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 ●日本政府の動向
 
「岸田政権の安保外交政策と台湾海峡紛争」をめぐって論議
非核政府の会核問題調査専門委員会(2021.10.21)

 非核の政府を求める会核問題調査専門委員会の例会が10月21日、開かれ、「岸田政権の安保外交政策と台湾海峡紛争」のテーマで国際ジャーナリストの末浪靖司さんが報告。活発な論議が交わされました。
 末浪さんの報告(要旨)を次に紹介します。
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  まず、岸田政権と中国の関係にふれておきます。
 岸田首相は10月7日に中国の習近平国家主席と電話会談を行いました。中国の「人民日報」海外版はトップ記事で扱っています。「友好と建設的関係を維持・発展させる」「日本政府が両国の高度の結びつきを重視していることを称賛した」「歴史と台湾に関する敏感な問題を適切に扱い、違いを処理する」と書いています。「歴史」と「台湾」は日中関係でもっとも機微に触れる問題ですが、今回、岸田首相と習近平との会談では、「歴史に関する敏感な問題」としか言っていません。中国が岸田政権を重視している表れです。

■台湾海峡で戦争が始まるという記事があふれている

 日本のマスコミには台湾海峡で戦争が始まるという記事があふれています。それを反映して、世論調査でも「米中対立に不安」(87%)、「軍事緊張に巻き込まれる」(51%)と、国民の多くが不安を感じています。朝日新聞の6月6日付の特集では「米中危機 4つのシナリオ」を挙げています。一つは中国の台湾への本格侵攻、二番目は台湾離島への侵攻、三つ目にハイブリッド戦、四番目は偶発的な衝突、としています。『文藝春秋』は「迫る台湾侵攻 『日米極秘訓練』の全貌」という特集を組んでいます。
 こうした論調はマスコミだけではありません。いろんな団体の機関紙、発行物にも、中国が台湾に攻め込むのではないかとか、米中が台湾問題をめぐって戦争するのではないかという危機感が見られます。
 こうした危機感には仕掛け人がいます。その一つは防衛省です。9月13日に出た『防衛白書』は、台湾海峡で今にも戦争が起こりそうなことを15ページにわたって書いています。
 実は、防衛省も自民党やそれに連なる政治家によって動かされているのが現実です。その一人、河野克俊元統幕長は、2015年に戦争法を仕掛けた人物ですが、今、軍事評論家としてテレビなどで台湾問題の危機を煽っています。彼は、「日本も重要影響事態」と書いている。重要影響事態とは安保法制=戦争法にもとづいて自衛隊が米軍とともに戦闘作戦をやるということです。彼は、戦争法を台湾問題で発動すべきだと言っているわけです。
 もう一人、自民党の外交部会長だった佐藤正久は「日経」の記事の中で「ガイドラインの改定が必要」になると強調しています。
 麻生太郎自民党副総裁も、「台湾で大きな問題が起きると、存立危機事態が関係してもおかしくない。日米で一緒に台湾を防衛しなければいけない」と言っている。麻生太郎は「台湾族」で、何回も台湾に行っています。
 では、自衛隊は台湾海峡で中国軍と戦うのか。今の「ガイドライン」に何が書いてあるかというと、「日米両政府の各々がアジア太平洋地域及びこれを越えた地域の平和及び安全のための国際的な活動に参加する」、つまりアフリカであれ、中東であれ、自衛隊はグローバルに出ていくことができると書いている。米国の戦略につながっているからです。
 その米国はどこに出撃してきたかというと、1958年以降、イラクでクーデターが起こると、レバノンに上陸し、ベトナム戦争に突入した。今世紀に入ると、アフガニスタンと同時にイラクに攻撃を加えた。そして今や米国は、ベトナムからは追放され、アフガニスタンからも撤退しました。イラクからも追放されるでしょう。そうすると、今後、米軍はどこで戦争をするのか、今度は台湾海峡なのか、ということです。
 それで自衛隊は台湾に出ていくのか。台湾問題が日米安保の焦点になったのは、旧安保条約です。旧安保条約には「極東における国際の平和と安全」という極東条項があり、それには台湾海峡が含まれると理解されていました。実際、中国の人民解放軍が金門・馬祖へ攻撃を開始して緊張関係があったので、非常に現実味があったわけです。

■米中は台湾海峡で戦争するか

 では、米中は台湾海峡で戦争するのかどうか。1月10日に習近平とバイデンの電話会談が90分も行われました。習近平とバイデンとは非常に深い関係で、バイデンがまだ副大統領であった2011年から12年にかけて、中国に8回も行っています。習近平といっしょに中国の料亭とか有名なお寺などを回って、そこで会談している写真もたくさんあります。
 今回の1月の電話会談について、日本のマスコミは「決裂した」と報じました。しかし中国の「人民日報」海外版はこう書きました。「双方は分裂より利益の共同が大きく、衝突も対抗もせず、相互尊重、共同して協力しなければならない」。共同の利益を守るのだということです。それから半年後に、また電話対談をやりました。習近平は、「中米が協力すれば両国と世界が利益を受け、対抗すれば禍になる」と言い、バイデンも「競争を紛争に発展させない」として、衝突を避けて米中関係を軌道に戻そうと言ったわけです。
 「そうは言っても軍隊同士は戦争するのではないか」という懸念も聞かれます。ミリー米統合参謀本部議長は9月28日の米上院軍事委員会でこう証言しています。「中国軍の李作成連合参謀部参謀長と日常的に連絡を取り合っていた」。最近も2回、連絡を取り合ったと「ワシントン・ポスト」が報道しています。
 時事通信で面白いと思ったのは、バイデンがABCニュースのインタビューで、「米国は台湾に対して防衛義務がある」と言ったという報道です。バイデンは取り消してはいませんが、政府高官が修正に追われた。米国は台湾に防衛義務を負っていません。
 日本の新聞は、「台湾関係法があるではないか」などと書いていますが、台湾関係法第2条は、「平和的手段以外の台湾の将来決定は合衆国の重大関心事」であるとして、軍隊を出すとは言っていません。
 それでも軍部は、やはり台湾で戦争が起こると言い続けています。米太平洋軍司令官のデービッドソンは、「6年以内に中国が台湾に攻め込んで戦争になる」と言っています。
 最後に、中国の「文匯報」は、米中両軍はつうかあの関係にあると書いています。「中米両軍関係は協力を歓迎し脅迫に反対する」「両軍ははいつも通じ合っている」とメッセージを発信しています。
 中米関係は、経済面ではどんどん進展しています。「チャイナ・デイリー」の今年9月の記事では、中国で活動している米企業は338社あり、その80%が米中関係に「楽観的か、わずかに楽観的」だとしています。昨年の米大統領選挙のグッズや米国旗も中国で作っていると報じています。
 米中関係は単なる2国間関係ではなくて、気候変動問題でもCO2排出量は米国と中国で世界の43%で大きな責任を負っています。効果的な手を打つためにも米中関係の進展が期待されます。