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 ●全国総会の方針
 
核兵器禁止条約の交渉開始へ被爆国の役割発揮を
       原発の危険性めぐり国民的論議を
          非核の政府を求める会が第26回全国総会
2011年6月11日

 非核の政府を求める会は6月11日、東京都内で第26回全国総会を開き、18都府県の会と16中央団体の代表、各界個人賛同者ら70人が出席しました。
 今総会は 「核兵器のない世界を」との国際的な気運の広がりの中で、また、東日本大震災・福島第一原発事故から3ヵ月を経て、「原発依存政策の転換を」の声が高まるなか、非核の政府を求める会のいっそうの役割発揮が求められる情勢の下で開かれました。
 会議では、2010年NPT再検討会議から1年、同会議の合意はいま世界の非核・平和の流れを大きく鼓舞し、その後の国際政治に確かな力を与えていること、核保有国にNPT合意の実行と核兵器禁止条約締結の決断を迫ることが焦眉の課題となっていることが明らかにされ、この流れを加速させるために、日本の政治を非核・平和の政治へと転換することはますます重要と論議。非核の政府運動のいっそうの前進をめざす新方針を確認しました。
 増田善信・常任世話人(気象学者)が開会あいさつ。NPT再検討会議の成果を継承・発展させる国際新署名の成功を訴えるとともに、“原爆と原発は双子の悪魔”との持論にもふれながら原発をめぐる方針について討論で深めてほしいと訴えました。
 総会は座長に小澤隆一(東京慈恵会医科大学教授)、国分稔(全国商工団体連合会会長)の両常任世話人を選任。
 冒頭、昨年の総会後亡くなった世話人らの生前の功績を偲び、また東日本大震災の犠牲者を追悼し、黙祷を捧げました。
 柴田真佐子・常任世話人(全国労働組合総連合副議長)が総会議案を提案。「核兵器のない世界」をめざす流れは第66回国連総会の論議など注目すべき前進があったと述べ、日本政府に被爆国にふさわしい役割発揮を求めるうえで非核政府の会の前進がますます大事と強調。原発の危険性についても核兵器産業の副産物として実用化されたことなどを指摘し、結成以来核戦争反対・日本の各線上化阻止を掲げ、核被害・放射線障害の非人道性を告発してきた「会」として、原発依存政策、原子力政策の転換をめぐる国民的論議を巻き起こそうと呼びかけました。(議案全文は別掲)
 藤田俊彦(前長崎総合科学大学教授)、笠井亮(日本共産党衆議院議員)の両常任世話人が補強報告を行いました。
 藤田氏は、米ロを中心に世界の核戦力状況について発言。米ロの核軍縮が一定程度進行してきたとはいえ、いまなお2万発もの核兵器が保有されていること、爆発威力は、双方の配備中の戦略弾道ミサイルだけでも広島型原爆の7万6000発超になるとして、その非人道的実態を告発しました。
 笠井氏は、「会」として原発問題、米原子力艦船問題にどう向き合うかについて語るとともに、核兵器禁止条約の交渉開始、アメリカの新しい核実験、日米「核密約」問題などをめぐる国会論戦で明らかになった、米核戦略に追随し、世界の流れに逆行する日本政府の姿勢を批判しました。
 討論では、延べ23人が発言しました。
 総会では、議案を採択し、116人の世話人と22人の常任世話人、5人の顧問、事務室長を選出。「国民のみなさんへの訴え」(別掲)を採択しました。

 
広島、長崎両市長らがメッセージ

 総会には、松井一實・広島市長、田上富久・長崎市長、竹内脩・枚方市長、海老根靖典・藤沢市長の4市長、平和・民主運動18団体、10労働組合と、個人多数から激励・連帯のメッセージが寄せられました。
 第26回全国総会では、柴田真佐子常任世話人の全国総会議案の提案(別項)に続いて、藤田俊彦、笠井亮の両常任世話人が補強報告を行ないました。
世界の核兵器国の核軍備動向と核爆発威力について(藤田氏)
 総会議案付属資料集の中の「世界核戦力状況2011年版」を中心に、核兵器保有各国の核戦力の特徴的動向について報告します。
米ロ両国の核軍備動向
 米国の核軍備は2001年の弾頭・爆弾約1万1000発から11年半ば現在、8500発に低下しています。緩慢な核軍縮です。ロシアは同じ10年間に2万1000発から1万1000発へ50%弱の縮小です。米ロ核軍縮が一定程度進行してきたとはいえ、両国合わせて2万発弱の核兵器が今なお保有されています。
 米ロ新START条約の発効直後、両国が初めて交換した現状報告によると、米国の作戦配備戦略核兵器数は1800発、ロシアが1537発でした。
 新START条約の目標(7年間で配備ずみ戦略核を1510発にまで削減)を、ロシアはすでに達成し、米国も今年中に達成するとの指摘があります。しかし米国では、2012年の大統領選等を控えて、核軍備削減に反対する勢力が野党共和党を中心に根強く、オバマ政権もこうした動きに対応するべく、核兵器の維持や改造などを公に約束しています。最近の新型核実験の実施・発表もそうした動きの一部です。
 核軍備撤廃目標への具体的な進展はまったく見えていません。
米ロ戦略核の爆発威力
 米国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射ミサイル(SLBM)の配備ずみ戦略ミサイルの核弾頭数は約1650発。爆発威力は全体で41万キロトン、弾頭1発当たり約250キロトンで、広島型原爆(推定爆発威力15キロトン)の17発に相当する巨大さです。ロシアの配備ずみ戦略核ミサイルの核弾頭は1600発弱。爆発威力は合計74万キロトン弱で、1発平均465キロトン、広島型原爆31発に相当します。つまり、配備中の戦略弾道ミサイルの核弾頭の爆発威力は、米ロ合わせて広島型の7万6000発超です。
中国の核軍備
 中国の核軍備に関しては確たる情報が乏しい。核弾頭数は最近、推定240発に下方修正されています。地上配備弾道ミサイルは3〜5メガトンの巨大な核弾頭を搭載しており、核弾頭135発の爆発威力の合計は23万6500キロトン。弾頭1発当たり1751キロトンで、広島型の120発近くに相当します。
 中国は、国連総会などにおいて非同盟諸国などの提案する核兵器廃絶諸決議に賛成し、核先制不使用、非核兵器国に対する不使用も宣言しています。ただし、自国核戦力は最小限の抑止の手段だと主張、正当化しています。
米ロ中以外の核保有国
 ▽インド、パキスタンは、1998年の核実験以来、核軍備拡大を競い、インドが01年の20発から現在80〜110発へ、パキスタンも18発から90〜110発へと増加しています。
 両国の核兵器保有増は周辺諸国に不安をかきたて、とりわけパキスタンの核兵器が安全に保管されているかは国際的関心の的です。
 ▽イスラエルのNCND政策(核兵器の保有を肯定も否定もしないとする基本政策)は従来通り。推定保有数は80発です。
 イスラエルとパレスチナの2国共存の課題は、今秋の国連総会におけるパレスチナの加盟承認という大仕事を控えています。昨年のNPT再検討会議は、12年に中東会議を開催してパレスチナ問題の解決を図ると決議しました。しかし、その展望は暗いと思います。
 ▽北朝鮮の核兵器保有は10発未満。北朝鮮が2度の核実験にもかかわらず、核兵器能力を作戦化したとする公的に利用可能な証拠はないとされます。
 現在、こう着状態にある6ヵ国協議の再活性化へ、日本政府の創意ある新たな外交努力が求められます。
被爆国ありながら世界流れに逆行する日本政府の問題点(笠井氏)
 日本の政治、日本政府の問題を中心に報告します。
問われる政治の役割
 最近の新聞に「国民による政治不信任案が可決されました」という政治漫画がありました。震災の救援・復興でも原発事故問題でも、政治は何をやってるのかというのが、国民の声だと思います。
 一方で国会では、??菅首相がいつ辞めるか?≠ニいった駆け引きの裏で、復興基本法はじめ国民の暮らしや基地問題、憲法への攻撃など政治の大枠で、民主、自民、公明3党の合意で悪政を押し付ける事実上の大連立といった政治が始まっています。
 こうした動きを許さず、被災地の支援・復興問題をはじめ国民的なたたかいが大事になっています。
原発依存政治の責任
 日本政府の問題の一つは原発依存政治です。
 そもそも原子力を大量殺戮のために利用したのが核兵器です。その惨禍を体験した日本には「あの悲劇を二度と繰り返させてはいけない」という強い願いがあります。しかし1953年、アイゼンハワー米大統領は米ソ「冷戦」戦略のもと、原子力平和利用政策を打ち出し、そのために「ヒロシマ・ナガサキ」の反発を消し去ろうとして、日本に原発を持ち込んできました。
 しかもその原発は、原子力艦船の動力炉として開発された軍事技術をそのまま商業炉に転用したもので、そこに原発の危険性の歴史的根源があります。
 原発は、重大事故が起こって放射性物質が外部に出ると、被害は空間的にも時間的にもどこまでも広がります。原発が稼動すると死の灰がたまりますが、それを閉じ込めておく技術はない。そういう未完成の原発を地震・津波国の日本で使い続けていいのか、現在の原発と日本社会は共存しうるのか、国民的討論と合意が必要なときです。
 関連して、私は国会質問を通して、原子力艦船の安全性について米国にものが言えない日本政治を改めて痛感しています。日本政府に、米原子力艦船が安全だというのは何にもとづいて言っているのか質しても、米国が安全を保証すると言っているから大丈夫というだけです。「安全神話」が通用しないことを明らかにしたのが今回の事故です。原子炉の性能や構造などを軍事機密にしている状況で安全だと判断できるのかと追及しても、政府はその安全性について米国に聞こうともしません。
核廃絶の流れに逆行
 二つめに日本政府は、核兵器禁止条約の交渉開始を求める世界の流れに逆行する役割を果たしています。
 私は衆議院外務委員会で5月、日本政府は国連総会でマレーシア提案の核兵器禁止条約の交渉開始を求める決議になぜ棄権したのかと聞きました。外務大臣の答弁は、核兵器のない世界をめざすうえで、マレーシア決議は適切でないという、世界に恥ずべきものでした。
 米国の新型核実験に対しても日本政府は、NPT会議の議論や成果と矛盾しないという態度です。核爆発をともなわなくても核兵器の配備・使用の継続を保証するものであり、核兵器のない世界をめざすことと矛盾するのは明らかです。
「核密約」は今日的問題
 三つめは「核密約」問題です。
 米国の新しい「核態勢見直し」(NPR)報告は米国がSLBM、ICBM、重爆撃機の核3本柱を保持するとし、東アジアで危機があれば核兵器を配備するとしています。しかし日本政府は、これについて何の協議もしていません。核兵器が持ち込まれない保証はないのです。
 ウィキリークスの公表公電は、日米外交当局者が核搭載についてあいまいさを維持した新方式を見出す必要があると協議したことを暴露していますが、まさにこの問題は今日的な問題だということです。
 被爆国でありながら米国の核戦略に追随する政治でいいのかという大本が問われています。
         
NPT再検討会議、鳩山政権の退陣めぐり活発に論議
 第26回全国総会の討論では20人が発言しました。核兵器禁止条約の交渉会開始を求める各分野の取り組み、福島原発事故に対する国民の不安と怒り、原発依存政策の転換の重要性などをめぐり、活発な論議が交わされました。(敬称略)
                  
 
 ○新原昭治(国際問題研究者)…(発言要旨を前号に掲載)
 ○
濱恵介(広島の会)…かつて7年間暮らした福島の町が津波で原爆投下後の焼け野原のようになっている光景を目にし悔しかった。非核の会は、核兵器と密接な関係のある原子力政策について大いに関心を持ち、シンポジウムの開催など学習を推進すべきだ。
 ○
三浦一夫(ジャーナリスト)…原発問題に正面から取り組むべき。政府が米原子力艦船の安全確認をしないのも、歴史的・政治的背景で原発問題とつながっている。核兵器廃絶の動きは、非核の会結成当時と比べて極めて大きな歴史的変化。「核の傘」離脱等日本政府を変えることは国際政治を変える原動力となる。
 ○
榊原道夫(会員)…地震の巣、地殻変動のところにある日本に原発をつくる危険は多少の知識があればわかること。日本が原発から撤退しないのはプルトニウムをつくり原爆を持ちたいとする支配者の思いがあったから。機械は必ず壊れる。脱原発は非核への道だ。
 ○
永沢丈夫(神奈川の会)…5月に米原子力潜水艦が横須賀に入り、1週間にわたり原子力空母ジョージワシントンとあわせて3つの原子炉が横須賀にある事態に。先の大津波では空母が2メートルも上下し、米兵が大騒ぎした。空母は6月放射性廃棄物を搬出したが、県も横須賀市も危機感がない。全国的な原子力空母の配備撤回の署名運動を起こしたい。
 ○
石村和弘(東京原水協)…核兵器全面禁止条約締結の署名運動が大きく進んでいる。核兵器開発のために膨大なお金を使う時代じゃない。災害復興にお金を回せという流れも作りたい。平和市長会議に東京63自治体中34自治体が入るなど自治体が大きく変化している。政府を変えるために自治体の変化を促進したい。
 ○
奥村義雄(富山の会)…県議会に対し、日本政府に非核三原則の厳守と法制化を求める意見書の採択を要請した。「平和美術展」は来年50周年になる。核兵器廃絶、恒久平和、被爆者援護が目的。絵画に工芸、彫刻、書などを加えて発展させたい。
 ○
内川幸一(埼玉の会)…非核三原則の法制化問題の講演会を3月に開いた。全国総会を機に法制化問題の署名運動などに取り組めないか。非核「神戸方式」が決議された3月18日に非核の会で全国的な行動をくめないか、提案したい。
 ○
菊地定則(群馬の会)…原発・放射線問題の学習会に、予想を上回る人々が参加して賑やかな討論を展開した。今、10人単位でもいいから学習運動を持続させようと決意している。群馬は新潟の原発事故でも横須賀の原子力艦船の事故でも「死の灰」が飛んでくると言えば誰でも理解できる。わかりやすさが大事。地域から盛り上げたい。
 ○
田中則夫(京都の会) …意見ポスター運動に取り組む。〈ローカル〉非核自治体運動〈ナショナル〉非核日本宣言・非核三原則法制化〈リージョナブル〉北東アジアの非核地帯化〈グローバル〉核兵器禁止条約の4レベルの連関を位置づけて取り組む。自治体アンケートをみると小中学生の広島・長崎訪問が3%に減っていることは放置できない問題だ。
 ○
原和人(全日本民医連・反核医師の会)…核兵器禁止条約の交渉開始へロードマップを作るべきではないか。昨年8月の国際反核医師の会の総会は、NPT会議の合意を受けて「核兵器のない世界」に向けて大きな成果があった。核兵器廃絶は運動すれば実現する課題、今挑戦する課題とアピールされ、感動を呼んだ。世界の反核運動は日本の動きに注目している。
 ○
安井正和(日本原水協)…今年の原水爆禁止世界大会は、核兵器のない世界の達成に向けた次のステップへ踏み出す、NPT会議の合意の実行を迫る重要な大会。国連、各国政府代表の参加も決まりつつある。福島原発事故を受け、「核兵器のない平和で公正な世界を」のスローガンに共感が広がっている。核兵器も原発もいらないという声が大きく広がっている。
 ○
小林一平(映画プロデューサー)…映画「ひろしま」の上映が世界各地でも始まり、反響を呼んでいる。この映画を残すため、DVD化をぜひやりたい。修学旅行など原爆病院や資料館を訪れる学生も、この映画を観て行けば、見えるものが違ってくるだろう。映画のDVDは国連事務総長、米英首脳らにも送る。
 ○
野口宏(千葉の会)…オバマ米大統領のプラハ宣言以来、平和市長会議への参加が急速に増え、県内54自治体中47自治体が加盟した。残り7自治体にも参加要請を行なっている。非核平和自治体宣言も未宣言は小さな村ひとつ。それぞれぜひ100%達成をめざしたい。
 ○
児玉捷之(埼玉の会)…大震災から3ヵ月、原発事故で自宅に帰れない県内の避難者への支援に取り組んでいる。県内8団体で開いた原発問題学習会に会場いっぱいの600人が参加し、「展望がもてた」などの感想が寄せられた。こういう運動を通して原発問題を住民に訴えていきたい。
 ○
増田善信(常任世話人)…会の「非核5項目」には被爆者支援が入っている。原発事故への対応では、内部被爆問題をもっと重視すべきだ。チェルノブイリ事故における子どもの甲状腺ガンの発症に照らせば、今回の事故でヨウ素131の放出時に、もっと早くヨウ素剤を飲ませるべきでなかったか。
 ○
深尾清造(福岡の会)…北東アジア非核地帯化の問題は、民主党が2000年の政策で、政権をとれば米国との先制不使用合意をテコに非核地帯をつくると宣言している。この問題はいろいろ話に出るが、どう実現するかは難しい。突破口は日本と米国との核先制不使用合意が先決だと思うがどうか。
 ○
柴田勇輝(長崎の会)…4月に開いた福島原発事故問題の緊急集会には150人が参加。関心の高さが示された。佐世保市は非核宣言自治体でないが、佐賀・玄海原発の30キロ圏内ということで原発事故への関心が高まっている。同時に、原発問題も、核兵器廃絶の課題を真っ正面に据えて議論することが重要だ。
 ○
高橋和枝(新日本婦人の会)…新婦人で震災募金8000万円を集めて被災地に届けた。原発事故で、若い母親を中心に「家の窓を開けられない」「子どもが公園にも行けない」など放射能への不安、ストレスが深刻。街頭での核兵器廃絶署名も原発問題にふれることで気持ちが一つになる。核兵器全面禁止も原発撤退も思い切って押し出すようにしたい。



国民のみなさんへの訴え
 
核兵器のない世界、非核の日本めざす国民的共同行動をさらに大きく

 3月11日に東日本を襲ったマグニチュード9・0の記録的な巨大地震と大津波は、太平洋沿岸の地域に甚大な被害をもたらしました。あれから3ヵ月、本総会は、震災犠牲者に哀悼の気持ちを捧げるとともに、被災者のみなさんに心よりのお見舞いを申し上げるものです。

 国民のみなさん
 私たち「非核の政府を求める会」は結成25周年となる本日、第26回全国総会を開いて、核兵器の廃絶と非核の日本、非核の政府を1日も早く実現しようと、誓いを新たにしました。パン・ギムン国連事務総長が「地平線の先に核兵器のない世界が見えています」と演説して感動と確信を広げた核不拡散条約(NPT)再検討会議から1年。この間、「核兵器のない世界を」の流れは、核兵器廃絶のための法的枠組み作りを圧倒的多数の国々が認めるなど、刮目すべき進展をみせました。歴史の大局的な変化を大いに確信とし、1日も早い“核兵器ゼロ”に向けて、そしてそのための核兵器禁止条約の交渉開始のために、草の根から非核・平和の声を大きく広げようではありませんか。

 みなさん
 いま、NPT会議の合意は、その後の国際政治に確かな力を与えています。昨年暮れの国連総会でも、「核保有国は核廃絶に向けて動きを加速させるべき」との空気が広がり、各国代表が演説の中で、核兵器廃絶条約の交渉を開始すべきと相次ぎ発言するなど、新たな前進が生まれています。5月にインドネシアで開催され120ヵ国が参加した非同盟諸国外相会議は「核兵器の全面廃絶に関する声明」を採択し、期限を切った核兵器廃絶への取り組みを強化すると表明して、注目されました。
 同時に、NPT会議で核兵器廃絶のための具体的提案に反対した一部核保有国は、依然として「核抑止力」論を押し立てて核兵器保有を「正当化」し、“不拡散中心・廃絶棚上げ” 姿勢に終始しています。そのことは、国連総会でのアメリカなどの代表演説や北大西洋条約機構(NATO)会合の対応などにもはっきりと示されています。核保有国にNPT合意の実行と核兵器禁止条約締結の決断を迫ることは、ますます重要です。

 みなさん
 このとき、核兵器廃絶の旗振り役を担うべき日本政府は、「核兵器廃絶の先頭に立つ」と表明しながら、実際には、昨夏の広島原爆忌その日に、「核抑止力は引き続き必要」(菅首相)と公言するなど、被爆国政府の責務に背を向け続けています。日米「核密約」も、公約に反して温存する構えです。いまこそ、核兵器の廃絶、「核密約」破棄・「非核3原則」厳守をはじめ、非核の日本の実現、憲法第9条にもとづく平和外交を求める声を、大きく広げようではありませんか。
 いまほど、被爆国日本の非核・平和運動の役割発揮が、強く求められているときはありません。日本原水協が2月、著名な人々の賛同を得て提唱した国際新署名「核兵器全面禁止のアピール」は、内外の広範な非核平和団体、各界の人々の間で共感を呼び、「6・9行動」等を通して連日、多数の署名が日本原水協に寄せられています。NPT再検討会議では、「本会議は、核兵器のない世界の達成に関する諸政府や市民社会からの新しい提案およびイニシアチブに注目する」ことを明記し、市民社会の果たす役割を高く評価しました。いまこそ、被爆国の草の根の非核平和運動の真価を発揮しようではありませんか。

 みなさん
 東日本大震災の影響で、東京電力福島第一原子力発電所が全電源喪失に陥り、大量の放射性物質を放出する大事故となりました。この事故は、東電はじめ電力業界と政府が「安全神話」を振りまき、地震や津波による重大事故への対策を怠ってきた結果招いた「人災」であり、政府、東電の責任は重いと言わねばなりません。現在の原発の危険性は、??安全性は二の次?? の軍事用動力炉技術の民生転用――核兵器産業の副産物として実用化したところに大元があります。核保有国の核戦略と不可分に推進され、放射性物質放出の危険を免れない原発に対し、「原発政策の根本的見直しを」「自然エネルギーへの転換を」の声が内外で大きな広がりを見せていることは、当然と言えましょう。

 国民のみなさん
 広島・長崎への原爆投下から66年。パン・ギムン国連事務総長は昨年8月の広島平和記念式典に参加して「被爆者の存命中に核兵器ゼロへ」と呼びかけました。私たちは核兵器使用による惨禍を体験した国として、「核兵器は人類と共存できない」「核兵器廃絶の国際交渉の開始を」のメッセージを世界にさらに大きく発信していこうではありませんか。核兵器廃絶と非核の日本を求めるわが会とともに、原水爆禁止2011年世界大会を成功させ、核兵器も戦争もない平和な世界の実現に向けて、ともに意気高く前進しようではありませんか。

   2011年6月11日           非核の政府を求める会第26回全国総会 


 非核の政府を求める会第26回全国総会方針

 はじめに

 3月11日に東日本を襲ったマグニチュード9.0の記録的な巨大地震と大津波は、太平洋沿岸の諸都市を中心に甚大な被害をもたらした。あれから3ヵ月、本総会は、震災犠牲者に哀悼の気持ちを捧げるとともに、被災者の方々に心よりお見舞いを申し上げるものである。
 この震災の影響で、東京電力福島第一原子力発電所が全電源喪失に陥り、大量の放射性物質を放出する重大事故となった。放射能被害から国民・原発労働者の安全、国土と海洋をどう守るか、災害発生源の原発はどうあるべきか――。いま、このテーマをめぐって国民的論議を巻き起こすことが切実に求められている。
 「核兵器のない世界を」の流れはこの1年、核兵器廃絶のための法的枠組み作りを圧倒的多数の国々が求めるなど、刮目すべき進展をみせた。この前進を次のステップ――核兵器禁止条約の交渉開始へと結実させるうえで、被爆国日本の非核・平和運動の役割は、ますます重要となっている。
 昨年の総会を前後して、公約破りの民主党政治に対する国民の批判の高まりの前に、鳩山政権は退陣に追い込まれ、代わって菅政権が誕生した。だが、「核抑止力は必要」と公言し、消費税増税を唱える菅政権の政権支持率はいまや3割を割り込むほどの急落ぶりである。
 こうした激動の情勢下、今総会は開かれている。核兵器廃絶をめぐる今日の情勢をどう捉え、どうステップアップするか、我が国を非核の日本へと転換するうえでの当面の課題は何か、日本の原子力政策はどうあるべきか――。会結成25周年の今年、改めて「非核5項目」と結成の精神に立ち、会に求められる役割を果たすべく、いっそうの発展を誓い合おうではないか。

【1章】非核・平和をめぐる今日の情勢

(1)「核兵器のない世界へ」が力強い流れに

 2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議では、パン・ギムン国連事務総長が「地平線の先に核兵器のない世界が見えています」と演説して感動と確信を広げた。あれから1年。NPT会議の合意は今、世界の非核・平和の流れを大きく鼓舞している。
 NPT会議において全会一致で採択された最終文書は、「核兵器のない世界における平和と安全を達成すること」を国際政治の「目的」に明確に位置づけた。「核兵器によって世界の平和と安全は守られる」としてきた国々を含め、同会議がこのことで合意した意義は、きわめて大きい。
 同会議はまた、「核兵器のない世界を達成し維持するために必要な枠組みを設立する特別の努力」が必要とし、核兵器禁止条約の交渉の検討を提案している「国連事務総長の核軍備縮小撤廃に関する5項目提案に注目する」ことを明記した。この確認は、核兵器禁止条約の交渉開始への今後の突破口となるものである。
 こうした合意は、その後の国際政治に確かな力を与えている。昨年暮れの第65回国連総会では「核保有国は核兵器廃絶に向けて動きを加速させるべき」との空気が広がり、各国代表が演説の中で、核兵器廃絶条約の交渉を開始すべきと相次ぎ発言するなど、注目すべき前進がある。5月にインドネシアで開催され120ヵ国が参加した第16回非同盟諸国外相会議と非同盟運動50周年記念会合は、「核兵器の全面廃絶に関する声明」を採択し、期限を切った核兵器廃絶への取り組みを強化すると表明した。
 今日の核兵器廃絶の流れは、被爆者をはじめとする我が国の原水爆禁止運動など世界の非核平和の運動、非同盟運動や新アジェンダ連合など各国政府の外交努力、国連事務総長、国際機関関係者の積極的関与が互いに連携し、合流しているところに、その力強さの源がある。
 同時に、NPT会議で核兵器廃絶のための具体的提案に反対した一部核保有国は、依然として「核抑止力」論を押し立てて核兵器保有を「正当化」し、“不拡散中心・廃絶棚上げ” 姿勢にとどまっている。そのことは、国連総会でのアメリカなどの代表演説や北大西洋条約機構(NATO)会合の対応などにも明瞭に示されている。核保有国にNPT合意の実行と核兵器禁止条約締結の決断を迫ることは、今日、焦眉の課題となっている。

(2)核兵器廃絶へ次のステップを──廃絶条約の交渉開始を

〈第65回国連総会の論議が示したもの〉
 第65回国連総会は、2010年NPT再検討会議の成果を受けて、例年以上に踏み込んだ審議が行なわれ、「核兵器のない世界」を求める気運の高まりを示すものとなった。そのことは、核兵器廃絶に直接関わる諸決議の採択状況に端的に投影されている。
 ○アイルランド提案の新アジェンダ連合決議「核兵器のない世界に向けて:核軍備撤廃公約の実行を加速する」は、核軍備撤廃に向けた諸措置の加速を核兵器国にきびしく要求した。賛成率は94.5%に達した。
 ○ミャンマー(非同盟諸国)提案の「核軍備縮小撤廃」決議は、核軍備撤廃を一定の時間枠の中で早急に達成する方針を明記し、核軍備撤廃の交渉を開始する機が熟したと指摘した。賛成は65.6%。
 ○マレーシア(非同盟諸国)提案の「国際司法裁判所の勧告的意見のフォローアップ」決議は、核兵器禁止条約の締結交渉を直ちに開始するよう求めた。カナダ、ノルウェーなど5ヵ国は米国に同調せず棄権して注目された。賛成は133ヵ国、72.3%。
 国連総会におけるこうした諸決議の採択状況は、核兵器をめぐるイニシアチブが今日、一握りの核保有大国にではなく、核兵器廃絶を求める圧倒的多数の非核保有諸国の側にあることを印象づけた。同時に、核兵器関連の主要16決議に対し、アメリカは10決議に反対し、米英仏3核兵器国がそろって反対した決議は7件にのぼった。今日、総論では「核兵器のない世界」の構想を受け入れた核保有大国だが、法的、時間的枠組みなどの各論には抵抗し続けている現実を直視しなければならない。

〈核保有国の「核抑止力」論の打破へ〉
 主要核保有国が、核兵器禁止条約やその交渉の時間的枠組みの提唱に反対する根本に、頑迷な「核抑止力」論がある。米仏両政府は事あるごとに「他国が核兵器を保有するかぎり、我々は核兵器を維持する」との立場を表明し、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議も「新戦略概念」(昨年11月採択)の中で、「世界に核兵器が存在するかぎり、NATOは核同盟であり続ける」と明記した。
 「核抑止力は幻想であり、安全保障に名を借りた妄想」(潘基文・国連事務総長=2010年8月、広島での演説)である。核保有国が「核抑止力」論に立ち続けるかぎり、核兵器も、新たな核拡散の危険もなくならない。「人類と核兵器は共存できない」との被爆者の叫びは、たとえ1発であれ、いかなる理由であれ、核保有の正当化を許さない。「核抑止力の幻想」を克服する決定的な力――被爆の実相、核兵器固有の非人道性を世界の共通認識にすることは、ますます重要である。
 また、「核抑止力」論を打破するうえで、▽“核抑止は他国への核脅迫の仕組み”というそもそも論、▽「核抑止」の名で進められた際限なき核軍拡競争や、朝鮮戦争、台湾紛争、ベトナム戦争等での核使用計画などの歴史的検証、▽「核抑止」と称しての北朝鮮核開発にみられる現在の核拡散の実態等の諸側面から、その危険な本質を国民的に明らかにすることは、引き続き重要な課題である。

〈米ロ・新START条約締結――さらにゼロへ〉
 米ロ新START条約は2月5日、正式に発効した。米ロ両国は今後7年間で配備戦略核弾頭数を1550発まで削減することになる。新条約の目標を達成しても、7年後になお米ロの配備戦略核だけで3100発も残ることになる。未配備・貯蔵戦略核弾頭、戦術核兵器等が削減の対象外に置かれていることも見落とせない。米ロは今後、同条約を誠実に履行し、英仏中3ヵ国も巻き込んでいっそうの大幅削減を進めるとともに、それにとどまることなく核兵器ゼロへの具体的行動を開始すべきである。

〈世界の核兵器状況と核開発問題の平和的解決〉
 ○今日の世界の核兵器状況  世界の核兵器数は、民間研究者ロバート・ノリス、ハンス・クリステンセン氏らの研究によると、約2万500発であり、そのうち約4800発が作戦配備されている。国別保有数はロシアが1万1000発で作戦配備数は2430発、アメリカは8500発でそのうち1950発が作戦配備されている。このほか、フランスが300発未満、中国240発、イギリス225発、イスラエル80発、パキスタン90〜110発、インド80〜110発とされ、北朝鮮10発未満としている。いずれも推計であり、その実態に透明性を欠いていることは重大と言わなければならない。
 核兵器はその爆発力による比類なき破壊力とともに、長期にわたる放射線障害をもたらす最も非人道的な残虐兵器であることを世界に発信することは、引き続き被爆国日本の非核平和運動の重要な課題である。

 ○北朝鮮の核開発をめぐる「6ヵ国協議」の再開へいっそうの努力を  北朝鮮は昨年11月23日、韓国の延坪島に対して砲撃を行ない、同島の民間人にまで死傷者が出た。わが会は、国連憲章に反する軍事挑発行動をきびしく非難するとともに、北朝鮮が今後挑発的行動を繰り返さないよう強く求める。
 北朝鮮の核開発問題をめぐる「6ヵ国協議」は2008年以降、膠着状態に陥っているが、朝鮮半島、さらには北東アジアの非核化、平和と安定のために、その打開・前進が求められている。北朝鮮は速やかに協議に復帰すべきであり、わが国を含む関係各国は、協議再開のため、粘り強く外交努力を行なうべきである。この点で、我が国が日朝平壌宣言にもとづき、核・ミサイル・拉致問題の包括的解決のために努力するとともに、米国の「核の傘」から脱却して非核の政治に転換することが重要である。

 ○イランの核開発問題の平和的解決を求める  4月、イランの反体制組織「ムジャヒディン・ハルク」が、テヘラン近郊に国際原子力機関(IAEA)も未把握の秘密の核関連工場があると公表し、イラン政府もその存在を認めるなど、イランの核兵器開発の疑念が強まっている。イランは、国連総会で核兵器廃絶決議に賛成し、核兵器は作らないと繰り返し主張し、原子力平和利用の権利を強調しているが、国連安保理常任理事国にドイツを加えた6ヵ国が求めるウラン濃縮停止も依然として拒否している。同時に、米国がイスラエルの核兵器保有に対しては放置・容認の姿勢をとり続けており、これに中東諸国が不信と批判を募らせていることも見落とせない。イラン政府による核兵器開発放棄の明確化と、同問題の平和的・外交的解決への国際社会のいっそうの努力が求められている。

(3)日本政府は核政策、原子力政策の転換を

〈いま、被爆国政府としてなすべきこと〉
 昨年6月、民主党の鳩山政権は、「古い政治を変えてほしい」との国民の期待を裏切り、就任わずか9ヵ月で退陣に追い込まれた。だが、代わって誕生した菅政権は、普天間基地辺野古移転の「日米合意」尊重、消費税増税等を表明して国民の強い反発を招き、就任直後の参院選で与党過半数割れの大敗北を喫した。
 核政策でも菅政権は、「核兵器のない世界へ、先頭に立つ」(鳩山首相の2009年国連演説)との誓いが影をひそめ、広島原爆忌の記者会見で「核抑止力は引き続き必要」と発言して、被爆者らからきびしい非難を浴びた。また、「核兵器のない世界を」の流れに逆行し、NPT再検討会議の合意にも反する米国の新型の核実験実施(昨年11月、今年3月)に対し、被爆者をはじめ広島・長崎の両市長、長崎県知事らが強い怒りを表明したにもかかわらず、日本政府は「NPT会合の成果とも我が国の立場とも矛盾しない」などと述べて、抗議しようともしなかった。
 日本政府は、国連総会でも、速やかな核兵器廃絶の訴えとはほど遠い「ステップ・バイ・ステップ」の核軍縮を特徴とする決議案を提案する一方、核兵器禁止条約の締結交渉をただちに開始するよう求めたマレーシア決議に棄権するなど、核保有国の顔色をうかがう姿勢に終始して、唯一の被爆国への世界の期待に背を向けてきた。その卑屈な外交姿勢の根本に、米「核の傘」=「核抑止力」への根強い依存体質がある。昨年暮れに閣議決定した「新防衛大綱」でも、「現実に核兵器が存在する間は、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠」との立場を明記している。
 「核兵器のない世界を」の気運が高まる中、この流れを加速させる先頭に立つのか、この気運に水を差す役回りを演じるのか――、被爆国日本の選択の意味合いはきわめて重い。日本政府は核兵器禁止条約への期待が広がるいまこそ、以下の方向へ核政策、外交方針を転換すべきである。
 ?@日本政府は、核兵器全面禁止条約の締結に向けた交渉を速やかに開始する合意を実現するために、国連総会において、被爆国であり憲法9条をもつ国にふさわしい役割を発揮すること。
 ?A核兵器条約の締結交渉の開始、核兵器使用禁止条約等を求める非同盟諸国提案の核兵器関連諸決議案について、「核保有国の同意が得られず時期尚早」とすることなく賛成票を投じ、非同盟諸国、新アジェンダ連合諸国とともに核兵器廃絶の先頭に立つこと。
 ?B核兵器の存在と使用を是認する「核抑止」政策=「核の傘」からの脱却を国際社会に宣言すること。
 ?Cわが国が将来にわたって「非核3原則」を厳守し、そのための法制化を推進する立場に立つことを明言すること。いわゆる日米「核密約」の存在をはっきり認め、これを破棄すること。

〈「核密約」の徹底調査・破棄は重要な今日的課題〉
 この間、日米「核密約」をめぐる新たな証言、事実が明るみに出、米国による日本への核持ち込みがけっして過去の歴史問題にとどまるものではなく、今日的な問題であることが、改めて明らかとなっている。「米核艦船寄港の事前協議問題は、日本政府側は初めから持ち出さなかったとみるべき」とする栗山尚一(たかかず)・元外務省外務次官の証言、米国がNCND政策(米艦船・航空機の核搭載の有無について公にしない政策)を絶対に維持するとして日本政府に核密約を今後も遵守するよう迫ったことを暴露したウィキリークスの公表公電等は、外務省有識者委員会の調査と政府の「密約」幕引きの不当性を、重ねて浮き彫りにした。
 「核密約」問題は、「非核3原則」の蹂躙をこのまま許すかどうかという重要問題である。それはまた、被爆国の日本を核戦争の基地にするという重大な事態を、21世紀の長きにわたって存続させるかどうかという実践的な問題でもある。日本政府は日米「核密約」について改めて徹底的に調査し破棄するとともに、「非核3原則」の厳守、「非核法」制定等、非核の日本を実現する実効性ある措置を講じるべきである。

〈原子力政策の根本的転換へ国民的論議を〉
 東京電力福島第1原子力発電所の過酷事故は、炉心溶融による多量の放射性物質の放出という事態を招き、原発労働者の被曝をはじめ、数万人にのぼる周辺地域住民の強制退去、農漁業の喪失等、人々の健康と生活、生業に深刻なダメージをもたらしている。東電をはじめ電力業界と政府が「安全神話」にどっぷりと浸り、地震や津波による重大事故への対策を怠ってきた結果招いた「人災」であり、政府、東電の責任は重い。
 今回の原発事故を目の当たりにして、国民の多くがいま、原子力の「安全神話」や「クリーンなエネルギー」宣伝の幻想を見破り、「原発は根本的に見直すべき」との思いを強めている。内外で原発からの撤退、自然エネルギー・低エネルギー社会への転換を求める動きが急速に広がっている。原発の最大の危険は、放射性物質の外界への放出であり、しかも原子炉で生成される放射能量は莫大であること、環境に放出された放射能を制御する方法を人類はまだ持っていないことが、日々、衝撃的に示された。放射能の絶対的封じ込めは、科学的に未知の領域である。核戦争のもたらす危険は原発とは比較にならないが、核兵器であれ原発からのものであれ、放射能の影響は本質的に変わらない。原発事故による放射能汚染は、一度の事故でも短時間にして周辺社会と生命体に壊滅的な打撃を与え、また、被害を長期にわたって地球的規模に広げるものであることを直視しなければならない。
 現在の原発の危険性は、“安全性は二の次”の軍事用動力炉技術の民生転用――核兵器産業の副産物として実用化したところに、その大元がある。その後も原子力の研究・利用は核保有国の核戦略と不可分に推進されてきた。1953年、アイゼンハワー米大統領の「アトムズ・フォア・ピース」演説が、原発推進の契機となったが、それは際限のない核軍拡競争の補完と表裏一体をなし、膨大な核分裂性物質生産への大号令とも言うべきものであった。
 とりわけ、被爆国である我が国は、憲法9条をもち、国民の反核エネルギーが強かっただけに、核兵器使用を中核とする世界戦略に移行しつつあった米国が、日本への核持ち込み、日本からの核出撃態勢の確立に向けて、日本の「核タブー」払拭のための重要政策として原子力の猛烈な売り込みをはかったことは、忘れてはならない。
 現在の日本の原発が、米国の核戦略の位置づけのもとで、軍事目的に従属して推進されてきたことは明らかである。また、そこに我が国の原発の危険性の根本要因があることも明白である。
 今回の原発事故は、横須賀、佐世保、沖縄などに寄港している米・原子力艦船の「安全神話」の虚構性をも浮き彫りにしている。米原子力艦船はこれまで何度も重大な原子炉事故を起こしてきた。だが日本政府は、米艦船の日本寄港時の空中放射線測定を制限する密約を結び(71年)、今日にいたるも米側に米艦船の原子炉の性能や構造、核燃料の形状等の基本情報の公開を求めようとさえしないなど、事実上、「国民の安全より軍事優先」の立場にたってきた。原発の「安全神話」が崩壊したいま、政府は米原子力艦船の安全性に関するこれまでの対応を総点検し、見直すべきである。
 わが会は、結成いらい核戦争反対・日本の核戦場化阻止を掲げ、核(放射能)被害の非人道性を一貫して告発してきたものとして、今回の原発事故をふまえて、改めて我が国の原子力行政の抜本的見直し、原発依存政策の転換をめぐる国民的論議の重要性を強調するものである。

〈米軍普天間基地は移設でなく無条件撤去に〉
 菅首相は5月26日、オバマ米大統領との会談で、米軍普天間基地問題について「震災後の現在においても、昨年5月の日米合意に沿って進めていくとの方針に変わりはない」と述べ、名護市辺野古への移設推進を改めて表明した。だが、この方針が、沖縄県民の総意に反し、非現実的であることは、明白である。菅首相が米国にいかに媚びようと、「普天間基地の閉鎖・撤去、県内移設反対」という沖縄県民の総意は揺るがない。米議会からも同移設計画は「非現実的で実現不可能」(レビン上院軍事委員会委員長)との声が強まっている。
 「沖縄県民の負担の軽減」を口にしても「日米同盟最優先」「海兵隊は日本の平和を守る抑止力」との立場に立つかぎり、そこからは展望のない「移転先探し」はあっても、基地撤去の方途は出てこない。わが会は、「日米合意」の白紙撤回、普天間基地無条件撤去を強く主張するとともに、「平和」条約・日米安保条約調印60周年にあたり、今後、核安保の実態等、日米同盟の害悪についても解明・宣伝してゆく。

〈憲法9条を非核・平和の日本実現の力に〉
 5月18日、民主、自民、公明の各党は参院で、改憲のための憲法審査会の運営手続きを定める憲法審査会規程を可決させた。改憲勢力は「憲法審査会規程を作らないのは立法不作為」と言うが、同審査会が4年間も休眠状態だったのは、その背景に、「9条の会」の前進をはじめ「改憲反対」の国民世論の広がりがあるからである。各種世論調査でも、改憲勢力が主眼とする9条改憲を求める声が多数になったことは、一度もない。
 民主党は昨年暮れ、衆参両院議員の比例定数削減方針を決めた。現在の選挙制度で唯一、民意を正確に反映する比例定数の削減は、国民の意思を国会から締め出すものであり、民主主義を根底から破壊するものである。
 わが会は、憲法9条が原子爆弾の投下をふくむ戦争の惨禍のうえに制定された経緯にてらし、あわせて「非核の政府」をめざす運動が憲法9条を全面的に生かす政治を実現する事業であることから、ひきつづき、「9条を守り生かす」運動と連帯し、その発展のために力を尽くす。

【2章】「非核の政府を求める会」活動の前進のために

 核兵器禁止条約の交渉開始、非核の政治を求める世論喚起のために、わが会の前進は、ますます重要となっている。

 1)非核・平和の国民的合意の推進
 ○…わが会は前総会以降、シンポジウム「『核兵器のない世界』への展望と被爆国 の役割――2010年NPT合意から次のステップへ」の開催、核問題調査専門委員会 の例会開催(ほぼ毎月)、国連総会の核兵器関連決議や「核抑止力」論など核保有 国の核政策の分析、「核密約」問題はじめ日本政府の核政策批判などに取り組んで きた。引き続き、非核・平和をめぐる政策上・運動上の重要問題について、調査・ 研究活動に旺盛に取り組む。
[調査専門委員会のテーマ]▽核兵器廃絶をめぐる内外の動向▽世界の核兵器状況▽「核の傘」「核抑止論」批判▽核兵器(禁止)条約▽憲法第9条と非核の日本実現の課題▽「核密約」「非核3原則法制化」問題▽北東アジア非核化問題▽原発・エネルギー問題▽「非核の政府」「非核政策」をめぐる各国政府との交流・連帯。
 ○…日本政府に対しこの間、「第65回国連総会についての要請」(2010年9月、徳 永久志外務大臣政務官が応対)を行なった。引き続き日本政府に対し被爆国にふさ わしい非核政策を遂行するよう求めてゆく。
 ○…会の「2011年新春アピール」の呼びかけに各界各層59氏から賛同のメッセー ジが寄せられた。非核の日本を願う広範な人々との共同行動をさらに広げる。
 ○…インターネットのホームページの日常的な更新、掲載データの充実などいっそ うの改善をはかる。

 2)「核兵器禁止条約」および「非核法」「非核3原則法制化」求める運動の探求
  政府に対して、核兵器の全面禁止・完全廃棄の国際条約の締結の交渉を早急に開 始するよう要求する運動を強める。「核密約」問題の徹底した調査と「密約」破棄 を求める。「非核3原則法制化」をめぐるこの間の研究をふまえて、非核の日本実 現の展望についてさらに探求をすすめる。同テーマでの勉強会を各地で推進する。

 
3)非核自治体運動、非核「神戸方式」の前進を
 非核自治体宣言運動・非核行政の発展を引き続き追求するとともに、自治体にお ける非核・平和の共同行動を、今日の情勢の変化にふさわしく発展させる。
 「核密約」破棄と結んで非核「神戸方式」の全国化に向けた運動が重要となって いる。兵庫の会と協力して具体化、推進する。
 日本非核宣言自治体協議会、平和市長会議との連帯、共同を発展させる。

 
4)国際新署名の推進、原水爆禁止2011年世界大会の成功へ
 原水爆禁止2011年世界大会が8月3〜9日、被爆地の広島、長崎両市を中心に 開かれる。今年の世界大会は、我が国の原水爆禁止運動の歴史的成果に立って、核 兵器のない世界を達成する次のステップを踏み出させるうえで、とりわけ、国際新 署名「核兵器全面禁止のアピール」運動の経験を結集・交流し、運動の飛躍を切り 開くうえで、きわめて重要な大会となる。また、「核の傘」依存・「日米同盟」強化 の危険な日本外交を、憲法9条と「非核3原則」にもとづく非核・平和の政治へと 転換する重要な意義をもつ。
 我が会は2005年に同世界大会実行委員会に加わった経緯をふまえ、今年の世界 大会がその歴史的意義にふさわしい成功をおさめるよう、国際新署名の推進等に力 を尽くす。

 5)被爆の実相の普及、被爆者との連帯強化
 今年、結成55周年を迎える日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は、結 成いらい核兵器廃絶と国家補償の被爆者援護法を2大要求に掲げ、国内外で一貫し て被爆の実相を訴えてきた。核兵器の非人道性、被爆の実相を伝えることは、核兵 器廃絶の国際世論を喚起するうえでますます重要となっている。
 会は日本被団協との連帯をはじめ被爆者支援の取り組みを発展させるとともに、 被爆体験やその継承活動を「非核の政府を求める会ニュース」で紹介するなど、被 爆の実相の普及に務める。「原爆展」への公的支援の要請、原爆パネルの普及等に務める。

 6)会の組織的強化のために
 ○…会の活動・機能の強化にむけて、近畿ブロックに続く関東ブロックの交流会開 催(昨年11月)の経験をふまえ、今後、近畿、関東に続くブロック別交流会、賛 同団体との懇談等を推進する。
 ○…「非核の政府を求める会ニュース」が、会の活動を伝え、核兵器・核政策をめ ぐる情報・資料を提供する紙面となるよう、紙面改善にいっそう力を尽くす。同「ニ ュース」普及のための経験交流を推進する。編集活動の改善をはかる。    □