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 ●提言・声明
 
菅・バイデン会談をどう見るか
岡田則男(国際ジャーナリスト)
(2021.5.15)

  菅義偉首相が訪米し、ジョー・バイデン大統領と首脳会談を行った(4月16日)。大統領就任以来、初めてホワイトハウスに迎えられる外国首脳とあって、日本の首相のワシントン訪問では珍しく、米国メディアが大きめに報道した。バイデン大統領はこの機会に、中国の脅威に対する国際的な「統一戦線」を構築しようと、日本との軍事同盟を大いに利用した。
 共同声明で、東シナ海、南シナ海などでの進出(支配)、香港の民主主義を求める運動の弾圧、新疆ウイグルへの弾圧などで批判を強め、中国への対決姿勢を明確にした。中国を屈服させる、覇権を許さないということだが、それは米国の覇権主義の表明でもあったと言えよう。
 日本の菅政権は、日米軍事同盟を絶対視し、米国のそうした対決姿勢に追従する姿をあらわにした。
 
 ■注目集めた台湾問題
 なかでもいちばん注目を集めたのは、台湾問題であった。
 折しも今回の日米首脳会談は、中国が台湾近くに核攻撃機、爆撃機を含む25機を飛ばして威嚇し、緊張が生まれた直後のことだった。共同声明は「台湾海峡の平和と安定の重要性」を改めて強調し、中国が絶対に譲れない「核心的利益」として統一をめざす台湾について、「両岸(中台)問題の平和的解決を促す」と安全保障に踏み込んだ。
 1969年11月に、当時の佐藤栄作首相とリチャード・ニクソン大統領は、沖縄の施政権の日本への返還を決めたさいの共同声明に、「台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとって極めて重要な要素」であるとした、いわゆる「台湾条項」を盛り込んだ。
 しかし1972年のニクソン訪中が国際情勢に大きな変化をもたらした。日本政府は、「台湾条項は消滅したか」という野党の質問に「台湾条項の基礎にあった地域情勢に対する認識は変わった」と答弁した(同年6月)。さらに1979年の米中国交樹立で、米国は「中華人民共和国を中国の唯一の合法的政府」と認め、台湾は中国の領土の一部とする「一つの中国」を原則として、台湾と断交した(ただし米国は「台湾関係法」を制定し、今日にいたるまで台湾への武器売却を続けてきている)。
 今回、52年ぶりに日米首脳の共同文書で台湾に言及したものである。
 
 ■日本の軍事的関与の危険

 台湾海峡では、中国軍戦闘機が中間線を越えて台湾側に侵入するなど軍事挑発的行動を行う事態に、フィリップ・デービッドソン米インド太平洋軍司令官は、中国が「6年以内」に台湾に軍事侵攻する可能性があると警告した。「私は、中国がその野望を加速させ、2050年までに、ルールにもとづく国際秩序における米国の指導的役割を排除しようとしている。…台湾は明らかにそうした野望の一つである。その脅威はこの10年のうちに、あと6年に現れると思う」(3月9日の上院軍事委員会公聴会での証言)。
 これから台湾をめぐって軍事的緊張が高まれば、極東最大の米空軍基地がある北隣の沖縄への影響は避けられないであろう。この点で、今回の日米共同声明は、日米同盟のもとに日本が米国とともに軍事的に関与する方向に進む危険を示している。
 
 ■看過できない「二枚舌」
 菅首相は、日米同盟および地域の安全保障をいっそう強化するためとして、日本の防衛力を強化することを宣言した。米側は、核の傘(拡大核抑止)を含む軍事力で日本を「防衛」するとした。そして、沖縄県の尖閣諸島を日米安保条約第5条(日本の施政下への武力攻撃があったら、日米が「共通の危険に対処する」)の適用対象とすることを再確認した(もともと中国が沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張していることについて米国は介入しないという立場だが、2014年にオバマ大統領が初めて、尖閣諸島は安保条約第5条の適用対象だと明言した)。
 沖縄で強行している米軍新基地建設について、共同声明は「辺野古における普天間飛行場代替施設」として「唯一の解決策である」とさらっと書いている。あたかも辺野古への新基地建設に多くの沖縄県民が繰り返し「ノー」を突きつけてきたことなどまったくなかったかのように、だ。反民主主義宣言としか言いようがない。中国の民主主義抑圧や覇権主義的行動を批判しながら、みずからは「抑止力」の必要を唱えて、日本で民主主義を圧殺するという、ダブル・スタンダード、「二枚舌」を続ける日米両政府の姿を見逃すわけにはいかない。