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 ●提言・声明
 
福島第1原発の汚染水問題 「収束宣言」撤回し、真の事故収束へ全力を
野口 邦和(日本大学准教授・福島大学客員教授=放射線防護学)(2013.10.15)

  「福島第1原発の汚染水はどうなっているのか」「打開策はないのか」――。放射能汚染水をめぐる東京電力のずさんな管理が明らかになるなか、国民の間に不安、疑問が広がっています。
 非核の政府を求める会はこの問題の解決に向けて、9月末に開いた会合で同会常任世話人の野口邦和・日本大学准教授・福島大学客員教授(放射線防護学)が問題提起を行い、討論しました。野口氏の報告(要旨)を次に紹介します。
    ◇
 東京電力福島第1原発は依然として、1〜3号機の事故炉の循環注水冷却の維持が最重要課題です。ただ、ここにきて1〜4号機の建屋地下に流入する地下水量の抑制対策と、増え続ける汚染水の安全保管対策が喫緊の重要な課題となっています。

 ▼専門家の英知集め
 対策を

 原子炉建屋地下等に流入する地下水は1日当たり400トンとされています。建屋地下の汚染水と混合し、1日当たり400トン汚染水が増えている勘定です。貯蔵タンクで保管されている汚染水は、9月末時点で35万トン超あります。東電は2016年度末までに最大80万トンまでタンクを増設する計画です。
 地下水の流入量抑制対策として政府は、陸側に「凍土遮水壁」を構築するとしています。それから、事故前から地下水を汲み上げていたサブドレンが地震ですべて止まったままの状態です。これを2014年度中に復旧して再び地下水を汲み上げる計画です。
 しかし、凍土遮水壁の構築には320億円もかかるうえ、果たしてどれだけ効果があるか不明な点が多い話です。
 やはり、地下水の流入量抑制対策については、専門家の英知を結集することが重要だと思います。
 例えば、9月27日の某新聞記事を見て驚いたのですが、産業技術総合研究所の地質情報研究者が汚染水対策として、「降った雨をしみ込ませるな」という提案をしていました。要するに、原発周辺の地下水は、海に向かって1日800トンが流れているが、そのほとんどが敷地周辺に降った雨なので、敷地周辺をアスファルトなどで覆って地中にしみ込ませないようにすれば地下水は減ると言うのです。阿武隈山系の地下水はもっと深いところを流れているそうです。初めて聞く話で、さすがに専門家だと思いました。
 こうした提案を含め、周辺の地下構造や地下水の流れを調査し、専門家を集めてしっかり対策を検討して、現地で試験して効果を確かめながら対策を進める必要があると思います。

 ▼汚染水の保管対策

 9月末時点で35万トン超ある汚染水の大部分は、900個ある鋼製貯蔵タンクに保管されています。ところが350個の貯蔵タンクはフランジ型といって、継ぎ目をパッキンで挟みボルトで締め付けたタイプで溶接されてないのです。残りは溶接型のタンクです。汚染水は主にフランジ型に保管されており、この型のタンクで昨年から汚染水が漏れ出して問題になっています。
 東電は、汚染水の安全保管対策として、海側遮水壁を構築中です。汚染水の保管は技術的にはむずかしくないはずです。当面は、フランジ型タンクから溶接型タンクに移すほかないと思います。
 タンクの設置場所不足を指摘する向きもありますが、第1原発5、6号機北側と西側の敷地、あるいは大型タンカーに入れて第2原発の敷地に移送するなど、再稼働を前提にしなければ、貯蔵タンクの設置場所は出てくるはずです。
 汚染水は放射能濃度の高いものが大量にあります。仮に汚染水が貯蔵タンクから漏れても、放射能濃度が低ければ、環境への影響の程度は小さいはずです。3系統ある多核種除去装置「アルプス」は1系統が試験運転されていますが、2系統は止まったままです。試験運転中のアルプスもトラブル続きです。1系統で1日当たり250トン処理するアルプスを早急に稼働させ、さらにアルプスを増設することも必要です。

 ▼海の汚染状況は

 海はどれだけ汚染されているのか。海に放射性物質が漏れ出ていることは東電も認めていますが、どれだけの量が漏れ出たかは東電も把握できていないと思います。
 福島県沖の食品の基準値を超えた魚介類がどれだけいるかという調査結果は毎週発表されています。9月末の発表を見ると、基準値を超えた件数は調査件数の1%以下です。福島県沖の汚染の影響がもっとも大きい底魚を中心に調べた結果です。
 海の汚染が現在も続いていることは重大ですが、現段階では海に漏れ出ている放射性物質は事故直後と比べると格段に少ないことは間違いありません。その意味では、海への漏洩をいましっかり止めることが非常に大切です。

 「完全ブロック」とはほど遠く、法令違反濃度の汚染水が事故後2年半経った今でも海に漏れ出ています。政府は既設原発の再稼働と原発の海外輸出をきっぱりとやめ、「収束宣言」を撤回し、真の事故収束に向け全力を尽くすべきです。