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[対談][核基地・岩国]のいま≠語る
――エルズバーグ『世界滅亡マシン』があばいた真実
(2021.4.15)

 唯一の戦争被爆国だというのに核兵器禁止条約参加を拒み続け、ひたすら米国の核使用政策におもねり加担する菅政権。米国言いなりの同政権下、在日米軍基地の核基地機能はいま、どうなっているのか――。
 ダニエル・エルズバーグ著『世界滅亡マシン』があばいた「核攻撃基地・岩国」の実態を中心に、国際問題研究者の新原昭治さんと山口県平和委員会会長の吉岡光則さんに3月、インターネットで語りあってもらいました。
              ◇
〈出席者〉
新原昭治さん(国際問題研究者)
吉岡 光則さん(山口県平和委員会会長)


 
 ■日米「2プラス2」が示す日米〈核〉同盟の危険

 ――3月16日、日米安全保障協議委員会(日米「2プラス2」)が開かれ、共同発表文で日本政府は、核兵器禁止条約の発効直後にもかかわらず、米国の「核の傘」にしがみつく恥ずべき姿をあらわにしました。改めて在日米軍基地の「核基地機能」の実態をどうみるかが問われています。
 吉岡光則 「共同発表」文書では、「日本は国家の防衛を強固なものとし、日米同盟をさらに強化するために能力を向上させることを決意した」とし、続けて「米国は、核を含むあらゆる種類の米国の能力による日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントを強調した」と述べています。ここには、戦争被爆国でありながら、「日本防衛」のためとして米国の核兵器使用政策を能動的に容認する日本政府の異常な姿勢、核兵器禁止条約反対の本音が露骨に示されていると思います。
 今年は「安保法制(戦争法)」の施行から5年になりますが、「共同発表文」が、「日米同盟が、インド・太平洋地域の平和、安全および繁栄の礎であり続けることを再確認した」と強調していることも、全地球的規模での米軍の戦争に日本が参戦する態勢づくりと不可分の動きとして看過できません。
 新原昭治 菅義偉首相は、日米首脳会談の日程が決まったさいの会見でも、首脳会談は自由で開かれたインド・太平洋地域への米国のコミットメントを示すうえできわめて意義深い≠ニ述べるなど、バイデン政権のインド・太平洋戦略へのおもねりが透けて見えます。
 実は、私はこの対談を準備するなかで、インド・太平洋地域における米軍と日本の自衛隊の重大な合同軍事演習に関する新しい資料を見つけました。
 それは、ホノルルの米太平洋空軍広報部が昨年8月19日付で公式発表した、米空軍等による東アジア同時爆撃訓練に関する資料で、そこには米国の核軍事政策における岩国など在日米軍基地の危険な役割が示されているのです。
 それによると、米空軍、米海軍、米海兵隊ならびに日本の航空自衛隊の航空機が昨年8月18日に、インド・太平洋地域において24時間にわたり大規模な「BTF演習」なる統合訓練と2国間合同訓練演習をいっせいに展開しています。
 そしてこの爆撃機動戦力による大規模統合訓練に、沖縄・嘉手納基地所属の米空軍第67戦闘機中隊のF15Cイーグルや、いずれも岩国海兵航空基地配属の米海軍第5空母飛行隊のF/A18スーパー・ホーネット、海兵隊海兵戦闘攻撃機中隊のF35ライトニング2が参加しているのです。
 米軍発行の日刊紙「星条旗」8月19日付は同演習について、空母ロナルド・レーガンの艦載攻撃機群が日本の近くで合流したこと、また、米テキサス州にある空軍基地からB1爆撃機ランサー2機が日本海に飛来し、日本の航空自衛隊機と合流したと伝えています。
 7月に就任したケネス・ウィルズバッチ米太平洋空軍司令官は、この演習により、「同一時間帯に迅速な展開を行うことを可能にする、空軍力にしか許されないきわめて広範な能力や即応態勢が、自由で開かれたインド・太平洋戦域の実現というわれらの任務遂行に向けた先駆的で拡大可能な選択肢であることを、あらためて実証することができた」と自慢げに語っています。
 吉岡 今年3月中旬から米空軍のF22戦闘機が、「瞬時に地球規模に展開することで自由で開かれた太平洋地域に貢献するため」として岩国基地に飛来してきています。岩国基地がインド・太平洋戦域の核軍事作戦、自衛隊との共同作戦の出撃拠点にされようとしているわけで、こんな重大なことが国民に秘匿して進められていることに怒りを禁じえません。

 ■『世界滅亡マシン』があばく「核基地・岩国」

 ――昨年の夏に、ダニエル・エルズバーグ著『世界滅亡マシン』日本語版(岩波書店)が刊行され、岩国基地の「核攻撃機能」を暴いて注目されています。
 吉岡 『世界滅亡マシン――核戦争計画者の告白』の第4章が「岩国――記載のない核兵器」です。
 私もこれを読んでわかったのですが、1960年初め、「(米軍の)全面戦争の警報が出された場合」、岩国基地では、沖合の船舶から核爆弾が陸揚げされると間髪を入れず攻撃機が出撃する態勢になっていたということです。そのことが生々しく書かれています。
 さらに、このため岩国基地の沖合に、核兵器を積んだ水陸両用トラクターを積んだLST(戦車揚陸艦)サン・ホアキン・カウンティ号が配備・停泊していたとも書いています。
 新原 岩国沖に核兵器を積んだまま停泊していたLSTは、その後、日本共産党の森原公敏さんの米解禁文書にもとづく究明によって、岩国沖から沖縄に移動していた事実も判明しています。
エルズバーグはこの本の「岩国」に関する章で、1960年初め、日本の岩国米海兵航空基地で秘密取り決めが存在していたことをあばいていますし、吉岡さんがふれられた「全面戦争の警報が出された場合」に岩国基地の米軍機が迅速に核兵器を取得することになっていたという重大な秘密については、ハワイの米太平洋軍核兵器発射統制官から聞いたと記しています。
 吉岡 彼がそうした日本領海内での核兵器配置が「想像しうる限り最も無責任な行動」の一つだったと述べている点も、私は注目しました。
 新原 私が『世界滅亡マシン』の一つの大事な特徴だと思うのは、エルズバーグが、かつて勤務した米国防総省時代に米軍の核戦略づくりに深くかかわっていたことを告白しながら、当時の活動から知りえた米国の核使用戦略の内実をあばくとともに、もし核戦争を始めたら世界滅亡の重大きわまる危険を冒すことになるとして、みずからの深い決意を込めて、核兵器使用のいかなる企てにも厳しい警告を発していることです。
 著者のエルズバーグについて一言すると、彼は元米国防総省勤務の専門家で、米国のベトナム侵略戦争をめぐる米政府秘密記録など、あの戦争の経過を約7000ページにわたってリアルに記した米国防総省の秘密記録「ペンタゴン・ペーパーズ」を1970年代初めに暴露し、それを米国の一連の新聞に提供したことで知られる人物です。彼は、同戦争が米国の侵略戦争にほかならなかったことを明るみに出して、ベトナム戦争に反対する世論の拡大に大きく貢献しました。
 エルズバーグは1950年代末、ベトナム侵略戦争を軍事指導中だったハワイの米太平洋軍司令部と連携し、岩国基地や嘉手納基地など日本の米軍基地でこまかく内情を視察した経験を持っています。
 吉岡 彼は、こんなことが日本国民に知られたら日米核軍事同盟は崩壊する、ということを強調していますね。そのことは1987年4月に、ライシャワー駐日大使(当時)が「赤旗」特派員に自分が現認し66年夏、速やかに撤去するようラスク国務長官に打電した≠ニ答えたという記録もあります。
 サン・ホアキン・カウンティ号が岩国基地沖に長期にわたって停泊していたのはベトナムに出撃する空母および岩国基地の攻撃機(A4スカイホーク)と核爆弾を共有していたものと推測されていたのですが、その通りだったのだと確信しました。
 その後、1970年代から80年代初めにかけて、岩国基地は核攻撃基地であるという状況証拠が次々と明らかになりました。そして、「核基地・岩国」の危険な全体像を示したのが、1981年に新原さんたちが明らかにされた日本共産党訪米調査団の報告だったわけです。
 新原 私自身、初めての訪米調査でしたのでよく覚えています。「日本に寄港する米空母は前もって核兵器をおろさない」と議会証言したラロック元米海軍提督にも会えましたしね。
 忘れられないのは、私たちは米国防総省で何人かの高官と直接面接し、追究しようとしましたが、日本大使館が妨害を加えてきたことです。こちらは日本共産党の国会議員が同行していったにもかかわらずです。私たちがインタビューの約束を取り付けていた国防総省の次官クラスの何人かに会うために、ワシントンのホテルを出ようとした直前、日本大使館の職員から電話がかかってきて、「今朝の国防総省の方とあなた方の会見予定は、取り消させていただきました」と告げられたのです。日本政府はこういう露骨な妨害を一度ならず加えたのです。

 ■強化される岩国の出撃・最前線基地機能

 ――米国の核軍事戦略から見た岩国基地の役割、岩国基地強化をめぐる最近の動きについてお話しください。
 吉岡 岩国基地は、1962年以降、沖縄にいる米海兵隊の航空部隊の基地とされてきましたが、「米軍再編」によって厚木基地から空母艦載機部隊が移駐してきて(2018年3月30日に移駐完了)、海兵隊と海軍の「殴り込み部隊」が融合する極東最大の航空基地になりました。
 そのために基地の沖合を埋め立てて陸上面積を1・4倍に広げて滑走路を新設し、沖合には3万トン級の艦船が接岸できるバース(係留施設)を持つ港も新設しました。所属機は合わせて120機超にのぼり、海兵隊の主力はF/A-18戦闘攻撃機でしたが、F-35Bに更新されつつあります。
 こうして、岩国基地の「殴り込み部隊」の出撃基地・最前線基地としての機能は一段と強化されています。
 さらに「新基地」建設で新たに兵站(へいたん)基地としての機能が付加されて、米軍にとって非常に重宝な基地になっているのです。そのことは米軍自体が認めています。バースと滑走路を併せ持つこのような基地は、西太平洋地域では岩国しかありません。
 F/A-18やF-35BがB61などの核兵器を搭載できる攻撃機であることは関係雑誌などにも書いてあります。現在の岩国基地が核兵器の「有事持ち込み」態勢にある基地であることはまちがいないと思います。
 新原 吉岡さんから現在の岩国基地の実態について、重要な発言がありました。
 先ほど、私たちが1981年に訪米調査などを通じて「核基地岩国」の追及を行ったことにふれましたが、そのことを改めて振り返っておこうと思います。
 私は米議会の証言記録に興味を持ち、しばしば国会図書館から米議会議事録を借り出して読んでいたのですが、そのなかで1979年10月の米上院軍事委員会の議事録に岩国基地についての重要証言が見つかったのです。それは、海兵隊の核戦力に関するコマー米国防次官(当時)の証言でした。
 「海兵の航空機用核兵器にB43、B57、B61の3種類の核爆弾がある。その装備には海兵航空団の『兵器部隊』が当たっている。その名は海兵航空団兵器部隊MARINEWINGWEAPONS
UNIT(MWWU)で、各部隊毎に4名の将校と45名の下士官が核兵器等の装備を担当する」と明記されていました。海兵航空団は3個あり、うち2個は米本国内で、海外に唯一あるのが岩国の海兵航空団でした。
 「そんな重大証言なら訪米して調査したほうがよい」ということになって、私が野間友一日本共産党衆院議員とともに訪米し、国防総省を辞めた直後のコマー氏をまっ先に訪ねました。証言録を見てもらったら、同氏は「この通りだ」と確言してくれました。帰国してこの事実を報告したら大きな反響がありました。
 吉岡 岩国基地の核専門部隊MWWには合計172人の核兵器要員が配置されているということでしたね。
 新原 そうです。岩国基地と深い関係にある沖縄・普天間海兵航空基地にも多数の核兵器要員がいたこともわかりました。
 それまでは岩国現地の反戦米兵らの情報から核部隊の存在が指摘されていたものの、政府は常に否定し続けていたのです。しかし、私たち訪米調査団がつかんだ新しい証言と証拠に政府は反論できず、完全に行き詰まってしまいました。
 吉岡 その後、岩国基地の海兵航空団兵器部隊はグアムに移動しました。
 私たち岩国平和委員会と岩国原水協は長年、原水爆禁止世界大会・広島での「動く分科会・岩国基地調査」のために『資料岩国基地』を発行してきたのですが、1980年代から90年代の資料を見ると、「核基地・岩国」という項目を立てて、新原さんが紹介された調査レポートなどを記載し続けています。そして、それらを裏づける、現地の仲間が見つけた核兵器持ち込みの状況証拠も記録しているんですよ。
 たとえば、「危険度標識1」の弾薬庫群があったこと、海兵隊の『核作戦教範』に記載されている「核兵器組み立て作業所」の平面図のフェンスの寸法と岩国市が航空写真をもとに作成した2500分の1の地図に記載されている施設の寸法が一致していたこと、「核兵器組み立て作業所」の屋根を塗装するために米兵が塗装工一人ひとりに銃を突き付けて作業させていたことを報じた地元新聞の記事などです。
 「核兵器組み立て作業所」は1998年に撤去しましたが、私が92年5月5日の「日米親善デー」で基地に入った時に撮った写真があります。おそらく、基地内で「作業所」を撮った唯一の写真ではないかと思います。
 新原 米軍も日本政府も岩国の核基地機能を徹底して隠し通そうとするわけですから、そうした取り組みはとても大事だと思いますね。

 ■海外で無辜の人々を殺戮する米軍基地の実態を市民に正面から訴えたい

 ――最後に、岩国の基地撤去闘争の現状と課題についてお話しください。
 吉岡 2006年3月に米空母艦載機部隊の移駐に対する住民投票が行われましたが、投票成功をめざす複数の市民グループの行動によって、基地に対する市民の意識は「言うべきことは言わなくてはいけない」というふうに大きく変わったと思います。
 しかし、現在の岩国市政は、「基地との共存」を前面に掲げています。米軍基地の増強を容認することと引き換えに、基地関連の交付金や補助金をあてにして、子どもの医療費や学校給食費の無償化や様々な「箱物づくり」を進めてきました。
 こういう状況の中で、私たちがどんな課題を重視しているかですが、岩国基地が日常的に騒音、事故、米兵の犯罪などで私たちの「健康で文化的な生活」を営む権利を侵害し続けていることが重大なのは言うまでもありません。同時に、大事だと思うのは、米軍基地の戦力が海の彼方で武力攻撃を行い、無辜(むこ)の子どもたちを大量殺戮してきた事実について、市民にどう訴え、理解をどう広げるかということです。そういう血塗られた基地がさらに増強されることと引き換えに、子どもの医療費や給食費の無料化が与えられても、それを本当に次の世代に、子どもたちに自慢できるのか、そのことを正面から問うていきたいと思っています。
 さらに、空母艦載機の移駐問題でもF-35B配備についても、平和運動のなかで「核攻撃基地・岩国」という問題をどう押しだし、追及していくかが、現在の重要な課題になっていると思います。
 新原 吉岡さんが「核攻撃基地・岩国」を追及していくことが大事だと述べられましたが、まさにその通りだと思います。先ほどのエルズバーグの著書の内容について吉岡さんもふれられましたが、岩国基地の米軍機は「数分以内に」核兵器を確保できるようになっていて、日本の米軍基地に待機中の他の米空軍機より6時間ないし10時間も早く核兵器を搭載できる態勢がとられていました。私が紹介したつい最近の出来事、インド・太平洋戦域での大規模な同時核攻撃演習でも、岩国基地は特別に重要な軍事的役割を与えられていたわけです。
 [核基地機能]を一貫して付与されてきた岩国基地の危険な役割は、けっして過去の話ではないのだということを、今後も系統的に追及し、暴いていく必要がありますね。
 吉岡 まったく同感です。いま、私たちの前には新たな希望の火が灯りました。待ちに待った核兵器禁止条約が1月22日に発効したことです。これにより、あくまで「核攻撃基地」である岩国基地の存在は国際条約違反だということになります。日本政府に核兵器禁止条約への参加を求める世論と運動がますます重要ですし、私たちの基地撤去闘争を、日本国憲法と核兵器禁止条約を正面に高く掲げて進めていきたいと思っています。
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○吉岡光則(よしおか・みつのり)さん 
 元高校社会科教員。現在、山口県平和委員会会長、原水爆禁止岩国地域協議会理事長。山口県アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会理事長。

○新原昭治(にいはら・しょうじ)さん 
 国際問題研究者。米解禁文書を入手・分析し「日米密約」を追究するなど日米関係論、ベトナム戦争問題等の専門家。非核政府の会核問題調査専門委員。