原爆症認定制度の「見直し要求」実現へ
「緊急100万人署名」年内達成へ協力を |
| 日本被団協事務局次長・岩佐幹三さんに聞く |
| 07年10月 |
|
|
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)はこのほど、原爆症認定集団訴訟全国原告団、全国弁護団、全国支援ネットワークとともに「原爆症認定制度の抜本改正を求める緊急100万人署名」(首相と厚労相宛て)を呼びかけました。9月に厚労相宛て提出した「原爆症認定制度の見直しにあたっての要求」(2面に要旨)に沿った改正を、世論の力で実現しようというもの。署名の年内達成めざし、全国的な協力を訴える日本被団協の岩佐幹三事務局次長(金沢大学名誉教授)に運動の意義、課題等について聞きました。
|
| ■「見直し」は原爆被害の実態に即して |
|
8月に安倍前首相が原爆症認定基準の見直しを約束し、自民党被爆者対策小委員会も認定制度見直しの「提言」を発表して政府に3ヵ月以内に結論を出すよう求めました。与党プロジェクトチームも12月初旬に救済案をまとめる方向です。私たちの運動と世論の力で認定基準見直しの気運が高まっています。
厚労相が設置した「原爆症認定の在り方に関する検討会」の会合がきょう(10月4日)も開かれますが、国は「見直す」と言うなら、原爆被害の実態に即した対応、援護施策をしてもらいたい。研究室で行った数値や発症率と、原爆が引き起こした放射線被害、発症率とは自ずから異なっているんですから。
原爆症認定訴訟が起こった最初から、政府の原爆被害の過小評価が大きな問題でした。訴訟を起こす前から、私たちはすべてのがんを認めるよう求めてきましたが、認定をめぐる裁判を通して、被爆による晩発性放射線障害というのはがんだけじゃない、がん以外の疾病も原爆症として認定させなければいけないことがわかってきました。
では、どういう疾病を原爆症としてまとめるか──。いまの厚労省の基準は原爆被害を矮小化し、過小評価していますから全然話にならない。現行の基準に代わる新しい認定基準が要るわけで、私たちはいろいろ議論して、それを現時点で9つの疾病にまとめたわけです。これらの疾病でいまなお治療を継続する必要があるものは原爆症と認定しなさいということです。それを政令で定めることも求めています。
|
| ■「被爆者の補償」と「国民の未来の保証」 |
|
これまでの原爆症認定問題を通して、私が国民の皆さんにぜひ知ってほしいと思うのは、国は疾病の認定を提訴者に絞ってしまい、被爆者全体の問題として考える姿勢がないことです。
それはどこからきているか。やはり、一つは、原爆症は原爆投下による被害なのだという戦争責任の問題。もう一つは、被爆者を放置した戦後責任です。原爆投下後、米軍が入ってきて、原爆被害を軍事秘密としてそ相を隠蔽し、被爆者は放置されてどんどん亡くなりました。
なぜそういうことを言うかというと、私自身、広島の爆心から1・2キロの地点で被爆し、家の下敷きになった母を見殺しにして逃げたんですが、放射能の急性症状が次々に出て死んでもおかしくない状況だったのを、叔母が見つけた医者に毎日注射してもらったおかげで3週間ぐらいでなんとか回復した。そういう体験からも、国が何らかの治療を施していれば何分の一かの被爆者は助かったかもしれないんです。アメリカ占領軍と日本政府による原爆被害の隠蔽と被爆者放置──これが今日まで原爆被害の過小評価の根底にずっと流れているんです。
原爆というのは衝撃波、熱線、放射線による総合的な被害です。そしてあらゆるものを破壊し、人間の命、身体、くらしに、そして心にも深刻な被害を与えた。ところが、1980年にできた厚生大臣の私的諮問機関「原爆被爆者対策基本問題懇談会(基本懇」が戦争による犠牲は受忍すべきとする答申を出し、原爆被害は放射線による特殊な被害だと限定してしまった。現行法はその実態をさらに狭め、しかも「認定」というところに持ち込んでしまったわけです。その結果が原爆症認定者2000人、被爆者全体の0・8%という状況なんです。
だから、原爆被害はこんなにひどいんだ、それゆえこの被害を再び許してはいけないと被爆者は言わなければならないんだということが、この訴訟の根底には流れているんです。私たちが求めている国家補償というのは、同時に、再び被爆者をつくらないことを国が国民に約束することにもなります。それは、被爆者への補償だけでなく、国民に未来を保証することだと、私は思っています。
|
■12月上旬をヤマ場に
全国から署名と折り鶴を |
|
いま、私たちが納得できる認定基準「見直し」を実現できるかどうか、厚労省や与党プロジェクトの動きからみて、12月上旬がヤマ場になります。「検討会」が開かれていますが、油断はできない。かつて煮え湯を飲まされた「基本懇」の二の舞にならないようにしなければなりません。
そのために、「緊急100万人署名」を年内達成を目標に大いに集めて、厚労省にどーんと積み上げれば、これは大きなインパクトになります。それにはやはり、被爆者だけではなく、国民の皆さん、非核政府の会の方々にも、ぜひ大きなご支援をお願いしたいと思います。
すでに各地の自治体も意見書を次々にあげてくれていますし、賛同議員も増えています。12月4日には「100万羽折り鶴集会」を東京で開きます。そこに全国から署名と折り鶴を持ち寄り、大行進も行って、国に大いにアピールしたいと考えています。 □
|
| |