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 ●全国総会の方針
 
核兵器廃絶、非核の日本へ 役割発揮のとき
         
核兵器廃絶条約の早期交渉もとめ 決意新た
       非核の政府を求める会が第25回全国総会
2010年6月5日

 非核の政府を求める会は6月5日、東京都内で第25回全国総会を開き、17都府県の会と15中央団体の代表、各界個人賛同者ら66人が出席しました。
 今総会は 鳩山内閣が国民の怒りに包まれて退陣した直後とあって、また、先の核不拡散条約(NPT)再検討会議の閉幕から1週間後であることから、高い関心と注目のなかで開催。鳩山内閣退陣について、民主党全体の共同責任を問い、非核の日本、非核の政治への根本的転換を求めました。
 会議では、昨年4月のオバマ米大統領演説からNPT会議へと連なる国際政治の出来事は、「核兵器のない世界」を求める世論が力を増し、もはや後戻りのできない世界の大勢となっていることを強く印象づけたと指摘。NPT会議が「核兵器のない世界」に向かう重要な1歩前進となったことを明らかにし、この流れを加速させるために、日本の政治を非核の政治へと転換することはますます重要と論議。非核の政府運動のいっそうの前進をめざす新方針を確認しました。
 増田善信・常任世話人(気象学者)が開会あいさつ。NPTニューヨーク行動に参加し、アメリカの平和運動と交流した経験に立って、日本に政府問題を全国的に取り上げる非核政府の会が存在する意義と誇りを強調しました。
 総会は座長に高橋和枝(新日本婦人の会中央本部副会長)、中西裕人(弁護士)の両常任世話人を選任。
 冒頭、昨年の総会後亡くなった常任世話人、世話人らの生前の功績を偲んで黙祷を捧げました。
 野口邦和・常任世話人(日本大学専任講師)が総会議案を提案。藤田俊彦(前長崎総合科学大学教授)、笠井亮(日本共産党衆議院議員)の両常任世話人が補強報告を行いました。
 討論では、延べ18人が発言しました。
 総会では、議案を採択し、120人の世話人と22人の常任世話人、7人の顧問、事務室長を選出。「国民のみなさんへの訴え──いまこそ核兵器のない世界、非核の日本実現へ、ともに」(3面に全文)を採択しました。

 広島、長崎両市長らがメッセージ

 総会には、秋葉忠利・広島市長、田上富久・長崎市長、竹内脩・枚方市長、海老根靖典・藤沢市長の4市長、平和・民主運動13団体、8労働組合と、個人多数から激励・連帯のメッセージが寄せられました。
 第25回全国総会では、野口邦和常任世話人の全国総会議案の提案(別項)に続いて、藤田俊彦、笠井亮の両常任世話人が補強報告を行ないました。
2010年NPT再検討会議についての補足(藤田氏)
 今回のNPT会議に関して、補足的に報告します。
 最終文書の特徴の1つは、95年再検討会議の3つの決定と1つの決議および00年会議の最終文書の双方を考慮に入れて作成・採択されたことです。核兵器のない世界の実現にむけての貴重な一歩前進です。
 アナリストらの論評によると、最終文書の最も具体的成果は、95年中東決議に関する新たな約束で、大量破壊兵器なき中東のための会議を12年に開催するとの合意が盛り込まれました。
 最終文書は、核軍備撤廃に向けて今後5年間、条約第6条と00年会議の13の具体的措置の実施をチェックする措置を盛り込むことができました。核兵器国に対して、15年会議のための14年準備委員会で進展状況を報告すること、15年会議では、「第6条の全面的実施のための次なる諸措置を評価し、検討する」ことを求めています。次回再検討会議が核兵器完全廃棄のための行程表を作成することもありうるとの含意です。
 
世界の大多数の非核保有国は、核兵器不保有のNPT約束を誠実に実行してきました。今回の再検討会議は、核兵器国の側に政治的意思さえあれば、すべての締約国が核兵器条約の締結など法的拘束力のある枠組みに至る道筋に合意する機会でした。
 
しかし、こうした肝心な要素の多くが将来に先送りされました。NPT再検討プロセスは、核兵器国と核兵器で守られている国が「核抑止」や「拡大抑止」の名目で、依然として核兵器中毒に冒されていることを示しました。日本は唯一の被爆国であるだけに、そのことのネガティブな意味は極めて深刻です。
 
核兵器の不道徳性と不法性に注目することこそ核兵器保有を断ち切るカギとの主張が強まるなか、最終文書に核兵器の不道徳性への言及が残ったことにも留意したいと思います。
 
今回のNPT再検討会議の特徴は最終文書の採択だけではありません。核兵器の妥当性と合法性についての新しい論争が発生したこと、核兵器を廃止する法的拘束力のある協定に対する大多数の諸国の圧倒的な支持が表面化したことも、重要な成果と言えます。
 
私たちは第6条の完全実施や明確な約束を「検討する」だけのために2015年を待つ必要はありません。大多数の国々は核兵器条約の締結の交渉の早急な開始を求めています。
核兵器問題で存在感ない日本政府 非核の会出番のとき(笠井氏)
 政局の動きはいま大変速いと痛感しています。昨年9月の総選挙で自公政権を退場に追い込んだ国民が、今度は民主党政権を追い詰め、鳩山首相はついに退陣しました。
 
しかし、菅首相に看板を替えただけでは禊ぎになりません。
 
私は国会で普天間問題も追求してきましたが、菅政権は、「国外・県外」の公約を裏切り日米合意を引き継ぐと言っています。世論調査では、沖縄県民の84%が「辺野古移設反対」です。日米合意の立場に立つかぎり破綻は必至です。
 
やはり言うべきことを、言うべき相手に、言うべきタイミングで堂々と言うかどうかが、日本の政治にとって決定的に重要です。
 
核兵器問題でも、今回NPT会議で訪米して世界の大きな変化を肌で感じました。核保有国の核廃絶の明確な約束の再確認や、廃絶のための国際交渉を始めるイニシアチブの要請に対して、国連のドゥアルテ上級代表は「あなた方の支援に感謝したい」と応じました。私たちが主張してきた方向が世界の大勢になっていると実感しました。
 
ところが、日本政府はどうであったか。国連で「核兵器のない世界の先頭に立つ」と言い、「核密約があれば廃棄する」と言ったけれどもやっていません。
 
今回のNPT会議でも、各国の元首クラスがきているのに日本は首相も外相もこず、被爆国政府の存在感はありませんでした。存在感のなさは、戦術核兵器の撤去を求めるなどヨーロッパの政府・議会の変化と比べても明白です。
 
今回のNPT会議の結果について注目したのは、「明確な約束」の再確認とともに、「核兵器のない世界の実現と維持のために必要な枠組みを創設する特別な努力を行うことが必要」だと確認したことです。必要な枠組みというのは条約の必要につながるし、そのための特別な努力といえば締結交渉につながっていく。
 
市民社会のイニシアチブへの評価、国連事務総長の核兵器禁止条約提案の検討が明記されたことも、大いに確信になります。
 
今後、今回の会議の成果を前に進めるために、核保有国の姿勢と同時に、やはり被爆国政府の態度がこれまで以上に問われることになります。被爆国の国民がいくら核兵器廃絶を願っても、政府が「核の傘」=核抑止力に頼り続けるかぎり、核保有国も世界も真剣に受け止めません。
 
非核政府の会の出番です。皆さんと力を合わせて、この総会を機にさらに前進させたいと思います。
         
NPT再検討会議、鳩山政権の退陣めぐり活発に論議
 第25回全国総会の討論では延べ19人が発言。最終文書が発表されたばかりのNPT再検討会議、国民の怒りに包まれての鳩山首相退陣などをめぐり、活発な論議が行われました。
                           

 
○…(全労連編集のNPT行動ビデオを上映)ニューヨーク行動に全労連・労働組合分野から署名120万筆を携え500人近くが参加。日本の運動は現地で驚嘆され、組合員は確信をもって帰国している。(全労連の代表)
 
○…ニューヨーク行動に参加した。現地での署名を訴えると、新宿より反応がよかった。核兵器廃絶に向かう過程では抑止力が必要という意見をどうみたらいいか。(全国保団連の代表)
 
○…今回のNPT行動でアメリカの反核団体は「これから本気で米国民を核兵器廃絶に立ち上がらせる」と励まされている。署名の1筆1筆が国際社会を動かすことも確信になった。国連総会に向けさらに広げたい。(日本原水協の代表)
 
○…新日本婦人の会からは250人が参加。国際政治を動かしていることへの自信にみちて各地で報告会をもっている。最終文書の「市民社会のイニシアチブ」の言及はうれしい。(新日本婦人の会の代表)
 
○…原子力空母母港化問題など地域で会の共同が大事。関東ブロック交流会を年内に開く。会の活性化へ原水協とも交流を進めている。(東京の会の代表)
 
○…ニューヨークには県から前回の2倍の159人が参加した。確信もって帰っており、世界大会成功の力になる。横須賀の米原子力艦原子炉修理問題などでの連帯を訴えたい。(神奈川の会の代表)
 
○…昨年11月の広島市長講演会では14団体が実行委員会に加わり広がりを示した。ニューヨーク行動では個人12氏呼びかけのアピールを作り、世界の人々に訴えた。(京都の会の代表)
 
○…NPTでは核兵器条約結ぶ新しい芽が出ていることに注目している。日本政府は潘基文・国連事務総長の5項目提案などを翻訳してホームページに載せるべきだ。(埼玉の会の代表)
 
○…潘基文・国連事務総長の5項目提案、モデル核兵器条約は反核法協の書籍に収録しているので活用してほしい。「非核5項目」は中国、韓国と核兵器廃絶の論議を進めるうえでも重要だ。(反核法協の代表)
 
○…『非核平和のデータブック』の第3号を出した。大阪への模擬原爆投下、町史に残る戦争の事実などを収録した。毎年の意見ポスター運動も「気軽に参加できる」と参加者が広がっている。(大阪の会の代表)
 
○…国際署名をした人など国民の力、変化を「非核の政府」に結集していく運動の発展方向を示す必要があるのではないか。(日本平和委員会の代表)
 
○…今回のNPT行動では、多宗教の世界会議、宗教者の平和会議を開催。日本修平協として国際活動の新段階をひらくことができた。(日本宗平協の代表)
 
○…民主党推薦の知事になり非核宣言に署名。焼津市長は「被爆3市でがんばる」とNPTにも参加。御殿場などでは市長が署名の先頭に立つなど大きな変化が生まれている。(静岡の会の代表)
 
○…笠井、藤田両常任世話人を招きシンポを開催。核密約をめぐるリアルな国会報告も聞き、NPT行動に向けて確信を広げる場となった。組織立て直しへ保険医協会との懇談を計画している。(広島の会の代表)
 
○…NPT会議で最終文書がまとまったのは、大きな前進だ。「核の傘」で守られている国は核保有国とみなされるわけで、被爆国日本の責任は大きい。若い世代のなかで運動を広げたい。(全日本民医連の代表)
 
○…よく原水協との違いについて質問が出るが非核の会は学者・文化人を広く結集する努力が大事。「非核5項目」の5項目めの検討提案があったが、運動の自主性守る重要な課題だ。(増田常任世話人)

 非核の政府を求める会第25回全国総会方針

 はじめに

 2010年核不拡散条約(NPT)再検討会議は5月28日、10年ぶりに行動計画を盛り込んだ最終文書を全会一致で採択した。昨年4月のオバマ米大統領のプラハ演説以降、G8ラクイラ・サミット(7月)、国連安保理首脳級会合(9月)、米「核態勢見直し」(NPR)発表(2010年4月)、米ロ新START条約合意(4月)等々を経てNPT再検討会議へと連なるこの1年の出来事は、「核兵器のない世界」を求める世論が力を増し、これがもはや後戻りのできない、世界の大勢となっていることを強く印象づけるものであった。
 
また、わが国では昨夏、長年にわたって悪政を推進してきた自公政権が総選挙で大敗を喫して退陣に追い込まれたものの、代わって登場した民主党主導の鳩山内閣は、公約を相次いで裏切り、非核の日本実現の課題でも、米軍普天間基地問題や「政治とカネ」問題でも、国民の失望と怒りに包まれて崩壊した。
 
まさに内外ともに激動の情勢のもとで開かれるこの総会は、核兵器をめぐる今日の情勢の変化をどう見るか、わが国を根本的に非核の政治に転換するうえでの当面の課題は何か、そしてそれを担うわが会の今日的役割、新たな発展方向は何かを明らかにすることを目的に開かれる。広島・長崎の被爆から65年の節目に開かれる本総会を機に、我々は改めて「非核5項目」に示される会結成の原点に立ち返り、核兵器の廃絶と非核の政府を求める運動を激動の情勢にふさわしく発展させることを誓いあおうではないか。

【1章】非核・平和をめぐる今日の情勢

 
「核兵器のない世界を」は今日、世界の合い言葉となりつつある。今日の変化は、「地球環境を守れ」の運動等、人類と地球の未来を左右する全人類的課題と互いに共鳴しながら、その広がりと強さを増している。その底流には、人々の社会正義、道理を求める声が社会を動かし、政治を変革し、新しい時代へと向かう確かな脈動がある。
 
核兵器をめぐる新たな変化も、核保有国の中に「核兵器廃絶は我々の生きているうちには達成されない」「抑止力としての核戦力は維持する」論の克服など今後の課題を残しながらも、全体としてみれば、「核兵器のない世界」を共通の目標として進展しているところに特質がある。われわれ非核平和の運動はいま、逆流克服の努力と合わせて、世界の前向きの変化を的確に捉えるとともに、それを作り出してきたのが被爆者を先頭とする日本と世界の原水爆禁止運動と非核平和の世論であることに確信をもち、さらなる前進を切り開くために奮闘することが求められている。

(1)「核兵器のない世界」への道ひらく好機──廃絶交渉の速やかな開始を

〈「核兵器のない世界」へ、NPT再検討会議が示したもの〉
 
「核兵器のない世界」を求める気運が高まるなか開催された2010年NPT再検討会議は、64項目からなる行動計画を盛り込んだ最終文書を採択した。最終文書は、「核兵器の完全廃絶に向けた具体的措置を含む核軍備縮小・撤廃」に関する行動計画にとりくむとしたうえで、2000年会議の合意「核兵器国による核兵器廃絶の明確な約束」を改めて追求するとし、「核兵器のない世界を実現するための枠組みの必要」に留意した。また、「本会議は、核兵器のない世界の達成に関する諸政府や市民社会からの新しい提案およびイニシアチブに注目する」と記述したことは、日本からの691万の「核兵器のない世界を」国際署名の提出に示される、従来の枠を超えた広範な政府、自治体、NGOの連帯・共同の広がりが、会議の大きな後押しとなったことを示している。今回の最終文書は、全体として、「核兵器なき世界」に向かう新たな、重要な一歩である。
 
検討過程で最初に提示された主要第1委員会(核軍備縮小撤廃)の報告草案にあった、核廃絶への行程表の作成や国際会議の開催などの「時間的枠組み」は、一部核保有国の抵抗によって日の目を見なかったが、「核兵器廃絶条約のための国際交渉の速やかな開始を」の方向が早晩、国際政治の日程に上らざるを得ないことを示して注目された。この方向は、「(核軍備縮小撤廃過程の最終局面が)合意された法的な枠組みのなかで追求されるべきであることを確認する。なお、大半の締約国はこの合意された法的な枠組みには具体的なスケジュールが組み込まれるべきであると確信する」との最終文書の記述に結実している。
 
我々は、最終文書で確認された以上の諸点を、核保有国を含むすべての国が、速やかな具体化・実行に尽力することを求めるものである。

〈「核兵器のない世界」は国際政治の本流〉
 
「核兵器のない世界」の声は今日、すでに国際政治の本流となっている。そのことは、第64回国連総会における核兵器関連諸決議の採択状況に端的に示されている。NPT第6条と1995年・2000年NPT再検討会議の結論にもとづき、核兵器が早期に廃棄されるべきであると主張した新アジェンダ連合のブラジル決議、一定の時間枠の中での核兵器の早期廃棄を強調した非同盟諸国のミャンマー決議は、いずれも圧倒的多数の締約国の賛成で採択された。
 
核兵器条約の締結交渉を直ちに開始するよう促したマレーシア決議は7割を超える賛成で採択されたが、このことは、「(核兵器の廃絶は)我々の生きているうちには達成されない」とする見地を退け、核保有国が同意さえすれば、「核兵器条約のための交渉開始」はすぐにも着手可能であるとの主張の力強さを裏付けている。
 
まさにいま、核兵器廃絶交渉を現実の国際政治のプログラムに上せることができるかどうかは、核保有国の政治的意思の如何にかかっていると言えよう。

〈核保有国の決断と実行が問われている〉
 
核兵器廃絶の流れを前進させるうえで、核保有国の決断と実行を迫る世論の構築は、ますます重要となっている。とりわけ、「核抑止力」正当化論の克服は急務である。オバマ大統領は最近、「新STARTのもとでも強力な核抑止力は維持できる」と述べ、クリントン国務長官も今回のNPT再検討会議の代表演説で「核抑止力保持」の米政権の立場を明言した。
 
「核抑止力」の名で担保される軍事的・政治的実態は核兵器の保有・配備とそれを背景にした相手国への恫喝である。それは恫喝される側に「自衛のための核兵器」の開発・保有の動機付となり、核兵器廃絶にも核不拡散にも逆行する状況を招来するものとなる。核保有国は核兵器廃絶要求に対し、口をそろえて「世界に核兵器が存在するかぎり、核抑止力を保持する」と言うが、世界の大多数の国々は核兵器開発・保有を放棄し、非核兵器国としてNPTに参加しているのであるから、一にも二にも核保有国の責任こそが問われていることを指摘しなければならない。NPT第6条の精神も、まさにここにある。「核抑止」論の根本的打破は、核兵器の全面禁止・廃絶を目標とする行動計画策定とその実行にある。同時に、核兵器廃絶に至る途上であっても、非核兵器国に対して核兵器を使用しないとする「消極的安全保障確約」、および核保有国間の「核先制不使用」はもとより、核兵器使用禁止の合意および条約などによるその法制化を達成することが重要となっている。

〈オバマ政権で米核政策はどう変わったか〉
 
この間、「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)、「核態勢見直し」(NPR)、米ロの新START条約調印と、オバマ政権の今後の核政策の基本となる重要方針が相次いで発表された。その基調は全体として、ブッシュ・ドクトリンの「核先制攻撃」政策の削除(QDR)、米ロの配備核弾頭数を条約批准後7年間でそれぞれ1550発まで削減(新START)、「核兵器のない世界」、消極的安全保障を明記し、新型核兵器製造計画を放棄(NPR)等、ブッシュ前政権の好戦的な核政策を転換するものと言えよう。
 
だが、クリントン国務長官が今回のNPT再検討会議でも強調したように、また核セキュリティ・サミットの主宰に示されるように、オバマ政権の実際的な核政策は「核不拡散」「対テロ対策」にシフトし、核兵器廃絶のための具体的なイニシアチブは発揮されていない。ここには、根深い「核抑止力」合理化論とともに、米国内の軍産複合体などの抵抗の反映がある。今後、オバマ政権に対して、核不拡散や核軍備縮小などの部分的措置と併せて、核兵器廃絶の課題そのものの具体的イニシアチブの発揮を求めることが重要となっている。

〈世界の核兵器状況と核開発問題の平和的解決〉
 
世界はいま、「核兵器のない世界」に向けて前進しようとしているが、その前進のためにも、国際社会の安全を脅かす核兵器の現状を明らかにすることが重要である。
 世界の核兵器状況  世界の核兵器数は、民間研究者ハンス・クリステンセン氏らの調査・研究によるとおよそ2万3300発であり、推定で14ヵ国111ヵ所に貯蔵されている。そのうち半数近くの核兵器は直前の指令によって発射することのできる運搬システムとともに作戦配備されている。核兵器の保有数を国別に見ると、ロシアが1万3000発でそのうち4850発が作戦中ないし現役、アメリカは9400発でそのうち5200発が軍事用在庫とされ(米国政府はこのほど5113発と公表)、うち約2700発が配備されている。両国の合計保有数は全体の96%を占める。この他、フランスが300発、中国240発、イギリス180発、イスラエル80〜100発、パキスタン70〜90発、インド60〜80発とされ、北朝鮮の核兵器能力は不明ながら若干数保有すると考えられている。これらは、いずれも推計であり、その実態に透明性を欠いていることは重大と言わなければならない。
 
米ロ両国は、新START条約による両国の核軍縮努力を大宣伝するが、同条約の目標が達成されたとしても、批准7年後になお米ロの戦略核兵器だけでも計3100発も地球上に配備されることになる。核兵器はその爆発力による比類なき破壊力とともに、長期にわたる放射線障害をもたらす最も非人道的な残虐兵器であることを世界に発信することは、引き続き被爆国日本の非核平和運動の重要な課題である。

 
北朝鮮をめぐる「6ヵ国協議」の再開に努力を  韓国海軍の哨戒艦沈没について韓国政府は5月24日、沈没は北朝鮮の魚雷攻撃によるものとの国際調査委員会報告を受けて、「断固たる措置を取る」と表明した。わが会は、他国の軍艦を魚雷で攻撃し沈没させる無法行為を厳しく非難するとともに、今後、関係国が軍事的報復に陥ることなく外交的・平和的に解決するよう、強く求めるものである。
 
北朝鮮の核開発問題をめぐる「6ヵ国協議」は現在、北朝鮮の一方的な離脱表明等により膠着状態に陥っているが、困難はあっても協議再開のため粘り強く努力することこそ必要不可欠である。
 
イランの核開発問題の平和的解決を  イラン政府がこのほど、これまで拒んできた低濃縮ウランの国外移送についてトルコ、ブラジルと合意し、国際原子力機関(IAEA)に通知したことは、注目される。しかし、イランは依然として国連安保理決議やIAEA決定に反発し、“抜き打ち査察”を受け容れることになるIAEAの追加議定書を拒否している。イラン政府による核兵器開発放棄の明確化と、同問題の平和的・外交的解決への国際社会のいっそうの努力が求められている。

(2)日本政府は被爆国としての役割発揮が問われている

〈鳩山政権の9ヵ月――迷走と背信の末、辞任に〉
 鳩山由紀夫首相が6月3日、ついに辞任を表明した。昨秋の発足から9ヵ月、国民の期待に背を向けて、外交・内政ともに公約をことごとく裏切り、国民から完全に見放された末の辞任となった。内閣支持率は2割を切るまでに急落していた。鳩山政権はこれまで、「核兵器廃絶の先頭に立つ」と国際社会に宣言してきたが、今回のNPT会議に首相も外相も出席せず、被爆国としての積極的な役割はなんら果たさなかった。被爆者をはじめ国内外からその責任を問う声があがっているのは当然である。「核密約」公表・破棄の公約についても、国民の声に背いて米軍の核持ち込みの権利を温存する道を選択した。「政治とカネ」問題や暮らしの問題をふくめ、その無責任政治に対し、国民から「民主党に裏切られた」「自民党政権とどこが違うのか」と怒りの声が高まったのは当然である。
 
しかし、ことは鳩山首相の辞任ですむ問題ではない。核兵器政策、「核密約」問題、普天間基地問題等、どれをとっても民主党が党をあげて「日米同盟最優先」の立場にたったものであり、共同責任は免れえない。鳩山氏に代わり菅直人氏が新首相となったが、首相が変われば国民の不信を払拭できるというわけではない。
 
わが会は、今後とも政府に対し、非核の日本、非核の外交への根本的転換を強く求めていく。同時に、参議院選挙が間もなく争われるが、この政治戦を、昨夏の総選挙で国民が示した“国民の声が政治を変える”流れをさらに前進させ、国民犠牲・アメリカ優先の政治をきっぱりと転換させていく好機としなければならない。
 
「核密約」を破棄し、非核日本への実効性ある措置を
 
外務省は3月、日米4密約問題を調査した「有識者委員会」報告を公表した。同報告書が1960年の核密約――核積載艦船・航空機の日本への立ち寄りを認めた密約について、秘密の「討論記録」の存在は認めながら、それを「核密約」とは認めなかったことは、史実の歪曲であり重大な過誤である。政府はその後、それが「不公表とすることとして両政府間で作成された合意文書」(日本共産党志位和夫委員長の「質問主意書」に対する政府の「答弁書」)であるとして、事実上密約であることを認めたが、そうであれば直ちにこれを破棄し、米国にその破棄通告を行うべきである。そして、「非核3原則」の厳守、「非核法」制定等、非核の日本を実現する実効性ある措置を講じるよう、強く求める。
 普天間基地問題――移設でなく無条件撤去を
 
普天間基地問題をめぐる鳩山内閣の迷走ぶりは、同内閣が政権担当の資格も能力もないことを如実に示すものとなった。鳩山首相はこのほど、普天間基地の「辺野古周辺」移転の方針を決めたが、これは事実上自公政権時の「日米合意」への逆戻りにほかならず、「沖縄の苦難を深く受け止める」「国外、最低でも県外移転」などとした氏の言明に照らしても、前例のない背信行為と言わねばならない。
 
鳩山内閣の同問題の迷走の背景にあるのは、日本にとって「米海兵隊=抑止力」との呪縛であり、その根底にある「日米同盟最優先」の政治路線である。そこからは、基地の「移転先」探しはあっても、基地撤去の方途は出てこない。
 
わが会は、普天間基地問題の解決は、無条件撤去・基地返還以外にないことを強く主張するとともに、日米安保改定50年にあたり、今後、日米同盟の害悪についても解明・宣伝してゆく。

〈いま、被爆国政府としてなすべきこと〉
 
非核・平和をめぐる情勢の変化は、わが国政府が被爆国にふさわしい役割を発揮することをこれまでにまして強く求めている。当面、
 
○…核保有国に対し、2010年NPT再検討会議で合意した行動計画の具体化とその誠実な実行を、正面からきっぱりと求めることである。
 
○…「私たちの生きているうちに核兵器のない世界を」との被爆者の悲願にこたえ、核兵器の1日も早い廃絶のためにイニシアチブを発揮することである。核兵器廃絶を遠い将来に先送りする旧自公政権の「究極的廃絶」論から脱却し、核兵器禁止条約締結のための国際交渉の速やかな開始を提唱し、その実現のための役割を果たすべきである。この立場から、今秋の第65回国連総会では、非同盟運動などの核兵器関連諸決議に対する態度についても「棄権」でなく明確に「賛成」に転ずるべきである。
 
○…「核持ち込み密約」については、密約の存在を認め、米国に破棄通告を行うとともに、「非核3原則」法制化をはじめ非核の日本を保障するための実効性ある措置を講じるべきである。
 
○…憲法9条をもつ国として、米国の核戦略・核戦争に手を貸す「核の傘」=「核抑止力」依存政策から脱却すべきである。

〈憲法9条を非核・平和の日本実現の力に〉
 
改憲のための国民投票の手続きを定める「国民投票法」が5月18日、施行された。同法は、付則で義務づけられていた投票年齢等の法整備さえ行われていない欠陥法であり、すみやかに廃止すべきである。同法にもとづき設置された衆参両院の憲法審査会も休眠状態となっている。このように明文改憲の策動は停滞に追い込まれているが、その背景に、「9条の会」の地方・分野別組織の成長をはじめ「9条守れ」の国民的な運動と世論の前進があることは明らかである。そのことは、昨年の総選挙で、改憲派議員を3分の1に激減させたこと、世論調査でも国民の7割が憲法9条を「変えないほうがよい」としていること(「朝日」5月3日付)等に端的に示されている。
 
同時に、改憲勢力が国民投票法の施行をテコに、改憲議論を盛り上げようとしていることは看過できない。民主党など与党3党は「国会改革」法案の国会提出を強行して、政府の憲法解釈の変更に道を開こうとし、自民党は改憲原案や自衛隊の海外派兵恒久法案の国会提出を画策している。鳩山首相はじめ、相次ぎ誕生した新党がいずれも改憲に意欲的であることも、注視しなければならない。
 
わが会は、憲法9条が原子爆弾の投下をふくむ戦争の惨禍のうえに制定された経緯にてらし、あわせて「非核の政府」をめざす運動が憲法9条を全面的に生かす政治を実現する事業であることから、ひきつづき、「9条を守り生かす」運動と連帯・共同し、その発展のために力を尽くす。

【2章】「非核の政府を求める会」活動の前進のために

 
「核兵器のない世界」を求める気運を、核兵器廃絶条約に結実させるうえで、核兵器の廃絶と非核の日本を求める世論を広げるわが会の前進は、ますます重要となっている。

 
1)非核・平和の国民的合意の推進
 
○…わが会は前総会以降、シンポジウム「鳩山政権下、非核日本への道を探る」の開催、核問題調査専門委員会の例会開催(ほぼ毎月)、国連総会の核兵器関連決議や核保有国の核政策の分析、日本政府の核政策批判など調査・研究活動に取り組んできた。引き続き、非核・平和をめぐる政策上・運動上の重要問題の発展方向を探究するシンポジウム、核問題調査専門委員会活動にいっそう旺盛に取り組む。
 
[調査専門委員会のテーマ]▽核兵器廃絶をめぐる動向の調査・分析▽世界の核兵器状況の分析▽「核の傘」「核抑止論」批判▽核兵器条約の研究▽憲法第9条と非核の日本実現の課題▽「核密約」「非核3原則法制化」問題▽「非核の政府」問題の系統的研究▽新アジェンダ連合・非同盟諸国政府の動向の研究・交流。
 
○…日本政府に対しこの間、「第64回国連総会についての要請」(2009年9月、西村外務大臣政務官が応対)、「第8回NPT再検討会議に向けての申し入れ」(2010年4月、同前)を行なった。引き続き日本政府に被爆国にふさわしい核政策の遂行を求める活動に取り組む。
 
○…NPT再検討会に向けた意見ポスター運動(東京の会と共催)は、全国各地の会の協力を得て、約190団体と個人790人から賛同が寄せられた。ポスター約4300枚が各地の掲示板や玄関、塀などに張り出され、「2010年NPT再検討会議を核兵器ゼロへの転機に」の世論喚起に寄与するものとなった。非核平和をめぐる重要課題について会の存在感のアピールともなるこうした取り組みを、今後とも適宜追求していく。
 
○…会の2010年新春アピールへの賛同運動にこれまでになく広範な60氏から賛同・メッセージが寄せられた。各界各層の人々との非核・平和の共同をさらに広げる。
 
○…インターネットのホームページの日常的な更新、掲載データの充実などいっそうの改善をはかる。

 
2)「非核法」「非核3原則法制化」求める運動の探求
 政府に「核密約」の廃棄を求めるとともに、「非核3原則法制化」など、非核の日本実現の展望について探求をすすめる。

 
3)非核自治体運動、非核「神戸方式」の前進を
 非核自治体宣言運動・非核行政の発展を引き続き追求するとともに、核兵器をめぐる国際的な情勢の変化をふまえて、自治体における非核・平和の共同の拡大をめざす。
 「核密約」破棄と結んで非核「神戸方式」の全国化に向けた運動を、兵庫の会と協力して推進する。
 引き続き日本非核宣言自治体協議会、平和市長会議との連帯、共同を発展させる。

 
4)国際連帯活動の強化
 NPT再検討会議に向けた日本と世界の反核運動の到達点、同会議の新たな成果を受けて開かれる今年の原水爆禁止世界大会は、世界の反核平和運動の代表が集まり、核兵器廃絶条約の締結を求め、核兵器のない世界を願う各国政府や自治体との連帯、共同を発展させる場となる。我が会は今年の世界大会が、その歴史的意義にふさわしく成功をおさめるよう、連帯のとりくみを強める。

 
5)被爆者との連帯強化

 核兵器の非人道性、被爆の実相を伝えることは、核兵器廃絶の国際世論を喚起するうえでますます重要となっている。会は被爆体験の「非核ニュース」での紹介等、被爆者支援、被爆体験継承の取り組みを強める。「原爆展」への公的支援の要請、原爆パネルの普及等に務める。

 
6)会の組織的強化のために
 
○…会の活動・機能の強化にむけて、この間行なった自治労連との懇談、関東ブロック交流会等の経験をふまえ、今後、賛同団体との懇談、近畿、関東に続くブロック別交流会活動等を推進する。
 
○…会の活動を伝え、核兵器・核政策をめぐる貴重な情報・資料を提供する「非核の政府を求める会ニュース」が、より読みやすく役に立つ紙面となるよう、いっそうの改善をはかる。
 ○…会の組織・財政の強化…事務局、事務室体制の強化をはかる。