| 憲法9条力に 非核の政治へ転換を |
| 非核政府の会 シンポ「日本政府の核政策と憲法第9条」ひらく |
| 2008年12月13日 |
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「内容が濃く、充実したシンポ」「非核の政府と憲法9条の関係が学べて視野が広がった」――。非核の政府を求める会は2008年12月13日、東京都内でシンポジウム「日本政府の核政策と憲法第9条」を開き、90人余が参加。同会常任世話人の藤田俊彦・前長崎総合科学大学教授がコーディネーターを務め、パネリスト4氏が報告しました。
黒澤満・大阪女学院大学教授は、「2010年NPTへ、世界の核廃絶の流れと日本の立場」をテ―マに報告。米政府高官らの核廃絶提案について、冷戦中の核抑止論者が“いまは核抑止が働かない”とした点が重要と述べ、“いまも核抑止は有効”とする日本政府の核政策の問題点を明らかにしました。
小澤隆一・東京慈恵会医科大学教授のテーマは「憲法9条の思想と『核抑止』の思想」。「核抑止」の思想はジェノサイドの恐怖が前提だと指摘するとともに、日本国憲法を拠り所としつつ、“国民の運動が法制度をつくる”の見地で非核の世論を発展させることが大事と語りました。
「なぜ『核兵器のない世界を』国際署名を始めたか」について、土田弥生・日本原水協事務局次長は、2010年NPT会議に向けて被爆国からの行動提起を重視したと解説。生活・環境問題の論議からも核廃絶署名が進む情勢の変化をとらえ、日本と世界のコンセンサスを広げようと呼びかけました。
笠井亮・日本共産党衆議院議員(非核の政府を求める会常任世話人)は、「ここまできた憲法じゅうりんの日本外交・核政策の現実」をテーマに報告。大国による「力の政策」が通用しない世界の変化について行けず、「思考停止」に陥っている日本政府の姿を、国会論戦に即して解明。いまこそ「靖国派」と日米軍事同盟の2つの元凶にメスを入れ、憲法9条に立ち返って日本外交を大本から転換するとき、非核の政府を求める会の役割はますます重要だと強調しました。
原爆症認定集団訴訟全国原告団長で日本被団協事務局次長の山本英典さんが来賓あいさつ。
非核政府の会事務局の平山武久さんが「田母神問題をどうみるか」について特別発言を行いました。
次にパネリスト4氏の報告(要旨)を紹介します。
(本シンポジウム記録集は近く発行されます)
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2010年NPTへ、世界の核廃絶の流れと日本の立場
黒澤 満(大阪女学院大学教授)
NPT再検討会議が2010年4月、ニューヨークで開かれます。2000年会議の最終文書で、「核廃絶の明確な約束」を含む核軍縮にむけた13項目が合意されましたが、05年再検討会議は失敗に終わりました。ブッシュ政権の多国間主義反対、軍事力重視政策が原因の1つです。
2010年にむけて07年、08年準備委員会が開かれています。アメリカは物言いの態度は変わったけれども基本姿勢は変わっていません。アメリカはオバマ政権に代わったのでチャンスですが、何もしないでいれば失敗します。さらに運動が必要です。
2番目は、「核兵器のない世界」についてです。これは07年1月4日の「ウォールストリート・ジャーナル」にアメリカの4人の元高官が発表したものです。08年1月にその4人が再び、「非核の世界に向けて」という提案をしました。その後、ノルウェー政府が「核兵器のない世界のビジョンの達成」という国際会議を開、ゴルバチョフは「全面的に支持するのが私の義務だ」との論文を発表、アメリカの国防長官、国務長官、安全保障会議議長経験者24人のうち17人が提案をサポートしています。潘基文・国連事務総長も、核兵器禁止条約の議論も始めようといった演説を行っています。世界の大きな流れは、核兵器は廃絶しないとだめだという形になっています。
「核兵器のない世界」が出てきた背景は何か。基本的にはブッシュ政権の核政策への批判がベースになっています。キッシンジャーにしろシュルツにしろ冷戦中の核抑止論者が「冷戦中は核抑止は必要だった、核抑止は働いていた、だが今は働かない」と言うところに、この提案の大きな意味があります。テロリストなどへの核拡散を防ぐためには核兵器をなくさなくてはだめだという論理です。
日本政府の立場はどうか。国連総会の日本政府決議は「実際的かつ実効的な措置を取る」がメインです。わが国の核政策は、日米同盟による抑止力の確保とNPT体制の堅持です。だから「フーバー・プラン」などで「核軍縮は今は効かない」といっても、日本政府は「核抑止はまだ効いている」という立場です。
最後に、「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」がオーストラリアのラッド首相から提案され、すでにスタートしています。核廃絶を言うのでなく、「実際的かつ現実的な勧告を行う」というのが中心です。
秋に日本で会議を開催します。私は広島でやったほうが効果がよりよく出ると提案しています。
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憲法9条の思想と「核抑止」の思想
小澤 隆一(東京慈恵会医科大学教授)
日本は憲法9条をちながら米国の駐留を許し、日本の基地が世界最強の核攻撃能力を持つ米軍の前方拠点となっています。憲法9条とその思想は核抑止を改め、核廃絶にどのような意義をもちうるかについて、憲法9条の「原点」と今おかれている「現点」から考えてみたいと思います。
核抑止の思想は、核兵器を使えば民衆が大量に死ぬぞという恐怖を相手国および相手国民にかき立てることによって戦略として成り立つわけで、ジェノサイドの恐怖が不可欠の要素になっています。
ジェノサイドの記憶が前提となるとすると、核抑止論というのは、単なる軍事的な戦略というだけではなく心理戦であり、政治的なイデオロギーと捉えることができます。これは空爆思想にも共通する面があります。日本に落とされた原爆や空襲も、民衆に対する心理戦の一つの方法として位置付けられていたと言えると思います。
その意味からも、実戦で原爆が使用された日本の戦争経験を受けて生まれた日本国憲法と9条の意味を捉え直すことができるのではないかと思います。そのことを、1945年の政治史、憲法9条が生まれてくる原点に立って、実際に原爆投下や空襲が行われた場合に、それがどういう政治的意味をもつか、民衆にとってどういう意味をもつのかを反芻することが、大事だと思います。
第2に、憲法9条の現在の視点として、2008年4月の「イラク自衛隊違憲判決」を見てみましょう。この判決がイラク戦争の先頭の実態を丹念にフォローしたのは画期的です。
同判決は、平和的生存権について、多様で幅の広い権利、基底的な憲法上の権利、自由権・社会権・生存権の複合的権利であることなどを内容抱負に語っています。
同判決はまた、他国の武力行使と一体化しなければ憲法違反に当たらないとする「一体化」論や、武器使用と武力行使は別とする「区別」論などの政府の憲法解釈の歪みをも浮き彫りにしています。
政府与党はいま、その「一体化」論などの使い勝手の悪さを克服しようと、海外派兵恒久法の制定を狙っていますが、最近の情勢、国民世論は、それを簡単に許さないでしょう。
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なぜ「核兵器のない世界を」国際署名を始めたか
土田 弥生(原水爆禁止日本協議会事務局次長)
私たちが原水爆禁止2008年世界大会で始めた「核兵器のない世界を」という国際署名を中心に、2010年NPT再検討会議に向けて、運動をどう進めていくかについて話したいと思います。
この署名は当初、海外の反核団体から、平和市長会議の署名やモデル核兵器条約の締結署名にとりくんでいるのに、どうして新たに署名を提起するのかという意見がありました。私たちがこの署名を打ち出した理由は、被爆国からの行動が大事だと考えているからで、「人類と核兵器は共存できない」という被爆者の言葉で呼びかけています。これは、他のキャンペーンと競合するものではなくて、それらと連帯して進められるものです。文章は短く、明快で、中高生も読めば理解できる内容にしました。
国際署名はこれまで、冷戦時代の1980年代に、人口過半数を達成するほどの署名を集めましたが、当時、国際的には核兵器廃絶の機運はなかったと思います。しかし、2000年NPT会議で「核兵器廃絶の明確な約束」ができてから、それまでとは違う状況が生まれています。
核拡散問題の脅威・危険は軽視できませんが、実際の拡散の脅威は保有国の側にあります。核保有国が核兵器をなくす方向に進めば、拡散の問題も大きく前進します。ですから、2010年に核兵器全面禁止のための交渉を始める合意を作ることが重要です。この署名は、日本と世界の国民の中でそのコンセンサスを作るための署名です。
2010年には各国政府も態度を決めているので、2009年のたたかいが大事です。私たちはこの署名を日本で人口の10%、1200万集めて2010年NPT再検討会議に提出しようと考えています。
いま、ヨーロッパでも日本でも、これまでの軍事優先で戦争や軍事同盟、核兵器などが支配するような世界ではなく、また、環境破壊や貧困に苦しむような世界ではなくて、核兵器のない平和で公正な世界を求める人々の声が広がっていると強く感じます。
世界のNGOや運動を励ます意味でも、やっぱり被爆国日本から提唱した署名を2010年に向けてしっかり集めていく必要があると思っています。まず、本日参加の皆さんから署名をよろしくお願いします。
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ここまできた憲法蹂躙の日本外交・核政策の現実
笠井 亮(日本共産党衆議院議員)
侵略戦争によるおびただしい犠牲、広島・長崎の被爆の惨禍の上に、日本は二度と戦争をしないと誓った国際公約が憲法であり9条です。そこには戦争のない新しい世界をめざす先駆けになるという決意が込められています。
かつて日本国憲法制定の枢密院で、当時の幣原首相は、「9条はどこの憲法にも類例がない…戦争放棄は正義にもとづく正しい道だ…原子爆弾の発明は世の主戦論者に反省を促したのであるが…過日新たなる兵器の威力により…数百万の住民が一朝塵殺せらるる惨状を見るに至らば、列国は漸く目覚めて戦争の放棄を真剣に考えることになるであろう」と述べています。まさに侵略戦争の反省と広島・長崎の原爆体験があってこその9条であり、アジア、世界の共有の財産だということが確認できると思います。
2つめに、日本国憲法が生まれて60年余、21世紀の世界はどうかというと、アジアでもラテンアメリカでも、幣原首相が言ったように戦争放棄を考える動き、大国が軍事力や核兵器で他の国々を抑えつける時代から9条が掲げる理想と精神の方向へと大きく変化をとげつつあります。
3つめに、では日本政府、日本外交はどうか。残念ながら、世界は9条の掲げる方向に変化しようとしているのに、日本政府は思考停止状態で、あくまで核兵器の持つ抑止力や軍事力にしがみついています。国会で思考停止をもたらす力として働いているのが、衆議院の自民・公明の3分の2の圧倒的多数議席です。新テロ法案の衆院再議決をみても、国民がどう言おうと、参議院がどう決めようと解決へまともに努力もしません。
もう1つ重大なのは、「田母神問題」です。これは、特異な人物がたまたま自衛隊幹部の中にいたということではありません。自衛隊が海外派兵を本格的に実行していくための精神的な支柱として、侵略戦争肯定の歴史観・国家観が必要だという立場であり、それに同調する危険な空気が自衛隊の中に広がっているということです。そして、その先頭に立ってきた田母神氏の標的がまさに憲法と核兵器だと言えます。集団自衛権、軍隊を認めない憲法、非核3原則などの見直しを主張しています。
9条にそった日本外交のために、田母神問題に象徴される、戦犯政治を受け継ぐ靖国派と日米軍事同盟の2つに今こそメスを入れて、非核平和の外交に転換すべきだと思います。非核の政府を求める会の役割がますます大事です。
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