうかがえます。
問題は日本です。シニシズムとか諦めが支配的なこの日本において、別の選択肢を追求する意欲をどうやって高めるか、これが私たちの課題です。ことしの10月までには必ず総選挙が行われます。政権選択の選挙です。人間の生命、個人の尊厳から出発する政治を取り戻すまたとないチャンスがやってきます。
私も世話役をしている「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)は昨年秋、「共通政策」をつくり、立憲野党に呼びかけて、すでに意思の疎通をしています。「共通政策」の第13項の平和政策の中で「『核兵器禁止条約』を直ちに批准する」という一文を入れました。これは野党連合の選挙における一つの旗印として、大いに高く掲げていくことになると私は思っています。
最後にもう1回繰り返しますが、草の根の一人ひとりとの対話の積み上げの延長線でないと本物の政治の変化は起きないということを強調して、私の話を終わります。
【パネリストの報告】
国際政治と核兵器禁止条約(TPNW)――グローバル・ガバナンスの視点から
本多 美樹(法政大学教授)
私は、核軍縮のガバナンスという視点からお話ししたいと思います。
まもなく発効する核兵器禁止条約(TPNW)は、非常に大きな意義を持つものです。これは市民社会の大きな力を背景として、開発も実験も生産も威嚇もすべて禁止した厳格な核廃絶路線を選択しています。核保有の既得権を許容しているNPT(核不拡散条約)と核兵器なき世界との法的なギャップを埋める条約でもあります。核兵器廃絶というのは倫理的な責務であって、地球規模の公共の利益であるということも、この条約で確認されています。1996年の国際司法裁判所の勧告、2009年の安保理決議1887の確認などのうえに、国際社会の最終的なゴールを示した意義も非常に大きいと言えます。
ただ、実効性においては大きな疑問が残っています。NPTで条約上保有が許されている米英仏ロ中の5カ国と、保有国のイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮が不在ですし、軍縮から廃絶に至る過程が明確に提示されていません。「核の傘」の中にいる国々のポジションも考慮すべきでした。そして核廃絶という新たな規範を盛り込んだわけですが、その規範の力についてはこれから問われるところです。
各立場から見るTPNW
核兵器国5大国は、既得権を温存するインフラとしてNPT条約があるので、このTPNWが発効することによるNPT体制の弱体化を懸念しています。
他の核保有国のインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮などはNPTを無視しています。
一方、日本も含む核の拡大抑止の中にある国々は、核廃絶の価値は共有しているけれども、同盟国の核兵器国が提供する拡大抑止に依存している。ゆえに、TPNWに参加しないイコール核抑止依存宣言という状況になっています。
日本の条約不参加をめぐる議論
日本政府の立場は、核兵器の非人道性は重視するし廃絶はめざすが、日本の安全保障にとってデメリットがある限り核なき世界に向けた核軍縮には進めないという立場です。
日本が条約に不参加である状態について、さまざまな意見があります。日米関係を考えると政府の立場も理解できるという声もありますが、やはり、被爆国として一刻も早く署名してほしいという声が大きいと感じます。
日本はどう進むのか
では、日本はどう進むのか。日本は唯一の被爆国として国際社会の中で特別な存在です。禁止条約の普遍化にとっても重要なポジションにあります。けれども、現在の日米同盟関係を整理しない段階で条約に参加するのは非常にリスクが高いと、私は考えています。
けれども、理想と現実がわかっている日本なので、現実的な軍縮を粛々と進める必要はあると思います。日本は2022年に安保理の非常任理事国の選挙に立候補します。いい機会なので、この場を使って日本の立場を推し進めてほしいと思います。
それから人間の安全保障≠ノついてです。核兵器は人類の生存への脅威だという原点に戻って、人間の安全保障≠ニいう概念にもとづいた外交展開をしてほしいと思います。
もう一つ、2000年に安全保障分野におけるジェンダーの主流化を提起した安保理決議1325が採択され、平和の担い手としての女性という部分にフォーカスされています。
日本政府としては人間の安全保障∞ジェンダーの主流化≠ニいう国際的な潮流に乗って外交を推し進めてほしいと思います。
最後に、私たちは現在、コロナウイルス感染下で生命の危機を経験しているので、もう核兵器は廃絶しなければならない、こんなことで核保有国同士が威嚇し合っている場合ではないと考えます。
日本がTPNWに参加するかどうかということは、半世紀以上続いてきた安全保障のシステムを変えることになり、非常に大きな決断だと思います。ですから、22日に禁止条約が発効しますが、それを機に変えるんだという強い意識で、ぜひ一歩踏み出す必要があると思います。
このTPNWの支持国、反対国、それから抑止依存国とそれぞれ立場が違うわけですが、私たち研究者もこの交点を結びうるような政策を練る必要があると思います。それから核軍縮に関しては、やはり教育などを通じて普及していくのが、私たち研究者の責任だと考えています。
【パネリストの報告】
核兵器禁止条約の発効と原水爆禁止運動
高草木 博(原水爆禁止日本協議会代表理事)
きょうのテーマ「核兵器禁止条約発効から完全廃絶へ、被爆国の真価発揮のとき」はそのとおりだと思います。それをどう運動としてとらえ、どう行動するかが大事です。
私たちは、ポスター「核兵器禁止条約 日本政府も署名・批准を」を作りました。ここには、作曲家の坂本龍一さん、日本の良心・瀬戸内寂聴さんら市民社会を代表する顔があります。
アメリカの平和運動からも反響が届いています。その中で、2018年のマーティン・ルーサー・キング・デーに、アメリカのジョージア州にある原潜基地で行動を起こした一人、マーサ・ヘネシーさんはEメールで「皆さんの運動を支持したい。収監されるまでの間、私にできることを教えてほしい」とのメッセージを送ってくれました。
日本の全国の運動も、すばらしい立ち上がりを見せました。このポスターを見て「新しい着想を得た」と言って、自分の県で、これまで手の届かなかった方々と共同してこの運動を起こしたいという報告も入ってきています。
この新署名は、日本政府に禁止条約の署名・批准を求める自治体の意見書採択運動も加速させ、意見書採択自治体は520自治体に上りました。全自治体の29%です。
核兵器の完全廃絶という運動は、コロナ禍の中でも手を抜いてよいたたかいではありません。私たちも知恵を出して、コロナ禍の中でもできる行動、コロナ禍だからこそやらなければいけない取り組みを大いに進めたいと決意しています。
核兵器が違法とされる新たな段階
核兵器禁止条約が発効することしは、私たちの運動にとって特別な年です。しかし核保有国は警戒心を強め、発効の見通しが強まるやいなや、アメリカは批准国に対して書簡を送り、「あなた方は間違っている。禁止条約はロシアや中国に利するもの」と言って、アメリカに同調し批准を撤回するよう迫りました。国連総会第一委員会で決議「核兵器禁止条約」が出たときには、フランスが核保有5カ国を代表して反対演説を行いました。「禁止条約は国際安全保障の文脈を無視している。だから反対だ」と。NPT上の核兵器国5カ国の政治的道義的なリーダーシップの崩壊です。事実、アメリカが脅迫し、核大国5カ国が反対しても、批准した50カ国の中で撤回した国は1つも現れませんでした。
この経過と結果から見て、私たちは、人類が核兵器を違法な兵器とする国際法を手に入れたということが、第一の意義だと考えています。
核兵器国は、「我々は署名も批准もしない。それは拘束力も持たず、核兵器は1発もなくならない」などと言い張っていますが、国際紛争の解決において武力を行使しない、威嚇をしてもならないというのは国連憲章の核心部分だし、さらに、原子兵器、大量破壊兵器を各国の軍備から一掃するという国連第1号決議もあります。さらに、「自国の核兵器の完全廃絶の達成」「核兵器のない世界の平和と安全の達成に向けた枠組みづくりのための特別の努力」など、核兵器国も受け入れたNPT再検討会議の合意もあります。
問題は、安全保障の中心に立つべき国々が、これらのテーマを実行せず、合意に逆行している。私は、戦後76年間の混乱の最大の原因は、この核大国、国連の中心に立つ国々のリーダーシップの崩壊、欠如であると思えてなりません。
国民世論の力で核兵器全面禁止・廃絶をリードする日本をつくる
残念ながら、日本政府はいろんな修辞的表現を用いながら、日本の安全をアメリカの核戦略に委ね、核兵器の禁止に反対し、「橋渡し」と言いながら実際には核兵器禁止の流れを分断する役割を買って出ています。果たしてこうした立場は日本国民の安全にかなうのか、アジアの平和にどう役立つのか、日本国憲法の下で許されるのか。
先に紹介したマーサさんは、メッセージの最後でこう結んでいます。
「もし、日本が核兵器国禁止条約を支持して活動すれば、それは世界的な成果であり、ほかの多くの国の人々にいっしょに取り組む希望と勇気を与えます。皆さんに感謝します」。
そのとおりだと思います。もはやそれを菅さんに託せないわけですから、国民の選択で実現する以外に道はありません。日本が核兵器禁止条約に加わり、世界をリードする――2021年をそういう年とするために、私たちも全力をあげたいと思います。
【パネリストの報告】
敵基地攻撃能力と米軍事戦略
竹下 岳(「しんぶん赤旗」政治部記者)
いま、安全保障分野で大きな焦点になっているのが、敵基地攻撃をめぐる動きです。
2017年に自民党が、敵基地反撃能力の保有を政府に求め、2018年12月の新「防衛計画の大綱」の中で、実質的な敵基地攻撃能力のある長距離巡航ミサイルやいずも型護衛艦の空母化改修、F35Bステルス戦闘機の搭載といった内容が盛り込まれました。さらに昨年、再び自民党が、相手領域内でのミサイル阻止能力の確保を政府に求め、安倍前首相が退任直前に敵基地攻撃能力保有の検討を次期政権に求めました。そして昨年12月、菅政権が閣議決定で長距離巡航ミサイルの追を盛り込みました。
「敵基地攻撃能力」をめぐる動きの背景
こうした動きの背景は何か。2017年以降、北朝鮮による核兵器開発や弾道ミサイルの開発が激しくなりました。これに対して、日本政府は「弾道ミサイル防衛」(BMD)構想で対処するということだったのですが、ミサイル防衛システムでは弾道ミサイルを止めることができないとなって、そうであれば敵基地を叩いたほうが効率的だとして、この敵基地攻撃をめぐる議論が高まってきたわけです。
もう一つの背景として、安倍政権の9条改憲の動きもあります。
結果的に菅政権は、政府解釈には手を付けなかったのですが、実質的な敵基地攻撃能力の装備を整えることで、なし崩し的に敵基地攻撃能力の保有に進んでいます。
こうした日本の動きについて、アメリカのほうはこれまでむしろ否定的でしたが、その流れがいま、若干変わりつつある気がします。オバマ政権以降、米国は同盟国への責任分担を強く求めるようになっていて、それは日本に対しても同様です。
今後、バイデン政権が日本にどういうことを求めてくるか、大統領選挙のときの民主党の政策綱領は、こう言っています。
「相互運用性を改善するため、パートナー国と取り組む。彼らの防衛能力を向上させ、地域の安全保障に大きな責任を負い、彼らが正当な分担に寄与することを促進していく」。
そういう中で、いわゆる敵基地攻撃兵器の整備が、すでに2018年の防衛大綱にもとづいて着々と進められています。日本政府は、敵基地攻撃能力の保有は憲法違反という立場は保ちつつこれと整合性を取るために、これらの兵器はスタンド・オフ兵器≠セという言い方をしています。要するに、敵の脅威圏の外から対処を行う兵器です。これはミサイルしかないということで、ミサイル大軍拡の時代に突入しつつあります。
日本政府もいま、相当な長距離巡航ミサイルの配備を進めています。すでにスタンド・オフ・ミサイル≠ニして、射程500〜900qの3つのミサイルの導入が決まっています。
「専守防衛」の範囲内と言うが…
政府は専守防衛の範囲内と言っています。しかし射程500〜900qのミサイルを航空機に搭載すれば他国領域のかなり遠くまで攻撃できます。さらに自民党の国防議連は昨年、射程が1600〜3000qの新型トマホーク巡航ミサイルの導入を求めています。
こうしたミサイル導入の狙いは何か。米中の軍事対立の中でちょうど南西諸島が、中国が西太平洋に進出する際の第一列島線に重なっています。ただ、この沖縄本島から与那国に至るラインは米軍の空白地域であり、この空白を埋めるために日本のミサイルを配備するということです。
敵基地攻撃というのは、専守防衛と言おうが何と言おうが、先制攻撃とどう違うのかの説明がつきません。
「敵基地攻撃能力」でなく、北東アジアの平和構築を
敵基地攻撃を行えば必ず反撃を受けることになります。日本政府はそういう決断をするのかと、ぜひ問いたい。しかも、その敵基地攻撃の対象になっている中国と北朝鮮はどちらも核保有国です。そこにミサイルが着弾すれば、その先に待っているのは破滅的な事態です。
やっぱり敵基地攻撃ではなく、北東アジアの平和構想をほんとうにいまこそ真剣に考えるべきです。ミサイルにはミサイルをではなく、国の安全にとって、ミサイルを撃たせない外交努力のほうがはるかに効果的だし、安上がりであるということを最後に訴えたいと思います。
【パネリストの報告】
激動の情勢下、野党連合政権、非核の政府の展望を探る
笠井 亮(常任世話人・日本共産党衆議院議員)
史上初めての核兵器禁止条約の発効まであと11日となりました。被爆者の渾身の訴え、それに応えた各国政府と市民社会の人類的大義を掲げた運動がこの快挙につながりました。歴史は動くときには大きく動くと実感しています。
条約発効後の焦点は日本政府
条約発効後の焦点は日本政府の対応です。菅首相は、条約発効目前の1月7日の記者会見でも「署名する考えはない」と述べて条約に背を向けました。
3つの問題があると思います。
第一は、核兵器違法化の国際条約成立という新しいステージになっても、なお米国の顔色をうかがって署名をしない態度が世界の失望を買っていることです。
大国が世界を動かす時代が終わって、すべての国と市民社会に主役が交代するという21世紀の構造変化を象徴する快挙が、この条約の発効です。これは、条約不支持・不参加を求める米国などの圧力、妨害をはねのけて達成したものです。
第二に、菅首相は、引き続き条約推進国と反対国の「橋渡し」役を担うと言いますが、世界の国々は、米国におもねる日本政府の態度を「橋渡し」と認めていません。国連総会でも米国など核保有国のお先棒担ぎであることがより鮮明になりました。恒例の日本提案の決議案は、今回も核兵器廃絶を「究極」の課題として永遠に先送りし、核兵器禁止条約には一言もふれていません。
表現もさらに後退しています。井上哲士議員が11月の参院外交防衛委員会で日本決議の重大な後退を正したのですが、外務省は事実上、米国の支持を得るための変更だと認めました。
第三に、条約発効後も、いざというときは核兵器を使う米国の「核抑止力」に頼り続けるのかということです。条約発効後、菅・バイデン両首脳の初の「日米共同声明」に、日本が米国の「核の傘」の明記を求めていると報じられていますが、被爆国である日本がいざというときは核兵器を使え≠ニ米国をけしかけるなど異常です。
安全保障を言うのであれば、米国の「核の傘」ではなくて、憲法9条にもとづく平和外交で北東アジアの平和を構築することこそ最も確かな道ではないかと、大いに議論していきたいと思います。
一番の近道は野党連合政権の実現
いよいよ総選挙の年です。
菅政権の4カ月は、安倍政権より強権、冷酷、説明拒否、問答無用、コロナ失政の政治であることがあらわになっています。このもとで、禁止条約に参加する一番の早道は、ずばり市民と野党の共闘の力で政権交代を実現して、新しい野党連合政権を作ることではないでしょうか。
昨年9月の首班指名選挙では、野党が一致して「枝野幸男」と書き、前回の総選挙以降の3年間に野党共同の法案を54本出すなど、国会でも選挙でも共闘が前進してきました。昨年9月には「市民連合」による立憲野党への15項目の「政策要望書」が届けられ、第13項には「核兵器のない世界を実現するため、『核兵器禁止条約』に直ちに批准する」とあります。野党間では条約に参加する方向で一致しています。
もちろん核兵器のない世界への道は、単純ではないと思います。しかし、核兵器廃絶勢力が核保有勢力を追い詰めるプロセスが力強く前進しつつあります。1年以内に核兵器禁止条約の締約国会議が、8月にはNPT再検討会議が予定されています。核兵器廃絶に向けた道を力強く、着実に前進させることが必要です。唯一の戦争被爆国の日本が参加すれば、他の同盟国にも弾みがついて巨大な貢献になることは間違いないと思います。
核兵器禁止条約と結成35年の非核政府の会
最後に、私も常任世話人を務めている非核の政府を求める会は、「非核5項目」(1面別掲)を実行する政府の実現をめざすNGOとして1986年に発足し、以来35年、思想・信条・政党支持の違いを超えて「5項目」にもとづく賛同・共同を広げてきました。今回発効する条約には、この「非核5項目」が見事に重なっていると、私たちは見ております。このことを確信に、いよいよ非核の政府の実現に向けてがんばるときだと思っています。
私自身も、核兵器なき世界をめざして、また総選挙で勝利して野党連合政権を実現するために、全力でがんばりたいと思います。
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